日本語でわかる最新の海外医学論文|page:3

シフト勤務は腎結石のリスク増加と関連

 シフト勤務で働く人は、腎結石の発症リスクが高いようだ。新たな研究で、シフト勤務者では、非シフト勤務者と比較して腎結石の発症リスクが15~22%高く、この傾向は、特に50歳未満の人や肉体労働をほとんどあるいは全くしない人で顕著なことが示された。中国中山大学の疫学者であるYin Yang氏らによるこの研究の詳細は、「Mayo Clinic Proceedings」10月号に掲載された。  Yang氏らは、「この研究結果は、シフト勤務が腎結石発症のリスク因子として考慮されるべきであることを示唆するとともに、シフト勤務者の間で腎結石の発症予防を目的とした健康的なライフスタイルを推進する必要性を強調するものだ」と結論付けている。

歯みがきで命を守る?手術2週間前の口腔ケアが肺炎予防に効果

 高齢患者や基礎疾患を持つ患者においては、術後肺炎をはじめとする感染症対策が周術期管理上の大きな課題となる。今回、愛媛大学医学部附属病院の大規模後ろ向き解析で、術前2週間以上前からの体系的な口腔ケアが術後肺炎の発症抑制および入院期間短縮に有効であることが示された。研究は愛媛大学医学部附属病院総合診療サポートセンターの古田久美子氏、廣岡昌史氏らによるもので、詳細は9月3日付けで「PLOS One」に掲載された。  近年、周術期管理や麻酔技術の進歩により、高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者でも侵襲的手術が可能となった。その一方で、合併症管理や入院期間の短縮は依然として課題である。術後合併症の中でも肺炎は死亡率や医療費増大と関連し、特に重要視される。口腔ケアは臨床で広く行われ、病原菌抑制を通じて全身感染症の予防にも有効とされる。しかし、既存研究は対象集団が限られ、最適な開始時期は明確でない。このような背景を踏まえ、著者らは術前口腔ケアについて、感染源除去や細菌管理、歯の脱落防止のために少なくとも2週間の実施が必要であると仮説を立てた。そして、手術2週間以上前からの口腔ケアが術後肺炎予防に有効かを検証した。

MSSA菌血症、セファゾリンvs.クロキサシリン/Lancet

 メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症の治療において、セファゾリンはクロキサシリンと比較して有効性は非劣性で、忍容性は良好であることが示された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のCharles Burdet氏らが、大学病院を含むフランスの21施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「CloCeBa試験」の結果を報告した。セファゾリンは広く使用されているものの、MSSA菌血症の治療における有効性はこれまで臨床試験で検討されたことはなかった。結果を踏まえて著者は、「MSSA菌血症の治療において、セファゾリンはクロキサシリンの代替薬となりうる」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。

HER2陽性尿路上皮がん、disitamab vedotin+toripalimabがPFS・OS改善(RC48-C016)/NEJM

 未治療のHER2陽性局所進行または転移のある尿路上皮がん患者において、HER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるdisitamab vedotinと抗PD-1抗体toripalimabの併用療法は、化学療法と比較して主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長することが認められた。中国・Peking University Cancer Hospital and InstituteのXinan Sheng氏らRC48-C016 Trial Investigatorsが、中国の72施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「RC48-C016試験」の事前に規定されたPFS解析およびOS中間解析の結果を報告した。HER2を標的とするADCの単剤療法は、化学療法後のHER2陽性尿路上皮がんに対する有効な治療選択肢として確立されている。disitamab vedotinは、単剤療法として、またPD-1を標的とした免疫療法との併用において、有望な抗腫瘍活性と安全性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年10月19日号掲載の報告。

左心耳閉鎖術?(解説:後藤信哉氏)

心房細動の症例は、長期間の観察期間内の脳卒中リスクが高い。心房細動による血流うっ滞が血栓形成に寄与している可能性はある。血流うっ滞による血栓形成は、うっ滞が最も重症になる心耳から始まる可能性がある。そこで左心耳を閉じてしまえば心房細動の脳梗塞予防が可能かもしれないとの仮説につながる。カテーテルアブレーションを受ければ左房の内膜側に損傷ができるので血栓イベントリスクが上昇する。一時的に抗凝固薬を使用するのは血栓イベント予防に有効と考えられる。左心耳閉鎖が有効であるためには、アブレーションにより傷ついた内膜からの血栓が左心耳にて成長している必要がある。本研究では重篤な出血イベント発現リスクを仮説検証のエンドポイントにしている。全身の凝固機能が低下する抗凝固薬使用時には出血イベントリスクが増加する現実に、本研究でも抗凝固療法群の重篤な出血イベント発現リスクは18.1%と左心耳閉鎖群の8.5%よりも高かった。この結果は予想通りである。

75歳以上の乳がん検診は過剰診断か~日本人での検討

 乳がん検診は死亡率低下と関連する可能性があるが、高齢者においては過剰診断が懸念される。今回、石巻赤十字病院の佐藤 馨氏らが、高齢化地域における75歳以上の女性において検討した結果、検診と死亡率低下に有意な関連はみられなかったものの、検診群において乳がんによる死亡は認められなかった。Preventive Medicine Reports誌2025年10月9日号に掲載。  本研究では、石巻赤十字病院で乳がんと診断された75~98歳(中央値81歳)の女性289例(2011~20年)を後ろ向きに解析した。患者を検診群(40歳以上の全女性を対象とした2年ごとの全国規模集団ベース乳がんスクリーニングで診断)と非検診群(症状で診断もしくはCTなどの他疾患の画像検査で偶然発見)に分類した。主要評価項目は全死亡率であった。比較にはMann-Whitney のU検定、カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定、生存率はKaplan-Meier法、log-rank検定、予後因子はCox比例ハザードモデルで解析した。

がん治療のICI、コロナワクチン接種でOS改善か/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、多くのがん患者の生存期間を延長するが、抗腫瘍免疫応答が抑制されている患者への効果は限定的である。現在、個別化mRNAがんワクチンが開発されており、ICIへの感受性を高めることが知られているが、製造のコストや時間の課題がある。そのようななか、非腫瘍関連抗原をコードするmRNAワクチンも抗腫瘍免疫を誘導するという発見が報告されている。そこで、Adam J. Grippin氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンもICIへの感受性を高めるという仮説を立て、後ろ向き研究を実施した。

日本人における気圧の変化と片頭痛との関係

 獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、日本の健康保険請求データベースの大規模データと気象データを照合し、気圧変化の大きい季節が片頭痛発症に及ぼす影響を調査するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2025年9月10日号の報告。  本研究では、JMDC請求データと日本の気象データを用いて分析した。片頭痛の診断歴を有する患者を対象とし、片頭痛と最初に診断された医療機関の所在地に基づいて8つの地域サブグループに分類した。片頭痛発症までの期間(各季節の初日からトリプタンが処方されるまでの期間と定義)を、気圧変化が最も大きい季節と最も小さい季節で比較した。

調査した市販飲料の全てにマイクロプラスチックを検出

 近年、米粒よりも小さいプラスチック片であるマイクロプラスチック(MP)の拡散が懸念されている。こうした中、ペットボトルで販売されていない飲み物も含め、ソフトドリンク、紅茶、コーヒーなど、検査された全ての温かい飲み物と冷たい飲み物にMP粒子が混入していることが、新たな研究で明らかになった。英バーミンガム大学のMuneera Al-Mansoori氏らによるこの研究結果は、「Science in the Total Environment」に9月20日掲載された。  MPとは、直径5mm以下のプラスチック片で、中にはマイクロメートル(μm)またはミクロン単位の非常に小さなサイズのものもある。MPの摂取は、生殖器系、消化器系、呼吸器系の損傷など、人体への健康被害につながる可能性が指摘されている。

高齢者のポリドクター研究、最適受診施設数は2〜3件か

 複数の医療機関に通う高齢者は多いが、受診する施設数が多ければ多いほど恩恵が増すのだろうか。今回、高齢者を対象とした大規模コホート研究で、複数施設受診が死亡率低下と関連する一方、医療費や入院リスクが上昇することが明らかとなった。不要な入院を予防するという観点からは最適な受診施設数は2〜3件とされ、医療の質と負担を両立させる上での示唆が得られたという。研究は慶應義塾大学医学部総合診療教育センターの安藤崇之氏らによるもので、詳細は9月1日付で「Scientific Reports」に掲載された。

胎児~2歳の砂糖摂取制限と成人期の心血管リスクの関係/BMJ

 英国における受胎後1,000日間(胎児~2歳)にわたる砂糖配給制への曝露は、成人期の心血管リスク低下および心機能指標のわずかな改善と関連しており、胎児期~生後早期の砂糖摂取制限が心血管への長期的な有益性をもたらす可能性があることが、中国・香港科技大学のJiazhen Zheng氏らによる自然実験研究で示された。受胎後1,000日間は、栄養が生涯にわたる心代謝リスクを形成する重要な時期であるが、多くの乳幼児は母体の食事、人工乳、離乳食を通じて添加糖類を過剰に摂取している。胎児期~生後早期の砂糖摂取制限の成人期の心血管リスクに対する影響について、エビデンスは限られており間接的なものであった。BMJ誌2025年10月22日号掲載の報告。

過体重/肥満へのセマグルチド、心血管リスク低下は体重減少に依存せず/Lancet

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJohn Deanfield氏らは、41ヵ国804施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照優越性試験「SELECT試験」の事前に規定されたサブ解析において、セマグルチドの心血管アウトカムに対する有益性はベースラインにおける肥満指標および体重減少に依存せず、ウエスト周囲長との関連もわずかであったことを明らかにした。SELECT試験では、心血管疾患既往で過体重または肥満であるが糖尿病の既往のない患者において、セマグルチドが主要有害心血管イベント(MACE)を減少させることが示されていた。著者は、「本解析の結果は、セマグルチドの肥満低減以外の何らかのメカニズムによる有益性を示唆するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年10月22日掲載の報告。

亜鉛欠乏がCKD患者のAKIリスクを37%上昇、死亡リスクは約2倍に

 慢性腎臓病(CKD)患者における亜鉛欠乏が、急性腎障害(AKI)発症および死亡の独立したリスク因子であることが、台湾・Chi Mei Medical CenterのYi-Chen Lai氏らによる大規模リアルワールドデータ解析で明らかになった。Frontiers in Nutrition誌2025年9月25日号掲載の報告。  AKIはCKD患者にしばしば合併し、重症化すると生命予後を著しく悪化させるが、既知のリスク因子の多くは高齢や糖尿病などで修正が難しい。一方、動物実験では亜鉛補充が腎障害を抑制する可能性が示唆されているものの、ヒトを対象とした大規模研究は乏しい。そこで研究グループは、CKD患者を対象に、ベースラインの亜鉛欠乏がAKI発症や腎機能悪化リスクにどのように関連するかを検討するため、大規模後ろ向き解析を実施した。

日本食はうつ病予防に有効なのか?

 老年期うつ病は、高齢化社会においてますます重要な公衆衛生問題となっている。日本は世界有数の平均寿命と健康寿命の長さを誇るにもかかわらず、日本食と老年期うつ病との具体的な関連性に特化したプロスペクティブコホート研究はこれまで行われていなかった。北海道大学のHo Chen氏らは、日本食と老年期うつ病との関連性を検証し、この関連性が食事の質の向上に起因する身体的健康状態の改善にとどまらないかどうかを評価するため、本研究を実施した。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌2025年9月号の報告。

帯状疱疹後神経痛、発症しやすい人の特徴

 帯状疱疹を発症すると、帯状疱疹の皮疹や水疱消失後に帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)と呼ばれる合併症を伴う場合があり、3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症しているという報告もある。今回、中国・Henan Provincial People's HospitalのJing Wang氏らは、PHNの独立した危険因子となる患者背景を明らかにした。Frontiers in Immunology誌2025年10月1日号掲載の報告。

ダイエット飲料と加糖飲料はどちらもMASLDリスク

 人工甘味料を用いた低糖・無糖飲料と加糖飲料は、どちらも代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)のリスクを高めることを示唆するデータが、欧州消化器病週間(UEG Week 2025、10月4~7日、ドイツ・ベルリン)で発表された。蘇州大学附属第一医院(中国)のLihe Liu氏らの研究によるもので、人工甘味料を用いた飲料や加糖飲料を水に置き換えることでMASLDリスクが低下する可能性も報告されている。  Liu氏は、「加糖飲料は長い間、厳しい監視の目にさらされてきたが、その代替品として広まった人工甘味料を用いた飲料は、健康的な『ダイエット飲料』と見なされることが多かった。しかしわれわれの研究結果は、それらの飲料を無害であるとする一般的な認識に疑問を投げかけ、肝臓の健康への影響を再考する必要性を強調している」と述べている。

心室頻拍に定位放射線治療が有効か

 標的となる部分に放射線を当てて治療する定位放射線治療(以下、放射線治療)が、危険性の高い不整脈の一種である心室頻拍に対する安全性の高い治療法になり得ることが、新たな研究で示された。米セントルイス・ワシントン大学医学部放射線腫瘍科のShannon Jiang氏らによると、放射線治療の効果は、標準的な治療法だが複雑な手術であるカテーテルアブレーションと同等であったという。また、放射線治療は、カテーテルアブレーションと比べて死亡や重篤な副作用が少ないことも示された。詳細は、「International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics」に9月29日掲載されるとともに、米国放射線腫瘍学会(ASTRO 2025、9月29日~10月1日、米サンフランシスコ)でも発表された。

世界最高齢者の長生きの秘密とは?

 マリア・ブラニャス・モレラ(Maria Branyas Morera)さんは、2024年8月19日に117歳で亡くなった当時、世界最高齢者であった。彼女は一つの情熱的な願いを抱いてこの世を去った。バルセロナ大学(スペイン)医学部遺伝学科長のManel Esteller氏は、「ブラニャスさんはわれわれに、『私を研究してください。そうすれば他の人を助けることができます』と言った。彼女のその希望は現実となった」と話す。Esteller氏らがブラニャスさんについて包括的な分析を行った結果、ブラニャスさんには、健康的なライフスタイル、微生物叢内の有益なバクテリア、長寿に関連する遺伝子など多くの利点があったことが判明した。この研究の詳細は、「Cell Reports Medicine」に9月24日掲載された。  Esteller氏は、「健康的な老化は、何か一つの大きな特徴が関与するのではなく、むしろ、多くの小さな要因が相乗的に作用する、非常に個人差のあるプロセスであることが分かった。不健康な老化ではなく、健康的な老化につながる特徴をこれほど明確に示すことができたことは、将来、老若男女を問わず全ての人にとって有益になると思われる」と述べている。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望/Lancet

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は有病率が非常に高いが、承認された薬物治療の選択肢はいまだ確立されていない。ドイツ・ケルン大学のWinfried Randerath氏らFLOW study investigatorsは、炭酸脱水酵素阻害薬スルチアムについて有効性と安全性を評価した第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験「FLOW試験」を実施。スルチアムの1日1回就寝前経口投与は、OSAの重症度を用量依存性に軽減するとともに、夜間低酸素や日中の過度の眠気などの改善をもたらし、有害事象の多くは軽度または中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年10月25日号で発表された。

免疫性血小板減少症への新治療薬による診療戦略/SOBI

 希少・難治性疾患治療に特化し、ストックホルムに本社を置くバイオ医薬品企業のSwedish Orphan Biovitrum Japan(SOBI)は、アバトロンボパグ(商品名:ドプテレット)が新たな適応として「持続性および慢性免疫性血小板減少症」の追加承認を取得したことに合わせ、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、免疫性血小板減少症(ITP)の診療に関する講演や同社の今後の展望などが説明された。