手術のリスクが高いと考えられる中等度~重度または重度の先天性大動脈弁逆流症患者では、本症専用の人工弁を用いた経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)は、事前に規定した安全性と有効性の性能目標を達成するとともに、最長で2年間にわたり、大動脈弁逆流症の大幅な改善が得られ、心機能状態の改善と生活の質の向上をもたらすことが示された。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのRaj R. Makkar氏らALIGN-AR Investigatorsが、多施設共同試験「ALIGN-AR試験」の結果を報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年11月16日号で発表された。
米国の前向き単群試験
ALIGN-AR試験は、米国の30施設で進行中の前向き単群試験であり、2018年6月~2025年7月に参加者のスクリーニングを行った(JenaValve Technologyの助成を受けた)。
年齢18歳以上、症候性の中等度~重度(米国心エコー図学会[ASE]基準の3+)または重度(ASE 4+)の大動脈弁逆流症で、手術による死亡または合併症のリスクが高く、NYHA心機能分類II以上の患者を対象とした。
これらの患者に対し、ブタ心膜弁尖を用いて先天性大動脈弁逆流症の専用に設計された人工弁であるトリロジー弁(Trilogy valve、JenaValve Technology製)を使用したTAVIを施行した。
安全性の主要複合エンドポイントは、術後30日以内の主要有害事象(全死因死亡、脳卒中、生命を脅かす出血または大出血、急性腎障害、主要血管合併症、外科的または経皮的インターベンションの追加の必要性、新規のペースメーカー植込み術、中等度以上の大動脈弁逆流症)の複合とした。
文献に基づく安全性エンドポイントの発生率は30%であり、これに安全性エンドポイントの非劣性マージンである1.35を乗じた40.5%を性能目標とし、検証を行った。また、1年全死因死亡率について、性能目標である25.0%に対する優越性を検証した。解析は、ITT集団で実施した。
主要複合エンドポイントの非劣性を確認
700例を登録した。全体の年齢中央値は79.0歳(四分位範囲[IQR]:72.0~84.0)、女性が321例(46%)で、白人が532例(76%)、黒人またはアフリカ系米国人が68例(10%)、アジア系が36例(5%)であった。大動脈弁逆流症の重症度は、379例(55%)が中等度~重度、304例(44%)が重度だった。664例(95%)で技術的成功が達成された。追跡期間中央値は472日(IQR:352~891)。
30日の時点で、安全性の主要複合エンドポイントは700例中168例(24.0%、97.5%信頼区間[CI]の上限値:27.3%)で発生し、性能目標である40.5%に対し非劣性を示した(非劣性のp<0.0001)。
30日時の、安全性の主要複合エンドポイントの個別の構成要素については、全死因死亡が700例中11例(1.6%)、脳卒中が12例(1.7%)、大出血/生命を脅かす出血が19例(2.7%)、急性腎障害(7日目の時点でステージ2または3)が5例(0.7%)、主要血管合併症が17例(2.4%)、デバイスまたは手技関連の手術、インターベンション、主要血管合併症が21例(3.0%)に発生し、新規ペースメーカー植込み術は、すでに装着している患者を除く589例中127例(21.6%)、中等度または重度の大動脈弁逆流症は、30日までに心エコー図の解釈が行われていない患者を除く569例中3例(0.5%)に発生した。
1年全死因死亡率は優越性を示した
1年時の全死因死亡は、1年の追跡を完了した492例中38例(7.7%[97.5%CIの上限値:10.4%])で発生し、性能目標である25.0%に対し優越性を示した(優越性のp<0.0001)。また、2年時までに、全死因死亡は53例(13.3%)で発生した。
最長で2年間にわたり、大動脈弁逆流症の大幅な改善(2年後に逆流なし/わずかに残存85%、軽度13%)が得られ、心機能状態の改善(2年後のNYHAクラスI 63%、II 29%、III 8%)と生活の質の向上(2年後の平均KCCQ-OSスコア81.8点)をもたらした。
著者は、「これらのデータは、手術後の死亡または合併症のリスクが高い先天性大動脈弁逆流症の患者において、専用に設計されたデバイスを用いたTAVIが実行可能かつ効果的な治療選択肢であるとの見解を支持するものである」「高い技術的成功率(95%)、低い死亡率(30日死亡率1.6%、1年死亡率7.7%)、最小限の残存大動脈弁逆流症(1年および2年時点で発生した中等度以上の残存大動脈弁逆流症は約1%)が確認され、大動脈弁逆流症における手技上の課題を克服した」「これらの知見は、臨床応用と将来のガイドライン策定に必要な、重要なエビデンスを提供する」としている。
(医学ライター 菅野 守)