統合失調症の殺人再犯率は公表データよりも低い

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/03/04

 

 オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAndrei Golenkov氏らは、統合失調症を有する殺人者の殺人再犯率を推定することを目的とした、システマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、公表されている報告が示唆するよりも統合失調症殺人者の殺人再犯性は低いことが示唆されたという。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年2月18日号の掲載報告。

 本検討は、Medline、PsychINFO、Embaseをソースとして、1960~2013年11月に発表された殺人と統合失調症の関連研究についてシステマティックレビューとメタ解析を行った。分析では公表データに、論文執筆者から入手した未公表データを加え、ランダムエフェクトメタ解析にて、殺人再犯率のプール推定値を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症を有する殺人者の早期殺人再犯率を報告していた研究は3件で、それぞれ4.3%、4.5%、10.7%であったと報告していた。
・未公表のデータは11件の研究各著者から入手できた。11件は、1980~2013年に英語で発表された統合失調症を有する殺人者に関する研究であった。そのうち2件は再度の殺人を犯した1例をそれぞれ報告しており、9件では報告はなかった。
・試験間の殺人再犯率のバラツキは大きかった(I-square=79)。
・統合失調症を有する殺人者の早期殺人再犯率(いずれの試験でも図示はされていなかった)のプール推定値は、2.3%(95%信頼区間[CI]:0.07~7.2%)であった。
・公表データからの殺人再犯率のプール推定値は8.6%(95%CI:5.7~12.9%)であったが、個別に提供されたデータからのプール推定値は0.06%(同:0.02~1.8%)で、前者の推定値との間に10倍以上の開きがあった。
・以上から著者は、「司法権が及ぶ大半の区域において、統合失調症を有する人の殺人の再犯性は、公表されているほど一般的ではない」と結論している。また、研究間の殺人再犯率のバラツキの理由は不明であるが、「大半の区域で、釈放後の長期にわたるきちんとした治療と監督が殺人の再犯防止に効果を発揮していると思われた」と述べ、「前向きな大規模集団または複数地域での長期にわたる研究を行うことで、統合失調症の人による殺人の再犯リスクをより正確に推定できると思われる」とまとめている。

関連医療ニュース
統合失調症患者を発症前に特定できるか:国立精神・神経医療研究センター
若年発症統合失調症への第二世代抗精神病薬治療で留意すべき点
精神疾患患者は、何を知りたがっているのか

(ケアネット)