左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)と比較してゾタロリムス溶出ステントを用いた冠血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、5年間の追跡調査において、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカムの発生に関して有意差はみられないが、心筋梗塞と再血行再建術の頻度は高いことが、米国・スタンフォード大学のWilliam F. Fearon氏らが実施した「FAME 3試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2025年3月30日号に掲載された。
世界48施設の医師主導型無作為化試験
FAME 3試験は、左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者において、ゾタロリムス溶出ステントを用いたFFRガイド下PCIとCABGの有効性と安全性を比較する医師主導型の無作為化試験であり、2014年8月~2019年11月に欧州、米国、カナダ、オーストラリア、アジアの48施設で参加者を募集した(MedtronicとAbbott Vascularの助成を受けた)。
年齢21歳以上、左冠動脈主幹部には臨床的に重大な狭窄がなく、冠動脈造影所見で3枝病変を認める患者を対象とし、心原性ショックや最近のST上昇型心筋梗塞、重度の左室機能障害(駆出率<30%)、CABGの既往歴がある患者は除外した。
主要エンドポイントは、ITT集団における死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合の5年間の発生率とした。なお、1年後の解析では、FFRガイド下PCIはCABGに対して、死亡、脳卒中、心筋梗塞、再血行再建術の複合アウトカムに関して、事前に規定された非劣性の閾値を満たさなかった。
死亡、脳卒中には差がない
1,500例を登録し、PCI群に757例、CABG群に743例を割り付けた。全体の登録時の年齢中央値は66歳(四分位範囲:59~71)、1,235例(82%)が男性で、428例(29%)は糖尿病、587例(39%)は非ST上昇型急性心筋梗塞であった。PCI群の724例(96%)とCABG群の696例(94%)が5年間の追跡期間を完了した。
5年の時点での死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合の発生率は、PCI群が16%(119例)、CABG群は14%(101例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.16[95%信頼区間[CI]:0.89~1.52]、p=0.27)。
主要エンドポイントの個々の項目については、死亡(PCI群7%vs.CABG群7%、HR:0.99[95%CI:0.67~1.46])と脳卒中(2%vs.3%、0.65[0.33~1.28])の発生率には両群間に差はなかったが、心筋梗塞(8%vs.5%、1.57[1.04~2.36])、再血行再建術(16%vs.8%、2.02[1.46~2.79])の発生率はPCI群で高かった。
安全性のエンドポイントはCABG群で発生率が高い
一方、安全性のエンドポイントである出血、急性腎障害、心房細動/重大な不整脈、再入院の1年後の発生率は、いずれもPCI群に比べCABG群で有意に高かった。
著者は、「これらのデータは、この分野における先行研究の結果とは明らかに異なっており、医師と患者のより効果的な共同意思決定(shared decision making)の促進に資する可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)