日本語でわかる最新の海外医学論文|page:958

抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」

 統合失調症患者では体重増加がしばしば問題となる。中枢神経系経路における食欲や体重を調節する薬剤としてレボキセチン(選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)、ベタヒスチン(ヒスタミンH1受容体アゴニスト/H3受容体アンタゴニスト)が補完的薬剤として期待されている。Michael Poyurovsky氏らは、プラセボ対照二重盲検比較試験においてレボキセチンとベタヒスチンの併用が統合失調症患者のオランザピン誘発性体重増加を減弱させるかどうかを検討した。Psychopharmacology誌オンライン版2012年12月13日号の報告。

化粧品に含まれる防腐剤メチルイソチアゾリノンへのアレルギー患者が急増

 近年、化粧品やスキンケア製品などに防腐剤として使われるようになっているメチルイソチアゾリノン(MI)へのアレルギー反応を示す患者が急増していることが、ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学のJohannes Geier氏らにより報告された。MIとメチルクロロイソチアゾリノン(MCI)を合わせた感作頻度は、1998~2009年の間は常に約2.1%(ドイツIVDK統計)であったが、2011年に3.9%に増大したという。Contact Dermatitis誌2012年12月号(オンライン版2012年9月21日号)の掲載報告。

多枝冠動脈疾患の糖尿病患者、DES-PCIよりCABGが長期アウトカム良好/NEJM

 糖尿病で多枝冠動脈疾患の認められる患者には、冠動脈バイパス術(CABG)が、積極的薬物治療併用の薬剤溶出性ステント(DES)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも、長期アウトカムが良好であることが明らかになった。一方で脳卒中発生率は、CABG群でDES-PCI群のおよそ2倍に上った。これまでに、糖尿病患者に対するCABGがPCIより良好であるとする試験結果はあったが、DES-PCIと積極的薬物治療の併用を比較したものは今回が初めてという。米国・Mount Sinai School of MedicineのMichael E. Farkouh氏らが、140ヵ所の医療機関を通じて行った無作為化比較試験「FREEDOM試験」の結果、報告した。NEJM誌2012年12月20日号(オンライン版2012年11月4日号)掲載より。

「世界貿易センター健康レジストリ」登録者のがん発生リスクは増大したか?/JAMA

 2001年9月11日の世界貿易センタービルへのテロ攻撃は、周辺環境に発がん性物質を拡散したといわれており、市民の間に、その曝露により、がん罹患の可能性が増大したとの懸念があった。ニューヨーク市保健・精神衛生部のJiehui Li氏らは、「世界貿易センター健康レジストリ」に登録された人におけるがん発生状況を調べた。その結果、救急隊員/復旧作業員について、一般レジストリ者と比べて2007-2008年に前立腺がん、甲状腺がん、骨髄腫の過剰リスクがみられたが、発生数は少なく、この年にすべてのがんが増大したということではなかった。著者は、「曝露の強さの違いによる関連は認められなかった」と述べた上で、「潜伏期間が長期にわたるがんもあるので、長期のフォローアップと特異的がんについては注意が必要である」と結論している。

MDMA誘発の高熱にメマンチンが有用?:自治医大

 自治医科大学精神医学教室教授・西嶋康一氏ら研究グループはラット試験の結果、違法ドラッグ3,4-Methylenedioxymethamphetamine (MDMA)が引き起こす可能性がある致命的ともなりうる高熱に対し、メマンチンが有用である可能性が示唆されたことを報告した。Neuroscience Letters誌2012年12月7日号(オンライン版2012年11月6日号)の掲載報告。

長期アスピリン常用と加齢黄斑変性リスクとの関連/JAMA

 アスピリンの常用と加齢黄斑変性(AMD)発症との関連について調査した長期試験の結果、服用期間が5年では有意な関連はみられなかったが、10年では、わずかだが統計的に有意な発症遅延リスクの上昇が血管新生型AMDでみられたことを、米国・ウィスコンシン大学医学部眼科部門のBarbara E. K. Klein氏らが報告した。アスピリンは関節炎などの疼痛緩和や心保護効果があるとして広く使用されている。その使用は、眼科医にとっても関心が高いという。JAMA誌2012年12月17日号掲載報告より。

減速バンプ通過時に感じる痛みは、急性虫垂炎の診断に有効か/BMJ

 急性虫垂炎の診断は難しく、さまざまな臨床的特徴(痛点の移動や反跳圧痛など)が評価に用いられている。なかには、痛みについて、「車道に埋め込まれた減速バンプの上を通過する際に感じた痛み」について質問する医師もいるが、この質問に関する科学的根拠は見つかっていない。英国・オックスフォード大学のHelen F Ashdown氏らは、減速バンプを通過する際に感じる痛みが、急性虫垂炎の診断精度向上に本当に役立つのかについて検証した。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月17日号)掲載「クリスマス特集」より。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(43)〕 もうひとつのeGFR算出式(CKD-EPI)を使った200万人規模のメタ解析が明らかにする『高齢者CKDはAgingに非ず』

 今世紀になって、CKDが新たな心血管リスクとして注目されているのは周知のことである。CKD診療のゴールは、『健康長寿(healthy longevity)の実現』と『腎不全の回避』を両立させることにある。

統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証!

 いくつかの抗精神病薬による体重増加には、遺伝的要因が関与していると言われている。一般人における肥満に関連する遺伝子にFTO遺伝子がある。イギリス・クイーンズ大学ベルファストのGavin P. Reynolds氏らは、このFTO遺伝子における共通のリスク多型(rs9939609)が抗精神病薬誘発性の体重増加や肥満と関連があるかどうかを検討した。The international journal of neuropsychopharmacology / official scientific journal of the Collegium Internationale Neuropsychopharmacologicum (CINP).誌オンライン版2012年12月14日号の報告。

調理済み食品vs.鉄人レシピ、栄養価に優れ健康的なのは?/BMJ

 英国・ニューカッスル大学のSimon Howard氏らは、テレビで人気シェフが考案し提案する家庭料理レシピと、スーパーマーケットで売られている調理済み食品(レディーミール)について、エネルギー量や各栄養素の含有量などを調べ、WHOと英国食品基準庁(FSA)が推奨している栄養ガイドラインと照らし合わせ比較する横断研究を行った。テレビで紹介される家庭料理は、各種スタディの被験者も「料理の参考にしている」と回答し、次々とレシピ本がつくられ売れていることからも、多くの人の食生活に影響を与えていると思われる。しかし、その影響の程度は明らかとはなっていない。また、スーパーマーケットで売られている調理済み食品も、食事の選択肢として多くの人が利用するが、その定義は曖昧であり、包括的な栄養学的調査は行われていなかったという。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月17日号)掲載「クリスマス特集」より。

世界の疾病負担、死亡率は低下するも健康寿命は国によって大きな差:GBD2010/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の疾病負担の状況は、死亡率の抑制には実質的な進展がみられたものの、非致死的疾患や傷病の発生はほとんど低下しておらず、健康寿命(healthy life expectancy:HALE)は国によって大きな差があることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJoshua A Salomon氏らの検討で示された。疾病負担については、1)医学的介入によって疾患による致死率は低下するが発生率は抑制されないため有病率が上昇するとの説[有病状態の拡大(expansion of morbidity)]と、2)死亡率が低下すると予防により慢性疾患の発症年齢が上昇し身体機能障害をともなう罹病期間が短縮するとの説[有病状態の圧縮(compression of morbidity)]があるが、これらの仮説は将来の保健医療計画や医療コストに大きな影響を及ぼすとされる。そのため適切な評価が重要な課題とされ、HALEは有用な指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年12月15・22・29日合併号掲載の報告。

雪下ろしによる転落外傷、記録的な大雪に見舞われた2010年冬からの教訓

 2010年冬にフィンランドでは記録的な大雪に見舞われ、とくに南部地方で雪下ろしのために屋根に上った人の転落外傷が例年にない規模で発生したという。ヘルシンキ大学病院のM. Aulanko氏らは、その発生状況と大学病院で行われた処置およびコストなどについて解析した。Scandinavian Journal of Surgery誌2012年第4号12月15日号の掲載報告。

有棘細胞がん、ケラトアカントーマをダーモスコピーで見分けるコツ

 有棘細胞がん(SCC)とケラトアカントーマを、ダーモスコピーによって他の非着色皮膚病変と見分けるには、ホワイトサークル、ケラチン、出血斑が手掛かりとなることを、Cliff Rosendahl氏らがオーストラリアのプライマリ・ケア設定での試験の結果、報告した。Archives of Dermatology誌2012年12月号(オンライン版2012年9月21日号)の掲載報告。

いち早く欧米化が進んだ沖縄県。今、脳卒中発生率は増加?減少?日本の未来を暗示!?:宮古島研究

 沖縄県宮古島において、2002~2005年の血圧値が1988~1991年より有意に低値であったにもかかわらず、初発脳卒中およびすべての脳卒中病型の発生率に有意な変化を認めなかったことが、琉球大学大学院 洲鎌 千賀子氏らにより報告された。また、脳梗塞発生率の上昇傾向には、代謝異常が関連していると推測した。Journal of stroke and cerebrovascular diseases誌オンライン版2012年11月2日付の報告。

家族性のがんリスクに関する検討/BMJ

 がんの家族性リスクが早期発症例に限定されるかどうかを判断するため、ドイツがん研究センターのE Kharazmi氏らは、全国規模のSwedish Family-Cancer Databaseを用いて前向きコホート研究を実施した。その結果、「子」のがんリスクが最も高くなるのは「親」が若い年齢で同一がんが診断された場合だが、「親」が高齢で診断された場合においてもリスクが増加することが認められた。著者は、「家族性のがんは、高齢でがんに罹患した家族を持つ人々における早期発症をいうのではなく、早期発症と遅発性発症という別個の構成要素があるのかもしれない」と考察している。BMJ誌2012年12月20日号に掲載。