日本語でわかる最新の海外医学論文|page:578

日本人統合失調症患者の喫煙率に関する大規模コホートメタ解析

 統合失調症患者の喫煙は、世界的に一般集団と比較してより多くみられるが、日本での研究結果では矛盾が生じていた。最近では、一般集団の喫煙率は徐々に低下している。金沢医科大学の大井 一高氏らは、日本人の統合失調症患者を対象に、喫煙率の大規模コホートメタ解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月17日号の報告。

潜在性甲状腺機能低下症へのホルモン療法、最新メタ解析結果/JAMA

 潜在性甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモン療法の便益は不明とされる。スイス・ベルン大学病院のMartin Feller氏らは、成人患者において甲状腺ホルモン療法の有効性を検討し、一般的なQOLや甲状腺関連症状の改善効果はみられないことを示した。研究の成果は、JAMA誌2018年10月2日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値と遊離サイロキシン(FT4)正常範囲内で定義され、とくに甲状腺機能低下症に起因する可能性がある症状(疲労感、便秘、原因不明の体重増加など)を伴う場合は、甲状腺ホルモン(レボチロキシン)による治療が行われることが多い。最近、2つの大規模臨床試験の結果が報告されたことから、これらを含めたメタ解析のアップデートが求められていた。

日本の常識、世界の常識(解説:野間重孝氏)-931

2015年にLancet誌(オンライン版)に発表されたSCOT-HEART試験は、安定胸痛患者の管理に冠動脈造影CT(CTA)を利用することにより、診断精度、診断頻度を上げることができることを示したが、フォローアップ期間が短かったこともあり、非致死性・致死性心筋梗塞の発症頻度の低下を証明することはできなかった(低下傾向はみられたが統計学的有意差が得られなかった)。このことから、CTAの利用が非致死性・致死性心筋梗塞の発症を低下させることを示すことを主な目的として、同研究グループが前研究の参加者を対象に5年間(中間値で4.8年)の長期フォローを行ったのが本研究である。

認知症と自殺との関係

 認知症と診断された患者における自殺念慮の存在、促進因子、保護因子について、英国・プリマス大学のGary Hodge氏が、文献レビューおよびデータ統合を行った。本レビューでは、どのような因子が自殺念慮のリスク上昇に影響を及ぼすかを考慮し、認知症での死亡を議論する際、選択の道徳性と倫理性への反映を試みた。Dementia(London, England)誌オンライン版2018年9月14日号の報告。

医師の企業からの金銭受け取り、容認患者は少ない

 2014年から米国では国家的プログラムとして、医師に対する医療関連の企業支払いデータをOpen Paymentsのデータベースにて公開している。これらのデータに関する患者の意見は、患者の懸念や、このような支払い報告の仕組みを改善する政策担当者の理解に役立つとして、米国・コロンビア大学医療センターのGregory E. Stein氏らは、Open Paymentsの情報に対する患者の認識について評価した。その結果、医師の企業からの金銭受け取りを認めないとする患者が多いこと、一方でOpen Paymentsのデータベースにアクセスしたことがある/するつもりがあると回答した患者は少数派であることが明らかになった。著者は、「今回の結果が他の設定条件下でも一般化できるものかどうか、さらなる調査が必要である」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年9月13日号掲載の報告。

高血圧の発症、黒人成人でなぜ多い?/JAMA

 米国・アラバマ州立大学のGeorge Howard氏らは、白人成人との比較による黒人成人の高血圧症の過剰リスクについて臨床的および社会的要因との関連を調べた。媒介分析法を用いた検討の結果、男女ともに統計的な人種間の差を媒介しているキー要因は、南部型の食事スコア、食事におけるナトリウム値のカリウム値に対する比率、そして教育レベルであることが示されたという。また女性においては、腹囲とBMI値も主要因であった。米国の黒人集団は、高血圧症の有病率の高さが平均余命に格差をもたらす主因となっている。一方で、なぜ黒人成人で高血圧症の発症率が高いのかは明らかにされていなかった。JAMA誌2018年10月2日号掲載の報告。

BVS vs.DES、30日・1年時評価は?/Lancet

 拡大患者集団において、最適化された手技で留置された生体吸収性スキャフォールド(BVS)は金属製薬剤溶出ステント(DES)と比較して、30日時点と1年時点の標的病変不全および狭心症の発生について非劣性であることが示された。米国・コロンビア大学医療センターのGregg W. Stone氏らによる無作為化試験「ABSORB IV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年9月24日号に掲載された。先行研究で、BVSはDESよりも有害事象の発現頻度が多いことが示されていたが、1件の無作為化試験で狭心症の頻度がBVS群で低下したことが報告されていた。しかしながら、それら初期に行われた試験は、マスキングがされておらず、スキャフォールドにとって至適とされるサイズよりも小さい病変が登録された頻度が高く、留置テクニックは未熟であり、さらにBVSがより適しているのではと目されていた心筋梗塞の患者は除外されていた。

臨床試験サイトへ事前登録したら、結果の報告義務のあることを覚えておこう(解説:折笠秀樹氏)-929

EU臨床試験サイト(EUCTR)は事前登録サイトの1つである。そこでは、試験終了後12ヵ月以内に結果を報告することが義務付けられている。ネットから結果の欄へ書き込むことが求められているのだ。EUCTRには3万1,818試験が登録されており、報告期限を過ぎている臨床試験7,274試験を今回調べたようである。EUCTRへの結果報告を順守していたのは、ほぼ半数の49.5%にすぎなかった。順守していないのはなぜだろうか。これは類推になるが、ほとんどが怠惰か失念ではないだろうか。サイトに結果報告の記入がなければ、学会発表も論文もないことを意味するわけではない。試験状況を「終了(all completed)」とチェックしているのだから、学会発表や論文執筆を通じて公表はしていると思いたい。サイトに要約した結果を書くのは面倒くさいだけと信じたい。

統合失調症または双極性障害患者におけるアリピプラゾール経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスの比較

 リアルワールドにおける統合失調症または双極I型障害患者(BD-I)に対する長時間作用型持効性注射剤抗精神病薬(とくに、アリピプラゾール持効性注射剤月1回製剤400mg[AOM400]のような新規薬剤)と経口抗精神病薬のアドヒアランスを比較した研究は、あまり行われていない。米国・Partnership for Health Analytic ResearchのTingjian Yan氏らは、アリピプラゾールの経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスについて、比較を行った。Advances in Therapy誌オンライン版2018年9月11日号の報告。

メディカル・アフェアーズの役割は医療と製薬産業の橋渡し

 2018年9月29日に開催された第9回日本製薬医学会年次大会において、製薬企業におけるメディカルアフェアーズ(MA)とメディカルサイエンスリエゾン(MSL)の役割や期待に対する葛藤などについて、西村 剛氏(大日本住友製薬)、柴 英幸氏(アストラゼネカ社)、松本 志保氏(武田薬品工業)、向井 陽美氏(アッヴィ合同会社)が発表した。  MAとは、セールスの評価を伴わず、自社製品における適正使用の推進や正しい臨床成績を出すための製薬企業の一部門である。医薬品は製剤情報をはじめ、市販後の情報が追加・付加されることで価値が高まっていく。創出した医学情報は治療の選択肢を増やすことにつながり、医療従事者や患者にとってメリットになる。そのため正しい臨床情報を創出することが重要である。

実臨床下での新型Resolute Onyx vs.Orsiro/Lancet

 プラチナ-イリジウムコア/コバルト合金ワイヤーストラット耐久性ポリマー・zotarolimus溶出ステント(Resolute Onyx)は、超薄型コバルト-クロムストラット生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(Orsiro)と比較し、追跡期間1年時の安全性および有効性の複合エンドポイントについて非劣性であることが、オランダ・Medisch Spectrum TwenteのClemens von Birgelen氏らによる国際多施設共同無作為化単盲検非劣性試験「BIONYX」の結果、示された。著者は「イベント発現率は両群ともに低く、両ステントが安全であることを示唆しているが、ステント血栓症発症率がResolute Onyx群で非常に低く、さらなる臨床研究が推進される」とまとめている。これまで、実臨床下(all-comers)でResolute Onyxと他の薬剤溶出ステントを比較した研究はなかった。Lancet誌オンライン版2018年9月22日号掲載の報告。

資金提供企業は臨床試験にどの程度関与しているのか?/BMJ

 インパクトファクターの高い学術雑誌において、企業が資金提供したほとんどの研究で、その計画・実施および報告に企業の社員と医療・学術機関の著者が関与している一方、データの解析はしばしば学術機関の著者が関与することなく実施されていることが、デンマーク・Nordic Cochrane CentreのKristine Rasmussen氏らによる調査の結果、明らかとなった。研究者は共同試験を有益であると考えるが、学術研究の自由が失われているとの報告もあるという。企業のほとんどが臨床試験に資金提供しており、資金提供者は、時々公益よりもむしろ経済面で、試験をどのようにデザインし報告するか影響を与える可能性があるといわれていた。BMJ誌2018年10月3日号掲載の報告。

紙巻きタバコのニコチン含量の即時低減は段階的低減や現状維持に比べ減煙達成率は高いが、その一方で禁煙率の改善につながるか不明?(解説:島田俊夫氏)-928

紙巻きタバコの喫煙習慣が健康にとって有害なのは周知されている。しかし、多くの喫煙者が禁煙できないのも現実。タバコには習慣性があり、自力で禁煙に苦しむニコチン中毒患者を禁煙させるのは簡単ではない。喫煙による多種多様の有害物の長期吸入による影響が動脈硬化やがんの発生につながるため、禁煙達成こそゴールとなる。禁煙指導の推進の結果として、日本の喫煙者率は減少傾向にあるのは事実であるが、本来の目標を達成するためには喫煙ゼロを目指すべき。ニコチン含量を減らした紙巻きタバコを使った禁煙/減煙に関する論文は散見されるが、2018年9月4日号のJAMA誌に掲載された米国ミネソタ大学のHatsukami DK氏らの論文は、研究対象も多く、追跡期間も相対的に長く、困難な禁煙に風穴を開ける減煙成功率の高い方法に関する報告であり、禁煙に難渋している喫煙者にとり禁煙への扉を開く可能性を秘めた論文と考え私見をコメントする。

うつ病に対するアリピプラゾール増強療法の実臨床における有効性と安全性

 増強療法は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の適切な用量で十分な治療反応を有するうつ病患者に対する治療選択肢であるが、日々の実臨床における適用についてはあまり知られていない。昭和大学の上島 国利氏らは、実臨床において、従来の抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール増強療法の有効性および安全性について、プロスペクティブ多施設観察研究を実施した。Current medical research and opinion誌オンライン版2018年9月12日号の報告。

週1回GLP-1受容体作動薬albiglutideの心血管アウトカムは/Lancet

 心血管疾患を有する2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬albiglutideはプラセボと比べて、主要心血管イベント(MACE)を有意に抑制することが示された。米国・デューク大学のAdrian F. Hernandez氏らが、28ヵ国、610の医療機関を通じ、約9,500例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験「Harmony Outcomes」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年10月2日号で発表した。GLP-1受容体作動薬は、化学的構造や作用時間の違いで、臨床的アウトカムへの影響は異なることが知られているが、週1回投与タイプのalbiglutideの、2型糖尿病患者における心血管系への効果についてはこれまで不明であった。今回の結果を受けて著者は、「GLP-1受容体作動薬は、エビデンスベースに基づき、2型糖尿病患者の心血管イベントリスクを低減するための総合的な戦略の一部と見なすべきであろう」と述べている。

急性心筋梗塞、発症後早期のウエアラブル除細動器の効果/NEJM

 心筋梗塞(MI)を発症してから間もない駆出分画率35%以下の患者において、着用型自動除細動器(wearable cardioverter-defibrillator:WCD)の使用は、非使用者と比較して主要評価項目の90日時点の不整脈死リスクは有意に低下しなかった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJeffrey E. Olgin氏らが、2,302例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年9月27日号で発表した。駆出分画率が低下したMI後の患者において突然死は高率に認められるが、植込み型除細動器は、発症後40~90日間は禁忌とされている。研究グループは、このハイリスク期間中の突然死発生をWCDが低減するのか検討した。

冠動脈疾患の心不全、洞調律患者に対するリバーロキサバンの効果(COMMANDER HF)検証すべき仮説だったのか?(解説:高月誠司氏)-927

本研究は、冠動脈疾患の心不全、洞調律患者に対するリバーロキサバンの効果を検証する二重盲検の多施設ランダム化比較試験である。プラセボ群とリバーロキサバン2.5mgを1日2回投与群の2群に分け、主要アウトカムは全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントである。なぜ洞調律の冠動脈疾患の心不全例にリバーロキサバンを投与するのか、という疑問をまず持たれると思う。リバーロキサバンは非弁膜症性の心房細動の脳梗塞予防、深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の予防・治療薬である。本研究の背景には慢性心不全増悪後に心不全の再入院や死亡を起こすことが多く、その原因としてトロンビン関連の経路により惹起された、炎症や内皮機能不全や動脈・静脈血栓症が考えられると記載されている。思い切った仮説を検証しに行ったものである。確かに重症心不全例は心房細動や深部静脈血栓症を合併しやすく、本研究では登録時に心房細動例は除外されたものの、その後に発症した隠れ心房細動例には、若干の効果があるかもしれない。

双極性障害治療における新規非定型抗精神病薬の薬理学的および臨床的プロファイル

 双極性障害の有病率は、65歳以上の高齢成人では変化しており、コミュニティ住民の1%、入院患者の8~10%に及ぶといわれている。リチウムやバルプロ酸を含む古典的な薬剤は、最近のランダム化比較試験(RCT)で示唆されているように、有意な抗操作用を有するが、高齢者の双極性障害治療においては、非定型抗精神病薬の使用が注目されている。新規非定型抗精神病薬は、一般的な成人双極性障害患者に対する忍容性および有効性について関心が高まっている。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のAkshya Vasudev氏らは、高齢双極性障害患者に対する新規非定型抗精神病薬の有効性および忍容性について、システマティックレビューを行った。Drugs & Aging誌オンライン版2018年9月6日号の報告。