中等症~重症の活動期クローン病患者において、プラセボおよびウステキヌマブと比較して、グセルクマブ(ヒト型抗ヒトIL-23 p19モノクローナル抗体)の静脈内投与による導入療法後、同薬の皮下投与による維持療法を行うアプローチは、有効性の複合エンドポイントが有意に優れ、忍容性も良好で安全性プロファイルは潰瘍性大腸などでの承認時のデータと一致することが、カナダ・カルガリー大学のRemo PanaccioneらGALAXI 2 & 3 Study Groupが実施した「GALAXI-2およびGALAXI-3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年7月17日号に掲載された。
同一デザインの2つの第III相無作為化treat-through試験
GALAXI-2・3試験は、試験期間48週間のプラセボおよびウステキヌマブ(実薬)を対照とする同一デザインの第III相二重盲検無作為化トリプルダミーtreat-through試験であり、2020年1月~2023年10月に日本を含む40ヵ国257施設で参加者の無作為化を行った(Johnson & Johnsonの助成を受けた)。
年齢18歳以上、3ヵ月以上続く中等症~重症の活動期クローン病の患者を対象とし、(1)クローン病活動指数(CDAI)スコアが220~450点で、1日の平均排便回数が3回を超えるか、または1日の平均腹痛スコアが1点を超える、(2)スクリーニング時の内視鏡検査でクローン病の証拠があり、簡易版クローン病内視鏡スコア(SES-CD)が6点以上、(3)回結腸の5つのセグメントのいずれかに潰瘍が存在することと定義した。
これらの患者を、次の4つの群に2対2対2対1の割合で無作為に割り付けた。(1)グセルクマブ200mg(0、4、8週目、静脈内投与)、同200mg(12~44週目、4週ごと、皮下投与)、(2)グセルクマブ200mg(0、4、8週目、静脈内投与)、同100mg(16~40週目、8週ごと、皮下投与)、(3)ウステキヌマブ約6mg/kg(0週目、静脈内投与)、同90mg(8~40週目、8週ごと、皮下投与)、(4)プラセボ(0、4、8週目、静脈内投与)、同(12~44週、4週ごと、皮下投与)。
プラセボ群のうち、12週目の時点で臨床的奏効が得られなかった患者は盲検下にウステキヌマブによる救済療法(12~44週、8週ごと、皮下投与)を受け、他の群の患者は12週時の奏効の有無にかかわらず当該治療を継続した。
主要複合エンドポイントとして、(1)12週時の臨床的奏効(CDAIスコアのベースラインから100点以上の低下、またはCDAIスコア150点未満)と48週時の臨床的寛解(CDAIスコア150点未満)、(2)12週時の臨床的奏効と48週時の内視鏡的奏効(SES-CDスコアのベースラインから50%以上の改善、またはSES-CDスコアが2点以下)を評価した。
ウステキヌマブ群との比較でも良好な結果
1,021例(GALAXI-2試験508例[4群の年齢中央値の範囲:32.0~36.0歳、男性の割合の範囲:48~60%]、GALAXI-3試験513例[33.0~35.0歳、57~65%])を主解析の対象とした。
12週時の臨床的奏効と48週時の臨床的寛解の達成率は、GALAXI-2試験ではプラセボ群が12%(9/76例)であったのに対し、グセルクマブ200mg群は55%(80/146例)(補正後群間差:43%[95%信頼区間[CI]:32~54]、p<0.0001)、同100mg群は49%(70/143例)(38%[27~49]、p<0.0001)といずれの投与法とも有意に良好で、GALAXI-3試験でも同様の結果であった(13%[9例]vs.48%[72例]、補正後群間差:35%[95%CI:24~46]、p<0.0001/13%[9例]vs.47%[67例]、34%[23~45]、p<0.0001)。
また、12週時の臨床的奏効と48週時の内視鏡的奏効の達成率は、GALAXI-2試験ではプラセボ群の5%(4例)に比べ、グセルクマブ200mg群は38%(56例)(補正後群間差:33%[95%CI:24~42]、p<0.0001)、同100mg群は39%(56例)(34%[24~43]、p<0.0001)であり、いずれの投与法とも有意に優れ、GALAXI-3試験でも同様の結果が得られた(6%[4例]vs.36%[54例]、補正後群間差:31%[95%CI:21~40]、p<0.0001/6%[4例]vs.34%[48例]、28%[19~37]、p<0.0001)。
2つの試験の統合解析では、ウステキヌマブ群に比べ2つのグセルクマブ群とも、4つの長期(48週)的な有効性の主な副次エンドポイント(内視鏡的奏効、内視鏡的寛解[SES-CDスコアが4点以下、同スコアのベースラインから2点以上の低下、SES-CDの個々の項目のサブスコアがいずれも1点を超えない]、臨床的寛解と内視鏡的奏効の複合、深い寛解[臨床的寛解かつ内視鏡的寛解])がいずれも有意に良好だった。
クローン病悪化とCOVID-19が多かった
2つの試験で48週までに、重篤な有害事象がグセルクマブ200mg群で21例(7%、発生率9.7件/100人年)、同100mg群で32例(11%、14.9件/100人年)、ウステキヌマブ群で35例(12%、18.4件/100人年)、プラセボ群(ウステキヌマブによる救済療法を受けた患者を含む)で23例(15%、23.8件/100人年)に発現した。
試験薬の投与中止に至った有害事象は、それぞれ19例(6%)、21例(7%)、22例(7%)、17例(11%)に、重篤な感染症は、3例(1%)、1例(<1%)、12例(4%)、6例(4%)に認めた。48週までに10%超で報告された最も頻度の高い有害事象は、クローン病の悪化および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だった。全体で死亡例の報告はなかった。
著者は、「グセルクマブの有益性は、生物学的製剤による治療を受けていない患者や、生物学的製剤に不耐または効果不十分の既往歴を有する難治性の集団でも明らかであった」「treat-throughの研究デザインは、特定の時点における臨床アウトカムが維持療法の要件とはならないため、これまでの研究に比べ実臨床により近いものとなっている」「このデザインが寄与した重要な点は、導入療法で臨床的奏効が得られなかった患者のかなりの割合が、グセルクマブの皮下投与でアウトカムが改善したことである」としている。
(医学ライター 菅野 守)