日本語でわかる最新の海外医学論文|page:579

免疫CP阻害薬の治療効果と便秘の関係

 近年、腸内細菌叢にある宿主免疫制御が報告され、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果との相関が注目されている。また、腸内細菌叢は排便習慣により変化することが報告されている。非小細胞肺がん(NSCLC)患者における便通異常と、ICIの治療効果の関連性について後ろ向きに検討した京都府立医科大学の研究結果が、片山 勇輝氏らにより第16回日本臨床腫瘍学会で報告された。

合成カンナビノイド関連凝固障害が米国で集団発生/NEJM

 2018年3~4月に、米国イリノイ州で合成カンナビノイドの使用に関連する凝固障害の患者が集団発生した。予備検査で抗凝固薬の混入の可能性が示されたため、確認検査を行い、患者データを再検討したところ、数種のスーパーワルファリンの混入が確かめられた。多くの患者は、ビタミンK1補充療法で症状が抑制されたが、合成カンナビノイド化合物の詳細は判明していないという。米国・University of Illinois College of Medicine at PeoriaのAmar H Kelkar氏らが、NEJM誌2018年9月27日号で報告した。

扁平上皮NSCLCの1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS、PFS延長/NEJM

 未治療の転移を有する扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を化学療法と併用すると、化学療法単独に比べ全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間がいずれも有意に延長することが、スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏らが行った「KEYNOTE-407試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年9月25日号に掲載された。転移を有する扁平上皮NSCLCの現在の標準的1次治療は、プラチナ製剤ベースの化学療法またはペムブロリズマブ(腫瘍細胞の≧50%がPD-L1を発現している患者)とされる。一方、非扁平上皮NSCLCでは、最近、プラチナ製剤ベース化学療法とペムブロリズマブの併用により、OS期間の有意な延長が報告されていた。

心血管病の証拠のない2型糖尿病患者への予防的ω-3多価不飽和脂肪酸の投与効果は期待はずれか(ω-3PUFA効果は夢か幻か?)(解説:島田俊夫氏)-926

多価不飽和脂肪酸(PUFA)が心血管病に良い影響を与えるということが巷でささやかれており、サプリメントも広く普及している。PUFAにまつわる話はグリーランドのイヌイット(エスキモー)に心血管病が少ないことに着目した研究に端を発している1)。この研究以降、精力的に研究が行われてきたが、PUFAサプリメントの投与と心血管病の予防・治療への有効性は、いまだ確立されていない。とくに1次予防に関しては、悲観的な結果が優勢であるがわが国の大規模研究JELIS2)は、高コレステロール血症に対してスタチン投与中の集団を無作為にEPA(1,880mg/day)、プラセボに割り付けることにより、主冠動脈イベント発症率は19%有意に低下した。2次予防サブ解析では累積冠動脈イベントが23%低下した。脳卒中に関しては1次予防効果は認めず、2次予防効果において20%の抑制効果が認められた。しかし、この研究がprobe法を用いた研究であったことが信憑性に疑念を抱かせる結果となっている。

日本における精神科病床への新規入院患者の在院日数に関する研究

 新たに入院した精神疾患患者が、どのように医療資源を消費しているかを正確に理解することは、精神科医療に携わる臨床家や政策立案者にとって重要である。東京都医学総合研究所の奥村 泰之氏らは、日本における新たに入院した精神疾患患者のパターンおよび在院日数について調査を行った。Journal of epidemiology誌オンライン版2018年9月15日号の報告。

受刑者の皮膚病治療に遠隔診療が有用

 一般集団と比較して受刑者の皮膚疾患の有病率は高いという。その受刑者の皮膚病変の診断と治療にあたっては、皮膚に対する専門的なアドバイスが必要である。刑務所内の8つの医療施設と2つの皮膚科専門病院の皮膚科医が受刑者のために遠隔診療を行ったところ、治療計画を完了した患者割合が向上した。このシステムを用いて遠隔診療を行ったフランス・URC Eco Ile-de-FranceのKevin Zarca氏らによると「移動のコストや予約のキャンセルの割合を考慮すると、対面診療と比較し優れた介入であり、医師が受け入れ可能な診療である」ということが示された。PLOS ONE誌オンライン版2018年9月24日号掲載の報告。

気泡音の聴取だけでは不確実? 胃管挿入の事故防止~医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、栄養剤投与目的に行われる胃管挿入による事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第6号)を公表した(9月25日)。胃管を用いた経鼻経管栄養は、本来侵襲が少なく、かつ簡便なために多くの症例に施行される。しかし、稀にではあるが、死亡事例の発生が報告されている。事故の発生を未然に防ぐため、誤挿入のリスク要因や挿入時の位置確認方法、合併症回避のための具体的対応などについて、以下の6つの提言が示された。

大腿膝窩動脈PAD、Eluvia vs.Zilver PTXステント/Lancet

 大腿膝窩動脈の末梢動脈疾患(PAD)のステント治療について、ポリマー被覆・パクリタキセル溶出ステント(Eluvia)は、非ポリマー・パクリタキセル被覆ステント(Zilver PTX)に対し、12ヵ月時点の1次開存率および主要有害事象に関して非劣性であることが確認された。米国・Lankenau Heart InstituteのWilliam A. Gray氏らによる「IMPERIAL試験」の結果で、これまで大腿膝窩動脈部位の薬剤溶出ステントの臨床的有効性について、最新デバイスの比較は行われていなかった。Lancet誌オンライン版2018年9月24日号掲載の報告。

ブドウ球菌性菌血症、アルゴリズム治療vs.通常ケア/JAMA

 ブドウ球菌性菌血症患者において、検査と治療をガイドするアルゴリズムを使用した臨床的成功率は、通常ケアの場合と比較して非劣性であることが、米国・デューク大学医療センターのThomas L. Holland氏らによる無作為化試験の結果、示された。しかし、重大有害事象の発現頻度に有意な差は認められなかったものの、信頼区間値が広域であることから結果についての解釈は限定的であった。ブドウ球菌性菌血症に対する抗菌薬の適切な投与期間は不明である。著者は今回の結果を踏まえて、「さらなる検討を行い、アルゴリズムの有用性を評価する必要がある」と述べている。JAMA誌2018年9月25日号掲載の報告。

禁煙に伴う体重増加は糖尿病の短期リスクを増やすも心血管病死・全病因死亡に影響なし!(解説:島田俊夫氏)-925

紙巻きタバコが体に悪いことは昔からよく知られているけれど、耳を傾けようとしない無関心な方々が数多く見受けられます。もちろんタバコは本人にとって有害であるだけでなく、身辺にいる家族を含め、被害を被る人たちが多数いることを顧みて一日も早く禁煙することを勧めます。“タバコは万病の元”という言葉は、本当にタバコの持つ有害性を端的に表しています。私は患者さんに診療時、“タバコは百害あって一利なし”という言葉を使い、説明させてもらっています。多くの方は耳を傾けてくれますが、残念ながらタバコの真の怖さを十分に理解してもらえていないと感じています。「タバコはお金もかかり、あらゆる病気にかかりやすく、タバコに火をつけて燃やせば燃やすほど、あなたの命のロウソク(ロウソク寿命)を短くする貧乏神のようなものです」と話すと、「タバコを吸うとストレスが緩和できる」といった得手勝手なこじつけの類の言い訳が時折返ってきます。これまで禁煙と体重増加を取り上げた論文1)は散見されますが、禁煙に伴う体重増加を心血管死亡、全病因死亡に関連付けた信憑性の高い研究はほとんどありません。

心肺停止後の生存率は日本が10%前後、欧米は60~70%

 2018年9月18日、フィリップス・ジャパンは、都内において同社が推進する「Heart safe city構想」に関する記者発表会を行った。この構想は、心肺停止からの社会復帰率「世界一」を目指すもので、発表会では今後の計画と心肺蘇生に関するわが国の現状が解説された。  はじめに同社代表取締役社長の堤 浩幸氏が、わが国の心停止の救命の現状と今回の「Heart safe city構想」について説明した。

中等症~重症の二次性MRに経皮的僧帽弁修復術は有効か/NEJM

 ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を受けているにもかかわらず症状が持続している中等症~重症の二次性僧帽弁閉鎖不全症(MR)の心不全患者において、薬物療法単独と比較し薬物療法+経皮的僧帽弁修復術を行った患者では、24ヵ月以内の心不全による入院率と全死因死亡率が低下し、デバイス関連合併症の発生率も低いことが認められた。米国・コロンビア大学のGregg W. Stone氏らが、MitraClip(Abbott Vascular)を用いた経皮的僧帽弁修復術の安全性と有効性を検証した多施設共同無作為化非盲検比較試験「COAPT」の結果を報告した。左室機能不全に起因するMRを伴う心不全患者の予後は不良であり、経皮的僧帽弁修復術はこうした心不全患者の臨床転帰を改善する可能性があった。NEJM誌オンライン版2018年9月23日号掲載の報告。

健康高齢者への低用量アスピリン、無障害生存期間を延長せず/NEJM

 健康な高齢者に対する低用量アスピリン投与は、プラセボ投与と比較して、無障害生存期間を延長することはなく、大出血の頻度を増加することが示された。オーストラリア・モナシュ大学のJohn J. McNeil氏らが、米国およびオーストラリアの計50施設にて約2万例を対象に実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ASPREE試験」の結果を報告した。本試験は、主要評価項目に関してアスピリンの使用継続が有益ではないことが認められたため、追跡期間中央値4.7年で早期終了となっている。アスピリンの医学的適応がない高齢者において、低用量アスピリンの使用が増加しているが、健康な高齢者の健康寿命を延ばすためのアスピリン使用に関する情報は限定的であった。NEJM誌オンライン版2018年9月16日号掲載の報告。

デュルバルマブ、切除不能StageIII NSCLCのOS改善(PACIFIC)/NEJM

 切除不能StageIII 非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療はプラチナ併用化学療法と放射線療法の同時治療である(化学放射線同時療法、以下CCRT)。多くの研究が行われてきたものの、生存アウトカムは改善せず、5年生存率はわずか15~30%である。一方、前臨床試験において、化学放射線療法が腫瘍細胞のPD-L1の発現を増加することが示され、化学放射線療法後のPD-L1阻害薬の可能性が期待されていた。

禁煙のための電子タバコ、ニコチン依存症での役割

 電子タバコ(電子ニコチン送達システム:ENDS)は、若者の間で一般的なタバコ製品となりつつある。電子タバコには、有害物質の低減や禁煙に効果的であるとのエビデンスもあるが、議論の余地は残っている。電子タバコが、ニコチン依存者の喫煙の減少や禁煙に対してどのように寄与するかは、ほとんど知られていない。米国・ノースダコタ大学のArielle S. Selya氏らは、ニコチン依存症に対する電子タバコの有効性について検討を行った。Nicotine & Tobacco Research誌2018年9月4日号の報告。

未治療ALK陽性肺がん、brigatinib vs.クリゾチニブ/NEJM

 ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)阻害薬未治療で、局所進行/転移を有するALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、開発中の次世代型ALK阻害薬brigatinibはクリゾチニブと比較し、無増悪生存期間を有意に延長したことが示された。米国・コロラド大学のD. Ross Camidge氏らが、約280例を対象に行った第III相の非盲検無作為化試験「ALTA-1L(ALK in Lung Cancer Trial of Brigatinib in 1st Line)試験」の結果で、NEJM誌オンライン版2018年9月25日号で発表した。brigatinibは、クリゾチニブの効果が認められなかったALK陽性NSCLC患者における有効性が確認されていた。