統合失調症または双極性障害患者におけるアリピプラゾール経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスの比較

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/15

 

 リアルワールドにおける統合失調症または双極I型障害患者(BD-I)に対する長時間作用型持効性注射剤抗精神病薬(とくに、アリピプラゾール持効性注射剤月1回製剤400mg[AOM400]のような新規薬剤)と経口抗精神病薬のアドヒアランスを比較した研究は、あまり行われていない。米国・Partnership for Health Analytic ResearchのTingjian Yan氏らは、アリピプラゾールの経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスについて、比較を行った。Advances in Therapy誌オンライン版2018年9月11日号の報告。

 2012年1月~2016年6月までのTruven MarketScanデータを用いた2つのレトロスペクティブコホート分析より、AOM400による治療を受けたか経口抗精神病薬単独療法から他の治療に移行した、統合失調症またはBD-I患者を抽出し服薬アドヒアランスと服薬中止について比較を行った。アドヒアランスは、調査開始から1年間における服薬日数の割合(PDC)0.8以上と定義した。AOM400および経口抗精神病薬と服薬アドヒアランスとの関連は、線形回帰モデルを用いて調べた。服薬中止までの時間およびリスクは、ベースライン時の共変量で調整した後、Kaplan-Meier曲線およびCox回帰を用いて推定した。マッチしたコホートを作成するため、傾向スコアマッチングと完全一致マッチングを組み合わせて感度分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・最終コホートサイズは、統合失調症患者ではAOM400群408例、経口抗精神病薬群3,361例、BD-I患者ではAOM400群413例、経口抗精神病薬群1万5,534例であった。
・統合失調症患者の調整平均PDCは、AOM400群が経口抗精神病薬群より高く(0.57 vs.0.48、p<0.001)、服薬中止リスクは、AOM400群より経口抗精神病薬群が高かった(ハザード比[HR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.29~1.64)。
・BD-I患者の調整平均PDCについても、AOM400群が経口抗精神病薬群より高かった(0.59 vs.0.44、p<0.001)が、服薬中止リスクに関しては、経口抗精神病薬群がAOM400群より高かった(HR:1.71、95%CI:1.53~1.92)。

 著者らは「リアルワールドにおいて、統合失調症またはBD-I患者に対するAOM400治療は、経口抗精神病薬治療と比較し、PDC0.8以上の服薬アドヒアランス良好な割合が有意に高く、治療中止までの期間も有意に延長された」としている。

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(鷹野 敦夫)