不眠症や不安症の治療によく用いられるベンゾジアゼピン(BZD)は、スペインでの使用が増加しており、濫用や依存のリスクに対する懸念が高まっている。スペイン・Miguel de Cervantes European UniversityのCarlos Roncero氏らは、医療従事者におけるBZDおよびその他の向精神薬の使用状況を調査し、その使用率、関連因子、そしてCOVID-19パンデミック後のメンタルヘルス問題との関連性を評価した。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2025年6月16日号の報告。
Salamanca University Healthcare Complex(CAUSA)の医療従事者1,121人を対象に、2023年3月〜2024年1月に匿名オンライン調査を実施した。完全解答が得られた685人のデータを分析した。不眠症、不安症、うつ病の評価には、不眠症重症度質問票(ISI)および患者健康アンケート(PHQ-4)を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・回答者のうち、睡眠薬を使用していると解答した割合は23.8%、そのうち27.8%は処方箋なしと回答した。
・さらに、うつ病または不安症の治療薬を使用していた人の割合は14.7%、処方箋なしと回答したのは、わずか0.6%であった。
・睡眠薬の使用と関連していた因子は、高齢、不眠症、不安症、うつ病、心理療法または精神科治療、COVID-19の後遺症、睡眠障害の診断であった。
・夜勤は、男性では睡眠薬の使用増加と関連が認められたが、女性では認められなかった。
・これらの薬剤の使用は、QOL低下や仕事のパフォーマンス低下との関連が認められた。
著者らは「BZDの使用、とくに自己判断での使用は、医療従事者の間で広くみられており、一般集団よりも高かった。これらの結果は、向精神薬の使用に対処し、不眠症に対する他の薬理学的および非薬理学的な代替療法の促進、脆弱集団に対するメンタルヘルス支援の強化などターゲットを明確にした介入の必要性を浮き彫りにしている」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)