日本語でわかる最新の海外医学論文|page:456

EGFR変異陽性NSCLCに対するオシメルチニブのアジュバント(ADAURA)/ASCO2020

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブによる、Stage IB〜IIIAEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法の有効性と安全性を評価する第III相無作為化二重盲検比較試験ADAURAが行われた。この試験は、独立データ監視委員会の勧告に従い、有効性により早期に盲検解除されている。中間解析の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)において、米国・Roy Herbst氏が報告した。

PD-L1陽性TN乳がん1次治療、ペムブロリズマブ+化療でPFS改善(KEYNOTE-355)/ASCO2020

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療で、化学療法にペムブロリズマブを追加することにより、無増悪生存期間(PFS)が有意に改善することが、無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-355試験で示された。スペイン・IOB Institute of Oncology, Quiron Group/Vall d’Hebron Institute of OncologyのJavier Cortes氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。

ディズニー映画、がん患者のQOLに寄与

 腫瘍学において、治療効果に加え、有害事象および生活の質(QOL)の評価が重要になってきている。オーストリア・ウィーン医科大学のSophie Pils氏らは、がん化学療法中のディズニー映画観賞は婦人科がん患者の感情的機能、社会的機能、および疲労症状の改善に関連している可能性があることを明らかにした。JAMA Network Open 5月1日号掲載の報告。  研究者らは、2017年12月~2018年12月、がん化学療法中にディズニー映画の鑑賞と、感情的・社会的機能および疲労症状との関連の評価を目的とし、オーストリア・ウィーンのcancer referral centerにて無作為化試験を実施。

統合失調症と自閉スペクトラム症の判別に~脳機能的結合からのアプローチ

 統合失調症スペクトラム障害(SSD)と自閉スペクトラム症(ASD)との関係については長年議論されてきたが、いまだに解明には至っていない。京都大学の吉原 雄二郎氏らは、ASDとSSDの関係を定量化および視覚化するために、安静時機能結合MRIに基づき健常対照群(HC)から患者を判別する両方の分類手法を用いて調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年4月17日号の報告。  信頼性の高いSSD分類手法を開発するため、慢性期SSD患者を含む京都大学医学部附属病院のデータセット(170例)よりSSD固有の機能的接続を自動的に選択する高度な機械学習アルゴリズムを適応した。SSD分類手法の一般化の可能性は、2つの独立した検証コホートと初回エピソード統合失調症患者を含む1つのコホートによりテストした。SSD分類手法の特異性は、ASDとうつ病の2つの日本人コホートによりテストした。分類手法の機能的結合の加重線形総和は、疾患の神経分類の確実性を表す生物学的ディメンションを構成した。以前に開発したASD分類手法をASDディメンションとして使用した。SSD、ASD、HC群の分布は、SSDおよびASDの生物学的ディメンションで調査した。

ヒドロキシクロロキンで新型コロナ陰性化せず、有害事象は3割/BMJ

 主に軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)を併用しても、標準治療単独に比べ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の陰性化の割合に差はなく、ウイルス除去効果は改善されないことが、中国・上海交通大学医学院のWei Tang氏らの検討で示された。また、HCQ併用で有害事象の発生率も増加した。研究の成果は、BMJ誌2020年5月14日号に掲載された。HCQは、COVID-19の治療薬としてin vitro研究や臨床試験で有望なデータが得られているが、その効果は十分に明確化されていないにもかかわらず、中国のガイドラインでは適応外使用が推奨されているという。また、HCQは、世界的に注目を集めたこともあり、その負の側面が目立たなくなっているが、マラリアやリウマチ性疾患の治療では、網膜症や消化器・心臓への副作用が報告されている。

ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法限定追加レジメン、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate9LA)/ASCO2020

  PD-L1とCTLA-4阻害薬は補完的に働く。また、PD-L1阻害薬と化学療法の併用は複数の臨床研究で生存ベネフィットが示されている。非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療において、PD-L1阻害薬ニボルマブとCTLA-4阻害薬イピリムマブに2週間の限定化学療法を追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LAの中間解析の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)でMartin Reck氏が発表した。

双極性障害外来患者に対する薬理学的治療~20年の変遷

 双極性障害に対する薬理学的治療オプションは、1990年代にいくつかの第2世代抗精神病薬が承認を受けたことにより、この20年間で増加した。米国・コネチカット大学のTaeho Greg Rhee氏らは、双極性障害外来患者のマネジメントにおける薬理学的治療の傾向について報告を行った。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年4月21日号の報告。  1997~2016年のNational Ambulatory Medical Care Survey(NAMCS)の全国データを用いて、プライマリ診断でリストアップされた精神科を受診した双極性障害患者における、気分安定薬、第1世代および第2世代抗精神病薬、抗うつ薬の使用傾向について調査を行った。年齢、性別、人種/民族、保険を含む共変量とともにロジスティック回帰モデルを用いて、統計学的に有意な傾向を特定した。

BRCA変異HER2-乳がんへのveliparib追加、HR+でもTNでもPFS改善(BROCADE3)/ESMO BC2020

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬veliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験のサブグループ解析で、ホルモン受容体(HR)陽性でもトリプルネガティブ(TN)でも無増悪生存期間(PFS)を改善させることが示された。カナダ・Centre Hospitalier de l'Universite de MontrealのJean-Pierre Ayoub氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目であるPFSについては、すでに2019年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で有意に改善することが報告されている。また、HRの有無によるPFSの解析は事前に規定されていた。

経皮的電気的迷走神経刺激によるAF抑制効果は?【Dr.河田pick up】

 低レベルの経皮的な迷走神経耳介枝の刺激は、心房細動(AF)を停止させることがわかっているが、その長期的な作用については不明である。この研究は、米国・オクラホマ大学のSunny Po氏らが、シャムコントロール、二重盲検、無作為化比較試験で、発作性AFに対する長期間の耳珠の低レベル電気刺激(LLTS: low level tragus stimulation)の効果を調べたものである。JACC誌2020年3月号に掲載。  本研究では、患者53例をLLTS(20Hz, 不快なレベルを1mA下回るレベル)が耳珠に取り付けたクリップから与えられた群(治療群、n=26)と、耳たぶに取り付けたクリップから与えられた群(対照群、n=27)に分け、6ヵ月間、1日1時間の刺激が与えられた。非侵襲的な持続性の心電図モニターを用いて、2週間の期間におけるAFの頻度をベースライン、3ヵ月、6ヵ月の時点で評価した。また、心拍変動と炎症性サイトカインを評価するため、5分間の心電図と血清が測定された。

切除可能NSCLC、アテゾリズマブ+化学療法は新たな術前治療の選択肢/Lancet Oncol

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の新たな術前補助化学療法として、PD-L1阻害薬アテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した第II相試験の結果が示された。米国・コロンビア大学のCatherine A. Shu氏らによる多施設共同単群試験で、高い病理学的奏効率が得られ、忍容性も良好であったという。著者は「切除可能NSCLC患者にとってアテゾリズマブ+化学療法は、新たな補助化学療法となりうることが示された」と述べている。NSCLCの約25%は切除可能なStageIB~IIIAであり周術期化学療法が標準治療だが、この治療戦略は生存期間をわずかに改善するのみである。一方で免疫チェックポイント阻害薬が転移NSCLCに有効であることから、著者らは本検討を行った。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月7日号掲載の報告。

出生前母体ステロイド治療、子供の精神・行動障害が増加/JAMA

 出産前の母親への副腎皮質ステロイド治療によって、子供の精神障害および行動障害が増加することが、フィンランド・ヘルシンキ大学のKatri Raikkonen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月19日号に掲載された。1週間以内に早産が予測される妊娠期間34週以内の妊婦に対しては、胎児の成熟の促進を目的とする出生前の副腎皮質ステロイド治療が標準治療とされる。近年、妊娠期間34週以降への適応拡大が議論されているが、長期アウトカムのデータは限られ、とくに治療を受けた母親の子供の神経発達に関するデータは少ないという。

COVID-19の入院リスク、RAAS阻害薬 vs.他の降圧薬/Lancet

 スペイン・University Hospital Principe de AsturiasのFrancisco J de Abajo氏らは、マドリード市内の7つの病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の調査「MED-ACE2-COVID19研究」を行い、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は他の降圧薬に比べ、致死的な患者や集中治療室(ICU)入室を含む入院を要する患者を増加させていないことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月14日号に掲載された。RAAS阻害薬が、COVID-19を重症化する可能性が懸念されているが、疫学的なエビデンスは示されていなかった。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、そのスパイクタンパク質の受容体としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用して細胞内に侵入し、複製する。RAAS阻害薬はACE2の発現を増加させるとする動物実験の報告があり、COVID-19の重症化を招く可能性が示唆されている。一方で、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、アンジオテンシンIIによる肺損傷を抑制する可能性があるため、予防手段または治療薬としての使用を提唱する研究者もいる。また、RAAS阻害薬は、高血圧や心不全、糖尿病の腎合併症などに広く使用されており、中止すると有害な影響をもたらす可能性があるため、学会や医薬品規制当局は、確実なエビデンスが得られるまでは中止しないよう勧告している。

心不全で突然死はどのくらい起こるのか?(解説:香坂俊氏)-1234

天気予報の精度が年々上がってきていることに皆さんはお気付きだろうか? とくにこの数年その進歩は著しく、翌日の天気であればほぼ時間単位での予測が可能になっている。これは実は「アルゴリズムの勝利」とも言うべきものであり、これまで集積されてきた情報をデータ化し、そこにAIを用いた数理モデルを駆使して予測を立てることができるようになってから飛躍的に進歩した分野なのである。そして、心不全の領域においても、そのイベントの発生の予測はだいぶできるようになってきた。これも天気予報と同様に数理モデルを応用して、危険因子をはじき出し、個々の患者さんの状況に当てはめるというやり方が成果を出しつつある(米国のフラミンガムリスクスコアや日本の吹田スコアなどはその好例だ)。

統合失調症患者における性機能障害~メタ解析

 多くの臨床研究において、統合失調症患者は性機能障害(SD)の発症リスクが高いと報告されているが、SDの有病率を算出した研究は十分ではない。中国・Taizhou Central HospitalのShankun Zhao氏らは、統合失調症患者におけるSDの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。The Journal of Sexual Medicine誌オンライン版2020年4月13日号の報告。  統合失調症患者の性機能に関する適格な報告をMEDLINE(PubMed)、Embase(OVID)、Cochrane Libraryデータベース、PsycINFOよりシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。統合失調症とSDとの関連は、相対リスク(RR)、95%信頼区間(CI)を算出することで検出した。エビデンスの質は、GRADE-profilerを用いて評価した。

T-DXd、HER2+乳がん脳転移例で良好な結果(DESTINY-Breast01)/ESMO BC2020

 CNS転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の有効性が示された。ベルギー・リエージュ大学のGuy Jerusalem氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)でDESTINY-Breast01試験のサブグループ解析結果を報告した。  DESTINY-Breast01試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相試験。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、PFS中央値は16.4ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。

23%が以前の生活に戻れないと回答/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症の拡大について、一般市民の意識変遷の実態を知る目的に、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、5月20日に3回目の「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を行った。  アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員で20~79歳の300人を対象に調査を実施したもの。  同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。

コロナ感染流行に一服、診療所医師の懸念はどう変化?~連続アンケート結果

 ケアネットでは、2020年4月第2週から週次で、病床を有していない診療所で勤務する会員医師を対象に「直近1週間のCOVID-19疑い例の診療状況」についてアンケートを行っている。調査対象地域は関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋(愛知県)、関西(京都府、大阪府、兵庫県)、福岡(福岡県)の4エリア、現在は第7回分まで、50日間の経過を掲載中だ。  毎回750~900人の医師から回答が集まり、エリアごとに多少の差はあるものの、全体で見ると4月第3週(調査対象期間:4月9~15日)をピークに、疑い例の平均患者数は50日間で半分近くまで減り(4月第3週:2.77人→5月第3週1.14人)、PCR検査で陽性となった平均患者数も半減した(4月第3週:0.12人→5月第3週0.06人)。

FDA、化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法を肺がん1次治療に承認/BMS

 米国食品医薬品局(FDA)は、5月26日、 PD-L1発現を問わず 、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療薬として、化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法を承認した。  今回の承認は、第III相CheckMate -9LA試験の中間解析に基づいたもの。ニボルマブとイピリムマブの併用療法にプラチナ製剤を含む 2 剤併用化学療法2サイクルを追加した併用療法は、同試験において(最短8.1カ月の追跡調査)、PD-L1発現および腫瘍の組織型にかかわらず、化学療法と比較して良好な全生存期間(OS)の延長を示した。

心血管疾患、発症率や死亡率に性差/Lancet

 心血管疾患の治療は、1次予防に関しては男性より女性で多く行われており、2次予防については反対の傾向がみられたものの、心血管疾患の既往の有無にかかわらず男性より女性のほうが、一貫してアウトカムは良好であることが観察された。カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らが、27ヵ国の35~70歳、20万2,072人が参加した大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological(PURE)研究」の解析結果を報告した。主に高所得国の研究では、男性と比較して女性は心血管疾患に対するケアをあまり受けておらず死亡リスクが高い可能性があることが報告されているが、リスク因子、1次あるいは2次予防の服薬、心血管疾患の発症、死亡を系統的に報告している研究はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。

COVID-19、ヒドロキシクロロキンの使用は支持されない/BMJ

 ヒドロキシクロロキンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効な治療薬として期待され世界的に注目されていたが、リアルワールドで収集した観察データを用いた臨床研究の結果、酸素投与を要するCOVID-19肺炎入院患者へのヒドロキシクロロキン使用は、支持されないことを、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のMatthieu Mahevas氏らが報告した。COVID-19による呼吸不全や死亡を予防する治療が緊急に必要とされる中、ヒドロキシクロロキンは、in vitroでCOVID-19の原因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果が報告され、小規模な臨床試験でも有効性が示唆されていた。BMJ誌2020年5月14日号掲載の報告。