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アスピリンがよい?それともクロピドグレル?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は1986年に循環器内科に入ったので、PCI後に5%の症例が血管解離などにより完全閉塞する時代、解離をステントで解決したが数週後に血栓閉塞する時代、薬剤溶出ステントにより1~2年後でも血栓性閉塞する時代を経験してきた。とくに、ステント開発後、ステント血栓症予防のためにワルファリン、抗血小板薬、線溶薬などを手当たり次第に試した時代を経験している。チクロピジンとアスピリンの併用により、ステント血栓症をほぼ克服できたインパクトは大きかった。チクロピジンの後継薬であるクロピドグレルは、急性冠症候群の1年以内の血栓イベントを低減した。アスピリンとクロピドグレルの併用療法は、PCI後の抗血小板療法の標準治療となった。 抗血小板併用療法により重篤な出血イベントリスクが増える。それでも1剤を減らして単剤にするのは難しい。単剤にした瞬間、血栓イベントが起これば自分の責任のように感じてしまう。やめる薬をアスピリンにするか、クロピドグレルにするかも難しい。クロピドグレルが特許期間内であれば、メーカーは必死でクロピドグレルを残す努力をしたと思う。資本主義の世の中なので、資金のあるほうが広報の力は圧倒的に強い。学術雑誌であってもfairな比較は期待できなかった。 クロピドグレルは特許切れしても広く使用され、真の意味で優れた薬剤であること(メーカーの広報がなくても医師が使用するとの意味)が示された。本研究ではPCI後標準期間の抗血小板併用療法施行後、アスピリンまたはクロピドグレルに割り振った。クロピドグレルの認可承認試験は、アスピリンとの比較における有効性・安全性を検証したCAPRIE試験であった。今回はPCI後、16ヵ月ほどDAPTが施行された後にランダム化した。冠動脈疾患の慢性期の単一抗血小板薬としてクロピドグレルによる死亡、心筋梗塞、脳梗塞がアスピリンよりも少ないことが示された。 筆者は特許中の薬剤を応援することがない。資本主義における、資本力による広報のトリックを完全に見破れる自信もない。しかし、特許切れして、なお有効性・安全性を示す薬は本物と思う。アスピリンは安価で優れた薬であった。筆者はアスピリンについて一冊の本を書いたほどである(後藤 信哉編. 臨床現場におけるアスピリン使用の実際. 南江堂;2006.)。しかし、クロピドグレルも数十年かけて優れた薬であることを示した。今度はクロピドグレルの本を書きたいほどである。

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StageII/IIIのHR+HER2-乳がんの術後内分泌療法後、リアルワールドでの再発リスクと治療成績

 術後内分泌療法を受けたStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者における再発リスクをリアルワールドで検討した米国・Sarah Cannon Research InstituteのJoyce O'Shaughnessy氏らの後ろ向き研究の結果、リンパ節転移陰性患者も含め、再発リスクが依然として高いままであることが示された。Breast誌2025年6月号に掲載。 本研究では、ConcertAI Patient360データベース(1995年1月~2021年4月)を用いて、手術を受け術後内分泌療法を受けた18歳以上のStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者を後ろ向きに解析した。再発リスクは、改良されたSTEEP基準による無浸潤疾患生存(iDFS)を用いて評価した。サブ解析で、術後内分泌療法として非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)を投与された患者とタモキシフェンを投与された患者のiDFS、遠隔無病生存、全生存を評価した。なお、CDK4/6阻害薬については、アベマシクリブが術後補助療法に承認されたのが2021年10月であり、本解析のデータベースのカットオフ日以後のため、投与された患者はいなかった。 主な結果は以下のとおり。・全解析コホート(3,133例)において、iDFSイベントリスクは5年時点で26.1%であり、10年時点で45.0%に上昇した。・StageIIの患者の5年時点および10年時点のiDFSイベントリスクは22.7%および40.5%、StageIIIの患者では40.4%および62.9%であった。また、リンパ節転移陰性患者では22.1%および36.9%、リンパ節転移陽性患者では28.9%および49.4%であった。 ・サブ解析において、NSAI±卵巣機能抑制療法がタモキシフェン±卵巣機能抑制療法に比べてiDFSの改善が認められ(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.69~0.98、p=0.031)、この傾向は閉経状態に関係なくみられた。 著者らは、「このリアルワールドエビデンス研究は、StageIIまたはIIIのHR+HER2-早期乳がん患者の再発リスクが、標準的な術後補助全身療法にもかかわらず、リンパ節転移陰性患者を含めて容認できないほど高いままであることを示しており、この患者集団に対する新たな治療戦略の開発を正当化する」と結論している。

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フィネレノン、CKD有するHFmrEF/HFpEFに有効~3RCT統合解析(FINE-HEART)/日本循環器学会

 心不全患者のほぼ半数が慢性腎臓病(CKD)を合併している。心不全とCKDは、高血圧、肥満、糖尿病といった共通のリスク因子を持ち、とくに左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者ではその関連がより顕著である。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系の活性化、炎症、内皮機能障害、線維化、酸化ストレスといった共通の病態生理学的経路を有する。したがって、心不全患者、とくにHFpEF患者において、腎保護が治療成功の鍵となっている。 心不全とCKDを合併した約1万9,000例の患者におけるフィネレノンの効果を評価するため、3件の大規模無作為化比較試験(RCT)の統合解析「FINE-HEART試験」が実施され、2024年の欧州心臓病学会で発表された。その結果、心不全とCKDを合併した患者において、原因不明死を含めると、フィネレノンは心血管死を12%有意に減少させることが示され、腎疾患の進行、全死因死亡、心不全による入院などが有意に減少したことが示された。3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 1にて、富山大学の絹川 弘一郎氏によりアンコール発表された。 本試験では、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノンの効果を検証した以下の3件のRCTのデータが統合された。・FINEARTS-HF試験:2型糖尿病を含む左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)/HFpEF患者6,001例を対象とした試験。・FIDELIO-DKD試験:糖尿病性腎臓病患者5,662例を対象とした腎アウトカム試験(左室駆出率が低下した心不全[HFrEF]患者は除外)。・FIGARO-DKD試験:糖尿病性腎臓病患者7,328例を対象とした心血管アウトカム試験(HFrEF患者は除外)。 FINE-HEART試験の対象者の90%以上が、心不全、CKD、2型糖尿病の1つ以上を有する高リスクCKM(心血管・腎・代謝)背景を持っていた。本試験の主要評価項目は心血管死であり、副次評価項目は複合心血管イベント、心不全による初回入院、全死因死亡などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・FINE-HEART試験は、1万8,991例(平均年齢67±10歳、女性35%)で構成された。参加者の約90%が、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下および/またはアルブミン尿のいずれかを伴うCKD進行リスクが高かった。・心血管死について、プラセボ群と比較して、フィネレノン群は、原因不明死を除くと、心血管死の有意ではない減少と関連していた(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.01、p=0.076)。ただし、原因不明死を含めると、フィネレノン群は心血管死を12%有意に減少させた(HR:0.88、95%CI:0.79~0.98、p=0.025)。・原因不明死を含めた場合の心血管死に対するフィネレノンの効果は、患者のCKM負担の程度かかわらず一貫していた。また、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬といったベースラインの併用薬の有無にかかわらず、フィネレノンの効果は一貫していた。・フィネレノンは、複合腎アウトカム、心不全による初回入院、心血管死または全死因死亡、心房細動の新規発症を有意に減少させた。・HFmrEF/HFpEF患者7,008例(36.9%)を解析した結果、フィネレノン群ではプラセボ群と比較して、心血管死または心不全による入院が有意に減少した(HR:0.87、95%CI:0.78~0.98、p=0.008)。また、心不全による入院(HR:0.84、95%CI:0.74~0.94、p=0.003)、心房細動の新規発症(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97、p=0.030)を有意に減少させた。・フィネレノンは忍容性が良好であり、プラセボ群より重篤な有害事象の発現率が低かった。MRAの性質上、フィネレノン群で高カリウム血症が多くみられたが、高カリウム血症に関連する死亡は認められなかった。低カリウム血症は少なかった。収縮期血圧低下がよくみられ、血圧への影響は今後さらに検討が必要とされている。急性腎障害の増加は認められなかった。 フィネレノンは、CKMリスクを有する患者に対して、心血管・腎アウトカムを改善し、安全性も高い有望な治療選択肢であることが本試験により示された。絹川氏は「フィネレノンは心血管死を12%有意に減少させた。FIDELIO試験とFIGARO試験では、心血管死は有意に減少しなかったため、これはFINE-HEART試験で新たに得られた知見だ。また、FIDELIO試験とFIGARO試験では、フィネレノンによるeGFRの初期低下が観察されたが、これも今後の検討課題となる」と述べた。(ケアネット 古賀 公子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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急性冠症候群のDCB治療後DAPT、段階的漸減レジメンで十分か/BMJ

 薬剤コーティングバルーン(DCB)による治療を受けた急性冠症候群患者では、有害臨床イベントの発生に関して、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を段階的に減薬(de-escalation)するレジメンは12ヵ月間の標準的なDAPTに対し非劣性であることが、中国・Xijing HospitalのChao Gao氏らREC-CAGEFREE II Investigatorsが実施した「REC-CAGEFREE II試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年3月31日号で報告された。中国の無作為化非劣性試験 REC-CAGEFREE II試験は、DCBを受けた急性冠症候群患者において、抗血小板薬療法の強度を弱めることは可能かの評価を目的とする医師主導型の非盲検評価者盲検無作為化非劣性試験であり、2021年11月~2023年1月に中国の41病院で患者を登録した(Xijing Hospitalの助成を受けた)。 年齢18~80歳で、パクリタキセルを塗布したバルーンによるDCB治療のみを受けた急性冠症候群患者1,948例(平均年齢59.2歳、男性74.9%)を対象とした。被験者を、DAPTを段階的に減薬する群(975例)、または標準的なDAPTを投与する群(973例)に無作為に割り付けた。 段階的DAPT減薬群では、アスピリン+チカグレロル(1ヵ月)を投与後、チカグレロル単剤(5ヵ月)、引き続きアスピリン単剤(6ヵ月)の投与を行った。標準的DAPT群では、アスピリン+チカグレロルを12ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは、有害臨床イベント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術、BARC type 3または5の出血)とした。絶対リスク群間差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が3.2%未満の場合に非劣性と判定した。出血リスクは低い 全体の30.5%が糖尿病で、8.8%が脳卒中の既往、13.2%が心筋梗塞の既往、32.2%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の既往を有しており、20.6%は出血リスクが高かった。治療を受けた病変の60.9%が小血管で、17.8%にステント内再狭窄を認めた。DCBの直径の平均値は2.72(SD 0.49)mmだった。 12ヵ月の時点で、主要エンドポイントである有害臨床イベントは、段階的DAPT減薬群で87例(8.9%)、標準的DAPT群で84例(8.6%)に発現した。発生率の群間差は0.36%(95%CI:-1.75~2.47)で、95%CI上限値は3.2%未満であり、段階的DAPT減薬群の標準的DAPT群に対する非劣性が示された(非劣性のp=0.01)。 BARC type 3または5の出血の発生は、段階的DAPT減薬群で少なかった(4例[0.4%]vs.16例[1.6%]、群間差:-1.19%[95%CI:-2.07~-0.31]、p=0.008)。また、患者志向型複合エンドポイント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術)の発生は、両群で同程度だった(84例[8.6%]vs.74例[7.6%]、1.05%[-1.37~3.47]、p=0.396)。階層的な臨床的重要性を考慮したwin ratioが優れる 全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、BARC type 3出血、血行再建術、BARC type 2出血というあらかじめ定義された階層的複合エンドポイントについて、win ratio(勝利比)法による階層的な臨床的重要性を考慮すると、標準的DAPT群(勝率10.1%)に比べ段階的DAPT減薬群(14.4%)で勝率が有意に高かった(勝利比:1.43[95%CI:1.12~1.83]、p=0.004)。 著者は、「ITT集団では、標準的DAPT群に比べ段階的DAPT減薬群で、患者志向型複合エンドポイントの発生率が1%高く、BARC type 3または5の出血の発生率が1%低かったことから、虚血リスクと出血リスクにはトレードオフが存在する可能性が示唆される」としている。

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脂肪性肝疾患の新たな分類とMASLDの概念・診断基準【脂肪肝のミカタ】第1回

脂肪性肝疾患の新たな分類とMASLDの概念・診断基準Q. 脂肪性肝疾患(SLD)の新たな分類とMASLD診断基準とは?2023年、欧米において脂肪性肝疾患(steatotic liver disease:SLD)の新たな分類が報告された。従来使用されてきた、fattyやalcoholicという表現が不適切であることから、病名変更が必要となり、エタノール摂取量を基準に大きく3つのグループに分類された。具体的には、以下の3群である(図1)1-3)。代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD)代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MASLD and increased alcohol intake:MetALD)、アルコール関連肝疾患(alcohol-associated [alcohol-related] liver disease:ALD)(図1) 脂肪性肝疾患(SLD)の新たな分類画像を拡大するこれらの英語病名は、欧州肝臓学会(EASL)/米国肝臓病学会(AASLD)/ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)の専門家の意見を収集し、専門家が回答した意見を統計学的に分析・再評価を繰り返して、最終的に新しい診断基準や概念に関する合意を得たものである(Delphi consensus)。MASLDは、画像診断または組織学的に診断される脂肪性肝疾患(steatotic liver disease, SLD)のうち、心代謝系危険因子(cardiometabolic risk factor:CMRF、表1)を1つ以上有し、飲酒量はエタノール換算で女性<140g/週、男性<210g/週(女性<20g/日、男性<30g/日)かつ他の原因が関わるSLDを除く疾患である(図2)。(表1)MASLD診断における心代謝系危険因子(成人)5項目画像を拡大する(図2)MASLD診断のフローチャート画像を拡大する肥満、耐糖能異常、脂質異常症、血圧異常などの生活習慣病と相互に関連し、肝線維化の進行を来し、肝硬変や肝がんへと進展する。病状の進行には、環境要因と遺伝的要因が影響する。併存疾患として、心血管イベントや肝臓以外の悪性腫瘍なども関連し、全身疾患と考える必要がある。しかし、4人に1人がSLDと言われる時代において、全症例を組織学的に診断することは不可能である。よって、診断フローチャートのはじめに、画像診断と記載されたことは(図2)、将来的に非侵襲的な腹部超音波検査を含む画像診断の時代にシフトする可能性を示していると言える。Q. NAFLDからMASLDとなり、何が変わるのか?MASLDと非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)の対象の一致率は海外からの報告では99%である4)。本邦におけるメタボリック症候群(Mets)の腹囲基準は、男性≧85cm、女性≧90cmであるが、今回のSLDを診断する上でのCMRFにおける腹囲基準は、男性>94cm、女性>80cmと異なっている(表1)1-3)。しかし、本邦におけるMetsの腹囲基準を採用して検討してもその一致率は97%であることが確認された5)。結論的には、MASLDとNAFLD、そして組織学的診断に基づく代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis:MASH)と非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)は、概ね同じ概念であることが確認され、これまでNAFLD/NASHから創出された疫学、診断、治療に関するエビデンスは従来通り採用できることが確認された(図3)4,5)。(図3)NAFLDとMASLDの対象の比較画像を拡大するCMRFとしての腹囲基準はあくまでMASLD診断のための基準であり、本邦のMets基準とは区別して捉える必要がある。今後、CMRFの基準が、本邦でどれくらいの心血管系イベントリスクに繋がるのか検証することと、更なる妥当なカットオフ値が存在するのか検討していく必要がある。1)NAFLD Nomenclature consensus group. J Hepatol. 2023;79:1542-1556.2)NAFLD Nomenclature consensus group. Hepatology. 2023;78:1966-1986.3)NAFLD Nomenclature consensus group. Ann Hepatol. 2024;29:101133.4)Younossi ZM, et al. J Hepatol. 2024;80:694-701.5)Suzuki K, et al. Hepatol Res. 2024;54:600-605.

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第262回 蠕動運動を促し、炎症を防ぐ腸神経の圧感知タンパク質を発見

蠕動運動を促し、炎症を防ぐ腸神経の圧感知タンパク質を発見加圧や運動に応じて腸の運動を調節し、病的な腸の炎症を鎮める神経のタンパク質が同定されました1)。平滑筋の息が合った収縮と弛緩、すなわち蠕動運動によって食物が腸を下っていきます。神経細胞が腸の蠕動を支えることは100年以上も前から知られていますが、いったいどうやってそうするのかはよくわかっていませんでした2)。免疫細胞のイオンチャネルPIEZO1が呼吸で加わる力を感知する役割を担い、肺での炎症を誘発することが先立つ研究で示されています3)。PIEZO1が胃腸の蠕動にも寄与するかもしれないとハーバード大学の免疫学の助教授Ruaidhri Jackson氏らは想定し、マウスやヒトの腸の神経を調べてみました。すると、PIEZO1を生成する遺伝子の活発な発現が認められました。神経伝達物質のアセチルコリンを放出して腸の筋肉の収縮を誘発する興奮性神経でPIEZO1は盛んに発現していました。正常なマウスの腸は加わる圧が高まるほど収縮します。一方、PIEZO1遺伝子を欠くマウスの腸組織は圧が加わっても収縮できず、PIEZO1が加圧センサーとして腸の動きを助けることが判明しました。マウスのPIEZO1発現細胞を活性化したところ、腸内の小さなガラス玉が通常のマウスに比べて2倍早く排出されました。一方、腸のPIEZO1発現神経を薬品で働かないようにすると消化がよりゆっくりになりました。すなわちPIEZO1発現神経は腸の内容物の排出を早める働きを担うようです。揺れや他の臓器との接触によって腸に圧を加えうる運動が排便を促すことが随分前から知られています。その作用にもPIEZO1が関わっているらしく、PIEZO1遺伝子を有するマウスは回し車を10分も走れば排便しましたが、PIEZO1が損なわれると運動に応じた腸の運動亢進が認められませんでした。炎症性腸疾患(IBD)も炎症刺激により腸の運動を高めることが知られています。IBDマウスでもPIEZO1は排便を促す働きを担うようであり、PIEZO1が働かないようにすると排便が遅くなりました。しかしPIEZO1を失って生じる影響は排便の遅れだけではなく、先立つ研究で免疫細胞のPIEZO1欠損が肺炎症を減らしたのとはいわば真反対の副作用をもたらしました。すなわち腸神経のPIEZO1欠損は意外にもIBD症状の悪化を招きました。PIEZO1欠損マウスはPIEZO1が正常なマウスに比べてより痩せ、腸粘液やその生成細胞を失っていきました。腸神経PIEZO1欠損マウスでの炎症悪化は、平滑筋の活性を促すのみならず抗炎症作用も担うアセチルコリンが乏しくなることに起因するようです。IBDが引き起こす炎症でPIEZO1が活動することで腸神経は炎症を鎮めるアセチルコリンをどうやら盛んに作れるようになり、同時にIBDの特徴である腸運動の亢進ももたらすのだろうとJackson氏は予想しています2)。今回の成果は腸神経のPIEZO1の活性調節でIBDが治療できるようになる可能性を示唆しています。また、便秘や下痢などの腸運動が絡む病気の治療の開発にも役立ちそうです。ただし、PIEZO1は諸刃の剣で、場所柄で一利一害あるようです。腸神経のPIEZO1欠損がIBD悪化を招きうることを示した今回の結果とは対照的に、免疫系のマクロファージのPIEZO1を省くことはIBDの進行をむしろ防ぎうることが最近の別の研究で示されています4)。その結果は上述した肺での免疫細胞のPIEZO1の働きと一致します。PIEZO1狙いの治療はその存在場所によって働きが異なりうることを念頭において取り組む必要があるのでしょう。 参考 1) Xie Z, et al. Cell. 2025 Mar 20. [Epub ahead of print] 2) Study Identifies Gut Sensor That Propels Intestines To Move / Harvard Medical School 3) Solis AG, et al. Nature. 2019;573:69-74. 4) Wang T, et al. Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2025:101495.

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統合失調症に対する抗精神病薬の投与量と治療中止との関係〜メタ解析

 統合失調症治療における抗精神病薬の有効性を得るためには、服薬アドヒアランスを保つことが不可欠であり、中止率が高い場合には、有効性が損なわれる。そのため、抗精神病薬の投与量と中止率との関係を理解することは重要である。ドイツ・ミュンヘン工科大学のJing Tian氏らは、この関連性を評価し、アドヒアランスの最大化、中止リスクを最小限に抑える抗精神病薬の投与量を明らかにするため、システマティクレビューおよびメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2025年5月号の報告。 統合失調症および関連疾患の急性増悪期患者を対象に20種類の抗精神病薬を評価した固定用量RCTを複数の電子データベースよりシステマティックに検索した。頻度論的フレームワークで1ステージ用量反応メタ解析を用い、用量反応関係を分析した。関連性をモデル化するため、制限付き3次スプラインを用いた。主要アウトカムは、すべての理由による治療中止とし、副次的アウトカムに効果不十分および副作用による治療中止を含めた。 主な結果は以下のとおり。・136研究(4万4,126例)を分析した結果、抗精神病薬のさまざまな用量反応関係が明らかとなった。・主要アウトカムであるすべての原因による治療中止については、amisulpride、cariprazine、オランザピン、クエチアピンは、用量反応曲線がU字型を示し、最適な投与閾値が示され、投与量を増やすことで副作用による中止率が上昇する可能性が認められた。・アリピプラゾール、アセナピン、ブレクスピプラゾール、クロザピン、パリペリドン、リスペリドンは、用量反応曲線がプラトーを示し、特定の投与量を超えた増量によるメリットの追加は認められなかった。・ハロペリドール、iloperidone、lumateperone、ルラシドン、sertindole、ziprasidoneは、研究された投与量の範囲内で用量反応曲線がプラトーに達しなかった。・効果不十分による治療中止の曲線は、すべての原因による治療中止の曲線と類似していた。・副作用による治療中止の曲線の多くは、高用量に関連する副作用の急激な増加を示した。 著者らは「投与量と治療中止との関連は、抗精神病薬により異なり、用量反応曲線は、U字型、単調型、双曲型がみられた。今後の研究により、疾患および副作用関連の有害事象による治療中止を、個別に評価する必要がある」としている。

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ワインによる各脂質レベルへの影響~メタ解析

 ワイン摂取が脂質プロファイルに及ぼす影響について、これまで脂質をトリグリセライド、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、フィブリノゲンに分けてメタ解析を行った研究はなかった。今回、スペイン・University of Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らが系統的レビューとメタ解析を実施した結果、赤ワインによるLDLコレステロール減少効果が示された。The Journal of Nutrition, Health and Aging誌2025年6月号に掲載。 本研究では、MEDLINE(PubMed)、Scopus、Cochrane、Web of Scienceのデータベースを調べ、系統的レビューとメタ解析を行った。ランダム効果モデルを使用して、各脂質パラメータのプールされた標準化効果量(ES)推定値と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・系統的レビューに33件の研究が含まれ、29件がメタ解析に含まれた。・赤ワインの影響に関してプールされたESは、前後比較研究において赤ワインのLDLコレステロールに対する影響のみが有意であった(-0.29、95%CI:-0.54~-0.05)。・白ワインの影響に関してプールされたESは、前後比較研究および臨床研究において、ワインの各パラメータへの影響について有意な結果は示されなかった。 本研究から、赤ワイン摂取はLDLコレステロールを減少させる効果があり、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、フィブリノゲンには影響がないことが明らかになった。また、介入期間がトリグリセライドと総コレステロール値に影響することが明らかになり、介入期間が長いほどこれら2つのパラメータに効果的であることが示された。

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非小細胞肺がん、肺がんコンパクトパネルのリアルワールドデータ/Anticancer Res

 非小細胞肺がん(NSCLC)の分子プロファイリングに基づく個別化治療戦略は、NSCLC患者の予後を改善するために不可欠である。肺がんコンパクトパネル(LCCP)は、組織および細胞診検体からNSCLCの遺伝子変異を検出するマルチフレックスコンパニオン診断キットである。しかし、その実臨床における成績について大規模な検証がなされていなかった。そのようななか、近畿中央呼吸器センターの谷口 善彦氏が日本でのリアルワールドデータをAnticancer Research誌2025年4月号で発表した。 同研究は、2023年4月~2024年7月に同施設でNSCLCと診断されLCCPを用いた症例の組織型、遺伝的異常、アレル頻度、PD-L1発現レベルを収集し後方視的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・317例を評価した結果、154件(48.6%)が遺伝的異常を示した。・最も多く発見された変異は、EGFRの主要変異で63例であった。・腺がんでは、126例(70%)が遺伝的異常を示した。・15例で複数の共遺伝子異常が同定された。・13例が低アレル頻度(2.5%未満)を示していた。・EGFRエクソン19del陽性症例の30件で特定された9変異のうち3変異は、他のコンパニオン診断法では検出できないものであった。 LCCPは腫瘍含量が低い(5%以下)症例でも遺伝子異常を検出する能力を示すことから、EGFRエクソン19delの希少変異や複数の共変異を同定できる能力がある。これらの結果は、LCCPがNSCLCの個別化治療戦略を改善する可能性を示すとしている。

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DES留置術前の石灰化病変処置、オービタルアテレクトミーは予後を改善するか/Lancet

 薬剤溶出性ステント(DES)を用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行前の重度の冠動脈石灰化病変の切削において、バルーン血管形成術に基づくアプローチと比較して、アテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル(Diamondback 360 Coronary Orbital Atherectomy System)によるオービタルアテレクトミーは、最小ステント面積を拡張せず、1年後の標的血管不全の発生率も減少しないことが、米国・Columbia University Medical Center/NewYork-Presbyterian HospitalのAjay J. Kirtane氏らECLIPSE Investigatorsが実施した「ECLIPSE試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2025年4月12日号に掲載された。米国の無作為化試験 ECLIPSE試験は、DES留置術前の重度冠動脈石灰化病変の前処置としてのオービタルアテレクトミーとバルーン血管形成術の有効性の比較を目的とする非盲検無作為化試験であり、2017年3月~2023年4月に米国の104施設で参加者の無作為化を行った(Abbott Vascularの助成を受けた)。 年齢18歳以上、1つ以上の新たな冠動脈標的病変に対するPCIを受ける慢性または急性冠症候群で、血管造影または血管内画像により冠動脈に重度のカルシウム蓄積を認め、推定生存期間が1年以上の患者を対象とした。これらの患者を、DESによるPCI施行前に重度石灰化病変を切削するために、オービタルアテレクトミーまたはバルーン血管形成術を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、1年後の標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞、虚血による標的血管の血行再建術の複合)と、事前に規定されたコホートにおける手技を行った後の血管内光干渉断層撮影(OCT)で評価した最大石灰化部位の最小ステント面積とし、ITT解析を行った。1年後の標的血管不全:11.5%vs.10.0% 2,005例(2,492病変)を登録し、ステント留置術の前にオービタルアテレクトミーによる病変の前処置を行う群に1,008例(1,250病変)、バルーン血管形成術を行う群に997例(1,242病変)を割り付けた。全体の年齢中央値は70.0歳(四分位範囲:64.0~76.0)、541例(27.0%)が女性であり、881例(43.9%)が糖尿病、479例(23.9%)が慢性腎臓病(112例[5.6%]が血液透析中)であった。 コアラボラトリーで血管造影により重度のカルシウム蓄積が確認されたのは、オービタルアテレクトミー群で97.1%(1,088例/1,120病変)、バルーン血管形成術群で97.0%(1,068例/1,101病変)だった。また、血管内画像ガイド下PCIは、それぞれ62.2%(627例/1,008例)および62.1%(619例/997例)で行われた。 1年後までに、標的血管不全はオービタルアテレクトミー群で1,008例中113例(11.5%[95%信頼区間[CI]:9.7~13.7])、バルーン血管形成術群で997例中97例(10.0%[8.3~12.1])に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:1.5%[96%CI:-1.4~4.4]、ハザード比[HR]:1.16[96%CI:0.87~1.54]、p=0.28)。 また、OCTコホート(オービタルアテレクトミー群276例[286病変]、バルーン血管形成術群279例[292病変])における最大石灰化部位の最小ステント面積は、オービタルアテレクトミー群が7.67(SD 2.27)mm2、バルーン血管形成術群は7.42(2.54)mm2であり、両群間に有意差はなかった(平均群間差:0.26[99%CI:-0.31~0.82]、p=0.078)。1年後のステント血栓症:1.1%vs.0.4% 1年以内に、心臓死はオービタルアテレクトミー群で39例(4.0%)、バルーン血管形成術群で26例(2.7%)に発生した(HR:1.49[95%CI:0.91~2.45]、p=0.12)。最初の30日間にオービタルアテレクトミー群で8例に心臓死が発生し、このうち2例がデバイス関連、2例がデバイス関連の可能性があると判定された。 また、1年以内の標的血管心筋梗塞は、オービタルアテレクトミー群で55例(5.6%)、バルーン血管形成術群で43例(4.4%)(HR:1.27[95%CI:0.85~1.89]、p=0.24)、虚血による標的血管の血行再建術はそれぞれ40例(4.2%)および41例(4.4%)(0.97[0.63~1.49]、p=0.88)で発現し、ステント血栓症(definiteまたはprobable)は11例(1.1%)および4例(0.4%)(2.74[0.87~8.59]、p=0.085)に認めた。 著者は、「これらのデータは、ステント留置術前の冠動脈石灰化病変の処置の多くにおいては、血管内画像ガイド下のバルーン血管形成術を優先するアプローチが支持されることを示すものである」としている。

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うつ病やPTSDに対するブレクスピプラゾール+抗うつ薬併用療法〜前臨床試験のシステマティックレビュー

 ブレクスピプラゾールは、抗うつ薬と併用することで、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、セロトニン、ドパミン神経伝達物質に対し相補的な作用を示し、さらに強力な効果を得られる可能性が示唆されている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのMalaak Brubaker氏らは、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬の併用療法に関する前臨床試験からどのような情報が得られているかを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年2月28日号の報告。 ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法の前臨床研究を検索するため、システマティック文献レビューを実施した。対象には、精神疾患に関連する行動テストを含めた。2011年1月〜2021年7月5日までに公表された研究を、Ovid MEDLINE、Ovid Embase、カンファレンス抄録より検索した。ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法による統計学的に有意な結果(p<0.05)を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた296件のうち、7つの独自研究について記載された9件の論文が抽出された。・3つのうつ病モデル(慢性予測不能軽度ストレス、社会的敗北ストレス、リポ多糖誘発性うつ病)を含むげっ歯類モデルにおいて、ブレクスピプラゾールと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の併用療法は、対照群と比較し、うつ病様行動(強制水泳試験、尾懸垂試験、ショ糖嗜好性試験)に対して一貫した有意なベネフィットを示した。しかし、ブレクスピプラゾールまたは抗うつ薬の単剤療法では、統計学的に有意なベネフィットは認められなかった。・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の捕食動物嗅覚ストレスモデルにおいて、ブレクスピプラゾールとSSRI(エスシタロプラム)併用療法は、不安様行動(高架式十字迷路試験)および過覚醒(聴覚性驚愕反射)に対し、対照群/単独療法群よりも有意な効果を示した。しかし、ブレクスピプラゾールおよびエスシタロプラムの単独療法は、対照群と比較し、統計学的に有意な差は認められなかった。・PTSDの恐怖条件付けモデルにおいて、ブレクスピプラゾール単剤療法およびブレクスピプラゾールとエスシタロプラム併用療法のいずれにおいても、有意な改善が認められた。 著者らは「少数の研究ではあるものの、うつ病およびPTSDに対する前臨床試験において、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法は、いずれかの単剤療法と比較し、有効性が高いことが報告されている。これらの前臨床試験の結果は、うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法およびPTSDに対するブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法の有効性に関するランダム化臨床試験の結果を支持しているものである」と結論付けている。

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HR+早期乳がんにおける年齢と内分泌療法の中断期間、再発リスクの関係/JCO

 ホルモン受容体陽性(HR+)早期乳がんにおいて、内分泌療法(ET)のアドヒアランス欠如は、若年患者の生存率の低さの潜在的な原因の1つと考えられるが、ETのアドヒアランス改善が生存にもたらすベネフィットは明確ではない。フランス・パリ・シテ大学のElise Dumas氏らによるフランスの全国コホート研究の結果、とくに34歳以下の患者において厳格なET継続戦略によって得られる生存ベネフィットが示され、ETのアドヒアランス改善のための個別化戦略の必要性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月5日号への報告。 本研究では、フランス国民健康データシステムからのデータとtarget trial emulationの手法を用いて、3つのET継続戦略(治療中断期間として30日、90日、または180日以下を許容)について、5年無病生存率(DFS)を観察された(自然な)ET継続群と比較した。 主な結果は以下のとおり。・計12万1,601例のHR+早期乳がん患者が解析に含まれ、うち29.8%が診断時に50歳未満であった。・若年患者は高齢患者よりも DFS が低く、ETを中断する可能性が高かった。・34歳以下の患者では、厳格な ET継続戦略(中断≦30日)により、観察されたET継続群と比較して 5 年 DFS 率が 74.5% から 78.8%に改善した(4.3%ポイント[95%信頼区間[CI]:2.6 ~7.2])。・≦90日および≦180日の中断を許容するET継続戦略では、34歳以下の患者における5年DFSベネフィットはそれぞれ1.3%ポイント(95%CI:0.2~3.7)および1.0%ポイント(95%CI:-0.2~3.4)であった。・対照的に、50歳以上の患者におけるET継続戦略によるDFSベネフィットは、その中断期間にかかわらず、観察されたET継続群と比較して1.9%ポイント以下であった。

333.

3枝病変へのFFRガイド下PCIは有効か/Lancet

 左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)と比較してゾタロリムス溶出ステントを用いた冠血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、5年間の追跡調査において、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカムの発生に関して有意差はみられないが、心筋梗塞と再血行再建術の頻度は高いことが、米国・スタンフォード大学のWilliam F. Fearon氏らが実施した「FAME 3試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2025年3月30日号に掲載された。世界48施設の医師主導型無作為化試験 FAME 3試験は、左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者において、ゾタロリムス溶出ステントを用いたFFRガイド下PCIとCABGの有効性と安全性を比較する医師主導型の無作為化試験であり、2014年8月~2019年11月に欧州、米国、カナダ、オーストラリア、アジアの48施設で参加者を募集した(MedtronicとAbbott Vascularの助成を受けた)。 年齢21歳以上、左冠動脈主幹部には臨床的に重大な狭窄がなく、冠動脈造影所見で3枝病変を認める患者を対象とし、心原性ショックや最近のST上昇型心筋梗塞、重度の左室機能障害(駆出率<30%)、CABGの既往歴がある患者は除外した。 主要エンドポイントは、ITT集団における死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合の5年間の発生率とした。なお、1年後の解析では、FFRガイド下PCIはCABGに対して、死亡、脳卒中、心筋梗塞、再血行再建術の複合アウトカムに関して、事前に規定された非劣性の閾値を満たさなかった。死亡、脳卒中には差がない 1,500例を登録し、PCI群に757例、CABG群に743例を割り付けた。全体の登録時の年齢中央値は66歳(四分位範囲:59~71)、1,235例(82%)が男性で、428例(29%)は糖尿病、587例(39%)は非ST上昇型急性心筋梗塞であった。PCI群の724例(96%)とCABG群の696例(94%)が5年間の追跡期間を完了した。 5年の時点での死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合の発生率は、PCI群が16%(119例)、CABG群は14%(101例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.16[95%信頼区間[CI]:0.89~1.52]、p=0.27)。 主要エンドポイントの個々の項目については、死亡(PCI群7%vs.CABG群7%、HR:0.99[95%CI:0.67~1.46])と脳卒中(2%vs.3%、0.65[0.33~1.28])の発生率には両群間に差はなかったが、心筋梗塞(8%vs.5%、1.57[1.04~2.36])、再血行再建術(16%vs.8%、2.02[1.46~2.79])の発生率はPCI群で高かった。安全性のエンドポイントはCABG群で発生率が高い 一方、安全性のエンドポイントである出血、急性腎障害、心房細動/重大な不整脈、再入院の1年後の発生率は、いずれもPCI群に比べCABG群で有意に高かった。 著者は、「これらのデータは、この分野における先行研究の結果とは明らかに異なっており、医師と患者のより効果的な共同意思決定(shared decision making)の促進に資する可能性がある」としている。

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大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet

 大腸がん検診への参加率は、大腸内視鏡検査より免疫学的便潜血検査(FIT)のほうが高く、大腸がん関連死亡率について、本研究で観察された参加率に基づくとFITベースのプログラムは大腸内視鏡検査ベースのプログラムに対し非劣性であることが確認された。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Castells氏らCOLONPREV study investigatorsが、スペインの8地域における3次医療機関15施設で実施したプラグマティックな無作為化比較非劣性試験「COLONPREV試験」の結果を報告した。大腸内視鏡検査とFITは、平均的なリスク集団(大腸がんの既往歴または家族歴のない50歳以上の人々)における一般的な大腸がんスクリーニング戦略である。中間解析でも、FIT群は大腸内視鏡検査群よりスクリーニング参加率が高いことが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年3月27日号掲載の報告。10年時大腸がん死亡率を比較検証 研究グループが適格としたのは、大腸がん、腺腫、炎症性腸疾患の既往歴、遺伝性または家族性大腸がんの家族歴(第1度近親者が2人以上大腸がんと診断、または1人が60歳未満で大腸がんと診断)、重度の合併症、あるいは結腸切除術の既往歴がない、50~69歳の健康と推定される人であった。適格者はスクリーニングへの招待前に、1回の大腸内視鏡検査群、または2年ごとのFIT群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、10年時大腸がん死亡率、重要な副次エンドポイントは10年時大腸がん発生率などで、intention-to-screen集団で評価した。非劣性マージンは絶対差0.16%ポイント未満とした。10年時大腸がん死亡率FIT群0.24%、大腸内視鏡検査群0.22%で、FITは非劣性 2009年6月1日~2021年12月31日に、5万7,404例が大腸内視鏡検査群(2万8,708例)またはFIT群(2万8,696例)に無作為化された。intention-to-screen集団は、大腸内視鏡検査群が2万6,332例、FIT群が2万6,719例であった。intention-to-screen集団における何らかのスクリーニングへの参加率は、大腸内視鏡検査群31.8%、FIT群39.9%であった(リスク比:0.79、95%信頼区間[CI]:0.77~0.82)。 10年時大腸がん死亡リスクに関して、FITの大腸内視鏡検査に対する非劣性が認められた。大腸内視鏡検査群では0.22%(死亡55例)、FIT群では0.24%(死亡60例)であり、リスク差は-0.02(95%CI:-0.10~0.06)、リスク比は0.92(95%CI:0.64~1.32)であった(非劣性のp=0.0005)。

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第6回 アルツハイマー病遠隔診療の可能性と落とし穴

米国の大手製薬企業イーライリリー(以下、リリー)が、アルツハイマー病患者を遠隔診療の医師につなぐ新たな取り組みを始めたことが報じられました1)。これは、従来から糖尿病や肥満などの疾患を対象にリリーが提供してきた患者向けプラットフォーム「LillyDirect」の一環として行われるもので、同社が販売している薬の服用機会を促すD to C(Direct-to-Consumer)のアプローチともいえます。ただし、今回のアルツハイマー病の場合には、実際に点滴を行う医療機関に患者を紹介する形をとっていて、患者本人がウェブ上で直接処方薬を購入する仕組みにはなっていません。しかし、リリーがアルツハイマー病の新薬ドナネマブをはじめとする治療薬を持つことから、患者との接点を増やし、診断から治療への流れを後押しする目的があるとみられています。この新しい取り組みでは、患者がアルツハイマー病専門の神経内科医に遠隔で診断を受けられる体制が注目されています。とくに地方や遠隔地に住む高齢者にとっては、通院負担の軽減というメリットが考えられる一方、老年科専門医の視点からは複数の懸念もあります。以下に、その要点を整理していきます。遠隔診療での早期診断と治療選択の可能性今回リリーが提携したのは、遠隔で神経内科医とつなぎ、必要に応じて脳の画像検査(MRIやPETなど)の手配、さらに点滴治療が可能な医療機関を紹介する企業「Synapticure」です。昨今早期診断が重視されるアルツハイマー病において、専門医が不足する地域でも、患者が遠隔で診療にアクセスできることは一定の意義があるでしょう。とくに新規抗アミロイド薬(脳内アミロイド斑を標的とする薬剤)は、早期の患者さんでの効果が示唆されていて、こうした治療機会に迅速につなげる意義は、否定はできません。また、Synapticure側も「遠隔診療での認知機能評価」「遺伝子検査(APOE4の有無など)」「点滴センターの紹介」を一元的にサポートすることを強調していて、患者家族の負担軽減や、専門医へのアクセスが困難な地域の課題解決を目指しています。すでに糖尿病や肥満などの領域で同プラットフォームが実績を積んでいることもあり、技術的な面や運用面での利便性が高いと期待されています。老年科専門医から見た遠隔診療の懸念一方、老年科専門医の立場からは、このニュースに関連していくつかの懸念を指摘できます。1)診断の複雑さまず、アルツハイマー病の診断には、長時間にわたる問診や認知機能検査、家族からの聞き取り、脳の画像検査、血液検査など多角的なアプローチが求められます。とりわけ高齢者の場合、合併症(心不全や腎機能低下、うつ病など)が認知機能に影響を与えることもあり、短時間のオンライン診療だけでは十分な評価が難しい場合が多いと思います。そのような点はどうカバーされるのでしょうか。遠隔でも専門医が対応するとはいえ、実際に対面での総合的な評価が必要になる場面は多いのではないかと考えられます。2)治療薬のリスク管理リリーを含め最近承認された抗アミロイド薬には、脳浮腫や脳出血などの副作用リスクが指摘されています。とくにAPOE4という遺伝子を持つ患者ではリスクが高まる可能性があり、投与後の定期的なMRIによるモニタリングや症状観察が欠かせません。遠隔診療で治療を開始する流れが加速すると、十分な副作用管理体制が整わないまま投薬が行われる懸念があります。3)利害関係の不透明さ患者がリリーの運営するプラットフォームを通じて専門医にアクセスし、最終的にリリーの薬を使用する流れが生じると、患者側としては「その治療選択が本当に中立的なのか」不安を覚えるかもしれません。会社側は「処方行為に対するインセンティブはない」と説明していますが、遠隔診療業者にとって製薬企業との連携が宣伝効果を高める構造的インセンティブが否定できない以上、処方バイアスのリスクはないとは言えないでしょう。これは大きな懸念点です。4)緊急対応や長期フォローの問題アルツハイマー病は長期的な経過観察が重要で、緊急時には認知症状以外の内科的問題や精神行動症状への対処も必要となります。遠隔で専門医にアクセスできるメリットはあるものの、高齢者の多様な問題に総合的に対応するには地域の医療・介護リソースとの連携が欠かせません。こうしたフォローアップの体制が不十分なまま遠隔診療が進むと、患者・家族の緊急時の混乱を増やす恐れもあります。今後の展開に注視をリリーの取り組みは、アルツハイマー病の早期発見・早期治療を支援するという一定の意義がある一方で、「複雑な認知症診療をどこまでオンラインでカバーできるか」「薬剤のリスク管理は十分か」「利益相反の透明性をどう担保するか」といった懸念もあります。遠隔医療の普及は、地域格差の是正や受診機会の拡大に貢献する期待がある反面、高齢者の多面的な健康問題や治療のリスクを考慮すると、そのリスクにもしっかりと目を向ける必要があるでしょうし、対面診療とのハイブリッド型のフォロー体制が不可欠でしょう。まして当該薬の効果が劇的なものではないと知られている中、ただ製薬会社や遠隔診療企業が利益を得るための過剰治療が行われるような構図にならないことを願うばかりです。また、こうした構図は将来的に日本でも構築される可能性があり、そうした意味でも注視していくべきプラットフォームではないかと思います。参考文献・参考サイト1)Chen E, et al. In a first, Eli Lilly to connect patients to telehealth providers of Alzheimer’s care. STAT. 2025 Mar 27.

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「胃癌治療ガイドライン」改訂のポイント~薬物療法編~/日本胃癌学会

 2025年3月、「胃癌治療ガイドライン」(日本胃癌学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会では、「胃癌治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科療法と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では薬物療法に関する主な改訂点を取り上げる。「外科治療編」はこちら【薬物療法の改訂ポイント】原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター 消化器内科) 内科系(薬物療法)については非常に多くの改訂があった。多くはガイドラインを一読すれば理解いただけると思うが、多くの方が関心を持っているであろうMSI、CPS、CLDN18、HER2といったバイオマーカーとそれに基づく治療選択と、今後避けて通れない高齢者診療に関する新たな推奨に絞って、改訂ポイントを紹介する。CQ12 切除不能進行・再発胃癌に対する一次化学療法CQ12 HER2陰性の切除不能進行・再発胃癌の一次治療において免疫チェックポイント阻害剤は推奨されるか?・HER2 陰性の切除不能な進行・再発胃癌/食道胃接合部癌において、一次治療として、化学療法+免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)併用療法を行うことを強く推奨する。バイオマーカー(PD-L1[CPS]、MSI/MMR、CLDN18)や患者の全身状態を考慮する。(合意率100%、エビデンスの強さA)CQ13 切除不能進行・再発胃癌におけるバイオマーカーCQ13-1 バイオマーカーに基づいて一次治療を選択することは推奨されるか?・切除不能進行・再発胃癌患者に対し、バイオマーカーに基づいて一次治療を選択することを強く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さA) HER2陰性切除不能進行・再発胃癌の一次治療として、「推奨される化学療法レジメン」として新たに承認された抗CLDN18.2抗体のゾルベツキシマブ、チェックポイント阻害薬(ICI)のニボルマブ・ペムブロリズマブ、それぞれの化学療法との併用レジメンが追加された。「条件付きで推奨される化学療法レジメン」としてはSOX+ペムブロリズマブが追加となった。各レジメンの推奨根拠となった試験を紹介する。・ニボルマブ+化学療法/CheckMate 649PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月、化学療法単独群で11.1ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.71であった。CPS≧1集団、全体集団でも改善傾向は見られたものの効果は低減する傾向だった。一方、MSI-H症例では強いOS延長効果が確認され、HRは0.34だった。ただし、MSI-Hは全体の3~4%という希少な集団である一方で、CPS<5の集団にもMSI-H症例が隠れていることに留意が必要だ。・ペムブロリズマブ+化学療法/KEYNOTE-859CPS≧1、CPS≧10、全体集団いずれにおいてもOSの有意な改善が示された。CheckMate 649試験と同様に、CPS値が高いほどHRが改善する傾向が見られた。CPS高値例にICIの効果が高いことは明らかだが、カットオフ値をどこに定めるべきかについては、引き続き議論が必要だろう。・ゾルベツキシマブ+化学療法/SPOTLIGHT・GLOW 両試験とも、ゾルベツキシマブ+化学療法群(mFOLFOX6またはCAPOX)は、主要評価項目である無増悪生存期間および重要な副次評価項目であるOSに対し統計的に有意な延長を示した。 昨年、日本胃癌学会から「切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き」1)が発表された。この手引きでは一次薬物療法開始前に4つのバイオマーカー(HER2、PD-L1、MSI、CLDN18)をすべて測定することを強く推奨している。ただし、施設の状況や患者の状態によっては、すべての検査が実施できない場合もあるだろう。そうした場合は、一次療法開始に不可欠なバイオマーカーであるHER2とCLDN18検査を優先して実施することが推奨される。 HER2陰性の推奨レジメンは、CLDN18陽性の場合は6つ、陰性の場合は4つあり、この使い分けが論点となっている。ガイドライン作成委員会の中で一番議論となったのがHER2陰性+CLDN18陽性のケースだ。CPS<1では抗PD-1抗体による生存延長効果がほとんどないことを考慮すると、 ・CPS<1:ゾルベツキシマブを優先 ・CPS≧1:ゾルベツキシマブおよびICI2剤のいずれも選択肢と考えられる。ここからは私見になるが、CPS≧10はICI優先、1≦CPS<10はゾルベツキシマブがやや優先かと考えている。実臨床においてはバイオマーカーのみならず、年齢、PS、全身状態、患者希望などを総合的に考慮したうえで、治療方針を決定することになる。CQ10 高齢者CQ10-2 全身化学療法の適応を決める際に、年齢を考慮することは推奨されるか?・高齢の切除不能進行・再発胃癌症例では、患者の全身状態や意欲を慎重に評価したうえで、患者本人が状態良好(fit)かつ意思決定能力を有し治療意欲があれば、化学療法を計画するときに年齢を考慮することを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さB) 日本の胃がん患者の85%が65歳以上という現状があるが、主要な臨床試験における65歳以上の参加者は3分の1程度である。一方、「一般的な若年者と同じ標準治療を受けることは難しいが、何らかの治療は受けられる」という「vulnerable」という多数派層が存在し、この層に向けた治療戦略が必要だ。この層を対象に減量投与の非劣性を報告する試験や、高齢者の状態を評価する「G8」スコア別に薬剤の有用性を評価する試験など、エビデンスも集積しつつある。高齢者の化学療法においては減量や薬剤選択による投与継続をはじめ、適切な個別化戦略が一層重要となる。

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「心不全診療ガイドライン」全面改訂、定義や診断・評価の変更点とは/日本循環器学会

 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインである『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』が、2025年3月28日にオンライン上で公開された1)。2018年に『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』が発刊され、2021年にはフォーカスアップデート版が出された。今回は国内外の最新のエビデンスを反映し、7年ぶりの全面改訂となる。2025年3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会にて、本ガイドライン(GL)の合同研究班員である北井 豪氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 心不全部)が、GL改訂の要点を解説した。 本GLの改訂に当たって、高齢化の進行を考慮した高齢者心不全診療の課題や特異性に注目し、最新の知見・エビデンスを盛り込んで、実臨床に即した推奨が行われた。専門医だけでなく、一般医やすべての医療従事者に理解しやすく、実践的な内容とするため、図表を充実することが重視されている。また、エビデンスが十分ではない領域も、臨床上重要な課題や実際の診療に役立つ内容は積極的に取り上げられている。本GLは全16章で構成され、最後に3つのクリニカルクエスチョン(CQ)が記載された。本GLはオンライン版のほか、アプリ版も発表されている。また、本GLの英語版が、Circulation Journal誌とJournal of Cardiac Failure誌に同時掲載された2,3)。 北井氏が解説した重要な改訂点は以下のとおり。心不全の定義 日米欧の心不全学会3学会合同で策定された「Universal definition and classification of heart failure(UD)」4)に基づき、「心不全とは、心臓の構造・機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、およびあるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群」と定義が改訂された。心不全症状・徴候は、「ナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP)の上昇」あるいは「心臓由来の肺うっ血または体うっ血の客観的所見」のいずれかによって裏付けられるとしている。診断と経時的評価:BNP/NT-proBNPカットオフ値 心不全診断のプロセスがフローチャートで表示された。症状、身体所見、一般検査に加えて、「ナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP)」と「心エコー」が診断の中心となっている。身体所見としてのうっ血や、バイオマーカーが重要視され、診断だけでなく予後評価目的でも、BNP/NT-proBNPを測定することが推奨されている。BNP/NT-proBNPのカットオフ値は、2023年に日本心不全学会から発表されたステートメント5)に準拠し、以下のように設定された。・前心不全―心不全の可能性がある、外来でのカットオフ値BNP≧35pg/mLNT-proBNP≧125pg/mL・心不全の可能性が高い、入院/心不全増悪時のカットオフ値BNP≧100pg/mLNT-proBNP≧300pg/mL左室駆出率(LVEF)による分類 UDを参考に、左室駆出率(LVEF)による心不全の分類が、国際的な基準に合わせて統一された。・HFrEF(LVEFの低下した心不全):LVEF≦40%・HFmrEF(LVEFの軽度低下した心不全):LVEF 41~49%・HFpEF(LVEFの保たれた心不全):LVEF≧50% HFmrEFについて、2021年フォーカスアップデート版では、HF with mid-range EFと記載していたが、本GLではHF with mildly-reduced EFの呼称を採用している。上記のほか、HFrEFだった患者がLVEF40%超へ改善し、LVEFが10%以上向上した場合をHFimpEF(LVEFの回復した心不全)と定義している。心不全ステージと病の軌跡 心不全の進行について、A~Dのステージに分類している。・ステージA(心不全リスクあり):高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、肥満など・ステージB(前心不全):構造的/機能的心疾患はあるが、心不全の症状や徴候がない・ステージC(症候性心不全):ナトリウム利尿ペプチド上昇、うっ血などの症状が出現・ステージD(治療抵抗性心不全):薬物療法に反応せず、補助循環や移植が必要 前GLから踏襲し「心不全ステージの治療目標と病の軌跡」の図が掲載されている。従来は病状経過に伴うQOLの悪化の軌跡のみ示されていたが、今回のGLより、治療介入することでイベントやステージ移行を遅らせる改善した場合の軌跡が加えられた。遺伝学的検査 心不全・心筋症において遺伝学的検査が近年より重視されてきている。特徴的な臨床所見等により遺伝性心疾患が疑われる場合は、診断・治療・予後予測に役立てるために、発端者に対する遺伝学的検査を考慮することが推奨クラスIIa。また、遺伝学的検査を行う際には、遺伝カウンセリングを提供する、または紹介する体制を整えることが推奨クラスI。ADL/QOL評価、リスクスコア ADL(日常生活動作)・QOL(生活の質)の向上は、予後の改善と同様に心不全患者の重要な治療目標であり、臨床試験でもアウトカムとして採用されている。日常診療でも患者報告アウトカムを評価することを考慮することや、患者の予後を示すリスクスコアを使用して予後予測を行うことが推奨に挙げられている。心不全予防(ステージA・B) ステージA(心不全リスク)において、高血圧、糖尿病、肥満、動脈硬化性疾患、冠動脈疾患に加え、本GLにて慢性腎臓病(CKD)が新たなリスク因子に加えられた。ステージAへの介入として、2型糖尿病かつCKD患者に対して、心不全発症あるいは心血管死予防のために、SGLT2阻害薬あるいはフィネレノンの使用が推奨クラスIとされた。 ステージB(前心不全)について、「構造的心疾患および左室内圧上昇のカットオフ値の目安」が表にまとめられている。ステージBへの介入として、患者の状況によりACE阻害薬、ARB、β遮断薬、スタチンといった薬剤が推奨クラスIとなっている。心不全に対する治療(ステージC・D) 2021年のフォーカスアップデート版では、HFrEFに対してQuadruple Therapy(β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬[ARNI]、SGLT2阻害薬)の推奨が記載され、HFmrEF、HFpEFに関してはうっ血に対する利尿薬の使用のみにとどまっていたが、本GLでは、HFmrEF、HFpEFに対する薬物治療の新たなエビデンスが反映された。薬物治療の推奨について、各薬剤、EF、推奨クラスをまとめた図「心不全治療のアルゴリズム」を掲載している。・SGLT2阻害薬:HFmrEF、HFpEFに対して2つの大規模無作為化比較試験により、予後改善効果が相次いで報告されたため、HFrEF、HFmrEF、HFpEFのいずれの患者においても、エンパグリフロジン、ダパグリフロジンを推奨クラスI。・ARNI:HFrEFに対して推奨クラスI、HFmrEFに対して推奨クラスIIa、HFpEFに対して推奨クラスIIb。 ・MRA:HFrEFに対するスピロノラクトン、エプレレノンが推奨クラスI、HFmrEFとHFpEFに対して、新たな薬剤のフィネレノンが推奨クラスIIa、スピロノラクトン、エプレレノンが推奨クラスIIb。急性非代償性心不全 UDで「うっ血」の評価が非常に重視されているため、本GLでも、うっ血、低心拍出、組織低灌流に分けて血行動態の評価・治療していくことを強調している。「急性非代償性心不全患者におけるうっ血の評価と管理のフローチャート」と推奨、「心原性ショック患者の管理に関するフローチャート」と推奨を記載している。急性心不全の治療においては、入院中の治療だけでなく、退院後のケア(移行期ケア)の重要性が増している。本GLでは、新たに移行期間に関する項目が設けられ、推奨が示されている。治療抵抗性心不全(ステージD) 治療抵抗性心不全(ステージD)では、治療開始前に治療目標を設定することが非常に重要であり、それに関連する推奨が示されている。また、2021年に本邦でも保険適用となった移植を目的としない植込型補助人工心臓(LVAD)治療(Destination therapy:DT)が、本GLに初めて収載され、DTも含めたステージDの「重症心不全における補助循環治療アルゴリズム」がフローチャートで示されている。特別な病態・疾患 心不全に関連する9つの病態・疾患が取り上げられ、最新の知見に基づいて内容がアップデートされている。とくに、以下の疾患において、新たな治療薬や診断法に関する重要な情報が追記されている。・肥大型心筋症:閉塞性肥大型心筋症に対する圧較差軽減薬マバカムテンが承認され、推奨クラスIとして記載。・心アミロイドーシス:トランスサイレチン(ATTR)心アミロイドーシスに対するTTR四量体安定化薬としてアコラミジスが新たに承認された。タファミジスまたはアコラミジスの投与は、NYHA心機能分類I/II度の患者に対しては推奨クラスI。III度の患者に対しては推奨クラスIIa。I~III度の患者に対して、低分子干渉RNA製剤ブトリシランが推奨クラスIIa。・心臓サルコイドーシス:突然死予防としての植込み型除細動器(ICD)に関する推奨が、『2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療』6)に準拠して記載。併存症 心不全診療で特に問題となる併存症として、CKD、肥満、貧血・鉄欠乏、抑うつ・認知機能障害が追加された。3つの項目について、詳しく説明された。・貧血・鉄欠乏:鉄欠乏を有するHFrEF/HFmrEF患者に対する心不全症状や運動耐容能改善を目的とした静注鉄剤の使用を考慮することが推奨クラスIIa。・高カリウム血症:高カリウム血症を合併したRAAS阻害薬(ARNI/ACE阻害薬/ARBおよびMRA)服用中の心不全患者に対して、RAAS阻害薬(特にMRA)による治療最適化のために、カリウム吸着薬の使用を考慮することが推奨クラスIIa。・肥満:肥満を合併する心不全患者に対する心血管死減少・再入院予防を目的としたGLP-1受容体作動薬セマグルチドあるいはチルゼパチドの投与を考慮することが推奨クラスIIa。心不全診療における質の評価 心不全診療は非常に多岐にわたるため、心不全診療の質の評価の統一化が課題となっている。AHA/ACCのPerformance Measures(PM)やQuality Indicators(QI)を参考に、心不全診療の質の評価に関する章が新設され、質指標が表にまとめられている。クリニカルクエスチョン(CQ) 今回の改訂では、CQが3つに絞られた。システマティックレビューを行い、解説と共に推奨とエビデンスレベルが示されている。・CQ1:eGFR 30mL/分/1.73m2未満の心不全患者へのSGLT2阻害薬の投与開始は推奨されるか?推奨:CKD合併心不全患者での有益性を示唆するエビデンスは認めるが、eGFR 20mL/分/1.73m2未満のRCTでのエビデンスはない。eGFR 20mL/分/1.73m2以上に限って条件付きで推奨する(エビデンスレベル:C[弱])。・CQ2:フレイル合併心不全患者へのSGLT2阻害薬の投与開始は推奨されるか?推奨:弱く推奨する(エビデンスレベル:C[弱])。・CQ3:代償期の心不全患者に対する水分制限を推奨すべきか?推奨:1日水分摂取量1~1.5Lを目標とした水分制限を弱く推奨する(エビデンスレベル:A[弱])。■参考文献1)日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.2)Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print]3)Kitai T, et al. J Card Fail. 2025 Mar 27. [Epub ahead of print]4)Bozkurt B, Coats AJS, Tsutsui H, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:352-380.5)日本心不全学会. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版.6)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン. 2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療.(ケアネット 古賀 公子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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PADを有する2型DM、セマグルチドは歩行距離を改善/Lancet

 症候性末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して歩行距離の改善が大きかったことが示された。米国・コロラド大学のMarc P. Bonaca氏らSTRIDE Trial Investigatorsが、第IIIb相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「STRIDE試験」の結果を報告した。PADは世界中で2億3,000万人超が罹患しており、有病率は高齢化により上昇していて、2型DMを含む心代謝性疾患の負担を増している。PAD患者に最も早期に発現し、最も多くみられ、最も支障を来す症状は機能低下と身体的障害であるが、機能や健康関連QOLを改善する治療法はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2025年3月29日号掲載の報告。52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比を評価、セマグルチド群vs.プラセボ群 STRIDE試験は、PADを有する2型DM患者において、セマグルチドが歩行能力、症状、および自己報告に基づくアウトカムを改善するかどうかを評価するため、北米、アジア、欧州の20ヵ国における112の外来臨床試験施設で行われた。 18歳以上の2型DMで間欠性跛行を伴うPAD(Fontaine分類IIa度、歩行可能距離>200m)を有し、足関節上腕血圧比(ABI)≦0.90または足趾上腕血圧比(TBI)≦0.70の患者を適格とした。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いて、セマグルチド1.0mgを週1回52週間皮下投与する群またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、全解析セットにおける定荷重トレッドミルで測定した52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比であった。安全性は、安全性解析セットで評価した。推定治療群間比1.13で、セマグルチド群の歩行距離改善が有意に大きい 2020年10月1日~2024年7月12日に、1,363例が適格性のスクリーニングを受け、792例がセマグルチド群(396例)またはプラセボ群(396例)に無作為化された。被験者792例のベースライン特性は、195例(25%)が女性、597例(75%)が男性で、年齢中央値は68.0歳(四分位範囲[IQR]:61.0~73.0)、2型DM罹病期間が10年以上の患者が480例(61%)であり、ベースラインのABIの幾何平均値は0.75、同TBIは0.48、最大歩行距離中央値185.5m(IQR:130.0~267.0)などであった。 追跡期間中央値は、13.2ヵ月(IQR:13.2~13.3)。セマグルチド群57/396例(14%)、プラセボ群43/396例(11%)が、試験治療を中途で恒久的に中止した。 主要エンドポイントである52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比中央値は、セマグルチド群(1.21[IQR:0.95~1.55])がプラセボ群(1.08[0.86~1.36])よりも有意に大きかった(推定治療群間比:1.13[95%信頼区間[CI]:1.06~1.21]、p=0.0004)。 探索的解析では、52週時点の最大歩行距離の絶対改善中央値は、セマグルチド群37m(IQR:-8~109.0)、プラセボ群13m(-26.5~70.0)であった。 重篤な有害事象の発現は、セマグルチド群は被験者74例(19%)で130件(100人年当たり32.5件)、プラセボ群は78例(20%)で111件(100人年当たり26.9件)が報告された。このうち試験薬に関連(possiblyまたはprobably)した重篤な有害事象は、セマグルチド群では被験者5例(1%)で6件、プラセボ群は同6例(2%)で9件が報告され、重篤な胃腸障害の頻度が最も高かった(セマグルチド群は2例[1%]で2件、プラセボ群は3例[1%]で5件が報告)。 治療に関連した死亡はなかった。 著者は、「これらの結果は、PADを有する2型DMへのセマグルチドの使用を支持するものであり、これら集団への治療ではセマグルチドを優先すべきであることが示唆された」とまとめている。同時に、「今回の研究結果がもたらす意義には、セマグルチドがもたらすベネフィットのメカニズムを明らかにするため、および2型DMを有さないPAD患者におけるセマグルチドの有効性と安全性を評価するための、さらなる研究が必要であることが含まれる」と述べている。

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新たな冠動脈リスク予測モデルで女性のMACEリスクを4段階に層別化可能

 新たに開発された女性の冠動脈リスクスコア(COronary Risk Score in WOmen;CORSWO)は、女性の冠動脈リスクを効果的に層別化し、特に高リスクおよび非常に高リスクの検出に優れていることから、主要心血管イベント(MACE)発生の予測に有効であるとする研究結果が、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」に2024年12月5日掲載された。 女性の冠動脈疾患(CAD)の発症は男性と比較して7~10年遅く、非典型的な症状を伴うため、女性におけるMACE発生を予測するツールが求められている。バルデブロン大学病院(スペイン)のGuillermo Romero-Farina氏らは、前向きに収集された臨床データを用いた後ろ向き解析を行い、女性でのMACE発生を予測するためのモデル(CORSWO)を構築し、その予測能を検証した。対象は、2000年から2018年の間に心電図同期SPECT(単一光子放射断層撮影)心筋血流イメージング(gSPECT MPI)を受けた2万5,943人の連続した患者の中から抽出した女性患者2,226人(平均年齢66.7±11.6歳)とし、平均4±2.7年間追跡し、MACE(不安定狭心症、非致死的な心筋梗塞、冠動脈血行再建術、心臓死)の発生を評価した。 対象者は、トレーニング群(65.6%、1,460人)と検証群(34%、766人)に分けられた。まず、トレーニング群のデータから多変量解析によりMACEの予測に有用な変数を特定し、それらを基にLASSO回帰分析と多変量Cox回帰分析を用いてMACEリスクを予測するモデルを構築した。両モデルのROC曲線下面積(AUC)はいずれも0.79であったが、後者の方が変数が少なかったため、最終的にCox回帰モデルを採用した。 次に、1)臨床的変数、2)ストレステスト変数、3)安静時gSPECT MPI変数、4)これらのモデルから得られた予測変数を用いて4つのモデルを構築し、MACE発生のハザード比(HR)を算出するとともに、その予測精度をBrierスコアにより評価した。その上でCox回帰分析により、患者ごとにMACEの年発生率を計算してZスコア(0〜24点)に換算し、リスクレベルを低(年1回未満)、中(年1~2回)、高(年3~5回)、非常に高(年5回以上)に分類した。 その結果、トレーニング群において女性でのMACE発生を予測する最良のモデルは、それぞれのモデルで特定された予測変数を全て組み込んだ4つ目のモデルであり、AUCは0.80(95%信頼区間〔CI〕0.74〜0.84)、Brierスコアは0.08であった。予測変数は、年齢>69歳、糖尿病、硝酸薬使用、心筋梗塞の既往、薬理学的テストの実施、ST低下≧1mm、SRS(安静時心血流スコアの合計)%>9.6、SSS(ストレス時心血流スコアの合計)%>6.6、SDS(SSDとSRSの差)%>5.2、EDV(拡張末期容積)指数>38mL、ESV(収縮末期容積)指数>15mLであった。 トレーニング群で得られたZスコアを検証群に適用したところ、リスクは、低(0〜3点)、中(4〜6点)、高(7〜11点)、および非常に高(>11点)の4段階に層別化された。ROC曲線とBrierスコア分析によりモデルの性能を評価し、さらにCox回帰分析を用いてリスクレベルごとにMACEの発生率を比較した。その結果、低~中リスクと比較して高~非常に高リスクの患者群(HR 5.29、95%CI 3.92〜7.16、P<0.001)で、モデルが良好な予測能を示した(AUC 0.78、95%CI 0.72〜0.80、Brierスコア0.13)。これにより、CORSWOはMACE発生の予測において有用であることが確認された。 著者らは、「CORSWOは、複数の画像検査に基づく情報を必要とするものの、MACEリスクを高リスクおよび非常に高リスクを含む4段階に高い精度で分類できる、効果的なツールである」と述べている。

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4月9日 子宮頸がんを予防する日【今日は何の日?】

【4月9日 子宮頸がんを予防する日】〔由来〕「し(4)きゅう(9)」(子宮)の語呂合わせから、「子宮頸がん」予防の啓発活動を行っている「子宮頸がんを考える市民の会」(東京)が制定。この日を中心に「子宮頸がん」についてのセミナーなどを開催している。関連コンテンツウイルスと関連するがん【1分間で学べる感染症】子宮頸がん、どの年齢層で多い?【患者説明用スライド】再発・転移子宮頸がんへのtisotumab vedotin、日本人でも有望な結果/日本癌治療学会再発・転移子宮頸がん、化学療法+cadonilimabがPFS・OS改善/Lancet局所進行子宮頸がん、導入化学療法+CRTがPFS・OS改善/Lancet

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