双極性障害の早期発症や治療開始遅延がその後の治療効果に及ぼす影響

双極性障害の治療アウトカム不良のリスク因子として、早期発症と初回治療開始の遅延の両方がエビデンスで報告されている。米国および欧州の双極性障害患者における、これら2つのリスク因子の発生率とその影響について、米国・ジョージ・ワシントン大学のRobert M. Post氏らが調査を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年7月3日号の報告。
本研究の参加についてインフォームドコンセントを行い、詳細なアンケートに回答した双極性障害の外来患者967例を対象に、うつ症状または躁症状の発症年齢および初回治療時の年齢を評価した。発症年齢および初回治療開始の遅延について、米国の675例と、オランダおよびドイツ(欧州)の292例を比較し分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・双極性障害の発症年齢は、欧州よりも米国で平均6~7年早く、うつ症状または躁症状の発症年齢についても同様な結果であった。
・初回治療開始の遅延は、発症年齢と強い逆相関が認められ、米国は欧州の2倍遅延しており、とくに青年期の躁症状での違いが認められた。
・米国での初回治療開始の遅延は、発症年齢の早さによるものだけではないと考えられる。
著者らは「治療開始の遅延は治療上のリスク因子であり、米国における双極性障害の早期発症率の高さを認識することにより、遅延期間の短縮は可能である。また、米国における早期発症率の高さは、欧州と比較し、遺伝的および環境的な脆弱性の要因に関連していると考えられる。小児双極性障害患者に対し、より良い長期的なアウトカムを提供するためにも、新たな治療や研究への取り組みが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)
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