米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJohn W Ostrominski氏らが、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)の3件の大規模試験(FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF)をプール解析した「FINE-HEART」から、フィネレノンは左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)の心血管死または心不全による入院を13%減少させることを示唆した。JACC:Heart Failure誌2025年8月号掲載の報告。
本研究は3試験をプール解析し、LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)あるいはHFpEF患者におけるフィネレノンの安全性・有効性を評価した。主要評価項目は、フィネレノンとプラセボの心血管死または心不全による入院に対する治療効果で、試験別に層別化したCox比例ハザード回帰モデルを用いた。副次評価項目は、心血管死、心不全による入院、新規発症心房細動、および全死亡であった。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象1万8,991例のうち、7,008例(36.9%)がHFmrEF/HFpEF(平均年齢71±10歳、女性44%)であった。
・追跡期間中央値2.5年において、フィネレノン群はプラセボ群と比較し、心血管死または心不全による入院を減少させた(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.96、p=0.008、試験全体の交互作用のp=0.24)。
・主要なサブグループおよびベースラインの推定糸球体濾過量(交互作用のp=0.47)、尿アルブミン/クレアチニン比(交互作用のp=0.62)、HbA1c(交互作用のp=0.93)において、フィネレノン群で一貫した効果が認められた。
・フィネレノン群は、心不全による入院(HR:0.84、95%CI:0.74~0.94、p=0.003)および新規発症の心房細動(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97、p=0.030)を減少させたが、心血管死および全死亡率の統計学的に有意な減少は認められなかった。
・フィネレノン群ではプラセボ群と比較して高カリウム血症の発生率が高く、低カリウム血症は低かった。
・重篤な有害事象の発生率は両群で同程度であった。
研究者らは、「HFmrEFまたはHFpEFの参加者データをプール解析したことで、高リスクで不明瞭な点が多いHFpEF患者に対するフィネレノンの安全性と有効性に対する理解が深まる可能性がある。心血管・腎臓・代謝リスクと広範囲にわたり、HFmrEF/HFpEF患者へのフィネレノンの使用が支持される」としている。
(ケアネット 土井 舞子)