小細胞肺がんへのタルラタマブ、プラチナ製剤後の2次治療に有効(DeLLPhi-304)/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/08/04

 

 白金製剤ベースの化学療法の施行中または終了後に病勢が進行した小細胞肺がん(SCLC)の2次治療において、化学療法と比較してタルラタマブ(二重特異性T細胞誘導[BiTE]分子製剤)は、全生存期間(OS)が有意に延長し、無増悪生存期間(PFS)も有意に良好で、がん関連呼吸困難や咳嗽が少ないことが、ギリシャ・Henry Dunant Hospital CenterのGiannis Mountzios氏らDeLLphi-304 Investigatorsが実施した「DeLLphi-304試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年7月24日号で報告された。

30ヵ国の第III相無作為化試験の中間解析

 DeLLphi-304試験は、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有効性と安全性の評価を目的とする第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2023年5月~2024年7月に日本を含む30ヵ国166施設で参加者を登録した(Amgenの助成を受けた)。今回は、事前に規定された中間解析の結果が報告された(データカットオフ日:2025年1月29日)。

 年齢18歳以上、白金製剤ベースの化学療法による1次治療中または終了後に病勢が進行したPS0~1のSCLC患者を対象とした。脳転移を有する場合も症状がなく、病態が臨床的に安定していれば組み入れ可能とした。被験者を、タルラタマブまたは化学療法薬(トポテカン[和名:ノギテカン]、lurbinectedin、アムルビシンから選択[日本での選択肢はアムルビシンのみ])の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目はOSであった。

客観的奏効、奏効期間も良好

 509例を登録し、タルラタマブ群に254例、化学療法群に255例を割り付けた。化学療法は、185例(73%)でトポテカン、47例(18%)でlurbinectedin、23例(9%)でアムルビシンが投与された。ベースラインの全体の年齢中央値は65歳(範囲:20~86)で、45%が脳転移を、35%が肝転移を有しており、71%が過去にPD-1またはPD-L1阻害薬による治療を受けていた。

 ITT集団におけるOS中央値は、化学療法群が8.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.0~10.2)であったのに対し、タルラタマブ群は13.6ヵ月(11.1~未到達)と有意に延長した(死亡の層別化ハザード比[HR]:0.60[95%CI:0.47~0.77]、p<0.001)。6ヵ月OS率は、タルラタマブ群が76%、化学療法群が62%、12ヵ月OS率はそれぞれ53%および37%だった。

 また、12ヵ月時のPFSの境界内平均生存期間(restricted mean survival time:RMST)は、化学療法群の4.3ヵ月に比べ、タルラタマブ群は5.3ヵ月であり有意に優れた(p=0.002)。無作為化から3ヵ月の前後のイベント数で重み付けした、病勢進行または死亡の区分加重平均HRは0.71(95%CI:0.59~0.86)であった。6ヵ月PFS率は、タルラタマブ群が31%、化学療法群が23%、12ヵ月PFS率はそれぞれ20%および4%だった。

 客観的奏効率は、タルラタマブ群35%(完全奏効3例[1%]、部分奏効86例[34%])、化学療法群20%(同0例、52例[20%])、奏効期間中央値はそれぞれ6.9ヵ月および5.5ヵ月であった。

サイトカイン放出症候群、ICANSはほとんどが軽度

 患者報告アウトカムのうち、ベースラインから19週までに化学療法群に比べタルラタマブ群で有意な改善を示したものとして、呼吸困難(症状スコアの変化量の群間差:-9.14点[95%CI:-12.64~-5.64]、p<0.001)と、咳嗽(咳スコア低下のオッズ比:2.04[95%CI:1.17~3.55]、p=0.01、咳スコア低下のリスク比:1.74[95%CI:0.99~2.49])を認めた。

 Grade3以上の有害事象(54%vs.80%)、投与中止に至った有害事象(5%vs.12%)は、いずれもタルラタマブ群のほうが低頻度であった。治療関連のGrade3以上の有害事象(27%vs.62%)、投与中止に至った治療関連の有害事象(3%vs.6%)もタルラタマブ群で少なかった。また、治療関連の重篤な有害事象は、タルラタマブ群の28%、化学療法群の31%に認めた。

 タルラタマブ群では、サイトカイン放出症候群を56%に認めたが、多くがGrade1(42%)または2(13%)で、Grade3は1%、Grade4/5は発現しなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はタルラタマブ群の6%(15例)にみられ、1例(Grade5)を除きGrade1または2であった。

 著者は、「この再発例を対象とした研究の結果は、より早期の治療ラインにおいてタルラタマブの評価を行うことの重要性を強調しており、そのような試験(DeLLphi-305、DeLLphi-306、DeLLphi-312)が進行中である」としている。

(医学ライター 菅野 守)