日本語でわかる最新の海外医学論文|page:3

年齢と治療前の聴力がメニエール病の長期的な聴力予後に関連

 メニエール病(MD)患者では、年齢および治療前の聴力が長期的な聴力予後と関連するという研究結果が、5月16日付で「Acta Oto-Laryngologica」に掲載された。  亜東紀念医院(台湾)のPing-Chia Cheng氏らは、MD患者159人(患耳179耳)を対象とした後ろ向き研究を実施し、長期的な聴力予後を評価するとともに、聴力予後に影響を及ぼす主な因子を特定した。聴力予後は、4周波数(500 Hz、1,000 Hz、2,000 Hz、3,000 Hz)の平均聴力レベルに基づいてステージ分類した。平均追跡期間は4.7年であった。

心筋梗塞PCI前のエボロクマブ、1年後LDL目標8割達成/JAMA

 PCSK9阻害薬は、心筋梗塞(MI)発症後の2次または3次の脂質低下療法としての推奨にとどまるため、その結果としてLDL-コレステロール(LDL-C)値のコントロールが不十分な期間が長期化するとされる。機械的再灌流術の前に、1次治療としてのPCSK9阻害薬の投与を、カテーテル室での判断に基づいて開始した場合に、1年後のLDL-Cのコントロールおよび臨床アウトカムが改善するかは明らかでないという。フランス・ソルボンヌ大学のGilles Montalescot氏らAMUNDSEN Investigators of the ACTION Study Groupは「AMUNDSEN試験」において、プライマリまたは緊急の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が適応の急性心筋梗塞(AMI)患者に対し、カテーテル室でエボロクマブと高強度の脂質低下療法の併用を開始したところ、1年後に80%以上の患者がガイドラインで推奨されるLDL-Cの目標値(<55mg/dLかつ≧50%減少)を達成したと報告した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年8月29日号に掲載された。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

感染性心内膜炎、治療反応に基づく抗菌薬短縮は可能か/NEJM

 左心系の感染性心内膜炎に対し、臨床反応に基づく個別化抗菌薬治療(抗菌薬の早期中止が可能)は標準的な投与期間の抗菌薬治療と比較して、抗菌薬を必要としない生存期間を有意に延長させ、安全性は非劣性の基準を満たしたが、感染性心内膜炎または菌血症の再発率は高かった。デンマーク・コペンハーゲン大学のHenning Bundgaard氏らPOET II Investigatorsが「POET II試験」の結果を報告した。同疾患に対し、現在欧米で推奨されている最長6週間の抗菌薬治療は、無作為化試験というよりは、主に専門家の見解や過去の観察結果に基づいており、臨床反応に応じた戦略によって、安全性を損なわずに治療期間を短縮できるかは不明だという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年8月28日号で発表された。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

犬を飼うことで認知症予防は可能か?〜日本人対象研究

 国立環境研究所の谷口 優氏らは、犬の飼育者の身体的、社会的、心理的特性に基づいた傾向スコア重み付け法を用い、犬の飼育と要介護認知症の発症および死亡との関連を調査した。さらに、操作変数モデルを用いて、この関係における因果関係の可能性を検討した。加えて、費用対効果分析を用いて、犬の飼育に伴う費用と効果についても検討を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2026年7月22日号の報告。  犬の飼育状況は、「現在飼育中」、「過去に飼育経験あり」、「飼育経験なし」の3つに分類した。要介護認知症は、日本の介護保険制度における医師の判定に基づき定義し、死亡については約7.5年間のフォローアップ期間中に日本の人口動態統計を用いて確認した。

T-DXd関連ILD、日本人の胃がん・乳がん患者で死亡例に多い所見は?

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)に関連する間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は、治療継続や生命予後に関わる重要な有害事象である。そこで、愛知県がんセンター呼吸器内科の藤原 豊氏らは、日本人の乳がんおよび胃がん患者を対象とした市販後全例調査のデータを用いて、独立したILD判定委員会により判定されたT-DXd関連ILDの臨床的・画像的特徴を検討した。その結果、多くは軽度~中等度で副腎皮質ステロイドに反応した一方、びまん性肺胞傷害(DAD)パターンは死亡例に多くみられた。本研究結果は、The Oncologist誌オンライン版2026年9月7日号に掲載された。

卵巣がん患者の17.1%が診断後3年で心血管イベントを発症/Gynecol Oncol

 卵巣がん患者は、非がん患者と比較して心血管イベントリスクが増加していることが明らかになった。また、その傾向は若年患者(55歳未満)においてより顕著であった。  婦人科がん患者の間では心血管疾患(CVD)の負担が大きいとされる。治療の進歩により生存率が向上するにつれ、CVDの脅威は増大している。  卵巣がんとCVDの関係は十分に解明されていないものの、卵巣がんの両側卵巣摘出術(外科的閉経)は、エストロゲンの心臓保護効果の喪失を介してCVDリスクの上昇に関与しているとされる。

極端な暑さは数十種類の健康問題と関連

 極端な暑さによる健康への影響は、単なる脱水や熱中症にとどまらないようだ。米ノースウェスタン大学地球・環境・惑星科学准教授のDaniel Horton氏らによる研究で、極端な暑さへの曝露と関連する診断カテゴリーは、急性腎不全、多発性硬化症、カンナビノイド関連の精神・行動障害、昆虫による咬傷・刺傷、交通事故、銃器による外傷など33に上ることが示された。この研究の詳細は、8月26日付で「Science Advances」に掲載された。Horton氏は、「これまでの研究から、人は極端な暑さにさらされると攻撃的に振る舞いがちになることが示されている。今回の結果にも、そのことが関係している可能性がある。暑いと心身の双方にストレスがかかり、注意力が散漫になったりいら立ちが強まったりして、事故が増える可能性がある」とニュースリリースで述べている。

指先に貼るパッチがパーキンソン病患者の汗からレボドパ濃度を測定

 パーキンソン病患者に投与する薬剤の適切な量を見極めるのは容易ではない。パーキンソン病の標準治療薬であるレボドパは、用量が少な過ぎると患者が動けなくなる一方、多過ぎると重度の制御不能な不随意運動を引き起こす。こうした中、患者の汗を利用してレボドパ濃度を測定できる指先に貼るパッチが、この問題の解決に役立つ可能性があることを示した研究成果が報告された。このパッチは、電池なしで汗中のレボドパ濃度を測定できる。初期段階の試験では、同パッチで測定した汗中のレボドパ濃度は、標準的な血液検査で測定した血中レボドパ濃度と強く相関することが示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のTamoghna Saha氏らによるこの研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に7月27日掲載された。

喫煙者の多くはタバコが心臓や脳に及ぼすリスクを認識していない

 タバコのリスクに関する過去数十年にわたる啓発活動にもかかわらず、多くの喫煙者が喫煙や受動喫煙が心臓発作や脳卒中を引き起こすという事実をまだ十分認識していないことが、46カ国で行われた調査から明らかになった。ウォータールー大学(カナダ)と米疾病対策センター(CDC)タバコ規制プログラムの研究者による研究の結果であり、同大学のJanet Chung-Hall氏らによる論文が、「BMJ Open」に8月4日付で掲載された。  この研究では、2002~2022年の国際タバコ規制プロジェクト(ITC)と、2008~2020年の世界成人タバコ調査(GATS)のデータを用い、46カ国の18歳以上の喫煙者において、喫煙と受動喫煙が肺がんや心血管疾患(CVD)の原因になるという認識が、過去約20年間でどのように変化してきたかが解析された。

PCI後1年での高リスク例、クロピドグレル単剤vs.DAPT延長/NEJM

 欧米の現行ガイドラインは、薬剤溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後は、6~12ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の後、アスピリンまたはクロピドグレルによる長期の抗血小板薬単剤療法を推奨しているが、冠動脈の複雑な解剖学的形態や併存疾患などの患者特性を考慮しつつ、虚血と出血リスクのバランスを取ることが可能な長期の維持療法の戦略は確立されていない。韓国・延世大学校医科大学のSeung-Jun Lee氏らA-CLOSE investigatorsは、PCI後12ヵ月の時点で虚血性イベントのリスクが高い患者では、その24ヵ月後の全臨床的有害事象の発生に関して、クロピドグレル単剤療法はDAPTの延長に対し非劣性であり、同単剤療法は虚血性イベントと死亡が多いものの出血イベントは少ないことを「A-CLOSE試験」の結果で示した。

未治療AML、アザシチジン+ベネトクラクスが有望/NEJM

 寛解導入化学療法が適応の急性骨髄性白血病(AML)患者の治療において、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法は寛解導入化学療法と比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長し、予後不良例が多数であるにもかかわらず多くの患者で造血幹細胞移植への移行が可能になったことが、米国・ハーバード大学のAmir T. Fathi氏らによる「PARADIGM試験」の結果で報告された。AMLの治療では、重篤な副作用が頻発し、医療資源の多大な消費を伴うにもかかわらず、長年にわたり寛解導入化学療法が重要な根治的治療とされ、その対象とならない患者に対しては、低メチル化薬とベネトクラクス(BCL2阻害薬)の併用が、初期治療の標準となっている。研究の成果は、NEJM誌2026年9月3日号に掲載された。

電子シーシャ、ニコチンの有無で人体への影響に違いは?

 フレーバー付きリキッドを加熱・エアロゾル化して吸引する電子シーシャは、近年若年層を中心に普及が進んでいる。ニコチンを含有しない製品も販売されているが、心血管系を含め人体への影響については未解明の点が多い。  米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMary Rezk-Hanna氏らの研究グループは、健康な若い習慣的シーシャ(水タバコ)喫煙者を対象に、ニコチン含有/非含有の電子シーシャの吸引前後での心血管疾患関連マーカーの変化を比較した。その結果、ニコチンの有無にかかわらず、電子シーシャ吸引後に炎症および凝固系マーカーである血漿フィブリノゲンレベルが有意に上昇したことが確認された。本研究結果は、Journal of the American Heart Association誌2026年8月4日号に掲載された。

双極症患者の自殺、年齢により手段が異なることが判明

 双極症における年齢層別の自殺手段については、これまで十分に検討されていなかった。台湾・台北市立聯合医院のMeng-Chiao Chou氏らは、双極症患者の自殺者と一般集団の自殺者を対象に、自殺手段の選択について比較を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2026年8月5日号の報告。  台湾の全国規模の医療データベースを用い、2003~23年に双極症と診断された4万7,488例を特定し、死亡記録と照合して自殺による死亡を確認した。自殺者のみを対象とするデザインを用い、双極症患者の自殺者と一般集団の自殺者との間で、自殺手段の分布を比較した。性別、死亡時年齢、都市化の程度、就業状況を調整変数として、年齢層別(30歳未満、30~49歳、50~64歳、65歳以上)の多変量ロジスティック回帰分析を実施した。

高リスクASCVDのLDL-C低下、インクリシランvs.ベムペド酸/ESC2026

最大耐用量のスタチン治療を受けてもLDL-C目標値に到達しない高リスクのアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者を対象に、ドイツ・Deutsches Herzzentrum der ChariteのIngo Hilgendorf氏らは、インクリシランとベムペド酸を直接比較する第IV相無作為化比較試験「VICTORION-Challenge試験」を実施した。その結果、インクリシランはベムペド酸よりLDL-C低下率および目標値達成率が有意に高かった。本結果は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表され、European heart journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。

MASHへのセマグルチド、日本人でも有効性示す/ESSENCE試験サブグループ解析

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)では、肝線維化の進展抑制や脂肪肝炎の改善を目指した薬物治療の確立が課題となっている。そこで、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏らは、第III相ESSENCE試験のサブグループ解析として、MASHを有する日本人参加者におけるセマグルチドの有効性と安全性を検討した。その結果、日本人集団において、セマグルチドは肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失などの達成割合をプラセボより高め、全体集団と方向性が一致した有効性と安全性を示した。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年8月28日号に掲載された。

11月まで要警戒!「蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針」改訂

人類の多くが不快に感じる蚊。刺されれば、かゆみや腫れに悩まされる身近な存在である。一方で、蚊はデング熱やチクングニア熱などの感染症を媒介することがあり、ときに人の健康を脅かす「危険な存在」でもある。蚊は15~20℃で活動を始め、25~30℃で最も活発に行動するといわれている。近年は、気候変動などに伴う地球温暖化や残暑の長期化の影響を受け、国内におけるヒトスジシマカなどの生息域や活動期間も拡大しつつある。さらに、訪日外国人の増加などを背景に、海外から持ち込まれた蚊媒介感染症が国内で広がるリスクにも注意が必要である。

日常診療での肥満判定、「BMI」より「腹囲」?

 体重の増加が健康に与える影響が心配な人は、ベルトの穴の位置を確認してみるとよいかもしれない。腹囲は、肥満に伴う健康リスクを把握するための極めて簡便で有用な指標の1つである可能性が、新たな研究で示された。米Rutgers-RWJBarnabas Center for Climate, Health, and HealthcareのAayush Visaria氏らによるこの研究の詳細は、8月7日付で「JAMA Network Open」に掲載された。  Visaria氏は、「ベルトを緩めたりズボンのサイズを大きくしたりする必要がないか、注意してほしい。

TAVI後のNOAC単剤はアスピリンを上回るか?/JAMA

 重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)後の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法は、アスピリン(ASA)単剤療法と比較し、低吸収性弁尖肥厚(HALT)の存在で定義した弁尖血栓症の発生率を有意に低下させるとともに、出血、血栓塞栓性イベントまたは死亡のリスクに関して非劣性であった。ノルウェー・オスロ大学のChristopher S. Dodgson氏らが、同国内でTAVIの大部分を担う3施設(3次病院2施設、地域病院1施設)において実施された無作為化非盲検評価者盲検試験「Anticoagulation vs Acetylsalicylic Acid After Transcatheter Aortic Valve Implantation:ACASA-TAVI試験」の結果を報告した。

症候性心房細動、カテーテルアブレーションはQOLを改善するか?/Lancet

 症候性心房細動患者に対するカテーテルアブレーションはシャム(偽手技)との比較において、心房細動関連QOLの改善に関して優越性は認められなかった。ドイツ・ライプチヒ大学病院のRolf Wachter氏らが、同国およびポーランドの9施設で実施した無作為化二重盲検シャム対照試験「PVI-SHAM-AF試験」の結果を報告した。ガイドラインでは、心房細動患者の症状緩和を目的としてカテーテルアブレーションが推奨されているが、これまで患者報告アウトカムを評価した先行研究は非盲検試験であり、カテーテルアブレーションに関する無作為化シャム対照試験はわずか2件にとどまっていた。Lancet誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

(シタグリプチンと比べて)チルゼパチドでMACEリスク32%低減(解説:小川大輔氏)

GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬には、主要心血管イベント(MACE:心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)のリスクを抑制する効果が認められている。ただ、実際にどの程度抑制する効果が認められるかは明らかではない。最近、GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドの実臨床における心血管イベント抑制効果を検討した研究結果が報告された1)。この研究は米国の保険請求データベースを用いて、心筋梗塞や脳卒中などアテローム動脈硬化性心血管疾患の既往のある2型糖尿病のデータを解析したコホート研究である。標準治療にチルゼパチドの投与を開始した群と、その対照としてDPP-4阻害薬のシタグリプチンの投与を開始した群の合計5万2,971例の解析が行われ、チルゼパチド投与群はシタグリプチン投与群と比較してMACEの発生を32%抑制したという結果であった。