日本語でわかる最新の海外医学論文|page:459

うつ病から双極性障害への転換に対する早期予測因子~コホート研究

 うつ病と双極性障害は、どちらも主要な気分障害であるが、治療戦略や予後が異なる。双極性障害患者では、初期でみられるうつ症状によりうつ病と診断されうることが、その後の治療結果に影響を及ぼす可能性がある。これまでの研究では、うつ病と診断された患者のうち、時間経過とともに双極性障害を発症する患者が少なくないと示唆されている。このような双極性障害は、治療抵抗性うつ病の一因となる可能性がある。台湾・国立中正大学のYa-Han Hu氏らは、人口ベースのコホート研究を実施し、10年間のフォローアップ期間中にうつ病から双極性障害へ診断が変更された患者の割合およびその危険因子について調査を行った。さらに、うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルの開発を試みた。JMIR Medical Informatics誌2020年4月3日号の報告。

ペースメーカー・ICDの再利用、感染・死亡リスクは高くない/NEJM

 ペースメーカーや除細動器の入手は、医療資源が限られている地域では大きな問題となる。カナダ・モントリオール心臓研究所のThomas F. Khairy氏らは、医療サービスが十分でない国で、再滅菌したペースメーカーや除細動器を再使用した患者と、新しいデバイスを使用したカナダの対照群の患者の比較を行い、2年後の感染症やデバイス関連死の発生に有意な差はなかったと報告した。研究の成果は、NEJM誌2020年5月7日号に掲載された。富裕国の患者から死後に摘出した植込み型心臓デバイスを再滅菌して再使用する試みが進められているが、感染リスクが不確実であることが懸念されている。

降圧薬の処方内容はCOVID-19予後に影響するか?(解説:冨山博史氏)-1231

COVID-19発生から半年近くが過ぎようとしている。しかし、まだまだ収束そして終息にも時間を要する。COVID-19では肺炎に加え、脳心血管疾患、血栓症など生命に影響する重大な合併症を発生する。そうした合併症は、高齢者や脳心血管疾患・悪性疾患など基礎疾患を有する症例で多い。ゆえに、そうした症例における合併症発生予防に細心の注意を払う必要がある。中国では高血圧症例でCOVID-19症例の予後が不良であることが報告された1)。SARS-CoV-2ウイルスの細胞内侵入にはangiotensin converting enzyme 2(ACE2)が重要な役割を果たす。このため、renin-angiotensin系に影響する降圧薬ACE inhibitor(ACEi)やangiotensin II receptor blocker(ARB)がACE2発現に影響し、ウイルス侵入を増悪させることが懸念されていた。しかし、懸念はあくまで仮説であり、3月13日発表の欧州高血圧学会Position Statement of the ESC Council on Hypertension on ACE-Inhibitors and Angiotensin Receptor Blockersでは、同危険性の十分な根拠がないため両降圧薬のむやみな中止・変更は控えるように推奨された。

SARS-CoV-2 は便中に長く排泄される(解説:浦島充佳氏)-1230

対象は2020年1月から3月の間、中国・浙江省にて痰ないし咽頭深くの粘液より採取した検体にてPCRを用いて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断を受け入院した連続症例96例(軽症:22例、重症:74例)である。SARS-Cov-2ウイルスRNA量を、呼吸器、便、血清、尿検体のウイルス量のCt値で定量解析している。SARS-CoV-2ウイルスが便中に最も長く検出されたことは注目に値する。

ハンセン病、低中所得国では家庭内接触者の検出介入が必須

 歴史的に最も古くから知られる感染症といわれるハンセン病は、今では治療法が確立し、最も感染力の弱い感染症ともいわれている。ブラジル・Fundacao Oswaldo CruzのCamila Silveira Silva Teixeira氏らは、ハンセン病の発生は世界的には減少傾向にあるが、低中所得国では依然として対策が必要な感染症であるとして、同国における新規症例の状況と家庭内感染の実態を、1億人規模の住民ベースのコホート研究から明らかにした。ハンセン病患者の家庭内接触者(とくに多菌型ハンセン病患者が家族にいる接触者、および高齢の接触者)は、ハンセン病のリスクが増大する可能性が示唆されたという。結果を踏まえて著者は「コンタクトスクリーニング(接触者の検出)といった保健衛生上の介入が、とくにそのような集団をターゲットとして必要と思われる」とまとめている。JAMA dermatology誌オンライン版2020年4月15日号掲載の報告。

高齢者のがん、発症前に歩行速度が急激に減少

 高齢者におけるがん診断前と後におけるサルコペニアの尺度の減少度をがんではない高齢者と比較した場合、診断前に歩行速度の減少度が大きいことがわかった。米国・アラバマ大学のGrant R. Williams氏らが報告した。JAMA Network Open誌2020年5月1日号に掲載。  著者らは、サルコペニアの3つの尺度(四肢除脂肪量[ALM]、握力、歩行速度)について、がんと診断された高齢者の診断前の減少度と診断後の減少度を、がんではない高齢者の減少度と比較し、さらにサルコペニアの尺度とがん患者の全生存率および主な身体障害との関連を評価した。

COVID-19の流行による性生活の変化

  トルコ・Esenler Maternity and Children's HospitalのBahar Yuksel氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行がトルコ人女性の性行動にどのように影響するのかを評価するため、COVID-19流行前に行われた研究データと流行中のデータを用いて観察研究を行った。その結果、性的欲求と性交頻度はCOVID-19流行中に大幅に増加したが、性生活の質は大幅に低下したことが明らかになった。さらに、COVID-19の流行は妊娠に対する欲求の減少、女性の避妊低下、および月経不順の増加に関連することが示された。International Journal of Gynecology & Obstetrics誌オンライン版5月11日号掲載の報告。

SSRI治療抵抗性強迫症に対する抗精神病薬増強療法の比較

 強迫症(OCD)は、人口の2.5%に影響を及ぼす原因不明の慢性的な精神疾患である。強迫症に対する従来の治療は、適切な治療反応が認められている。また、一部の研究において、抗精神病薬、グルタミン酸作動薬、リチウム、buspironeなどの増強療法により、治療反応の改善が報告されている。イラン・Mashhad University of Medical SciencesのAli Talaei氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)治療抵抗性OCD患者に対する抗精神病薬増強療法としてのアリピプラゾールおよびクエチアピンの有効性、安全性の評価を行った。Canadian Journal of Physiology and Pharmacology誌2020年4月号の報告。

看護施設のCOVID-19の感染拡大を阻止するポイント/NEJM

 高度看護施設内では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症が急速に拡大する可能性があるという。米国・疾病管理予防センター(CDC)COVID-19緊急対策部のMelissa M. Arons氏らは、2020年2月下旬にCOVID-19の集団発生を認めた同国ワシントン州キング郡の高度看護施設でSARS-CoV-2の伝播状況を調査し、入所者の感染の同定における、症状に基づくスクリーニングの妥当性を評価した。その結果、施設内でのSARS-CoV-2の迅速かつ広範囲の伝播が実証されるとともに、検査結果が陽性であった入所者の半数以上が検査時に無症状であり、感染を広める原因となった可能性が示唆された。また、症状にのみ重点を置いた感染制御戦略は、感染の防止には十分でなく、検査に基づく戦略の導入を考慮する必要があることがわかった。NEJM誌オンライン版2020年4月24日号掲載の報告。

コロナウイルス感染と血栓症の関係(解説:後藤信哉氏)-1229

本稿執筆時点で日本では大きく問題とされていないが、中国、米国、欧州ではコロナウイルス感染と血栓イベントの深い関係が注目されている。血栓イベント増加の主要原因として、コロナウイルスの血管内皮細胞への浸潤などが想定されているがメカニズムの詳細は未知である。確かに、本稿の著者に指摘されてみればa-PTTは延長していることが多い。PT、a-PTTが延長してD-dimerの高い症例が多いというのが筆者の認識であるが、ICUに入院する時点にてヘパリンを投与されている症例が多いのでヘパリンの影響かと思っていた。

低分子ヘパリン皮下注射の選択のない日本に応用できるか?(解説:後藤信哉氏)-1228

静脈血栓症は難しい。抗凝固薬の使用が一般化したのは肺血栓塞栓症の生命予後改善効果確認後であった。新規の経口抗凝固薬の適応拡大試験を施行するのであれば、「生命予後」を有効性の一次エンドポイントとしたい。しかし、重症例をランダム化比較試験に取り込むことは難しい。静脈血栓の再発などを代替的エンドポイントにせざるを得ない。静脈血栓症の定義は難しい。客観的に確認された血栓があっても予後には影響がないかもしれない。本研究のイベントの詳細がsupplementに記載されているが、悪性腫瘍の診断のために施行したCTにて見いだされた血栓なども含まれる。無症候の静脈血栓の臨床的意味は正直わからない。しかも、open labelの試験である。アピキサバンの適応拡大を目指した試験としての意味はあるかもしれないが、臨床的意味は不明とせざるを得ない。

新型コロナ陽性率とBCG接種歴の関係は?/JAMA

 一時期、BCGワクチン接種(以下、BCG接種)をしている人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりにくい、というニュースが世界中を賑わした。ドイツやアメリカではBCG接種によるCOVID-19予防の有用性を検証するために臨床試験も始まっており、動向が気になるところである。このような状況に先駆け、今回、イスラエル・テルアビブ大学のUri Hamiel氏らは「小児期のBCG接種が成人期のCOVID-19に対して保護効果があるという考えを支持しない」という研究結果を発表。本研究で小児期のBCG接種群と非接種群での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の結果割合が類似していたことを明らかにした。ただし、重症者の症例数が少ないため、BCG接種状況と疾患重症度との関連については結論付けられないとしている。JAMA誌オンライン版5月13日号のリサーチレターに報告した。

化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate-9LA)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2020年5月13日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法に化学療法2サイクルを追加した併用療法が、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療薬として、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある生存ベネフィットを示した第III相CheckMate-9LA試験の結果を公表。化学療法と比較して、良好な全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)および奏効率(ORR)を示した。

小児ADHDに関連する食事パターン~メタ解析

 注意欠如多動症(ADHD)は、世界中の小児にみられる慢性的な精神疾患である。イラン・Shahid Sadughi University of Medical SciencesのElham Shareghfarid氏らは、小児の食事パターンとADHDとの関連について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Clinical Nutrition ESPEN誌2020年4月号の報告。  Google Scholar、SCOPUS、ISI Web of science、PubMedなどのデータベースより2017年6月までの文献を検索し、ADHD児における食事パターンや食物摂取に関する研究を抽出した。達成された相対リスク(RR)およびオッズ比(OR)については、主な食事パターンのアドヒアランスの最大と最小を比較した。異質性は、コクランのQ検定およびI2検定により評価した。

DS-8201のHER2陽性胃がん、FDAブレークスルーセラピー指定に/第一三共

 第一三共とアストラゼネカは、2020年5月11日、トラスツズマブ デルクステカン(開発コード:DS-8201)が、米国食品医薬品局(FDA)よりHER2陽性の再発あるいは転移のある胃がん治療を対象としてブレークスルーセラピー指定を受けたと発表した。  今回の指定は、トラスツズマブを含む2つ以上の前治療を受けたHER2陽性の進行・再発胃腺がん患者または胃食道接合部腺がん患者を対象とした第II相臨床試験(DESTINY-Gastric01)および日米共同第I相臨床試験の解析結果に基づくもの。第II相臨床試験(DESTINY-Gastric01)の結果は、本年5月下旬に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定である。

心血管疾患を持つCOVID-19患者、院内死亡リスク高い/NEJM

※本論文は6月4日に撤回されました。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心血管疾患を有する集団で過度に大きな影響を及ぼす可能性が示唆され、この臨床状況におけるACE阻害薬やARBによる潜在的な有害作用の懸念が高まっている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らは、国際的なレジストリに登録された入院患者8,910例(日本の1施設24例を含む)のデータを解析し、基礎疾患として心血管疾患を有するCOVID-19患者は院内死亡のリスクが高いことを示した。また、院内死亡へのACE阻害薬およびARBの有害な影響は確認できなかったとしている。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。

重症AKIの腎代替療法、開始遅延でも死亡率に影響なし/Lancet

 生命を脅かす合併症がない重症の急性腎障害(AKI)患者への腎代替療法(RRT)の開始時期については、活発な議論が続いている。フランス・AP-HP Avicenne HospitalのStephane Gaudry氏らは、RRTの緊急適応のない重症AKI患者において、RRTを待機的に開始する遅延的戦略は、早期開始戦略と比較して生存への影響に差はなく、緊密な患者モニタリングの下で安全に延期が可能であることを示した。研究の詳細は、Lancet誌2020年5月9日号に掲載された。RRTの早期開始により、代謝異常や、死亡増加に関連する他の合併症のコントロールが改善する可能性があるが、医原性の合併症(低血圧症、出血、感染症、低体温症)をもたらす可能性がある。一方、RRTの開始を意図的に遅らせることで、腎機能が自然に回復するまでの時間を確保でき、RRTの必要性を除去する可能性があるという。

脳内大血管閉塞に対するtenecteplaseの至適用量は?(解説:内山真一郎氏)-1227

tenecteplaseはアルテプラーゼから遺伝子改変により作成された血栓溶解薬であり、アルテプラーゼより半減期が長く、フィブリン特異性も高い。海外のガイドラインではアルテプラーゼの代用薬として記載されているが、日本では開発も承認もされていない。オリジナルのEXTEND-IA TNK試験では、0.25mg/kgのtenecteplaseはアルテプラーゼと比べて再灌流と臨床転帰が優れていたという結果が示されている。そこで、このPart 2試験では、脳内大血管閉塞例において血栓回収療法前に投与された0.40mg/kgのtenecteplaseが0.25mg/kgのtenecteplaseより優れているかどうかをPROBE試験により検討したが、0.40mg/kgが0.25mg/kgより有効であるという結果は示されなかったので、tenecteplaseの至適用量は0.25mg/kgであるというのが本試験の結論である。

偽サイトに関する注意喚起/日本医師会

 5月14日、日本医師会ホームページになりすました偽サイトが作られていることが発覚した。14日16時時点で、偽サイトを悪用した攻撃などは確認できていないが、今後、当該偽サイトを利用して個人情報などを不正に奪取するような攻撃およびその被害が発生する可能性があるとして、日本医師会が注意喚起を行っている。  外部から日医ホームページ(https://www.med.or.jp/)にアクセスする際には、リンクにポインタを置く、アドレス欄をよく見るなど、ドメイン名を必ず確認するよう注意していただきたい。

日本人統合失調症患者におけるブレクスピプラゾール切り替えの安全性と有効性

 東京女子医科大学の石郷岡 純氏らは、日本人統合失調症患者200例を対象に行ったブレクスピプラゾール単剤療法切り替えの試験データを用いて、事後分析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年4月15日号の報告。  試験期間は8週間、4週間の切り替えフェーズと4週間の切り替え後フェーズで構成されている。ブレクスピプラゾールへの切り替えスケジュールは、最初に1mg/日で投与を開始し、第4週目までに2mg/日まで増量した。それまでに使用されていた抗精神病薬は、第3週より徐々に減量し、第4週目までに中止した。ブレクスピプラゾールの投与量は、CGI-I基準に従い、最大4mg/日まで増量可能とした。