日本語でわかる最新の海外医学論文|page:108

混合型脂質異常症へのRNA干渉薬zodasiran、TGを有意に低下/NEJM

 肝臓におけるアンジオポエチン様3(ANGPTL3)の合成と分泌を阻害する低分子干渉(si)RNA薬のzodasiranは、混合型脂質異常症患者において、プラセボと比較し24週時のトリグリセライド(TG)値を有意に低下させたことが示された。米国・Mount Sinai Fuster Heart HospitalのRobert S. Rosenson氏らARCHES-2 Trial Teamが、4ヵ国25施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験「ARCHES-2試験」の結果を報告した。ANGPTL3は、リポ蛋白および血管内皮リパーゼを阻害することで、TGに富むレムナントリポ蛋白の肝臓への取り込みを阻害する。ANGPTL3遺伝子の機能喪失型変異保有者は非保有者と比較し、TG、LDLコレステロール、HDLコレステロール、non-HDLコレステロールの値が低く、アテローム動脈硬化性心血管疾患のリスクが低いことが知られていた。NEJM誌オンライン版2024年5月29日号掲載の報告。

がんの臨床試験への参加でOSが延長するか?/JAMA

 カナダ・マギル大学のRenata Iskander氏らは、がんの臨床試験に参加した患者と参加しなかった患者の全生存期間(OS)を比較した研究についてシステマティック・レビューとメタ解析を行い、全体として試験参加群におけるOSの改善が示唆されたが、バイアスや交絡因子を考慮した研究に限定するとOSに対するベネフィットは認められなかったことを示した。がん患者が臨床試験に参加することが、ルーチン治療を受けた場合と比較してOSの延長と関連するかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年5月20日号掲載の報告。

メトホルミンは低リスク限局性前立腺がんの進行を抑制するか?(MAST)/ASCO2024

 前臨床データおよび疫学データにおいて、メトホルミンが前立腺がんの進行を遅らせる可能性が示唆されてきた。しかし、積極的監視療法適応の低リスク限局性前立腺がん患者において、メトホルミンは前立腺がんの進行を抑制しないことが示された。カナダ・Princess Margaret Cancer CentreのNeil E. Fleshner氏が、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照MAST試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。 ・対象:12ヵ月以内に新たに診断された低リスク限局性前立腺がん患者(Gleasonスコア≦6、生検陽性コア数≦1/3、陽性コアにおけるがん占拠率<50%、臨床病期T1c~T2a、PSA≦10ng/mL、HbA1c≦6.5%) ・試験群(メトホルミン群):積極的監視療法+メトホルミン(850mg1日1回で1ヵ月間投与後850mg1日2回で35ヵ月間投与) 204例 ・対照群(プラセボ群):積極的監視療法+プラセボ 203例 ・評価項目: [主要評価項目]無増悪期間(治療を要する進行[前立腺摘除術、放射線治療、ホルモン療法、focal therapyのいずれかの開始]または病理学的進行[生検陽性コア数>1/3、陽性コアにおけるがん占拠率≧50%、Gleasonスコア≧4]のうち最も早い発生までの期間と定義)

ロルラチニブ、ALK肺がん1次治療の効果をさらに改善、5年PFS中央値に到達せず(CROWN)/ASCO2024

 ALK遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するロルラチニブ1次治療の無増悪生存期間(PFS)が5年経過しても中央値に達しなかった。  第III相CROWN試験の5年フォローアップ結果を、オーストラリア・PeterMaCllumがんセンターのBenjamin J. Solomon氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。

HR+/HER2-転移乳がん、SG+ペムブロリズマブvs.SG(SACI-IO HR+)/ASCO2024

 既治療の切除不能な局所進行または転移を有するHR+/HER2-乳がんに対して、sacituzumab govitecan(SG)+ペムブロリズマブを、SG単独と比較した無作為化非盲検第II相SACI-IO HR+試験で、ペムブロリズマブ併用による無増悪生存期間(PFS)の有意な改善は認められなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のAna Christina Garrido-Castro氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。

国内の患者・市民参画(PPI)に光、「患医ねっと」がMade with Patients Award受賞

 欧州で患者中心の医療・医薬品開発に力を注いでいる組織PFMD、EUPATI、EPFが5月23日(日本時間)に開催したイベント『Patient Engagement Open Forum 2024』において、患医ねっと「くすりと生活プロジェクト」(代表:鈴木 信行氏)が、Made with Patients Awardsのファイナリストとしてノミネートされ、審査員特別賞を受賞した。  患医ねっとは2011年に鈴木氏が設立し、より良い患者協働の医療環境を目指し、患者と医療者がともにイベントや研修会の開催を通じて、お互いを深く知る場を作ることを目的として活動を行う団体である。鈴木氏は生まれつき二分脊椎症を抱え、がんサバイバーでもある。「病気の先にあるその人らしい生活、皆で支えられる社会を求め、『患者と医療者をつなぎ、日本のより良い医療環境を実現させる』理念」を掲げ、医療にかかわる人々をつなげる機会や場を創出している。今回ノミネートされた“Made with Patients Award”は、医療における患者参画の優れた模範となる個人や取り組みを表彰するもので、今年は世界中の110もの候補が審査され、日本人として唯一、鈴木 信行氏が団体の代表として審査員特別賞であるJury‘s Special Champion Awardを獲得した。

“アルバイト代”の占める割合、収入・診療科による違いは?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で昨年度のアルバイト代について尋ねたところ、全体の26%が200万円未満と回答、次いで13%が200~400万円未満、9%が300~600万円未満と回答した。一方で、34%はアルバイトをしていないことが明らかとなった。

東日本大震災による住宅被害や精神的ダメージと修正可能な認知症リスクとの関連

 東北大学の千葉 一平氏らは、地域住民の高齢者における、東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージと認知症の修正可能なリスク因子との関連を評価する目的で横断的研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2024年5月3日号の報告。  対象は、地域住民の高齢者2万9,039人(平均年齢:69.1±2.9歳、女性の割合:55.5%)。東日本大震災後の災害関連被害(住宅全壊または半壊)および精神的ダメージ(心的外傷後ストレス反応[PTSR])を、自己申告式アンケートを用いて収集し評価した。修正可能なリスク因子には、うつ病、社会的孤立、身体不活動、喫煙、糖尿病を含んだ。災害関連被害と修正可能なリスク因子との関連を評価するため、社会人口統計学的変数と健康状態変数を調整した後、最小二乗法および修正ポアソン回帰モデルを用いた。

IPFに対するpamrevlumab、第III相で主要アウトカム達成せず/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)患者において、結合組織成長因子(connective tissue growth factor:CTGF)に対する完全ヒト型モノクローナル抗体であるpamrevlumabはプラセボと比較し、ベースラインから48週時の努力肺活量(FVC)の絶対変化量に有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のGanesh Raghu氏らZEPHYRUS-1 Study Investigatorsが世界9ヵ国117施設で実施した、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ZEPHYRUS-1試験」で示された。pamrevlumabは第II相試験において、IPFの進行を抑制し、重大な有害事象は認められなかったことが報告されていた。JAMA誌オンライン版2024年5月19日号掲載の報告。

重症大動脈弁狭窄症へのTAVI、Myvalは既存THVに非劣性/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、バルーン拡張型の経カテーテル心臓弁(THV)であるMyval(Meril Life Sciences・インド)は、術後30日時の複合エンドポイントに関して既存のTHV(Sapienシリーズ[Edwards Lifesciences・米国]、またはEvolutシリーズ[Medtronic・米国])に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のAndreas Baumbach氏らLANDMARK trial investigatorsが実施した「LANDMARK試験」で示された。バルーン拡張型弁(BEV)であるMyval THVシリーズは直径が1.5mm刻みであることから、通常の3mm刻みの生体弁と比較し、大動脈弁輪との正確なサイズ合わせが容易となる。Myval THVの安全性と有効性は、これまで症候性重症大動脈弁狭窄症患者および二尖弁患者を対象とした単群試験または傾向スコアマッチング試験において示されていた。Lancet誌2024年オンライン版5月22日号掲載の報告。

転移大腸がん1次治療のニボルマブ+イピリムマブ、PFS2も良好(CheckMate 8HW)/ASCO2024

 肺がん、胃がんなど幅広い固形がんで有用性が報告されているニボルマブ+イピリムマブのレジメン。本レジメンの転移大腸がん1次治療における有用性を検証するCheckMate 8HW試験では、2024年1月に行われたASCO-GIにおいて、ニボ+イピが化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長したことがすでに報告されている。5月31日~6月4日に行われた米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)では、米国・南カリフォルニア大学のHeinz-Josef Lenz氏が本試験のPFSの追加解析結果を報告した。

EGFR陽性NSCLC、CRT後のオシメルチニブでPFSが大幅に改善(LAURA)/ASCO2024

 切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)において、化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法が有効であることが示され、標準治療となっている。しかし、EGFR遺伝子変異を有する患者は、本治療法の効果が乏しいことが知られており、アンメットメディカルニーズが存在する。そこで、CRT後のオシメルチニブの効果を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「LAURA試験」が実施された。その結果、CRT後のオシメルチニブで無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善することが示された。米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏が、LAURA試験のPFSに関する主解析および全生存期間(OS)に関する第1回中間解析の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。なお、本発表の詳細はNEJM誌2024年6月2日号に同時掲載された。

転移乳がんへのT-DXd、HER2-ultralowでもPFS延長(DESTINY-Breast06)/ASCO2024

 従来のHR陽性(+)かつHER2陰性の転移を有する乳がんのうち、約60~65%がHER2-low(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、約20~25%がHER2-ultralow(膜染色を認めるIHC 0[IHC >0<1+])とされているため、約85%がトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が有用である可能性がある。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、HR+かつHER2-lowおよびHER2-ultralowで化学療法未治療の転移・再発乳がん患者を対象とした第III相DESTINY-Breast06試験の結果、T-DXdは化学療法群と比較して、有意に無増悪生存期間(PFS)を延長したことを、イタリア・ミラノ大学のGiuseppe Curigliano氏が発表した。

治療抵抗性統合失調症患者の再入院に対するLAI抗精神病薬併用の効果

 台湾・Taoyuan Psychiatric CenterのYun Tien氏らは、クロザピンで治療中の治療抵抗性統合失調症患者における長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用と精神科入院リスクの関連を評価した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2024年5月1日号の報告。  本研究は、3次精神科センター単一施設レトロスペクティブコホート研究として実施された。DSM-IV-TRおよびDSM-5の診断基準による治療抵抗性統合失調症患者の再入院ハザード比(HR)を分析した。経口抗精神病薬またはLAI抗精神病薬の有無にかかわらず、クロザピンのさまざまな向精神薬レジメンを検討した。クロザピンの投与量と入院歴により層別化を行った。  主な結果は以下のとおり。

人間の精巣からマイクロプラスチックを検出

 マイクロプラスチックが男性に特殊な危険をもたらす可能性を示唆する新たな知見が、米ニューメキシコ大学薬学部指導教授のMatthew Campen氏らの研究によって得られた。この研究では、人間の精巣の中には動物の精巣や人間の胎盤と比べて3倍ものマイクロプラスチックが存在していることが示された。この研究の詳細は、「Toxicological Sciences」5月15日号に掲載された。  Campen氏はCNNの取材に対して、「これは警戒すべき状況であり、注意深く見ていく必要がある」と語り、「われわれの体内にどれほど多くのプラスチックが存在しているのかが分かりつつあるところだ。この問題について重点的に研究して、マイクロプラスチックが不妊や精巣がん、その他のがんの発生に何らかの影響を与えているのかどうかを確認する必要がある」と語っている。

2型糖尿病患者は疾患知識が不十分

 2型糖尿病患者の疾患に関する知識は十分とは言えず、患者教育に改善の余地があるとする研究結果が報告された。コインブラ大学(ポルトガル)のPedro L. Ferreira氏らが、同国の外来2型糖尿病患者を対象に行った調査から明らかになったもので、詳細は「Frontiers in Public Health」に3月8日掲載された。質問項目の中では、ケトアシドーシスの兆候に関する理解が最も不足していたという。  糖尿病の合併症抑止には患者の自己管理が重要であり、自己管理のためには疾患や治療法に関する正しい知識が必要とされる。知識の不足や誤解は適切な糖尿病治療の障壁となり、合併症リスクの増大につながる可能性がある。これを背景にFerreira氏らは、合併症抑止に必要とされる疾患情報の認知や理解レベルの実態を把握するため、患者対象の横断的研究を行った。

症例発見法によるCOPD・喘息の早期診断、医療利用の低減に/NEJM

 未診断の慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の成人を特定するための症例発見法(case-finding method)によって呼吸器専門医の指示による治療を受けた患者は、通常治療の患者と比較して、その後の呼吸器疾患による医療利用が少なくなることが、カナダ・オタワ大学のShawn D. Aaron氏らUCAP Investigatorsが実施した「UCAP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月19日号に掲載された。  研究グループは、未診断のCOPDまたは喘息を有する患者では、症例発見法を用いた早期の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療利用が低減し、健康アウトカムが改善するかを検証する目的で無作為化対照比較試験を実施し、2017年6月~2023年1月にカナダの17施設で参加者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。

食道腺がん、周術期化学療法が術前化学放射線療法を上回る(ESOPEC)/ASCO2024

 切除可能な局所進行食道腺がんに対する世界的な標準治療は、術前化学放射線療法(CROSS療法)+手術とされてきた。一方、切除可能な胃がんに対しては、周術期化学療法(FLOT療法)+手術といった新たな治療戦略の開発が進められている。これらの両治療戦略を直接比較した第III相ESOPEC試験の結果、FLOT療法がより優れた治療成績を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)のPlenary Sessionにおいて、ドイツ・ビーレフェルト大学のJens Hoeppner氏が本試験の詳細を報告した。

ドセタキセル後のアビラテロン+カバジタキセル、転移を有する去勢抵抗性前立腺がんでPFS改善(CHAARTED2)/ASCO2024

 ドセタキセル治療歴のある、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、アビラテロンとカバジタキセルの併用療法が無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。米国・ウィスコンシン大学カーボンがんセンターのChristos Kyriakopoulos氏が、第II相無作為化非盲検EA8153(CHAARTED2)試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。 ・対象:去勢感受性前立腺がん(CSPC)に対する3サイクル以上のドセタキセル治療歴のあるmCRPC患者(ECOG PS>2、CRPCに対する治療歴、Grade≧2の末梢性ニューロパチーを有する患者は除外) ・試験群(カバジタキセル併用群):カバジタキセル(25mg/m2を3週ごとに最大6サイクルまで静脈内投与)+アビラテロン(1,000mgを1日1回)+prednisone(5mgを1日2回) 111例 ・対照群(アビラテロン単独群):アビラテロン+prednisone 112例 ・評価項目: [主要評価項目]PFS [主要な副次評価項目]PSA反応、PSA増悪までの時間(TTPP)、全生存期間(OS)、安全性と忍容性

CDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行したHR+/HER2-乳がん、アベマシクリブ併用でPFS改善(postMONARCH)/ASCO2024

 HR+/HER2-進行乳がんの標準的な1次治療であるCDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行した患者を対象に、アベマシクリブ+フルベストラントをフルベストラント単独と比較した第III相postMONARCH試験で、アベマシクリブ併用による無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示された。米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのKevin Kalinsky氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。