PADを有する2型DM、セマグルチドは歩行距離を改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/10

 

 症候性末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して歩行距離の改善が大きかったことが示された。米国・コロラド大学のMarc P. Bonaca氏らSTRIDE Trial Investigatorsが、第IIIb相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「STRIDE試験」の結果を報告した。PADは世界中で2億3,000万人超が罹患しており、有病率は高齢化により上昇していて、2型DMを含む心代謝性疾患の負担を増している。PAD患者に最も早期に発現し、最も多くみられ、最も支障を来す症状は機能低下と身体的障害であるが、機能や健康関連QOLを改善する治療法はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2025年3月29日号掲載の報告。

52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比を評価、セマグルチド群vs.プラセボ群

 STRIDE試験は、PADを有する2型DM患者において、セマグルチドが歩行能力、症状、および自己報告に基づくアウトカムを改善するかどうかを評価するため、北米、アジア、欧州の20ヵ国における112の外来臨床試験施設で行われた。

 18歳以上の2型DMで間欠性跛行を伴うPAD(Fontaine分類IIa度、歩行可能距離>200m)を有し、足関節上腕血圧比(ABI)≦0.90または足趾上腕血圧比(TBI)≦0.70の患者を適格とした。

 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いて、セマグルチド1.0mgを週1回52週間皮下投与する群またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、全解析セットにおける定荷重トレッドミルで測定した52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比であった。安全性は、安全性解析セットで評価した。

推定治療群間比1.13で、セマグルチド群の歩行距離改善が有意に大きい

 2020年10月1日~2024年7月12日に、1,363例が適格性のスクリーニングを受け、792例がセマグルチド群(396例)またはプラセボ群(396例)に無作為化された。被験者792例のベースライン特性は、195例(25%)が女性、597例(75%)が男性で、年齢中央値は68.0歳(四分位範囲[IQR]:61.0~73.0)、2型DM罹病期間が10年以上の患者が480例(61%)であり、ベースラインのABIの幾何平均値は0.75、同TBIは0.48、最大歩行距離中央値185.5m(IQR:130.0~267.0)などであった。

 追跡期間中央値は、13.2ヵ月(IQR:13.2~13.3)。セマグルチド群57/396例(14%)、プラセボ群43/396例(11%)が、試験治療を中途で恒久的に中止した。

 主要エンドポイントである52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比中央値は、セマグルチド群(1.21[IQR:0.95~1.55])がプラセボ群(1.08[0.86~1.36])よりも有意に大きかった(推定治療群間比:1.13[95%信頼区間[CI]:1.06~1.21]、p=0.0004)。

 探索的解析では、52週時点の最大歩行距離の絶対改善中央値は、セマグルチド群37m(IQR:-8~109.0)、プラセボ群13m(-26.5~70.0)であった。

 重篤な有害事象の発現は、セマグルチド群は被験者74例(19%)で130件(100人年当たり32.5件)、プラセボ群は78例(20%)で111件(100人年当たり26.9件)が報告された。このうち試験薬に関連(possiblyまたはprobably)した重篤な有害事象は、セマグルチド群では被験者5例(1%)で6件、プラセボ群は同6例(2%)で9件が報告され、重篤な胃腸障害の頻度が最も高かった(セマグルチド群は2例[1%]で2件、プラセボ群は3例[1%]で5件が報告)。

 治療に関連した死亡はなかった。

 著者は、「これらの結果は、PADを有する2型DMへのセマグルチドの使用を支持するものであり、これら集団への治療ではセマグルチドを優先すべきであることが示唆された」とまとめている。同時に、「今回の研究結果がもたらす意義には、セマグルチドがもたらすベネフィットのメカニズムを明らかにするため、および2型DMを有さないPAD患者におけるセマグルチドの有効性と安全性を評価するための、さらなる研究が必要であることが含まれる」と述べている。

(ケアネット)