日本語でわかる最新の海外医学論文|page:59

CAVI高値のCAD患者は発がんリスクが高い

 冠動脈疾患(CAD)の治療を受けた患者の中で、心臓足首血管指数(CAVI)が高く動脈硬化がより進行していると考えられる患者は、その後の発がんリスクが高いことを示すデータが報告された。福島県立医科大学循環器内科の清水竹史氏らによる研究の結果であり、詳細が「Circulation Reports」9月号に掲載された。  近年、がん患者は心血管疾患(CVD)リスクが高く、CVD患者はがんリスクが高いという相関の存在が明らかになり、両者に関与するメカニズムとして慢性炎症などを想定した研究も進められている。しかし、動脈硬化のマーカーと発がんリスクとの関連についてはまだ知見が少ない。清水氏らは、同大学附属病院の患者データを用いた前向き研究により、この点を検討した。

妊娠超初期の薬剤中絶、有効性と安全性を確認/NEJM

 子宮内妊娠が確認される前の超初期における薬剤中絶は、子宮内妊娠が確認されるまで中絶を延期するという標準的なアプローチと比較して、完全な中絶に関して非劣性であることが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のKarin Brandell氏らVEMA (Very Early Medication Abortion) Study Groupが、多施設共同無作為化非劣性対照試験の結果を報告した。ミフェプリストン・ミソプロストールによる薬剤中絶は、高い有効性と安全性が確認されている。しかしながら、妊娠が超音波検査で確認できる前の妊娠超初期での有効性および安全性のエビデンスは不十分であった。NEJM誌2024年11月7日号掲載の報告。

HFrEF患者の死亡リスク、SGLT-2阻害薬で25%減/BMJ

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)を有する患者において、SGLT-2阻害薬の使用者は非使用者と比較して、全死因死亡リスクが25%低かった。デンマーク・国立血清学研究所(SSI)のHenrik Svanstrom氏らが、同国心不全レジストリ(Danish Heart Failure Registry)と国民登録簿(Danish national registers)を結び付けて解析した非介入データベース試験の結果を報告した。臨床試験では、SGLT-2阻害薬は糖尿病の有無にかかわらず、駆出率が低下した心不全患者の病状悪化および死亡のリスクを低下することが示されている。しかし、臨床試験のような管理下にない幅広い心不全患者集団における、SGLT-2阻害薬の有効性はほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、実臨床において、および糖尿病患者と非糖尿病患者を含むすべての重要な臨床サブグループにおいて、SGLT-2阻害薬の有効性を支持するものであった」とまとめている。BMJ誌2024年11月6日号掲載の報告。

冠動脈にワイヤーを入れて行う心筋虚血評価は、もうちょっと簡単にならないのか?(解説:山地杏平氏)

QFR(Quantitative Flow Ratio、定量的冠血流比)とFFR(Fractional Flow Reserve、冠血流予備量比)の有効性と安全性を比較したFAVOR III Europe試験が、2024年のTCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)で発表され、Lancet誌に掲載されました。FFRは、圧測定ワイヤーを狭窄遠位まで進め、最大充血を得るために薬剤投与が必要な侵襲的な検査です。一方で、QFRは冠動脈造影の画像をもとに冠動脈の3次元モデルを再構築し、数値解析を行うことで心筋虚血の程度を推定します。FAVOR III China試験などで、QFRが一般的な冠動脈造影検査のみの評価よりも優れていることが示され、欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインにおいてQFRはクラス1Bとして推奨されています。

乳がんと肺がんの関連~双方向のメンデルランダム化解析

 乳がんサバイバーの生存期間の延長に伴い、2次がん発症リスクが上昇している。2次がんの部位は、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベース(2010~15年)によると、乳房(30.0%)に次いで肺・気管支(13.4%)が多かった。今回、乳がんと肺がんの双方向の因果関係について、中国・The First Affiliated Hospital of Xi'an Jiaotong UniversityのXiaoqian Li氏らがメンデルランダム化(MR)解析で調査したところ、乳がんサバイバーにおいて2次肺腺がんリスクが上昇することが示唆された。Scientific Reports誌2024年11月6日号に掲載。

高齢者の認知症予防に最も有用な野菜の種類は?

 オーストラリア・エディスコーワン大学のNegar Ghasemifard氏らは、オーストラリアの高齢女性における、特定の野菜を含む総野菜摂取量と長期の老年性認知症リスクとの関連を調査した。Food & Function誌2024年10月28日号の報告。  対象は、地域在住の70歳以上の高齢女性1,206人。ベースライン時(1998年)、検証済みの食物摂取頻度調査票を使用して、野菜の総摂取量、野菜の種類別摂取量(黄/オレンジ/赤い野菜[YOR]、アブラナ科、ネギ科、緑色の葉野菜[GLV]、豆類)を推定した。老年性認知症は、80歳以降に発症するすべての認知症と定義した。入院およびまたは死亡を含む老年性認知症イベントは、リンクした健康記録より収集した。関連性の評価には、多変量調整(APOE4遺伝子を含む)Cox比例ハザードモデルの制限付き3次スプラインを用いた。

高強度の運動は空腹感を抑制する?

 ランニングや水泳などの心拍数が上がるような高強度の運動は、早歩きやアクティブヨガなどのより低強度の運動よりも、食欲増進に関連するホルモンであるグレリンの抑制に効果的であることが、新たな研究で明らかになった。このような高強度の運動がもたらす効果は、男性よりも女性で顕著なことも示唆されたという。米バージニア大学医学部のKara Anderson氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the Endocrine Society」11月号に掲載された。  グレリンには、アシル化グレリン(AG)と非アシル化グレリン(DAG)という2つの形態が存在し、体内で、エネルギーバランス、食欲、血糖値、免疫機能、睡眠、記憶などに広範囲にわたって影響を及ぼすことが明らかにされている。グレリンはまた、急な運動により濃度が変動することも示されている。しかし、運動強度がグレリンレベルと食欲に与える影響についてのデータは限られている上に、そうした研究は主に男性のみを対象にしたものだという。

MRIで直腸がん手術の要否を判断可能か

 MRIによる直腸がん患者のがんステージの再評価により、手術を回避できる患者を特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。手術を回避できた患者は、生涯にわたってストーマ装具を装着せずに済む可能性も期待できる。米バージニア大学(UVA)医療システム身体画像部門のArun Krishnaraj氏らによるこの研究の詳細は、「Radiology」に9月3日掲載された。  米国がん協会(ACS)によると、米国で直腸がんは比較的一般的な疾患で、毎年約4万6,220人(男性2万7,330人、女性1万8,890人)が新たに直腸がんの診断を受けているという。直腸がんによる死亡者数は、毎年5万4,000人以上に上る大腸がん死亡者数の統計に含まれている。

立位時間を増やすだけでは心臓の健康は改善しない

 健康のことを考えて、スタンディングデスクを導入して座位時間を減らすことを考えている人もいるかもしれない。しかし、手首に特殊な動作モニターを装着した8万3,000人以上の英国成人を対象とした新たな研究において、座位時間を立位時間に変えても、実際の動きや運動を伴わない限り、心血管の健康へのメリットはないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのMatthew Ahmadi氏らによるこの研究結果は、「International Journal of Epidemiology」に10月16日掲載された。

パンデミック中は国内在留外国人の自殺率も高まった

 国内に暮らす外国人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の自殺率に関するデータが報告された。外国人もパンデミックとともに自殺率が上昇したこと、男性においてはそのような変化が日本人よりも長く続いていたことなどが明らかにされている。筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野と国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの共同研究で、谷口雄大氏、田宮菜奈子氏、磯博康氏らによる論文が「International Journal for Equity in Health」に7月31日掲載された。

薬物療法を要する院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/NEJM

 薬物療法を要する院外心停止成人患者において、骨髄路確保戦略を用いても静脈路確保戦略を用いた場合と比べて、30日生存率は高くならなかった。英国・ウォーリック大学のKeith Couper氏らPARAMEDIC-3 Collaboratorsが、英国の11の救急医療システムで実施したプラグマティックな無作為化非盲検試験「PARAMEDIC-3試験」の結果を報告した。院外心停止患者の場合、アドレナリン(エピネフリン)などの薬剤の有効性は投与時間によって大きく左右される。骨髄内投与は静脈内投与より迅速な薬剤投与が可能であるが、臨床アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年10月31日号掲載の報告。

自殺リスク、曜日や祝日との関連は?/BMJ

 ほとんどの国では自殺リスクは月曜日に最も高く、元日に増加するが、週末やクリスマスでは国や地域によって異なることを、韓国・釜山大学のWhanhee Lee氏らが、Multi-City Multi-Country(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースを用いた解析の結果を、報告した。これまでの研究では、自殺リスクは曜日によって異なることが報告されているが、研究対象地域が限定され、方法論的枠組みが不均一であったため、結果の一般化には限界があった。BMJ誌2024年10月23日号掲載の報告。  研究グループは、MCC Collaborative Research Networkのデータベースを用い、1971年1月1日~2019年12月31日における26ヵ国740地点の自殺のデータを収集した(国によってデータの期間は異なる)。

日本の頭痛外来受診患者、頭痛の種類や特徴は?

 頭痛外来を受診した患者に関する単一施設研究の報告は行われているものの、日本で実施された多施設共同研究は、これまでほとんどなかった。静岡赤十字病院の今井 昇氏らは、日本において頭痛外来を受診した患者の臨床的特徴、頭痛の種類、重症度、精神疾患の併存について多施設分析を実施し、ギャップを埋めることを目指し、本研究を実施した。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2024年10月15日号の報告。  3ヵ所の頭痛外来を受診した頭痛患者2,378例を対象に、臨床的特徴をプロスペクティブに評価した。視覚的アナログスケール(VAS)などのベースライン時の人口統計学的特徴、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)やこころとからだの質問票(PHQ-9)などの精神疾患の評価を行った。頭痛の種類は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)、その他の一次性頭痛疾患、二次性頭痛に分類した。頭痛の種類間でのパラメータを比較するため、必要に応じてKruskal-Wallis検定または共分散分析を行った。

EPA製剤など、重大な副作用に「心房細動、心房粗動」追加/厚労省

 2024年11月13日、厚生労働省はイコサペント酸エチルならびにオメガ-3脂肪酸エチルの添付文書の改訂指示を発出した。重大な副作用の項に「心房細動、心房粗動」の追記がなされる。  今回、イコサペント酸エチル、オメガ-3脂肪酸エチル投与後の心房細動、心房粗動に関連する公表文献を評価、専門委員の意見も聴取した結果、心房細動または心房粗動のリスク増加を示唆する報告があることから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。

改訂GLに追加のNSCLCへのニボルマブ+化学療法+ベバシズマブ、OS・PFS最終解析結果(TASUKI-52)/日本肺癌学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(Non-Sq NSCLC)の1次治療における、プラチナ製剤を含む化学療法+ベバシズマブへのニボルマブ上乗せの有用性を評価した国際共同第III相試験「TASUKI-52試験」の最終解析の結果が、第65回日本肺癌学会学術集会で中川 和彦氏(近畿大学病院 がんセンター長)により報告された。すでにニボルマブ上乗せにより無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が改善することが報告されており、この結果を基に『肺癌診療ガイドライン2024年版』のCQ64~66に本試験のレジメンが追加されていた。

乳がん患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン中断についてステートメント公表/日本がん・生殖医療学会

 日本がん・生殖医療学会では10月30日、「乳癌患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン内服中断、そして最終投与からの望ましい避妊期間についてのステートメント」を公表した。2023年に初回報告されたPOSITIVE試験の結果に基づき、「一定期間タモキシフェンを内服したのちに、最長2年として内服を中断して妊娠・出産を試みる場合、短期的な予後への影響はないものと考えられる」とし、最終投与からの望ましい避妊期間について以下のように推奨をまとめている。

超低出生体重児の動脈管開存症に対するカテーテル治療の短期予後は外科手術よりわずかに良好

 米国では、出生体重700g以上の動脈管開存症(PDA)に対するカテーテルによる閉塞器具が2019年に承認され、PDAに対するカテーテル治療は2018年の29.8%から2022年の71.7%へと増加している。こうした中、カテーテル治療を受けた児の短期予後は、外科手術を受けた児よりもわずかに良好であったとする研究結果が、「Pediatrics」8月号に掲載された論文で明らかにされた。  米バーモント大学のBrianna F. Leahy氏らは、2018年1月1日から2022年12月31日の間に米国の726カ所の病院でPDAに対する侵襲的な治療(カテーテル治療または外科手術)を受けた超低出生体重(VLBW)児(体重401~1,500g、または在胎週数22~29週で出生)を対象として、これら2つの治療法それぞれの短期予後について調査した。予後は、生存、入院期間、生存者の体重Zスコアの変化、早産関連の合併症(気管支肺異形成症、遅発型感染症、未熟児網膜症、壊死性腸炎または限局性腸穿孔、脳室内出血)、および退院後に必要となる医学的処置(胃瘻チューブ、各種酸素吸入、気管切開、在宅用心肺モニター;以下「退院支援」)とした。

自宅で行う脳刺激療法がうつ病の症状を軽減

 自宅で行う脳刺激療法により、中等度から重度のうつ病を安全かつ効果的に治療できることが、米テキサス大学マクガバン医学部精神医学部長のJair Soares氏らが実施した臨床試験で示された。Soares氏らによると、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と呼ばれる非侵襲的な脳刺激療法は、治療反応率とうつ病寛解率においてシャム刺激よりも優れていたという。この研究結果は、「Nature Medicine」に10月21日掲載された。Soares氏は、「この研究結果は、気分障害に苦しむ患者に、近い将来、革新的な治療法が利用可能になるかもしれないという希望をもたらすものだ」と述べている。

早期TN乳がん、多遺伝子シグネチャー活用で予後改善/BMJ

 切除可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんの予後は満足のいくものではなく、術後補助化学療法の最適化が必要とされている。中国・復旦大学上海がんセンターのMin He氏らは、開発した多遺伝子シグネチャーを用いてリスク層別化を行い、それに基づく高リスク患者に対してアントラサイクリン/タキサンベースの治療にゲムシタビン+シスプラチンを組み合わせた強化レジメンが、無病生存期間(DFS)を改善し毒性は管理可能であったことを示した。BMJ誌2024年10月23日号掲載の報告。  研究グループは2016年1月3日~2023年7月17日に、中国の7つのがんセンターで、切除可能なTN乳がん患者に対して多遺伝子シグネチャーを用いることで、最適な個別化補助療法の提供が実現可能かを評価する多施設共同第III相無作為化試験を行った。

心房細動を伴う脳梗塞後のDOAC開始、早期vs.晩期/Lancet

 心房細動を伴う虚血性脳卒中後の直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与開始時期について、早期開始(4日以内)は晩期開始(7~14日)に対して、90日時点での複合アウトカム(虚血性脳卒中の再発、症候性頭蓋内出血、分類不能の脳卒中、全身性塞栓症)発生に関して非劣性であることが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDavid J. Werring氏らOPTIMAS investigatorsが、第IV相の多施設共同非盲検無作為化エンドポイント盲検化並行群間比較試験「OPTIMAS試験」の結果を報告した。著者は、「われわれの検討結果は、心房細動を伴う虚血性脳卒中後のDOAC開始を晩期とする、現行のAHA/ASA脳卒中ガイドラインの推奨を支持するものではなかった」と述べている。Lancet誌オンライン版2024年10月24日号掲載の報告。