急性冠症候群のDCB治療後DAPT、段階的漸減レジメンで十分か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/16

 

 薬剤コーティングバルーン(DCB)による治療を受けた急性冠症候群患者では、有害臨床イベントの発生に関して、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を段階的に減薬(de-escalation)するレジメンは12ヵ月間の標準的なDAPTに対し非劣性であることが、中国・Xijing HospitalのChao Gao氏らREC-CAGEFREE II Investigatorsが実施した「REC-CAGEFREE II試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年3月31日号で報告された。

中国の無作為化非劣性試験

 REC-CAGEFREE II試験は、DCBを受けた急性冠症候群患者において、抗血小板薬療法の強度を弱めることは可能かの評価を目的とする医師主導型の非盲検評価者盲検無作為化非劣性試験であり、2021年11月~2023年1月に中国の41病院で患者を登録した(Xijing Hospitalの助成を受けた)。

 年齢18~80歳で、パクリタキセルを塗布したバルーンによるDCB治療のみを受けた急性冠症候群患者1,948例(平均年齢59.2歳、男性74.9%)を対象とした。被験者を、DAPTを段階的に減薬する群(975例)、または標準的なDAPTを投与する群(973例)に無作為に割り付けた。

 段階的DAPT減薬群では、アスピリン+チカグレロル(1ヵ月)を投与後、チカグレロル単剤(5ヵ月)、引き続きアスピリン単剤(6ヵ月)の投与を行った。標準的DAPT群では、アスピリン+チカグレロルを12ヵ月間投与した。

 主要エンドポイントは、有害臨床イベント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術、BARC type 3または5の出血)とした。絶対リスク群間差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が3.2%未満の場合に非劣性と判定した。

出血リスクは低い

 全体の30.5%が糖尿病で、8.8%が脳卒中の既往、13.2%が心筋梗塞の既往、32.2%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の既往を有しており、20.6%は出血リスクが高かった。治療を受けた病変の60.9%が小血管で、17.8%にステント内再狭窄を認めた。DCBの直径の平均値は2.72(SD 0.49)mmだった。

 12ヵ月の時点で、主要エンドポイントである有害臨床イベントは、段階的DAPT減薬群で87例(8.9%)、標準的DAPT群で84例(8.6%)に発現した。発生率の群間差は0.36%(95%CI:-1.75~2.47)で、95%CI上限値は3.2%未満であり、段階的DAPT減薬群の標準的DAPT群に対する非劣性が示された(非劣性のp=0.01)。

 BARC type 3または5の出血の発生は、段階的DAPT減薬群で少なかった(4例[0.4%]vs.16例[1.6%]、群間差:-1.19%[95%CI:-2.07~-0.31]、p=0.008)。また、患者志向型複合エンドポイント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術)の発生は、両群で同程度だった(84例[8.6%]vs.74例[7.6%]、1.05%[-1.37~3.47]、p=0.396)。

階層的な臨床的重要性を考慮したwin ratioが優れる

 全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、BARC type 3出血、血行再建術、BARC type 2出血というあらかじめ定義された階層的複合エンドポイントについて、win ratio(勝利比)法による階層的な臨床的重要性を考慮すると、標準的DAPT群(勝率10.1%)に比べ段階的DAPT減薬群(14.4%)で勝率が有意に高かった(勝利比:1.43[95%CI:1.12~1.83]、p=0.004)。

 著者は、「ITT集団では、標準的DAPT群に比べ段階的DAPT減薬群で、患者志向型複合エンドポイントの発生率が1%高く、BARC type 3または5の出血の発生率が1%低かったことから、虚血リスクと出血リスクにはトレードオフが存在する可能性が示唆される」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事