脱中心(分散)型臨床試験の治療効果は、非分散型と異なるか/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/12/17

 

  脱中心(分散)型臨床試験(decentralised trial:DCT)は、試験活動の一部またはすべてを参加者に近い場所で実施するか、完全に遠隔で行うことで試験参加の負担軽減を目指すもので、より優れた患者中心の研究の促進を目的とする。しかし、研究者による監視が減弱するため試験結果に影響が及ぶ可能性があり、従来の非分散型臨床試験(non-DCT)と効果推定値が異なるかは不明とされる。スイス・ベルン大学のLouise Chaboud氏らは、DCTは従来の非分散型の無作為化試験と同様のクリニカルクエスチョンに対する回答を提供し、効果推定値を系統的に過大評価または過小評価することはないものの、結論の相違につながる可能性のあるわずかな絶対偏差が生じることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年11月18日号に掲載された。

DCTとnon-DCTの治療効果を比較するメタ疫学研究

 研究チームは、DCTまたは従来のnon-DCTとして設計された試験の治療効果を比較するメタ疫学研究を行った(本研究は特定の助成を受けていない)。

 PubMedデータベースを用いて、同一のクリニカルクエスチョンに答えるDCTとnon-DCTを系統的に特定した。メタ解析で統合される試験は、同一のクリニカルクエスチョンに答えるものと仮定し、既存の系統的レビューを用いて効果推定値を比較した。

 DCTは、参加者が研究目的で研究施設を訪問する必要が一切ない無作為化臨床試験と定義し、次の3つとした。(1)非接触試験:参加者は試験関係者と一切の接触を持たない、(2)在宅試験:参加者は研究目的で自宅を離れることはない、(3)近隣試験:参加者は研究目的で研究施設以外の特定の場所へ移動する。

 non-DCTは、参加者が研究目的で研究施設を訪問する必要がある無作為化臨床試験と定義し、次の2つとした。(1)混合試験:DCTの特徴を部分的に有する試験(例:電話による遠隔評価)、(2)純粋試験:DCTの特徴をまったく持たない試験。

効果に差異はないが、絶対偏差が1.3倍

 11のクリニカルクエスチョンに関する51件のDCT(非接触試験9件、在宅試験20件、近隣試験22件)と86件のnon-DCT(混合試験35件、純粋試験51件)を比較した。バイアスのリスクが低いと判定された試験は、DCTが26件(51%)、non-DCTは51件(59%)であった。参加者の脱落率はDCTで低かった(9%vs.14%)。

 non-DCTに比べDCTは試験の規模が大きく、サンプルサイズ中央値はDCTが1,175例(四分位範囲[IQR]:205~5,292)、non-DCTは236例(98~833)であった。平均的に、DCTはnon-DCTの5倍のサンプルサイズを有しており、これは募集プロセスの改善(たとえば、試験参加の募集案内への承諾者の増加)を示唆する。また、DCTは、より近年に行われた試験が多かった(発表年中央値はそれぞれ2012年vs.2007年)。

 11のクリニカルクエスチョンのうち9つ(82%)で、DCTとnon-DCTの有意水準が一致した。また、DCTとnon-DCTで、効果に系統的な差異は認めなかった(オッズ比の要約比:1.01、95%信頼区間:0.93~1.09、異質性I2=8.6%)。一方、絶対偏差中央値は1.3倍だった(オッズ比の絶対比:1.30、IQR:1.13~1.51)。

DCTが無作為化試験に新たな道をひらく

 分散化により、試験は迅速化と低コスト化が可能となり、より大規模で多様性・代表性に富む集団を取り込むことができるため、試験参加者の重要なサブグループに関するエビデンスを提供し、より個別化された意思決定を可能にすると考えられた。

 著者は、「試験の分散化は、治療の効果推定値の信頼性を維持しつつ、負担軽減など参加者への直接的な便益に加え、より大規模な試験の実施を可能にするなど、無作為化試験に新たな道をひらくとともに、患者中心のエビデンスの創出を促進すると考えられる」「本研究の知見は、DCTが効果推定値を系統的に過大評価または過小評価しないことを示唆するが、結論の相違を招きうる軽微な絶対偏差が生じているため、さらなる調査が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 名郷 直樹( なごう なおき ) 氏

武蔵国分寺公園クリニック 名誉院長

J-CLEAR理事