第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」を策定/日本糖尿病学会

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/27

 

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」を策定し、同学会のホームぺージで公開した。

 本計画は、増加を続ける糖尿病患者の歯止めと診療の進歩への寄与などを盛り込んで、2004年より策定されているもの。第3次計画では、糖尿病予備群の数の減少、健康寿命の延伸、わが国独自の糖尿病の疫学・臨床データの蓄積、専門知識を持つさまざまな職種の人材の育成などが予測される成果として標榜され、検証されている。

 第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」では、同学会作成委員会(委員長:綿田 裕孝)を中心に作成され、次の2項目を具体的な目標として掲げている。

 1)糖尿病患者と非糖尿病患者の寿命の差をさらに短縮させる
 2)糖尿病患者の生活の質(QOL)を改善させる

 これらについて「本計画を教育などさまざまな場面で活用いただきたい」と委員会では一読を呼び掛けている。

1,000万通りの個別化医療構築にむけて

 今回の計画では、糖尿病患者のQOLを維持・改善させ、非糖尿病者との寿命の差を短縮させるために、個々の患者の病態と置かれているさまざまな状況を考慮した「個別化医療の推進」が不可欠としている。そこで、併存疾患の病態とその進行度を総合的に把握する方法の開発、患者の置かれている状況にもとづく、血糖コントロール目標および動脈硬化性疾患の危険因子などのコントロール目標を個別設定し、食事、運動、薬物療法を含む最適な治療レシピの構築や効果的な新規治療法の確立を目指すとしている。
 また、「J-DREAMS」など蓄積された診療データからより細かい患者ごとの血糖コントロール目標値の設定や将来的には治療シミュレーションを示すことで、複数の適切な治療が提示できるようなシステムをつくり、1,000 万通りの個別化医療の構築を目指すとしている。

将来の糖尿病対策を担う人材の育成にむけて

 計画の達成には、糖尿病専門医、看護師、栄養士、理学療法士を中心とした医療スタッフのみならず合併症予防のために他科診療科との連携が必要不可欠となる。また、先述の包括的データベースによるエビデンスの構築では基礎研究者、医療データの活用ができる人材育成が喫緊の課題としている。
 そのために糖尿病専門医、研修指導医の育成はもとより、国際的にわが国発の糖尿病に関する論文数が減少していることに憂慮し、学会などでも若手研究者の奨励賞や研究助成金の充実、地方会などでの発表の奨励などを行うほか、ビッグデータの利活用のできる人材の育成のために日本医療情報学会や日本公衆衛生学会などとも連携し、人材育成を行うとしている。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にも言及した今後の展開

 国民への啓発と情報発信は、糖尿病の発症予防、合併症への進展防止に以前より行われてきた。現在でも糖尿病予備群の増加、高齢者の患者も多くなっていることから市民公開講座、各種リーフレット、ホームページなどを通じて引き続き情報発信を行うとともに、糖尿病への偏見や誤った知識の是正などにも取り組んでいくとしている。

 最後に「新興・再興感染症の脅威と糖尿病」として、糖尿病は肥満症、心血管障害などと同様にCOVID-19の重症化リスク因子と想定されることを考慮し、国際協力をしつつエビデンスを確立する必要があるとしている。また、患者や患者家族が不確かな情報で不利益を被らないように、COVID-19に関しても正しい知識を広く周知していくとしている。具体的には、エビデンスの収集と整理、ワクチンなどの有効策ができた場合の普及と啓発、迅速な症例把握のための症例登録システムの樹立などを含め、COVID-19以外の新興感染症が流行した場合に迅速に対応ができ、糖尿病患者が安心して生活できる体制構築にむけて準備を進めると述べている。

(ケアネット 稲川 進)

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