ズレが2mm以下の舟状骨腰部骨折、ギブス固定vs.外科的固定/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/21

 

 手の舟状骨腰部骨折でズレが2mm以下の成人患者では、最初にギプス固定を行い、偽関節が疑われる場合には確認してただちに手術で固定すべきであることが示された。英国・Leicester General HospitalのJoseph J. Dias氏らが、外科的固定とギプス固定の臨床効果を比較検証した実用的な多施設共同無作為化非盲検優越性試験「SWIFFT試験」の結果を報告した。舟状骨骨折は、手根骨骨折の90%を占め、主に若年男性に発生するが、非外科的治療に比べアウトカムを改善するという十分なエビデンスがないにもかかわらず、ただちに外科的固定術を行う治療が増えていた。著者は、「最初にギプス固定を行う治療戦略により、手術のリスクを回避でき、手術は骨癒合に失敗した骨折の修復に制限できる」とまとめている。Lancet誌2020年8月8日号掲載の報告。

手関節機能評価(PRWE)により有効性を比較

 SWIFFT試験は、イングランドとウェールズの31病院で実施された。対象は、レントゲンで明らかな舟状骨腰部骨折が確認された16歳以上の成人。

 最初から外科的固定を行う手術群と、前腕ギプス固定後に偽関節が確認された場合はただちに外科的固定を行うギプス固定群のいずれかに、1~2mmのズレ(段差または離開)の有無で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、無作為化後52週時の患者評価による手関節機能評価(patient-rated wrist evaluation:PRWE)スコアであった。PRWE質問票はベースライン、無作為化後6週、12週、26週および52週時に記入してもらい、ベースライン以外のデータは郵送、受診時持参もしくは電話で収集した。

平均PRWEスコア、両群間で有意差なし

 2013年7月23日~2016年7月26日までの期間に、適格性が評価された1,047例のうち439例(平均年齢33歳、男性83%)が無作為に割り付けられ(手術群219例、ギプス固定群220例)、試験脱落・同意撤回や追跡データが得られなかった症例を除く408例(93%)が主要解析に組み込まれた(手術群203例、ギプス固定群205例)。

 52週時の平均PRWEスコア(補正平均値)は、手術群が11.9(95%信頼区間[CI]:9.2~14.5)、ギプス固定群が14.0(11.3~16.6)であり、両群間に有意差は認められなかった(補正後平均群間差:-2.1、95%CI:-5.8~1.6、p=0.27)。

 手術に関連した重篤な合併症は、手術群(219例中31例、14%)のほうがギプス固定群(220例中3例、1%)より多い可能性があったが、ギプス関連合併症は手術群(5例、2%)がギプス固定群(40例、18%)より少なかった。内科的合併症の発現は、両群間で類似していた(手術群4例[2%]、ギプス固定群5例[2%])。

(医学ライター 吉尾 幸恵)