世代を超えた自閉スペクトラム症と認知症との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/19

 

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、認知機能低下や認知症のリスクが高いことを示唆するエビデンスが報告されている。この関連性が、ASDと認知症の家族的因子によるものかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ASD患者の親族における認知症リスクを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2025年5月14日号の報告。

 スウェーデンのレジスターにリンクさせた家族研究を実施した。1980〜2013年にスウェーデンで生まれた個人を特定し、2020年までフォローアップを行い、ASDの臨床診断を受けた人を特定した。このASD患者と両親、祖父母、叔父/叔母をリンクさせた。ASD患者の親族における認知症リスクの推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。認知症には、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、その他の認知症を含めた。親族の性別およびASD患者の知的障害の有無で層別化し、解析を行った。

 主な内容は以下のとおり。

・ASD患者の親族は、認知症リスクが高かった。
・認知症リスクは、両親で最も高く、祖父母、叔父/叔母では低かった。
【両親】ハザード比(HR):1.36、95%信頼区間(CI):1.25〜1.49
【祖父母】HR:1.08、95%CI:1.06〜1.10
【叔父・叔母】HR:1.15、95%CI:0.96〜1.38
・ASD患者と母親の認知症リスクには、父親よりも強い相関が示唆された。
【母親】HR:1.51、95%CI:1.29〜1.77
【父親】HR:1.30、95%CI:1.16〜1.45
・ASD患者の親族において、知的障害の有無による差はわずかであった。

 著者らは「ADSとさまざまな認知症は、家族内で共存しており、遺伝的関連の可能性を示唆する結果となった。今後の研究において、ASD患者の認知症リスクを明らかにすることが求められる」としている。

(鷹野 敦夫)