国立がん研究センター東病院は、2025年7月28日、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループと戦略的提携を締結。非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした新たなマルチ遺伝子検査システム「Oncomine Dx Express Test」の臨床導入を目指す。
このシステムはサーモフィッシャーサイエンティフィックの次世代シーケンサー(NGS)「Ion Torrent Genexusシステム」を用いており、高速自動解析により24時間以内に解析結果を提供可能である。これにより、進行肺がん患者の検体から複数の遺伝子を迅速に診断できるようになり、最適な精密医療の推進が期待される。
現在、進行肺がんの治療にはEGFR、ALK、ROS1、BRAF、RET、MET、HER2、KRAS、NTRK1-3などの遺伝子異常を標的とする分子標的薬が推奨されている。しかし、既存のNGS検査は結果判明までに約2~3週間かかることから、結果を確認する前に分子標的薬以外の通常の抗がん剤で治療を開始しなければならない状況もあったという。
国立がん研究センター東病院が主導する「LC-SCRUM-Asia」では、同システムの研究用プロトタイプを2020年9月から導入し、約1万1,000例の肺がん臨床検体の解析実績がある。今回の提携では、この蓄積データを活用し、「Oncomine Dx Express Test」の臨床性能を検証することで、早期の臨床応用、薬事承認、保険収載、そして全国的な普及を目指す。
今回の提携により、日本における肺がんのプレシジョンメディシンを一層推進するものと期待される。
(ケアネット 細田 雅之)