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現地特別インタビュー 中堅・若手メンバーインタビュー:北里大学 堀米 佑一 氏、藤田医科大学 服部 裕次 氏【第51回日本骨髄腫学会学術集会:独占インタビュー】

北里大学 堀米 佑一 氏、藤田医科大学 服部 裕次 氏現地特別インタビュー 中堅・若手メンバーインタビュー出演北里大学 堀米 佑一 氏藤田医科大学 服部 裕次 氏

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「多発性骨髄腫の診療指針 2026 Update」(日本骨髄腫学会/ケアネット共催プログラム)【アーカイブ配信】

日本骨髄腫学会 理事 尾崎 修治氏日本骨髄腫学会編「多発性骨髄腫の診療指針 第6版」作成委員長 尾崎 修治氏より最新の臨床試験結果や治療アルゴリズムの変更点をご解説いただきます。※本企画は、日本骨髄腫学会/ケアネット共催Web講演会のアーカイブ配信です。

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第316回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(前編)

INDEXビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告事故が起こりやすい治療時期ビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告今年3月上旬、埼玉県立小児医療センターが明らかにした急性リンパ性白血病(ALL)で治療中の患者5例が、髄腔内注射(以下、髄注)の後に重篤な神経症状を発症し、うち1例はこれが原因とみられる状態で死亡に至った事案は記憶に新しい。この件では5例中3例の髄液から髄注には禁忌の抗がん剤ビンクリスチン(商品名:オンコビン)が検出されたことが判明し、重篤な神経症状発症事例の可能性が濃厚と指摘されている。ちなみに、ビンクリスチンは微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系)であり、紡錘体を形成しているチューブリンに結合して微小管の形成を阻害し、細胞分裂を停止させる作用を持つ。また、ビンクリスチンは胆汁排泄される肝代謝型で、主な代謝酵素は CYP3A4 とCYP3A5 である。ただし、CYP3A5の発現レベルには大きな個人差があり、その度合いによって副作用の出現頻度は異なる。一般的な副作用は末梢神経症状であり、薬剤が末梢神経に到達すると、軸索輸送(タンパク質・小胞の輸送)に必須な軸索内の微小管が障害される。このため、もし髄注でビンクリスチンが脊髄・脳に接触すれば、同部位には代謝機構は存在しないため、直接高濃度で曝露することになり、末梢神経毒性とは比較にならないほど重篤な神経症状が生じる。具体的には軸索の順行性・逆行性輸送が破綻し、神経細胞の変性・壊死が急速に進行する。実際の症状としては、激しい疼痛、下肢麻痺、上行性麻痺、呼吸筋麻痺、意識障害などを発症し、最悪は死に至る。救命のためには早期に大量の脳脊髄液洗浄を行う必要があるが、誤って髄注してしまった場合の救命例は少数といわれている。2006年に米国・ノースウェスタン大学のグループが行った文献レビュー1)では、当時確認されたミスによるビンクリスチンの髄注事例32例中27例(84.3%)が死亡したとされている。なお、オーストラリアの研究者が2019年に発表した論文2)によれば、過去の論文検索や事故報告書などの集計から、これまで全世界で確認されているビンクリスチンの誤った髄注事例は少なくとも135例あるものの、これは氷山の一角とみられている。この件について同センターが医療法の医療事故調査制度に基づいて設置した外部有識者による医療事故調査委員会は、5月27日に第3回の会合を開き、「ビンクリスチン混入の原因特定は困難」との結論に達した。一方で再発防止策については、3回の会合で委員から提示された意見を踏まえ、過失、故意のいずれの可能性でも対応し得る対策がまとめられたとし、これを反映させた報告書の微修正などは委員長に一任された。報告書は同センターに提出され、調査対象となっている5例の家族に内容を説明後、個人情報などに配慮しつつ可能な範囲で公表する予定だ。事故が起こりやすい治療時期しかし、何ともすっきりしない結末である。この事件を改めて振り返り論考してみたい。まず、今回の事案で髄液からビンクリスチンが検出されたのは、髄注時期別にみると、2025年1月に投与された10歳未満の男児、2025年3月と10月にそれぞれ10代男性の3例である。3例とも注射後数日以内に下肢痛や麻痺などの神経症状を発症。2025年10月に髄注を受けた患者は2026年2月に死亡し、残る2例も意識不明や全身麻痺などの重篤な状態となった。実は同センター側では3例目の神経症状発症事例を経験した直後の11月、院内外の委員で構成される調査対策委員会を発足させ、対外的な公表の約1週間前の3月5日まで同委員会が計6回開催されていた。この3例の髄液中のビンクリスチン検出は、同委員会の開催過程で、がん性髄膜炎の評価などほかの神経症状を検索するために採取した髄液を使用した髄液タンデム質量分析の結果、判明したものである。さて、ここで改めて小児でのALLの標準的治療について触れておかねばならないだろう。ALLではおおむねプレフェーズ(導入前治療)→寛解導入療法→強化(地固め)療法→再寛解導入療法→維持療法という流れとなる。プレフェーズは、腫瘍崩壊症候群の防止とステロイドへの反応性の評価を目的として行われるもので、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンが通常5~7日程度投与される。今回、焦点となっているのは、寛解導入療法の段階である。この寛解導入療法(約4週間)では、ビンクリスチン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、L-アスパラギナーゼの3剤(高リスク群ではダウノルビシンなどを加えた4剤)併用療法とメトトレキサートの髄注が行われる。ちなみにこのうちプレドニゾロンは内服、そのほかは基本的に静脈注射である(ただしL-アスパラギナーゼは筋注の場合もあり)。ALLではがん細胞が中枢神経に潜伏しやすく、血液脳関門の存在ゆえにこうした潜伏したがん細胞を制圧するには全身化学療法では不十分であり、メトトレキサート、シタラビン、ヒドロコルチゾンの3剤併用による髄注(トリプルIT)が寛解導入療法の時期から行われる。ただし、ビンクリスチンは一般的に寛解導入療法後の強化療法で使われるケースは少ないものの、再寛解導入療法以降に再び定期的に投与されるようになる。今回の事案については、どの治療段階で起きたかは明らかにされていない。ただ、過失で起きた前提で考えるならば、それが起きやすい環境があるのは寛解導入療法時となる。そして同センターではこの事案が公表された今年3月11日から約1週間後の3月17日にこの3例以外にも髄注を受けた2例のALL患者で神経症状が疑われることを公表している。前出の3例とは異なり、この2例の患者プロファイルは明らかにされていない。前出の3例は早い患者で髄注翌日、遅い患者でも4日以内に症状が出現、急速に進行・重症化した。それに対し、この2例は発症まで約2週間を要し、症状は下肢麻痺などで命に別状はないことなどから、前述の調査対策委員会では「最初の3例と同じ病態であることには否定的」との見解だ。ALLでは、ビンクリスチン静注とトリプルIT髄注を同日に行うことによる取り違えに起因した事故が過去に世界的にも報告されている。このため昨今ではあえて投与日を変えて行うことが一般的と言われる。患者や施設の事情によっては、同日に行われることもあるという。もちろん過去の事故のことは多くの施設で念頭にあることは想像に難くなく、その場合は同日内でも相当時間を空けて行うなど、通常は相当厳重な注意が払われる。今回は小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた。次回、「なぜ起きたのか?」 故意・過失の双方から今回の事件を独自視点でひもといてみたい。参考1)Basetty P, et al. blood. 2006;108:3327.2)Gilbar P, et al. J Oncol Pharm Pract. 2020;26:263-266.3)日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016 年版. 金原出版株式会社. 2016.4)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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未治療MCLへのイブルチニブを含む1次治療±ASCT、長期解析結果(TRIANGLE)/Lancet

 18~65歳の未治療マントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、標準的な免疫化学療法へイブルチニブを追加した治療に、自家造血幹細胞移植(ASCT)を追加する意義を検討した「TRIANGLE試験」の長期追跡評価(55ヵ月)の結果が、ドイツ・LMU University HospitalのMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkによって報告された。イブルチニブ追加療法群は治療成功生存期間(Failure Free Survival:FFS)のみならず全生存期間(OS)の改善との関連も示された。一方で、イブルチニブ追加療法+ASCT群ではASCT追加のベネフィットは示されず、毒性の増加が認められた。TRIANGLE試験の最初の評価報告(追跡期間中央値31ヵ月)では、標準的な1次免疫化学療法へのイブルチニブ追加はFFSを改善することが示されていたが、さらにASCTを追加すべきかどうかについては議論の余地が残っていた(ジャーナル四天王「未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet」)。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。ASCT+免疫化学療法群、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群、免疫化学療法+イブルチニブ群に無作為化 TRIANGLE試験は、MCLの治療経験がありASCTが実施可能または実施可能施設と連携する欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設(2次または3次医療センター)で実施された第III相の3群無作為化非盲検優越性試験。18~65歳、未治療の病期II~IV期でASCTの適応がある患者を、1対1対1の割合で対照群のA群(ASCT+免疫化学療法群)、試験群のA+I群(ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群)またはI群(免疫化学療法+イブルチニブ群)の3群に無作為に割り付け追跡評価した。無作為化は、コンピュータ生成乱数を用いて行われ、研究グループおよびMCL国際予後指数(Mantle Cell Lymphoma International Prognostic Index:MIPI)リスク分類で層別化された。 A群の治療は、R-CHOP(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1日目にシクロホスファミド750mg/m2、1日目にドキソルビシン50mg/m2、1日目にビンクリスチン1.4mg/m2[最大2mgまで]、1~5日目にprednisone 100mg経口投与)と、R-DHAPまたはR-DHAOx(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1~4日目にデキサメタゾン40mg静脈内または経口投与、2日目に高用量シタラビン2×2g/m2を12時間ごと3時間かけて静脈内投与、これらに加えて1日目に24時間かけてシスプラチン100mg/m2を静脈内投与[R-DHAP]または1日目にオキサリプラチン130mg/m2を静脈内投与[R-DHAOx])を21日間ごと交互に6サイクル行われ、その後にASCTを行った。 A+I群では、経口イブルチニブ(1日560mg)がR-CHOPサイクルの1~19日目(導入療法)に追加され、またASCT後に2年間投与された(維持療法)。 I群では、A+I群同様にイブルチニブが投与された(導入療法と維持療法)が、ASCTは行われなかった。 すべての治療群で国際ガイドラインに従い、リツキシマブ維持療法が許容された。 主要アウトカムはFFSで、3つのペアワイズ片側log-rank検定により統計学的にモニタリングされた。主要解析は、すべての無作為化された患者(プロトコール逸脱の有無は不問)を包含したITTにて行われた。安全性は無作為化され、いずれかの治療フェーズを開始した患者を対象に評価した。4年FFS率、イブルチニブ追加療法へのASCT上乗せ効果は示されず 2016年7月29日~2020年12月28日に870例が無作為化された(A群288例、A+I群292例、I群290例)。無作為化された患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:52~61)、男性が662例(76%)であり、病期IV期の患者が757/869例(87%)、MIPI低リスク504/870例(58%)、中程度236/870例(27%)であった。 追跡期間中央値54.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:54.4~56.0)後、A+I群のI群に対する優越性は示されなかった。4年FFS率はそれぞれ82%(95%CI:78~87)、81%(76~86)であった(ハザード比[HR]:0.86、片側98.33%CI:0.00~1.27、片側p=0.21)。 一方、A群の4年FFS率は70%(95%CI:65~76)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(HR:0.63、片側98.33%CI:0.00~0.89、片側p=0.0026)。また、初回評価時同様、A群のI群に対する優越性は認められなかった(HR:1.45、片側98.33%CI:0.00~2.02、片側p=0.99)。 4年OS率は、A+I群88%(95%CI:84~92)vs.A群81%(76~85)(HR:0.59、95%CI:0.38~0.92、p=0.0036)、I群90%(87~94)vs.A群81%(76~85)(HR:0.57、95%CI:0.36~0.90、p=0.0019)であり、両イブルチニブ追加療法群ともに、非追加群と有意な差が認められた。イブルチニブを含む導入・維持療法を新たな標準治療とすべき 維持療法または追跡期間中、最も多くみられたGrade3~5の有害事象は血液およびリンパ系障害で、A+I群で127/234例(54%)報告されたのに対して、I群では74/269例(28%)であり、またA群では56/240例(23%)であった。感染症の発現は、A+I群で80/234例(34%)報告されたのに対して、I群では71/269例(26%)、A群では37/240例(15%)であった。 維持療法または追跡期間中、最も多くみられた死亡に至った有害事象は感染症で、A+I群で4/234例(2%)、I群で5/269例(2%)報告された。 これらの結果を踏まえて著者は、「より若いMCL患者に対して、イブルチニブ+R-CHOP+R-DHAP(またはR-DHAOx)による導入療法後、2年間のイブルチニブ維持療法を新たな標準治療として検討すべきである」と述べている。

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再発・難治性多発性骨髄腫、週2回イキサゾミブ+ポマリドミド+デキサメタゾンの第I/II相試験

 再発・難治性多発性骨髄腫に対する、週2回の経口プロテアソーム阻害薬イキサゾミブ、ポマリドミド、デキサメタゾンを併用した全経口(all-oral)レジメンの第I/II相用量漸増・拡大試験の結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのOmar Nadeem氏らが報告した。本レジメンは良好な忍容性と高い有効性を示し、実臨床における高い利便性と有用性を持つ可能性が示唆された。Haematologica誌オンライン版2026年5月28日号に掲載。 プロテアソーム阻害薬(PI)、免疫調節薬(IMiD)、デキサメタゾンを組み合わせた3剤併用療法は、再発・難治性多発性骨髄腫患者に有効な治療選択肢である。すべて経口剤で構成される治療法は、従来の注射剤を含む治療法に比べて実臨床での実施可能性や利便性が高いと考えられている。本試験は、再発・難治性多発性骨髄腫50例を対象に実施された。21日を1サイクルとし、イキサゾミブ(3mgまたは4mg、各サイクルの1、4、8、11日目)、ポマリドミド(2mg、3mg、または4mg、1〜14日目)、デキサメタゾン(12mgまたは8mg、イキサゾミブ投与日およびその翌日)が投与された。前治療歴の中央値は2ラインで、98.0%がレナリドミド、88.0%がボルテゾミブの治療歴があった。第II相試験推奨用量は、最高用量レベルであるイキサゾミブ4mg+ポマリドミド4mgで、治療サイクル数の中央値は11サイクルであった。 主な結果は以下のとおり。・用量漸増期において、2例の用量制限毒性(Grade3の上気道感染症、Grade3の好中球減少症)が報告された。・頻度の高かった毒性(全Grade/Grade3/Grade4)は、好中球減少症(76.0%/22.0%/4.0%)、血小板減少症(70.0%/8.0%/8.0%)、白血球減少症(68.0%/22.0%/0%)、疲労(52.0%/4.0%/0%)、貧血(46.0%/2.0%/0%)であった。・全50例における全奏効率(ORR)は60.0%(VGPR以上24.0%)であり、奏効期間(DoR)中央値は18.0ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は13.9ヵ月、3年全生存(OS)率は85.2%であった。・第II相推奨用量で治療を受けた38例におけるORRは65.8%(VGPR以上28.9%)であり、DoR中央値は19.3ヵ月、PFS中央値は17.8ヵ月、3年OS率は80.3%であった。

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サラッとStat応用編:プロペンシティスコア解析がワカる【Oncologyインタビュー】第58回

出演岐阜大学泌尿器科学講座 古家 琢也氏京都大学医学統計生物情報学 森田 智視氏医療者にとって臨床統計の解釈は大きな課題である。岐阜大学泌尿器科学講座の古家琢也氏と京都大学医学統計生物情報学の森田智視氏が臨床目線で送る“ワカる”臨床統計解説。

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複数ドナー由来の細胞製剤追加で臍帯血移植に有望な結果

 白血病などの血液悪性腫瘍の患者に対する臍帯血移植で、通常の単一臍帯血移植に加えて、複数ドナー由来の臍帯血を用いて製造された細胞製剤を追加投与する方法が有効である可能性が、臨床試験で示された。小規模な患者集団において、通常の臍帯血製剤の投与後にこのような幹細胞製剤を投与したところ、ほとんどの患者で重度の移植片対宿主病(GVHD)は認められず、28人中27人が少なくとも1年間生存したことが確認されたという。米フレッド・ハッチンソンがんセンターの臍帯血プログラム部門長のFilippo Milano氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に4月27日掲載された。Milano氏は、「移植患者が実質的に9人の異なるドナー由来の細胞の移植を受けたのは、これが初めてだ」とニュースリリースで述べている。 臍帯血移植は、幹細胞移植を必要とする血液がんやその他の血液疾患患者に対する治療選択肢の一つである。幹細胞移植とは、造血機能を再構築する治療法である。臍帯血に含まれる幹細胞は、白血球の型(HLA〔ヒト白血球抗原〕)が完全に一致していなくても比較的安全に実施できるため、適合するドナーが見つからない患者にとって有力な選択肢となる。ただ、単一の臍帯血ユニットでは含まれる細胞数が少ないため、造血機能の回復が遅いことが課題であるという。 研究グループは、今回の第2相臨床試験に白血病などの血液悪性腫瘍の患者28人を登録し、HLA適合単一ユニットの臍帯血移植後に、新たな幹細胞製剤であるdilanubicelを投与した。Deverra Therapeutics社が製造するdilanubicelは、6~8ユニットの異なるドナー由来の造血前駆細胞を組み合わせた製剤で、実験室内で培養・増殖させた後、患者に投与される。 その結果、全ての患者で、好中球は中央値18日、血小板は中央値31日で回復が確認された。臍帯血移植片由来のリンパ球の早期増殖は9日目までに認められ、11日目にピークに達した。グレード3~4の急性または慢性GVHDは認められなかった。追跡期間中央値1.4年の時点で、28人中27人が生存しており、再発・病勢進行は認められていなかった。1人の患者が死亡した。別の患者では、移植の約1年後に再発が認められたが、追加治療により寛解に至り、その状態が1年以上維持されているという。 Milano氏は、「プールされたドナー由来の幹細胞製剤に含まれる細胞が長期にわたって残存することはなかった。しかし、これらは全て、適合ドナー由来の臍帯血が患者に新しい健康な免疫システムを確立するのを支えた」と述べている。 研究グループは現在、より多くの患者を対象とした追加の臨床試験の実施に向けて、資金調達を進めている。「幹細胞移植が必要な人、特に高リスク疾患を抱える患者にとって、臍帯血が重要な選択肢であることに変わりはない」とMilano氏は話している。

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ベンラリズマブ、好酸球増多症候群に対し承認取得/AZ

 アストラゼネカは2026年5月18日、ベンラリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ファセンラ皮下注30mgシリンジ/30mgペン)が、「好酸球増多症候群(HES)」に対し、日本で承認を取得したことを発表した。ベンラリズマブは現在、日本、米国、EU、中国を含む80ヵ国以上で重症好酸球性喘息の追加維持治療として承認されており、日本および米国では、6歳以上の小児および青年に対しても承認されている。また、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の成人患者に対する治療薬としても、日本を含む70ヵ国以上で承認されている。 今回の承認は、HES患者を対象に実施された第III相NATRON試験の結果に基づく。NATRON試験は、ベンラリズマブ30mgまたはプラセボを4週間ごとに皮下投与し、その有効性および安全性を評価した、多施設共同の無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験である。主要評価項目は最初のHESの悪化/再燃までの期間で、以下のいずれかに該当する事象として定義された。・HESの臨床症状の悪化または検査異常により、2日以上にわたり経口コルチコステロイド(OCS)の投与量が10mg/日以上増量・細胞毒性療法および/または免疫抑制療法を新規開始または増量・入院 治験参加者(133例)は、HESに対する基礎治療に加えて、二重盲検投与期間24週間中、4週間ごとにベンラリズマブ30mgまたはプラセボの皮下投与を受ける群に、1:1の割合で無作為化された。 ベンラリズマブ投与群はプラセボ投与群と比較して、最初のHESの悪化/再燃までの期間を延長し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある有効性が認められた(最初のHES悪化/再燃を経験した割合:ベンラリズマブ投与群19.4%vs.プラセボ投与群42.4%、ハザード比:0.35、95%信頼区間:0.18~0.69、p=0.0024)。

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再発・難治性DLBCLの第I~II相試験での奏効率、25年で倍増~メタ解析/Lancet Haematol

 再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の早期の相の試験における薬剤クラスごとの抗腫瘍効果と安全性の推移を系統的レビューおよびメタ解析で評価した結果を、オランダ・Amsterdam University Medical CenterのAnne M. Spanjaart氏らが報告した。2000~25年の25年間のデータを解析した結果、新規薬剤の登場により奏効率は2倍以上に向上し、治療関連死亡率は低く維持されていることが示された。Lancet Haematology誌2026年5月号に掲載。 本研究の対象は、2000年1月1日~2025年5月9日に公開された、成人の再発・難治性DLBCL患者を対象とした第I~II相試験で、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryを用いて検索し、試験薬剤単独またはCD20抗体併用療法のデータを抽出した。主要評価項目は奏効率(ORR)および完全奏効率(CRR)で、ランダム効果一般化線形混合モデルを用いて統合解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・最終的に132試験、7,786例(女性43%、男性57%)が解析対象となった。・全体のORRは30.5%(95%信頼区間[CI]:26.0~35.5)、CRRは14.3%(同:11.5~17.7)であった。・薬剤クラス別の奏効率は以下の順で高かった。 - CAR-T細胞療法:ORR 70.0%/CRR 51.0% - 二重特異性抗体:ORR 46.0%/CRR 30.0% - 抗体薬物複合体:ORR 40.0%/CRR 18.0%・ORRは2000~08年の16.6%から、2018~2025年には36.8%へ2倍以上に向上した。・治療関連死亡率は0.6%(95%CI:0.4~1.0)と、期間を通じて1%未満を維持していた。・用量制限毒性/投与中止は6.0%、Grade3~4の有害事象は61.5%、非再発死亡は3.6%に認められた。 著者らは、「2000年以降、再発・難治性DLBCLの早期の相の試験における奏効率は、細胞療法や二重特異性抗体の導入により2倍以上に向上した。一方で治療関連死亡はきわめて低く抑えられており、これらのデータは臨床医や規制当局にとって、現在のリスク・ベネフィット傾向を把握するための重要な指標となる」としている。

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サラッとStat中級編:PFSとOSの基本的な見方【Oncologyインタビュー】第57回

出演岐阜大学泌尿器科学講座 古家 琢也氏京都大学医学統計生物情報学 森田 智視氏医療者にとって臨床統計の解釈は大きな課題である。岐阜大学泌尿器科学講座の古家 琢也氏と京都大学医学統計生物情報学の森田 智視氏が臨床目線で送る“ワカる”臨床統計解説。

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MYC/BCL2二重発現DLBCL、ツシジノスタット追加でEFS改善/JAMA

 MYC/BCL2二重発現リンパ腫(DEL)は、MYCおよびBCL2の共発現で定義されるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の高リスクの一形態で、標準治療であるR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、prednisone)療法による免疫化学療法後の予後が不良とされる。中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のPeng-Peng Xu氏らは「DEB試験」において、DELの1次治療では選択的ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬ツシジノスタット+R-CHOP併用療法は、R-CHOP療法単独と比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善し、毒性作用は全般に管理可能であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月22日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験、主要エンドポイントはEFS DEB試験は、中国の40施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Shenzhen Chipscreen Biosciencesの助成を受けた)。2020年5月~2022年7月に、年齢18~80歳、未治療のCD20陽性DEL(免疫組織化学検査で、MYC発現≧40%かつBCL2発現≧50%と定義)患者423例(年齢中央値63歳、男性47.5%)を登録した。 被験者を、ツシジノスタット(20mg/日、21日を1サイクルとし1日目、4日目、8日目、11日目に経口投与)群(211例)またはプラセボ群(212例)に無作為に割り付けた。加えて、全例にR-CHOP療法を6サイクル施行した。これらの併用療法で完全奏効を達成した患者は、それぞれツシジノスタットまたはプラセボによる維持療法(最長24週間)を受けた。 主要エンドポイントはEFSで、無作為化から病勢進行までの期間、完全奏効後の再発、全死因死亡、残存病変に対する新たな治療の開始で定義した。副次エンドポイントは、完全奏効割合、病勢進行、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)および忍容性などとした。EFSはツシジノスタット群が有意に優れる、完全奏効割合も ツシジノスタット群の80.6%が6サイクルのツシジノスタット+R-CHOPを完遂し、プラセボ群の77.8%が6サイクルのプラセボ+R-CHOPを完遂した。追跡期間中央値は41.3ヵ月(四分位範囲[IQR]:16.4~48.4)だった。 EFS中央値は、ツシジノスタット群が未到達(95%信頼区間[CI]:35.3~未到達)、プラセボ群は26.4ヵ月(95%CI:10.1~未到達)であった。層別ハザード比(HR)は0.72(95%CI:0.54~0.96)であり、ツシジノスタット群で有意に優れた(p=0.02)。また、2年EFS率は、それぞれ60.3%および50.5%だった(群間差:9.8%、95%CI:0.4~19.2)。 併用療法後の完全奏効割合は、ツシジノスタット群で73.0%、プラセボ群で61.8%であった(群間差:11.1%、95%CI:2.3~20.0)。2年無増悪生存期間(PFS)率はツシジノスタット群69.3%、プラセボ群62.8%(HR:0.78、95%CI:0.56~1.09)、2年DFS率はそれぞれ76.9%および72.8%(HR:0.79、95%CI:0.51~1.20)、2年OS率は81.4%および73.6%(HR:0.77、95%CI:0.53~1.13)であり、いずれも数値上はツシジノスタット群のほうが良好だった。PFS、DFS、OSの中央値には、両群とも未到達であった。治療関連の重篤な有害事象は47.9%vs.28.3% 併用療法中のGrade3以上の有害事象は、ツシジノスタット群で85.8%、プラセボ群で72.6%に発生した。維持療法中のGrade3以上の有害事象は、それぞれ77.4%および39.1%に認めた。 治療関連の重篤な有害事象は、プラセボ群の28.3%に比べツシジノスタット群は47.9%と頻度が高かったが、全般に支持療法により管理可能であった。治療関連有害事象による死亡は、ツシジノスタット群で6例(2.8%)、プラセボ群で7例(3.3%)に発生した。エピジェネティック調節薬の有益性を初めて実証 著者は、「本試験は、DLBCLにおけるエピジェネティック調節薬の有益性を初めて実証した研究であり、この高リスク患者群に、MYCおよびBCL2発がんタンパク質を二重の標的とする新たな1次治療法をもたらすものである」としている。 また、「DLBCL患者では、1次治療における完全奏効の達成が長期の治癒に結びつくことが先行研究で確認されている。本試験では、R-CHOPへのツシジノスタットの追加により、R-CHOP単独に比べ完全奏効割合が11.1%向上し、OSなどで数値上の改善を認めた」と考察している。

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血友病AへのMim8予防投与が既存治療を上回る出血抑制/NEJM

 Mim8(denecimig)は、活性化第VIIIa因子の機能を模倣する二重特異性抗体で、第VIII因子インヒビターの有無にかかわらず、血友病A患者の出血を予防する目的で開発された。イタリア・ヒュマニタス大学のMaria Elisa Mancuso氏らは「FRONTIER2試験」において、Mim8の予防投与はオンデマンド治療や血液凝固因子濃縮製剤の予防投与と比較して、治療を必要とする出血イベントの年間発生率を有意に抑制し、血栓塞栓イベントや中和抗体の発現はみられないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年4月30日号で報告された。国際的な無作為化対照比較第III相試験 FRONTIER2試験は、日本を含む国際的な非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、インヒビターの有無を問わず血友病Aを有する12歳以上の患者254例を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 試験前にオンデマンド治療を受けていた58例(試験前オンデマンド治療コホート)は、オンデマンド治療を継続する群(グループ1、17例)、Mim8を週1回予防投与する群(グループ2a、21例)、またはMim8を月1回予防投与する群(グループ2b、20例)に無作為に割り付けられた。 試験前の導入期間中(26~52週)に血液凝固因子濃縮製剤の予防投与を受けていた196例(試験前予防投与コホート)は、Mim8を週1回予防投与する群(グループ3、98例)またはMim8を月1回予防投与する群(グループ4、98例)に無作為に割り付けられた。5つのグループとも投与期間は26週であった。 無作為化の対象となった患者のうち、4例(2%)が女性、66例(26%)が12~17歳、212例(84%)が重症血友病A、31例(12%)が第VIII因子インヒビターを有し、242例(95%)は体重が45kg以上であった。8例が治療を中止した。2コホートの週1回、月1回投与グループとも、出血を有意に抑制 試験前オンデマンド治療コホートにおける治療を必要とする出血イベントの年間発生率(第1主要エンドポイント)は、グループ1が15.76(95%信頼区間[CI]:10.70~23.20)であったのに対し、グループ2aは0.57(95%CI:0.25~1.30)、グループ2bは0.20(95%CI:0.06~0.71)であり、それぞれ相対減少率は96.4%および98.7%といずれも有意に改善した(両比較ともp<0.001)。 試験前予防投与コホートにおける治療を必要とする出血イベントの年間発生率(第2主要エンドポイント)は、導入期間中が4.90(95%CI:3.65~6.56)であったのに対し、グループ3は2.25(95%CI:1.37~3.71)であり、相対減少率は54.0%と有意に優れた(p=0.006)。また、同様に、導入期間中の3.12(95%CI:2.25~4.32)に比べグループ4は1.78(95%CI:1.18~2.71)であり、相対減少率は42.8%と有意差を認めた(p=0.006)。軽症の注射部位反応が2.6%で報告 注射部位反応は、Mim8の投与を受けた237例中23例(10%)に発現し、4,005回の注射のうち103回(2.6%)で報告された。ほとんどが一過性で、すべて軽症であった。 また、3例で有害事象によりMim8の投与が中止され、このうち2例でMim8との関連の可能性が示唆された。Mim8関連の致死性のイベントや血栓塞栓イベント、過敏反応は観察されなかった。 投与期間中に254例中18例(7%)で抗Mim8抗体が検出されたが、Mim8に対する中和抗体の臨床的な証拠が報告された患者はいなかった。 著者は、「これらの知見は、現在の標準治療を上回る有効性をMim8が発揮する可能性を示唆する」としている。 本試験を終了後、患者は26週間の延長試験に入り、引き続き長期のアウトカムを評価する第III相延長試験に参加しているという。

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新規診断の多発性骨髄腫患者と医師のコミュニケーションの実態~国内アンケート調査

 多発性骨髄腫の治療選択肢が拡大する中、協働意思決定(SDM)の重要性が増しており、医師と患者のコミュニケーションが重要となる。今回、近畿大学奈良病院の花本 均氏らが実臨床における医師と患者のコミュニケーションの実態についてアンケート調査した結果、治療開始時および病状安定時において、医師と患者の認識に顕著な乖離があることが示された。eJHaem誌2026年4月26日号に掲載。 本研究は、造血幹細胞移植を受けていない新規に診断された多発性骨髄腫患者220例と、多発性骨髄腫を診療する血液専門医120人を対象とした観察調査研究(2024年9〜11月実施)である。患者は自己記入式の34項目の調査票(オンラインまたは紙媒体)に回答し、血液専門医は、自己記入式の18項目の調査票にオンラインで回答した。治療開始時および病状安定時における、患者と医師間のコミュニケーションの状況、患者の治療に対する期待、価値観、感情、知識、治療に関する意思決定の希望に関する情報をまとめた。 主な結果は以下のとおり。・医師側は、治療開始時に82.5%、病状安定時に65.0%が治療選択肢を提示または説明したと回答した一方、患者側で提示または説明を受けたと回答したのは、治療開始時で45.9%、病状安定時で50.3%であった。・治療開始時および病状安定時において、治療の希望を確認されたと回答した患者は、それぞれ23.6%および25.2%と、希望を尋ねたと回答した医師(それぞれ67.5%と50.8%)より低かった。・患者の感情は治療開始時のネガティブなものから病状安定時にはポジティブへと変化し、疾患や治療に関する知識が向上した。また、治療に対する期待も変化した。・患者の44.5%が意思決定への参加を希望していたが、実際に治療開始時に参加していたのは21.8%であった。 本結果から、著者らは「医師と患者の間でコミュニケーションに対する認識の乖離が確認された。医師は患者の期待や感情、知識が治療開始から病状安定期にかけて変化することを理解し、各時期で治療選択肢や計画についてより効果的にコミュニケーションを取る必要がある」としている。

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免疫介在性炎症性疾患患者のがんリスク、要因は炎症か

 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、乾癬などの免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者はがんリスクが高いことが知られているが、リスクが高いのはIMID診断後1年間であり、抗炎症薬による治療を開始するとそのリスクは経時的に低下する可能性が、新たな研究で示された。ガッルーラ地域保健局(イタリア)リウマチ科部長のDaniela Marotto氏らによるこの研究は、「Cancers」に3月23日掲載された。Marotto氏は、「初期段階でがんリスクがピークに達するということは、治療よりも慢性炎症そのものががん発症の重要な要因であることを示唆している」と述べている。 Marotto氏らは今回、イタリアで2018年1月1日から12月31日までの間にIMIDと診断された患者5万4,896人および非IMID患者30万1,126人を対象に、IMIDとがん発症との関連を検討した。IMIDは、RAとびまん性結合組織疾患(diffuse diseases of connective tissue;DDCT)を対象とした。DDCTは免疫の異常により全身の結合組織に慢性的な炎症が生じる疾患の総称で、SLEや強皮症、シェーグレン症候群などが代表例である。対象患者は2023年12月31日まで追跡された。 解析の結果、IMID群では非IMID群と比べて、5年間のがんリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.32、95%信頼区間1.27~1.38)。しかし、がんリスクは経時的に低下し、オッズ比は診断後1年目で1.83(95%信頼区間1.61~2.08)、2年目で1.53(同1.37~1.69)、3年目で1.40(同1.25~1.56)、4年目で1.37(同1.22~1.53)、5年目で1.20(同1.15~1.30)であった(全てP<0.001)。がん種ごとに検討すると、IMID群では白血病・リンパ腫(調整オッズ比1.98)、肺がん(同1.74)、膀胱がんとメラノーマ(いずれも同1.48)のリスクが高かった。一方、IMIDの種類別に検討すると、DDCT群はRA群と比べてがんリスクが高かった(調整オッズ比はDDCT群1.53、RA群1.20)。 共著者であるシエナ大学(イタリア)医療バイオテクノロジー分野のAntonio Giordano氏は、「今回の結果は、炎症ががんリスクを左右する決定的な要因であるという仮説を支持するものだ」と指摘している。 研究グループは、この知見から、IMID患者に対しては、特に診断後1年以内におけるがん検診の重要性を周知・促進する必要があると強調している。

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多発性骨髄腫のフレイル患者に対する抗CD38抗体3剤併用、実臨床での有用性

 多発性骨髄腫のフレイル患者に対する抗CD38モノクローナル抗体を含む3剤併用療法については、主要試験のサブ解析で有効かつ安全であることが示されているが、実臨床ではフレイル患者への投与を避けることは少なくない。今回、国立病院機構渋川医療センターの入内島 裕乃氏らが後ろ向き解析を実施した結果、適切な管理を実施することでフレイル患者においても非フレイル患者と同様の治療効果と安全性が得られることが示された。Cancers誌2026年3月24日号に掲載。 本研究は、2017~24年に同センターにおいて抗CD38抗体(ダラツムマブまたはイサツキシマブ)を含む3剤併用療法を受けた多発性骨髄腫患者を対象とした後ろ向き観察研究である。国際骨髄腫作業部会(IMWG)の簡易フレイルスコアに基づき、患者をフレイル群と非フレイル群に分類し、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった150例(年齢中央値:フレイル群76歳、非フレイル群69歳)のうち、ダラツムマブを含む3剤併用療法が108例(フレイル群82例)、イサツキシマブを含む3剤併用療法が42例(フレイル群18例)であった。・フレイル群と非フレイル群のPFS中央値は15.4ヵ月と11.4ヵ月、OS中央値は45.6ヵ月と40.7ヵ月であった。・ORRはフレイル群76%、非フレイル群68%で有意差はなかった。・レジメンによる予後も有意差はなかった。・両群間で、あらゆる有害事象、血液毒性および非血液学的毒性のいずれにおいてもGrade3~4の有害事象発現率に有意差はなかった。 本結果から、著者らは「抗CD38抗体を含む3剤併用療法は、薬剤の減量や休薬、感染制御など適切な管理を徹底することで、フレイル患者にとっても使用可能な治療選択肢となりうる」と結論している。

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第311回 国際学会への日本人の現地参加が低迷!その課題解決法や意義を権威に聞く

INDEX日本人医師の国際学会参加状況に対する印象何が参加の大きなハードルか若手医師に立ちはだかる資金的ハードル学会参加の時間捻出が難しい?発表論文を読めばいいのでは?オンライン参加の利便性国際学会といえばASCO?コロナ禍を機に全世界的に広がったのがオンライン文化だ。すでに国内外の各種学会もオンラインを併用したハイブリッド開催が標準となりつつあると言ってもいい。もっとも私個人は国内の学会取材は、リアル参加を基本としている。理由は2つある。1つは国内学会の場合、一般演題のオンライン配信はしていないが、個人的に一般演題もネタの宝庫だと考えているからだ。2つ目はやはり“リアル”は私という人間を覚えてもらえるよい機会だからだ。組織の大きな看板を背負っていない私にとって、この点は欠かせない。オンライン取材をする機会もあるが、それだとなかなかこちらを覚えてもらえない。これはコロナ禍が明けてから、とくに実感している。コロナ禍中に複数回オンライン取材をした医師に、その後ようやくリアルの学会で初めてあいさつした際にも、当時の取材内容を改めて話し、ようやく相手は「ああ、あの時の」と思い出してくれた。それだけオンラインには見えない壁があるのだと感じたものだ。一方で、国際学会でオンライン参加が可能になったことは、非常にありがたみを感じている。おかげで何度か日本にいながら国際学会の取材をすることもできた。しかしこの場合、日本の深夜早朝に取材するプログラムがぶち当たり、何回か徹夜をしいられたこともあった。さてそんな中、オンラインも含め「日本の医師・研究者の国際学会参加が減っている」という話を耳にした。実際はどうなのか? 国際学会の参加経験が豊富な吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 副院長/日本癌治療学会 理事長/日本臨床腫瘍学会 理事長)に話を聞いてみた。―日本の医師・研究者の国際学会参加状況について、吉野先生の印象はいかがでしょう?少なくとも私が知っているがん周辺の国際学会に出向く日本人は減少し、オンライン参加を選択している人が多い印象があります。ただ、実際に米国臨床腫瘍学会(ASCO)の役員などとのビジネス会合でも「日本からの参加者は減っている」「参加する日本人はリピーターで、とくに若い参加者が少ない」と言われています。それゆえ私が持っている印象は、それなりに事実に近いとは思っています。―日本人が国際学会に参加するうえで何が大きなハードルになっているとお考えですか?まずは渡航費の問題です。アメリカは残念ながら日本よりは治安は不安定なので、会場へのアクセスも良く治安も良好な宿泊先は、日本円で1泊7~8万円は珍しくありません。また、現在は世界的物価高ですから、国際学会にフル日程で参加するならば1回の渡航で100万円近い出費を迫られることもあります。こうなると若い医師・研究者はもちろん、年配の医師・研究者でさえも渡航をためらい、所属施設も及び腰になります。一方で、「行く意義」がわかってない人も結構いると思っています。―その「行く意義」を具体的に教えてください学会を“最新のエビデンスを知る場”と考えるならば、オンラインでもよいかとは思います。しかし、リアルの学会では「発表者と対面で話すチャンスがある」ことが極めて重要です。対面で話すと言っても、単に「今日の発表すごかったですね」「いえいえ、どうも」というのではなく、相手が今まさに取り組んでいることを聞けるチャンスがある。端的に言えば、研究はモノによっては計画から発表まで5年を要することもよくあります。学会発表を聞くというのは、悪く言えば5年前の話を聞いているのと同じです。裏を返せば、もし学会の場で発表者に「今、どんな研究をしている?」という話をリアルに聞ければ、5年後の世界のトレンドが予測できます。世界に伍していく研究をするためには、カッティング・エッジ(最先端)の人が今現在行っている研究を知る必要があります。この情報は現地に行かねば得にくいものです。若い人たちにはイメージが湧かないかもしれませんが…。―若手医師にとっては国際学会参加の資金的なハードルは小さくありません私自身は日本癌治療学会(JSCO)の理事長を拝命していますが、同学会では国際学会への参加を希望する若手会員医師*にトラベルグラント(国際渡航助成金)の応募枠拡充と支給金額の引き上げに取り組んできました。また、JSCOではASCO参加後、3日~1週間程度、アメリカの有名な研究施設・病院をASCOの紹介で訪問し、先方のシニアにホストしてもらってメンター関係を築くフェローシップ・プログラムにも取り組んでいます。3月末からは日本臨床腫瘍学会の理事長にも就任しましたので、こちらでも同様のことを行っていきたいと考えています。こうした活動を通じ、国際学会への参加意義を実感できる若手を養成していきたいですね。また、本音を言えばこうした仕組みを拡充するためにはCOI(利益相反)に抵触しない範囲で、産業界にも手を貸していただきたいです。国際的人材がいることは、学会・産業界の双方にとってWin-Winの関係が築けますから。*応募時で、男性会員は45歳以下、女性会員は50歳以下であること―資金的な課題がクリアできたとしても、がん専門病院以外では若手医師が国際学会参加の時間を作ることが難しい現実もあります。確かにそうでしょう。市中病院に勤務するがん専門医になると、がん以外にも多彩な疾患の診療に従事し、医師数も少ないので国際学会に参加したい医師の代わりが手当てできないことが多いでしょうね。ただ、一定規模以上の病院ならば、病院長などの上層部が若手医師を順番で国際学会に参加させることは病院の将来のためにも重要だと思います。また、参加を希望する医師も何とか頑張って演題を通して参加の大義を作ってほしいものです。こういう話は夢物語のように聞こえるかもしれませんが、できる機運を高めないと、今の医療界に漂う閉塞感は消えないとすら考えています。―最新の研究は国際学会に参加しなくとも、発表された論文を読めばよいという方もいますよね?昔、ハーバード大学のある教授が一部の留学者を指して「あいつらはダメ。日本人はとくにダメだ。私の論文を私の前で読んでいる。それよりもなぜ私に直接聞かない? 論文に書ききれなかった行間の情報は時に論文そのものよりも重要だ」と言っていたと聞いたことがありますが、まったく同感です。論文で理解したと思っている人は真の意味で理解していないことがあります。実際に論文の筆頭著者と話すと、「ここはこう書いたんだけど、実は…」というのはよくあります。論文を書いたことがある人なら納得するのではないでしょうか。論文内で書ききれていない部分を知るためには、執筆者と話すのがベストだと思いますよ。―よくわかります。私たち取材者も諸事情で文字にはできないものの、取材中に聞いた裏話で腹落ちすることはよくあります。もっとも学会に関して言えば、オンラインでも参加可能という利便性の変化も見逃せません。私見を言えば、オンライン参加はどうしてもリアル参加が無理な際の手段というのが基本的な発想です。現在では対面だけでなく、オンライン会議を通じても共同研究に繋がることはあると思いますが、対面で議論したほうが共同研究に繋がりやすいと思いませんか? たとえば日米共同研究を行う場合、オンラインだけですべてが可能というケースはきわめて少ないものです。企業から費用が支出される研究となれば、もはや対面なしに成立はしません。そうした研究では支出金額が億単位もよくあることですよね。それをオンラインで顔を見知っている程度の人に支出するでしょうか? 対面で会い、人となりも理解したうえで成立するものです。やや極端な言い方をすれば、対面なしのオンラインのみは、いつまでもエンドユーザーに留まるだけです。もちろんエンドユーザーとして生きていくならば、それでも構いませんが。世界的に活躍しようと思う医師や研究者にとって、やはり対面は重要です。―たとえば、先生がご専門のがん領域の場合、国際学会となると、やはりASCOが第一候補に挙がるのでしょうね?まさにASCOの場合は、参加者は数万人規模で、明日からの治療に影響を及ぼす発表が行われます。「これだけの結果が出ているならば、明日からこの治療を患者さんに届けなきゃいけない」と思わされる最新の研究が数多く発表されます。いわゆる「プラクティス・チェンジング」、一般用語で言えば「ゲーム・チェンジング」に値するデータが発表されます。その意味では極めてエキサイティングな学会といえます。―それ以外で言うと、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)なども注目すべき学会ですか?ESMOももちろんそうですが、地味ながらも私はASCOが主催するアジア太平洋地域を中心にした国際腫瘍学会議「ASCO Breakthrough」も注目に値すると考えています。ASCO Breakthroughは、リキッドバイオプシーや、今ならば生成AIなど最新のテクノロジー活用に関するエビデンスやそれが今後どのように展開していくか、あるいは胃がんや子宮頸がんなどアジアに特徴的で欧米では研究が進みにくいがんの治療法開発などが議論される場と私は理解しています。また、アジア圏は国ごとの所得格差に基づく治療のアクセス格差があり、その解消に関する議論も行われたりします。私なりにASCOの年次総会との違いを表現すると、先ほど話したようにASCO年次総会は「明日の治療の変革」が主となる発表に対し、ASCO Breakthroughは「未来の臨床がどのように変革されるか」という視点の発表が多いですね。今回は6月末にシンガポールで開催予定ですが、たとえば生成AIに関しては、がん領域の診断・治療への生かし方、生身の医師とAIの最適なフュージョンに関する議論や医師のみとAIを組み合わせた時の診断・治療のアウトカム比較などが発表されると聞いています。それ以外には術後再発を高精度に予測するリキッドバイオプシーのセッションも予定されていて、このセッションは私も注目しています。未来志向の臨床に着目して最先端の研究を目指す医師や研究者にとっては必須の学会だと思っています。参考1)日本癌治療学会:ASCO学術集会およびASCO Breakthrough発表者ためのTravel Grant Awardに関するご案内(4/15追記)

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造血細胞移植におけるEmergency/日本造血・免疫細胞療法学会

 造血細胞移植は、急性白血病や悪性リンパ腫などに対して根治を目指しうる治療法である。一方で、移植前処置や強力な免疫抑制療法、長期にわたる好中球減少状態などを背景に、早急な対応を講じなければ不可逆的な臓器障害を来し、致命的となりうる重篤な病態(Emergency)が急速に進行することもある。そのため移植医療の現場では、数日単位で生命予後が左右されるEmergencyに備える姿勢が不可欠であり、事態への即応力が強く求められることになる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「造血細胞移植におけるEmergency」をテーマとした教育講演が行われた。造血細胞移植特有の緊急病態に焦点を当て、実臨床で遭遇した症例と文献的エビデンスを基に、見逃してはならない重篤合併症と初期対応の要点について、田中 喬氏(大阪国際メディカル&サイエンスセンター 大阪けいさつ病院 血液内科)が講演した。シクロホスファミド(Cy)心筋症―死亡リスクの高い劇症型の心合併症 近年、移植後シクロホスファミド(PTCy)は、ヒト白血球抗原(HLA)半合致血縁者間移植にとどまらず、HLA一致血縁者間移植や非血縁者間移植にも応用が広がり、移植片対宿主病(GVHD)予防の新たな標準治療となりつつあるPTCyは優れたGVHD予防効果をもたらす一方で、シクロホスファミド(Cy)心筋症という重篤な合併症のリスクも伴う。大量Cy投与後に発症するCy心筋症は、基本的には可逆的であるが、進行がきわめて速く、重症例では体外式膜型人工肺(ECMO)管理を要し、命に関わることもある。その希少性ゆえに、初めて遭遇した際には診断が遅れ、気付いたときにはすでに重症化しているケースが少なくない。発症率は近年の報告では1~5%前後と頻度こそ高くはないものの、ひとたび発症すれば急速に循環破綻へ至る死亡率の高い致死的合併症である。心不全と診断されてから死亡までの中央値が約3日とされる報告もあり、遭遇すれば重篤となる典型的な移植Emergencyである。 Cy心筋症の病態は完全には解明されていないが、代謝産物による血管内皮障害が起点と考えられている。血管内皮が障害されると血管透過性亢進により心筋の浮腫・壁肥厚が生じ、最終的に心筋障害を来す。ここで重要なことは、Cy心筋症発症初期の主病態が収縮不全ではなく拡張障害であるという点である。心筋の伸展性が浮腫によって低下し、拡張できなくなることで心拍出量が維持できなくなる。 アントラサイクリン心筋症が累積投与量依存であるのに対し、Cy心筋症は1回投与量と投与スケジュールに依存する用量依存性毒性である。安全な投与量の閾値は明確ではなく、既往のアントラサイクリン投与量や放射線治療歴がリスク因子として挙げられるものの、確立した予測因子は存在しない。 発症時期はCyの初回投与から10日以内が多く、症状出現までの中央値は2日(1~6日)、心不全診断までの中央値は4日(3~8日)とする報告がある。心電図ではvoltageの低下やST上昇、T波の陰転化を認めることが多い。胸部X線で心拡大を呈するが、これを容量過多と誤認してはならない。ただちに心エコーを施行し、著明な心筋壁肥厚と心嚢水貯留の有無を確認することが重要である。 特徴的なのは、初期には左室駆出率(EF)が保たれている症例が少なくない点である。心不全診断時にEFが50%以上に保たれていても、心筋壁が急速に肥厚し、拡張障害が進行している可能性がある。EFのみに依存した評価は危険である。 バイオマーカーに関して、トロポニンは必ずしも早期に上昇しない。一方、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やNT-proBNPは比較的早期から上昇する可能性が報告されている。大量Cy投与後の症例では、投与後数日間のBNPモニタリングが早期発見に寄与する可能性がある。 Cy心筋症に対する確立した治療法はなく、一般的な心不全治療を行いながら心機能の回復を待つ。カテコラミン反応性は乏しいことが多く、循環動態が急速に悪化する場合には、早期からECMOや補助循環装置の導入を検討する必要がある。また、診断した時点で循環器内科や集中治療部門へ速やかにコンサルトする体制整備が不可欠となる。なお、ECMOが自施設で実施できない場合は、対応可能な施設への転院を躊躇してはならない。重症類洞閉塞症候群(SOS)―増悪因子となる腹部コンパートメント症候群(ACS) 重症類洞閉塞症候群(SOS)は、移植後早期に発症する重篤な肝合併症である。体重増加、腹水貯留、右季肋部痛、血小板減少などを呈し、重症例では多臓器不全へ進展する。 重症SOSの増悪因子として、腹部コンパートメント症候群(ACS)が注目される。腹腔内圧の上昇により静脈還流が障害され、腎機能低下や呼吸不全を来す。腹腔内圧は膀胱内圧で代用可能であり、簡便に測定できる。一般に腹腔内圧が20mmHgを超え、かつ臓器障害を伴う場合にACSと定義されるが、それ未満でも臓器障害を呈することがある。 病態の中心は腹腔内圧上昇による静脈うっ血であり、とくに腎静脈圧迫による腎不全が重要である。腹水ドレナージにより腹腔内圧を低下させることで、尿量や酸素化、門脈血流が改善する症例がある。腹部膨隆が目立つ重症SOSでは、膀胱内圧測定を積極的に行い、減圧治療を検討すべきである。重症消化管GVHD―評価すべき粘膜障害の程度と範囲 GVHDの中でも消化管病変は高頻度に認められるが、重症下部消化管GVHDは依然として予後不良である。従来は下痢量で重症度が評価されてきたが、下痢は炎症の結果にすぎない。本質的には粘膜障害の程度と範囲を評価すべきである。 多くの症例において病変は回盲部から始まり、口側および肛門側へ拡大する。重症例では炎症が小腸全体に及び、粘膜脱落を呈する。カプセル内視鏡による小腸粘膜の直接評価から、全周性の粘膜脱落(グレード4)や炎症が空腸まで及ぶ病変はきわめて予後不良であることが示されている。100日以内の非再発死亡率が約6割に達するとの報告もある。このような症例では、ステロイドを中心とした抗炎症療法のみでは不十分な可能性が高い。間葉系幹細胞(MSC)は免疫調整作用に加え、粘膜修復促進作用が期待されている。さらに、腸管粘膜維持に関与するGLP-2アナログなど、組織再生を意識した治療戦略も検討されている。炎症抑制と組織修復を両輪としたアプローチが今後の鍵となる。難治性感染症―想定外の病原体を疑う 造血細胞移植患者では、通常はまれな病原体による感染症が致命的経過をたどることがある。 Stenotrophomonas maltophiliaはグラム陰性桿菌であり、カルバペネムやグリコペプチドではカバーできない。移植患者では一定の頻度で菌血症を来し、肺出血を合併すると救命はきわめて困難である。持続する発熱性好中球減少症では、レボフロキサシンなど有効な抗菌薬による治療を検討する必要がある。 移植後のムーコル症も、致死率の高い真菌感染症である。βDグルカンは陰性のことが多く、確定診断には生検による組織診断が必須である。重症GVHDや長期ステロイド使用例で、原因不明の疼痛を伴う皮疹や急速進行性肺陰影を認めた場合はムーコル症を疑い、生検を積極的に行い、検査結果を待たずに有効な抗真菌薬による治療を開始すべきである。敗血症対応―基本を徹底する 敗血症では、乳酸値測定、血液培養採取、広域抗菌薬投与、必要に応じた急速輸液負荷や昇圧薬投与が基本となる。近年ガイドラインは若干修正されているが、移植患者では迅速な広域抗菌薬投与の重要性は変わらない。初期対応の遅れは予後に直結する。結語―「Emergencyを知って行動に移すこと」が重要 造血細胞移植におけるEmergencyは頻度こそ高くないものの、ひとたび発症すれば急速に悪化し、生命予後を左右する。Cy心筋症、重症SOS、重症消化管GVHD、難治性感染症、敗血症など、いずれも早期診断と迅速な初期対応が救命の鍵となる。「まれでも致命的となりうる病態を疑う」という姿勢を常に持っておく必要がある。とくにCy心筋症は診断後わずか数日で致命的経過をたどりうることを念頭に、心拡大を容量過多と安易に判断せず、速やかに心エコー評価と専門科連携を行うことが重要であり、BNPなどの指標も早期把握の一助となる。 重症SOSでは、腹腔内圧上昇に伴うACSが臓器不全を増悪させることがあり、膀胱内圧測定や適切な減圧介入を行う必要がある。厳密な定義上はACSに該当しない数値であっても、臓器障害を伴う場合には腹腔ドレナージを行うことで劇的に改善する可能性がある。 重症消化管GVHDは、下痢量ではなく、粘膜障害の程度と範囲を見ることが重要となる。カプセル内視鏡を用いた小腸評価では、全周性の粘膜脱落例や炎症が空腸まで及ぶ症例がきわめて予後不良であることから、抗炎症治療のみならず粘膜修復という視点で治療介入を行いたい。 感染症領域では、Stenotrophomonas maltophilia菌血症やムーコル症といった、頻度は高くないが致死率の高い病態があり、常に疑う姿勢が重要となる。敗血症対応は基本を徹底し、疑った場合は、乳酸値測定、血液培養採取、広域抗菌薬投与、急速輸液、昇圧薬投与を1時間以内に実施するいわゆる1時間バンドルの実施が求められ、常に迅速な対応を心掛けたい。 田中氏は講演を通じて、「移植医には腫瘍制御にとどまらず、全身状態を総合的に評価する集中治療的視点が必要である」と強調していた。さらに、「Emergencyについてよく知り、それを即座に想起し行動に移せる能力こそが、患者さんの命を守る最大の武器である」と一貫して述べていた。

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