アリピプラゾールの持続性注射剤(LAI)は、統合失調症の治療において安全性および有効性が実証されている。しかし、アリピプラゾールに対する臨床反応には個人差があり、切り替え前に服用していた抗精神病薬によるD2パーシャルアゴニストおよびD2アップレギュレーションが関連している可能性が示唆されている。韓国・ソウル大学のEuitae Kim氏らは、臨床的に安定した統合失調症患者における経口抗精神病薬からアリピプラゾールLAI月1回(AOM)投与への切り替えについて、前治療の抗精神病薬を考慮し、症状悪化または有害事象の有無を評価した。Schizophrenia Research誌2025年7月号の報告。
本試験は、20週間のプロスペクティブ非盲検多施設共同研究として実施した。臨床的に安定した統合失調症患者を、前治療の経口抗精神病薬に基づいて経口アリピプラゾール群(I群)または他のD2アンタゴニスト群(II群)に分類し、4週間ごとのAOM投与への切り替えを行った。主要エンドポイントは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とした。治療中に発生した有害事象(TEAE)のモニタリングを行った。
主な結果は以下のとおり。
・I群100例、II群101例が試験を完了した。
・AOMへの切り替え後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化は、I群で-9.43±9.79(p<0.0001)、II群で-4.04±8.72(p=0.0102)であった。
・II群はI群と比較し、AOM開始後に睡眠障害(p=0.0243)および精神症状(p=0.0042)のTEAEがより多く発生したが、いずれも試験期間中に消失した。
・精神症状のTEAEは、前治療における経口抗精神病薬の漸減の速さと関連が認められた(p=0.0269)。
・AOM投与開始による症状の悪化は認められなかった。
・前治療における経口抗精神病薬の種類にかかわらず、AOMは有意な副作用なく精神症状を軽減した。
・D2アンタゴニストによる治療歴を有する患者では、一過性の精神症状のTEAEがみられる可能性があるが、長期のクロスタイトレーションで最小限に抑制できることが示唆された。
(鷹野 敦夫)