ブレクスピプラゾールは、抗うつ薬と併用することで、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、セロトニン、ドパミン神経伝達物質に対し相補的な作用を示し、さらに強力な効果を得られる可能性が示唆されている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのMalaak Brubaker氏らは、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬の併用療法に関する前臨床試験からどのような情報が得られているかを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年2月28日号の報告。
ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法の前臨床研究を検索するため、システマティック文献レビューを実施した。対象には、精神疾患に関連する行動テストを含めた。2011年1月〜2021年7月5日までに公表された研究を、Ovid MEDLINE、Ovid Embase、カンファレンス抄録より検索した。ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法による統計学的に有意な結果(p<0.05)を抽出した。
主な結果は以下のとおり。
・スクリーニングされた296件のうち、7つの独自研究について記載された9件の論文が抽出された。
・3つのうつ病モデル(慢性予測不能軽度ストレス、社会的敗北ストレス、リポ多糖誘発性うつ病)を含むげっ歯類モデルにおいて、ブレクスピプラゾールと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の併用療法は、対照群と比較し、うつ病様行動(強制水泳試験、尾懸垂試験、ショ糖嗜好性試験)に対して一貫した有意なベネフィットを示した。しかし、ブレクスピプラゾールまたは抗うつ薬の単剤療法では、統計学的に有意なベネフィットは認められなかった。
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の捕食動物嗅覚ストレスモデルにおいて、ブレクスピプラゾールとSSRI(エスシタロプラム)併用療法は、不安様行動(高架式十字迷路試験)および過覚醒(聴覚性驚愕反射)に対し、対照群/単独療法群よりも有意な効果を示した。しかし、ブレクスピプラゾールおよびエスシタロプラムの単独療法は、対照群と比較し、統計学的に有意な差は認められなかった。
・PTSDの恐怖条件付けモデルにおいて、ブレクスピプラゾール単剤療法およびブレクスピプラゾールとエスシタロプラム併用療法のいずれにおいても、有意な改善が認められた。
著者らは「少数の研究ではあるものの、うつ病およびPTSDに対する前臨床試験において、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法は、いずれかの単剤療法と比較し、有効性が高いことが報告されている。これらの前臨床試験の結果は、うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法およびPTSDに対するブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法の有効性に関するランダム化臨床試験の結果を支持しているものである」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)