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1.

iPS細胞由来の人工心筋移植、心不全治療に有望/NEJM

 生物学的心室補助組織(BioVAT)は、同種の人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の心筋細胞と間質細胞から成る人工心筋の移植片であり、心不全および左室駆出率(LVEF)が低下した患者における心筋再筋肉化を目的とする。ドイツ・University Medical Center GottingenのWolfram-Hubertus Zimmermann氏らBioVAT-HF Investigatorsは「BioVAT-HF研究」において、BioVAT移植は3ヵ月の時点で有意な標的壁厚の増加とLVEFの上昇をもたらし、健康状態も有意に改善したと報告した。研究の成果は、NEJM誌2026年5月28日号に掲載された。ドイツの第I/II相研究 研究グループは、心不全患者における外科的なBioVAT移植による組織工学的な心臓修復法の安全性と有効性の評価を目的に、ドイツの2施設で非盲検第I/II相研究を実施した(German Center for Cardiovascular ResearchおよびRepaironの助成を受けた)。今回は、事前に規定された3ヵ月時の中間解析の結果を公表した。 対象は、LVEF 35%以下の症候性心不全で、少なくとも1つの左室セグメントに壁運動の低下または異常を認め、ガイドラインに基づく薬物療法に抵抗性の年齢18~80歳の患者であった。 被験者は、5、10、20単位の人工心筋から成るBioVAT移植片による治療を受けた。全例に免疫抑制療法を行った。3例が死亡、移植とは関連なし 26例(平均年齢59[SD 10]歳、男性23例[88%]、平均罹患期間4.6年[範囲:0.4~16])を登録し、20例がBioVAT移植による治療を受けた。 移植を受けた全患者で有害事象が発現した。196件の有害事象のうち57件が重篤な有害事象であった。3例(5件)で心室性頻拍を認めたが、いずれもBioVAT移植とは関連がない可能性が高かった。また、心室細動が発生した患者はいなかった。 研究期間中に3例が死亡し(血管麻痺を伴う全身性炎症反応症候群[SIRS]、新型コロナウイルス感染症、大動脈解離)、いずれもBioVAT移植とは関連がないと判定された。また、1例が心臓移植を受けた。 4例で免疫抑制療法が中止された。中止理由は、植込み型左室補助人工心臓(LVAD)の装着が2例、腎不全が1例、尿路上皮がんが1例であった。3つの主要エンドポイントが改善 BioVATの安全な最大用量(人工心筋20単位)による治療を受けた16例のうち、12例が事前に規定された中間解析のための3ヵ月間の追跡調査を完了した。 3つの有効性の主要エンドポイントは、以下のとおり3ヵ月の時点でいずれも有意に改善した(事前に規定された両側有意水準p<0.10を満たした場合に有意差ありと判定)。 標的壁厚の最小二乗平均の値は4.5mm(90%信頼区間[CI]:3.7~5.4、p<0.001)増加し、LVEFは3.9%ポイント(0.9~6.8、p=0.04)上昇した。また、カンザスシティ心筋症質問票の全体の要約スコア(KCCQ-OSS:0~100点、高点数ほど健康状態が良好)は6.7点(1.0~12.5、p=0.06)上昇した。 著者は、「これらの知見を確定するには、より長期の追跡調査とさらなる臨床評価が必要である」としている。 また、「概念的には、BioVAT移植による、収縮力が低下した領域への収縮性心筋の追加は、収縮機能と拡張機能の両方をサポートする可能性があり、またラプラスの法則により標的壁厚の増加は壁応力を低下させると考えられる。これらの効果が、左室のリモデリングの逆転に寄与する可能性がある」と考察している。

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細菌性髄膜炎・HSV脳炎GL改訂、経験的治療の薬剤選択を見直し/日本神経学会

 2026年3月、『細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014』と『単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017』を統合した『細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026』(日本神経学会・日本神経感染症学会監修、南江堂)が発刊された1)。今回の改訂では、ワクチン定期接種化による起炎菌の変遷、薬剤耐性菌の動向、FilmArray髄膜炎・脳炎パネルに代表される遺伝子検査の普及などを反映し、初期治療から退院後のフォローアップに至る一連の流れが大幅に刷新されている。 5月20~23日に開催された第67回日本神経学会学術大会の生涯教育セミナーにおいて、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた中嶋 秀人氏(日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授)が「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026の改訂のポイント」と題して講演を行った。講演レポートとして、前編では「細菌性髄膜炎」、後編では「単純ヘルペス脳炎」について、2回にわたって紹介する。ガイドライン改訂の主なポイント【細菌性髄膜炎】初期の経験的治療(エンピリックセラピー)のレジメン変更と迅速性 今回の改訂では、経験的治療の薬剤選択が見直された。髄液由来肺炎球菌では第3世代セフェム耐性率・メロペネム(MEPM)耐性率がともに上昇傾向にあり、2023年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)データではMEPM耐性率が18.2%に上昇している。一方でバンコマイシン(VCM)は感性を維持している。そのため、第3世代セフェム(セフォタキシム[CTX]/セフトリアキソン[CTRX])またはMEPMのいずれを用いる場合もVCMを併用することが推奨され、年齢・免疫状態に応じた迅速な薬剤選択が求められる。年齢・免疫状態別のレジメン例・免疫正常(16〜49歳):肺炎球菌(60%以上)、髄膜炎菌 第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・免疫正常(50歳以上):肺炎球菌が最多。リスクの高まるリステリア菌をカバーするためABPCを追加 アンピシリン(ABPC)+第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・慢性消耗疾患・免疫不全:肺炎球菌・リステリア菌に加え、グラム陰性桿菌(GNR)やMRSAも考慮 ABPC+セフタジジム(CAZ)+VCM MEPM+VCM ・頭部外傷後・外科手術後:ブドウ球菌に加え、緑膿菌を含むGNRを考慮 MEPM+VCM CAZ+VCMTime is Brainの原則 細菌性髄膜炎は「Time is Brain」の病態であり、病院到着から1時間以内の抗菌薬投与開始を目標とする。頭部CTや腰椎穿刺によって投与が遅れる場合は、検査の完了を待たずに抗菌薬を先行投与する。なお、古典的三徴(発熱・項部硬直・意識障害)が揃う例は成人全体でも33%にすぎず、とくに高齢者では発熱が目立たないことや、意識障害が認知症・せん妄と誤認されやすいことから、厳重な警戒を要する。デキサメタゾン併用による炎症反応の抑制 炎症抑制による予後改善のため、すべての成人患者にデキサメタゾンの併用(最初の抗菌薬投与の前または同時開始、4日間)が推奨される。死亡率・神経学的後遺症・聴力障害の減少が期待できる。ただし、起炎菌が肺炎球菌・インフルエンザ菌以外なら中止し、とくにリステリアが起炎菌として判明した場合は死亡率悪化のエビデンスがあるため直ちに中止する。診断技術のアップデート:FilmArray髄膜炎・脳炎パネル 約1時間で主要病原体14種を同定できるマルチプレックスPCR遺伝子検査「FilmArray髄膜炎・脳炎パネル」が2022年10月に保険収載され、診断フローに位置づけられた。従来は培養検査やグラム染色の結果判明まで数日を要していたが、本検査による迅速な病原体同定は、経験的に開始したアシクロビル(ACV)の投与期間短縮など医療資源の適正使用に寄与する。起炎菌・感受性が判明した後は、速やかに狭域スペクトラムの抗菌薬へ変更する(De-escalation)。FilmArray検査のピットフォール 一方で、FilmArray検査には実臨床上の限界(ピットフォール)があり、結果は臨床症状・髄液所見と合わせて総合的に判断する必要がある。細菌性髄膜炎では、本検査で薬剤感受性(耐性菌の有無)が判別できないため、培養検査・グラム染色を省略せず必ず並行して実施しなければならない。また、結核菌はパネルに含まれず、院内感染や基礎疾患を有する例、脳外科術後の髄膜炎例には不向きである点にも注意を要する。抗補体薬を使用する患者への対応 重症筋無力症や視神経脊髄炎スペクトラム障害など神経疾患への抗補体薬(C5阻害薬:エクリズマブ、ラブリズマブ、ジルコプランなど)の適応拡大を反映し、抗補体薬使用患者への対応が新設された。抗補体薬使用患者では侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)のリスクが1,000〜2,000倍に上昇し、劇症型を呈しうる。本邦のIMD致命率は10〜12%と高く、発症から24〜48時間で致命的合併症を来しうるため、予防と早期対応がきわめて重要である。投与開始の2週間前までに4価髄膜炎菌ワクチン(販売名:メンクアッドフィ)を接種する(B群髄膜炎菌は本ワクチンの対象外で、B群ワクチンは国内未承認)。発熱時には髄膜炎症状がなくてもIMDを念頭に血液培養2セットを採取し、結果を待たずに第3世代セフェム(CTRXなど)を直ちに開始する。(後編は6/11公開予定)

3.

腎細胞がん1次治療、ミヤBM併用でICIの有効性高まる可能性/ASCO2026

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)への1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を含むレジメンに生菌製剤であるCBM588(ミヤBM)を追加することで、臨床的活性が高まる可能性が示唆された。さらに、便のメタゲノム解析により、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)を有する患者においてCBM588追加の恩恵がより大きいことが明らかになった。米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのRahul Winayak氏が、2つの第I相無作為化比較試験(NCT038291111)、NCT051225462))の統合解析結果を米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)で報告した。・対象:未治療のmRCC患者・試験群(CBM588群):標準治療(ニボルマブ+イピリムマブまたはニボルマブ+カボザンチニブ)+CBM588 39例・対照群:標準治療のみ 20例・評価方法および評価項目:メタゲノム ショットガン・シーケンス(全ゲノムシーケンス)データを用いて、TOPOSCOREとS-SCOREを算出。SIG1+(特定の細菌叢の異常[ディスバイオシス]がみられる)vs.SIG2+(腸内細菌叢が正常)について解析を実施。無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、年齢中央値がCBM588群67歳vs.対照群61.5歳、淡明細胞型腎細胞がんが89.7%vs.85.0%、IMDC分類中/高リスクが76.9%vs.82.4%、転移部位として最も多かったのは肺で74.4%vs.65.0%であった。・ORRはCBM588群69.2%vs.対照群20.0%(p=0.001)、DCRは79.5%vs.45.0%(p=0.0095)であった。・コホート全体におけるPFS中央値は、CBM588群32.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~未到達)vs.対照群3.7ヵ月(95%CI:2.6~17.0)であり、CBM588の追加により進行リスクが有意に低下した(調整ハザード比[aHR]:0.31、95%CI:0.16~0.62、p=0.001)。・SIG1+の患者におけるPFS中央値は、CBM588群24.9ヵ月vs.対照群2.8ヵ月と、CBM588追加による顕著なPFSの改善が認められた(aHR:0.17、95%CI:0.05~0.54、p=0.003)。・一方で、SIG2+の患者におけるPFS中央値は、CBM588群32.0ヵ月vs.対照群10.9ヵ月であり、CBM588追加による統計学的に有意な改善は認められなかった(aHR:0.58、95%CI:0.19~1.73、p=0.328)。・Grade3~4の有害事象はCBM588群56.4%vs.対照群50.0%で発現した。Grade3~4の下痢は10.3%vs.5.0%であったが、全体としてCBM588追加による新たな安全性上の懸念は認められなかった。 Winayak氏は、「mRCCの1次治療において、ICIレジメンにCBM588を追加することで臨床成績が改善し、新たな安全性上の懸念も認められなかった。とくにディスバイオシスを有する患者(SIG1+)でCBM588の恩恵がより大きいことが示唆された」とまとめた。現在、mRCCにおけるCBM588の臨床的活性を評価する第III相無作為化比較試験(SWOG BIOFRONT試験3))が進行中である。

4.

食道がんに腫瘍溶解ウイルス「テロメライシン」承認、CRT不適患者の新たな選択肢に/オンコリスバイオファーマ

 岡山大学発の創薬ベンチャー・オンコリスバイオファーマは6月8日、同社の開発した腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシン注(一般名:スラタデノツレブ)が、厚生労働省の製造販売の承認を受けたことを発表した。適応は「根治切除および化学放射線療法の適応とならない食道がん」。「条件及び期限付承認」ではなく通常承認となり、再生医療等製品としては異例のケースとなった。 テロメライシンは、テロメラーゼ活性を利用してがん細胞内で選択的に増殖するよう設計された5型アデノウイルス製剤。hTERTプロモーター制御下でウイルス複製関連遺伝子を発現し、正常細胞では増殖せず、がん細胞のみで複製・細胞破壊を引き起こす。岡山大学の藤原 俊義教授らが基礎研究を主導し、長年にわたり臨床開発が進められてきた。 今回の承認の根拠となったのは、国内17施設で行われた第II相OBP101JP試験。手術および化学放射線療法(CRT)不適のStageII~III食道がん患者を対象に、テロメライシン腫瘍内投与と放射線療法(RT)の併用を評価した。登録37例中、約76%が80歳以上で、ほぼ全例が扁平上皮がんだった。18ヵ月時点の局所完全奏効率は50.0%で、事前設定閾値を上回った。18ヵ月全生存率は56.6%、がん特異的生存率は70.1%で、RTを上回る可能性が示唆された。有害事象はリンパ球減少や発熱が中心で、多くは管理可能だった。テロメライシンはPMDAの「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、本結果をもって昨年末に承認申請が行われていた。 食道がんでは免疫療法の導入が進む一方、高齢者や併存疾患を有する患者では標準治療が困難なケースも多く、テロメライシンは新たな選択肢として期待される。今後、薬価収載を経て上市される見通しで、市販後には全例調査が予定されている。

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インフルワクチンによるアルツハイマー病リスク低下、高用量ワクチンでより有効

 高用量のインフルエンザワクチンは、高齢者におけるアルツハイマー病のリスクを低下させる可能性があるとする研究結果が報告された。高用量ワクチンを接種した高齢者は、標準用量ワクチン接種者と比べ、アルツハイマー病リスクが有意に低かったという。米国でのアルツハイマー病の患者数は2025年時点で700万人以上に上り、2050年までにこの2倍以上に増加すると予測されている。米テキサス大学ヒューストン健康科学センターの神経学教授であるPaul Schulz氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月1日掲載された。 この高用量ワクチンは、標準用量の約4倍のインフルエンザウイルス抗原を含んでいる。これまでの研究でも、インフルエンザワクチンの接種は未接種と比べてアルツハイマー病リスクを約40%低下させることが示されていたが、本研究では、高用量ワクチン接種者では、標準用量接種者と比べてアルツハイマー病リスクが有意に低いことが示された。ただし、この高用量ワクチンの存在は、医療従事者を含め、まだ広く知られていないとSchulz氏は指摘している。同氏は、「医師である自分ですら、高用量ワクチンの存在を知らなかったことに驚いた」とニュースリリースで述べている。 今回の研究では、高用量不活化インフルエンザワクチンを接種した12万775人の高齢者(平均年齢74.4歳、女性57.3%)と、標準用量不活化インフルエンザワクチンを接種した高齢者4万4,022人(平均年齢73.0歳、女性56.4%)を対象に、アルツハイマー病リスクを比較した。解析は、初回の接種群に基づいてその後の接種状況にかかわらず追跡するITT解析と、追跡中に他のインフルエンザワクチンを接種した場合に打ち切るPP解析の両方で行われた。 その結果、高用量ワクチン接種群では標準用量接種群と比べて、PP解析では接種後1~25カ月、ITT解析では接種後1~28カ月においてアルツハイマー病リスクが有意に低いことが示された。25カ月時点では、PP解析では185人、ITT解析では270人に高用量ワクチンを接種するとアルツハイマー病の発症が1人減ると推定された。また、このリスク低下は女性でより長期間にわたり認められ、PP解析では1~13カ月、ITT解析では1~17カ月にわたり有意差が認められた。一方、男性では、ITT解析で17~24カ月においてのみ有意差が認められ、PP解析ではいずれの期間でも有意差は認められなかった。 Schulz氏は、「本研究で、高用量ワクチンを接種した65歳以上の人を探し始め、最終的には数千人規模のデータを集めて、高用量と標準用量の接種効果を比較することができた。当然のことながらアルツハイマー病は加齢とともにリスクが高まるため、高齢者は検証に適しており、両者の違いを評価できた」と述べている。 ただし、この研究では、なぜインフルエンザワクチンがアルツハイマー病のリスク低下に寄与するのかは解明されておらず、因果関係を直接示すものではない。研究グループは、ワクチンがなぜアルツハイマー病の予防に効果があるのか、またなぜ高用量の方がより有効なのかを明らかにするために、さらなる研究が必要だとしている。

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第298回 医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省

<先週の動き> 1.医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省 2.「やせ薬」目的で拡散するマンジャロ、個人売買の監視強化/厚労省 3.外来医師過多区域で新規開業対応を強化、9医療圏を候補に提示/厚労省 4.出生率1.14で過去最低、周産期・小児医療の集約化議論へ/厚労省 5.外科医への退職強要で大津市民病院側に100万円支払い命令/大津地裁 6.私物PCとクラウド利用に警鐘、患者情報1,365件漏えいの可能性/藤田医大 1.医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省厚生労働省は、医学部入試の「地域枠」について、卒業後に特定地域で原則9年以上勤務する現在の運用を見直す検討に入った。地域枠は、一般入試とは別に定員を設け、奨学金の貸与と引き換えに、卒後一定期間、都道府県知事が指定する医療機関などで勤務する仕組み。2025年度は医学部定員9,393人のうち1,847人と約2割をこの地域枠の学生が占めた。医師偏在対策の柱の1つだが、若手医師の20~30歳代は、専門医取得、海外留学、結婚・出産・育児、家族介護などの時期と重なる。10~18年度に地域枠で入学した4,917人のうち、入学時の条件を満たさなかった人は301人。その理由としては「個人的な理由」が最多だった。厚労省は有識者検討会で議論を進め、留学や専門医資格取得のための猶予期間、一時中断の柔軟化などを検討し、年内の取りまとめを目指す。地域枠をめぐっては、都道府県ごとの運用差も課題となっている。育児休業による中断は全都道府県で認められている一方で、留学は35、介護は31都道府県にとどまる。高知大学のように、臨床研修後の残り7年間を15年間のうちに終えればよいとする柔軟な制度や、自治医科大学のように卒業生同士の結婚に配慮し、一定条件で配偶者の出身都道府県勤務を認める例もある。山梨県では、県内勤務を条件に修学資金返還を免除する制度について、条件を満たさない場合に最大約842万円を求める違約金条項を廃止する方針が示された。同条項をめぐっては、消費者機構日本が差し止めを求め、甲府地裁が今年1月に「平均的な損害を超え不当」として差し止めを命じていた。県は控訴していたが、制度を見直し、県による面接、在学中の地域医療実習、勤務年数に応じた段階的な返還免除、貸与額の引き上げなどを導入する。地域医療を支える制度の実効性を保ちつつ、18歳時点の選択で30代までのキャリアを過度に拘束しない制度設計が問われている。 参考 1) 医師の「地域枠9年」緩和 厚労省検討 医学部入試 留学・子育てに配慮(日経新聞) 2) 山梨県 医師確保のための「地域枠」制度 違約金条項を廃止へ(NHK) 3) 山梨県が医学部の修学資金制度を見直し、「違約金」を廃止(朝日新聞) 4) 山梨、医師修学資金貸与の違約金を廃止 裁判踏まえ見直し(毎日新聞) 2.「やせ薬」目的で拡散するマンジャロ、個人売買の監視強化/厚労省糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)をダイエット目的で使用したり、SNSで個人間売買したりする動きが広がっているとして、厚生労働省が注意喚起と監視を強化する。上野 賢一郎厚生労働大臣は6月5日の閣議後の会見で、「マンジャロを個人間で売買することは違法」と明言。都道府県など関係機関と連携し、SNSを含むネットパトロールを強化し、法違反には厳正に対処する考えを示した。マンジャロは米・イーライリリーが開発したGIP/GLP-1受容体作動薬で、国内では2型糖尿病において効能・効果で承認され、医師の処方のもとで使用されている。その一方で、食欲を抑える作用が注目され、美容・ダイエット目的での使用を勧めるSNS投稿や美容クリニックの広告が拡散している。上野厚労相は「糖尿病治療以外で使用した場合の安全性、有効性は確認されていない。思わぬ副作用につながる可能性も否定できない」と述べ、適正使用を呼びかけた。6月2日には、大阪府警がマンジャロをSNS経由で無許可販売したなどとして、大阪府・奈良県の20~30代の男女3人を医薬品医療機器法(薬機法)違反の疑いで書類送検した。薬機法は、許可を受けていない者が業として医薬品を販売することを禁じており、違反すれば3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となる。処方箋医薬品であるマンジャロは、許可業者であっても処方箋なしには販売できない。また、販売目的で保管する「貯蔵」も処罰対象となり得る。購入しただけの人を直接処罰する規定はないとされるが、余った薬を友人に有償で譲ったり、SNSで転売したりすれば無許可販売に問われる可能性がある。さらに、正規ルート外で入手した医薬品は偽造品や不適切な温度管理のリスクがあり、重い副作用が出ても医薬品副作用被害救済制度の対象外となる。医療者には、マンジャロが単なる「やせ薬」ではなく糖尿病治療薬であることを患者に説明し、安易な個人売買や自己判断での使用を避けるよう啓発する姿勢が求められる。 参考 1) マンジャロ個人間売買、厚労相「法違反は厳正に対処」 注意喚起強化(朝日新聞) 2) 糖尿病治療薬「マンジャロ」上野厚労相が適正な使用を呼びかけ(NHK) 3) 厚労相「法違反、厳正に対処」 マンジャロ個人売買の横行受け(毎日新聞) 4) 「やせ薬」危険な個人売買 糖尿病薬「マンジャロ」取引横行 許可なくSNSで販売疑い異例の立件(同) 5) マンジャロ無許可販売で書類送検、買う側には「罰則なし」? それでも弁護士が購入を勧めないワケ(弁護士ドットコム) 3.外来医師過多区域で新規開業対応を強化、9医療圏を候補に提示/厚労省厚生労働省は、2027年度から始まる第8次医療計画後期に向け、「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」を都道府県に通知した。今回の見直しは、都市部など診療所医師が集中する地域で新規開業への対応を強める一方で、医師不足地域では診療所の承継・開業支援を進めるもので、外来医療における偏在策が具体化しつつある。ガイドラインでは、外来医師偏在指標と可住地面積当たり診療所数を基に、とくに外来医師が多い「外来医師過多区域」の候補として、東京・区中央部、区西部、区西南部、区南部、区西北部、京都・乙訓、大阪市、福岡・糸島、神戸の9つの2次医療圏を提示した。外来医師過多区域では、無床診療所の新規開設希望者に対し、原則として開設6ヵ月前までの事前届出を求める。届出では、夜間・休日の初期救急、在宅医療、発熱外来、学校医・予防接種、警察医会への協力など、地域で不足する医療機能を担う意向の有無や内容を示す必要がある。要請や勧告に従わない場合には、内容の公表に加え、保険医療機関の指定期間を通常より短縮する対応も想定される。その一方で、制度は一律の開業抑制ではない。親の死亡に伴う急な診療所承継や、自治体の求めに応じて地域外来医療を担う場合などは、事前届出の猶予・免除の対象となり得る。また、診療所の全医師が育児や介護で夜間・休日対応ができない場合など、地域で不足する医療機能を担えない「やむを得ない事情」も例示された。医師不足地域では、国と都道府県による診療所の承継・開業支援が始まっている。2024年度補正予算で102億円、2026年度当初予算で20億円が措置され、施設整備、医療機器購入、職員給与や材料費などの運営経費を支援する。青森県では県内全6つの2次医療圏を重点医師偏在対策支援区域に定め、2025年度に19診療所が交付対象となった。承継10施設、新規開業9施設で、内科に加え産科や小児科の開業も含まれた。県内診療所数の減少幅は緩やかになっており、県や医師会からは支援事業を評価する声が出ている。外来医療の偏在対策は、開業の自由と地域に必要な医療機能の確保をどう両立させるかが焦点となる。都市部では新規開業医に地域で不足する医療機能への協力を求め、医師不足地域では経済的支援で承継・開業を後押しする「要請と支援」の両輪が動き出した。今後は、地域医療構想、かかりつけ医機能報告、外来機能報告のデータを活用しつつ、長期的な財源確保と、地域ごとの実効性ある協議が問われる。 参考 1) 外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(後期)~」について(厚労省) 2) 開業規制の医師過多区域、5都府県の9圏域候補 国がガイドラインで示す(CB news) 3) 第8次後期外来医療計画のGLを通知、外来医師過多区域の取り組みを記載-厚労省(日本医事新報) 4) 第8次後期の外来計画でGL 過多区域の「特例」示す(MEDIFAX) 5) 重点区域の診療所支援、偏在是正に一定の効果 「長期的な財源確保」を(同) 4.出生率1.14で過去最低、周産期・小児医療の集約化議論へ/厚労省厚生労働省が公表した2025年人口動態統計(概数)で、わが国の出生数は前年比1万4,937人減の67万1,236人となり、10年連続で過去最少を更新した。合計特殊出生率は1.14で、3年連続の過去最低となった。出生数の減少率は2.2%と、近年の5%台からは縮小したが、死亡数158万9,489人との差である自然減は91万8,253人に達し、19年連続の人口減少となった。婚姻件数は48万9,119組で2年連続増加したが、この10年では14万組余り減っており、少子化の基調は変わっていない。都道府県別の出生率は、沖縄1.52、宮崎1.46、福井1.45が高く、東京0.96、北海道・宮城1.00と低かった。関東以北で低く、西日本で高い「西高東低」の傾向がみられた。この背景には、所得・雇用の不安定さ、出会いの少なさ、子育て費用、仕事と育児の両立困難、固定的な性別役割分担意識の地域差など、複数の要因が絡むとされる。政府は児童手当の拡充、子供誰でも通園制度、育児休業給付の充実、出産費用無償化などを進めるが、尾崎 正直官房副長官は「少子化に歯止めがかかっていない」との認識を示している。医療現場への影響はすでに顕在化している。国内の分娩取扱施設は2006年の3,098施設から2025年には1,856施設へ約4割減少し、診療所は初めて1,000施設を下回った。埼玉県本庄市では地域最後の分娩施設が少子化による経営難などを理由に分娩を休止し、妊婦健診は地域診療所、分娩は近隣施設で担うセミオープン型へ移行した。小児医療でも、低出生体重児や小児外科症例の減少により、NICU・GCUの空床、専門医・指導医育成の症例確保、こども病院の赤字が課題となっている。NICUは出生1万人当たり46.2床と、かつての整備目標を大きく上回る一方で、GCUの病床利用率が50%未満の地域周産期母子医療センターも多い。第9次医療計画に向けて、国は周産期・小児医療の病床数見直し、集約化、都道府県を越えた広域連携の検討を始める。少子化は単なる人口政策ではなく、分娩、小児救急、NICU、小児外科、思春期医療まで含む医療提供体制の再編問題である。安全性を維持しながら、患者・家族の移動負担や地域アクセスをどう支えるかが、今後の医療政策の焦点となる。 参考 1) 人口動態統計月報(概数)(令和7(2025)年12月分(年計を含む))(厚労省) 2) 13県で出生率上昇も…少子化に歯止めかからず 対策の拡充不可避 令和7年人口動態統計(産経新聞) 3) 出生率1・14、過去最低を更新 出生数は最少の67万人 令和7年人口動態統計(同) 4) 閉じる分娩施設、減る小児の症例数 世界最高水準を誇る医療の未来は(朝日新聞) 5) 少子化で経営成り立たず 地域最後のお産休止、空床増えるこども病院(同) 6) 去年の出生数67万人 過去最少 少子化対策ポイントは(NHK) 5.外科医への退職強要で大津市民病院側に100万円支払い命令/大津地裁大津市立大津市民病院に勤務していた外科医3人が、業績不振を理由に退職を強要され、パワーハラスメントを受けたとして、病院を運営する地方独立行政法人や前理事長、前院長に慰謝料や未払い退職金など計約2,900万円の支払いを求めた訴訟で、大津地裁は6月5日、原告のうち1人に対する退職強要を認め、病院側に慰謝料100万円の支払いを命じた。パワハラについては3人とも認めず、残る2人への退職強要も否定した。判決によると、前理事長らは2021年4~9月、外科などの業績不振を理由に「改善の兆しが見えないということで決断せざるを得ない」などと発言。同年9月の面談では、元副院長に対し、「外科の医師には退職してもらい、別の大学のチームに来てもらうよう頼む」趣旨の発言をした。田野倉 真也裁判官は、外科の経営低迷が元副院長らの責任とは認められないにもかかわらず、退職を求めた言動は「社会通念上相当と認められる退職勧奨の範囲を超えた」と判断。自由な退職意思の形成を妨げる退職強要に当たるとして、精神的苦痛と退職を余儀なくされたことへの慰謝料を認めた。その一方で、残る2人の医師については、問題となった面談に出席しておらず、前理事長らの意向を元副院長から伝えられたに過ぎないとして、退職を強要されたとは評価できないとした。また、原告側が主張したパワハラについても、3人いずれについても認定しなかった。前理事長が元副院長に対して名誉毀損を理由に550万円を求めた反訴も棄却された。今回の判決は、病院経営の改善や診療科再編を理由とする人事対応であっても、特定医師に退職を既定方針として繰り返し伝える行為は、適法な退職勧奨の範囲を超え得ることを示した。医師不足や経営悪化を背景に診療体制の見直しを迫られる医療機関では、業績評価の根拠、面談記録、本人の自由意思の確保、配置転換や業務改善の選択肢提示など、手続きの透明性が一層問われる。 参考 1) 大津市民病院の損賠訴訟 退職強要認め100万円支払命令 地裁判決(産経新聞) 2) 「退職の決定」何度も通知するパワハラ…市立病院側に医師1人に100万円の支払い命じる判決(読売新聞) 3) 大津市民病院の前理事長ら、医師に退職強要 100万円の損害賠償支払い命令、大津地裁(中日新聞) 6.私物PCとクラウド利用に警鐘、患者情報1,365件漏えいの可能性/藤田医大藤田医科大学病院は、6月3日に看護師の私物パソコン(PC)に保存されていた患者情報1,365件が外部に漏えいした可能性があると発表した。対象は、末期腎不全、腹膜透析、腎代替療法指導を受けた一部患者で、氏名、性別、生年月日、患者ID、病名、転帰、入退院日、検査データなどが含まれる。現時点で不正利用は確認されていないが、病院は対象患者への謝罪と経過報告、相談窓口の設置、全職員研修、個人情報の取扱実態調査を進める。今回の事案で注目すべきは、病院本体の電子カルテが直接侵害されたのではなく、職員が規定に反して患者情報を私物PCに保存し、自宅でサポート詐欺型の不正侵入を受けた点である。看護師は学会発表資料の作成などを目的に、2020年ごろからクラウドを介して患者情報を私物PCと共有していた。5月25日、自宅でウェブサイトを閲覧中に偽の警告画面が表示され、表示された連絡先やURLに応じた結果、第三者による遠隔操作を受けたとみられる。その後、ウイルス駆除名目の金銭請求、身に覚えのないクレジット請求、携帯電話アカウント変更通知などがあり、専門業者からサポート詐欺と情報漏えいの可能性を指摘された。医療機関のサイバー対策は、ランサムウェア対策のみを想定すれば足りる段階ではなくなっている。偽警告、遠隔操作、クラウド同期、私物端末、学会・研究用データの持ち出しが組み合わされば、重大な個人情報漏えいにつながる。とくに、匿名化が不十分な症例リストや検査データ、紹介状、退院サマリーを、発表準備や在宅作業のために個人端末へ移す運用は、診療所でも起こり得る。厚生労働省は5月29日に開かれた「医療等情報利活用ワーキンググループ」で示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版(案)」は、病院だけでなく、一般診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業者も対象とする。医療情報を保存するシステムに限らず、医療情報を扱う情報システム全般が対象であり、私物PCやクラウド利用も管理外ではなくなっている。さらに令和8年度版チェックリスト案では、二要素認証、パスワード要件、端末・サーバ・ネットワーク機器の台帳管理、アクセス権限管理、USBなど外部記録媒体の制限、不要ソフトの停止、インシデント時の連絡体制、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定が重視されている。まず、クリニックなどでも「患者情報をどの端末、クラウド、USB、メールに置いているか」を確認し、私物PC端末への保存禁止、学会・研究用データの匿名化手順、クラウド共有の承認制、偽警告が出た際に電話しない・URLを開かないなどのセキュリティ教育が必要となる。サイバー対策はもはや医療情報システム部門だけの課題ではなく、診療情報の持ち出しルールと緊急時対応を明文化するなど、医療機関の経営者にとって重要な課題になっている。 参考 1) 個人情報漏洩に関するご報告とお詫び(藤田医科大病院) 2) 第32回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省) 3) 患者情報1,365件漏えいか 藤田医科大病院 相談窓口設置へ(読売新聞) 4) 藤田医科大病院で1,300件超の患者情報漏えい 私物PCでサポート詐欺被害(CB news) 5) 藤田医大病院 私用パソコンに保存 患者の個人情報流出か(NHK)

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未就学児の急性喘鳴へのアジスロマイシン、症状改善せず/NEJM

 救急外来を受診した中等度~重度の急性喘鳴を呈する未就学児において、アジスロマイシンはプラセボと比較して喘鳴関連症状を改善しなかった。米国・アリゾナ大学のKurt R. Denninghoff氏らPECARN AZ-SWED Trial Study Groupが、米国のPediatric Emergency Care Applied Research Network(PECARN)に加盟している小児救急外来8施設で実施した無作為化プラセボ対照試験「Azithromycin Therapy in Preschoolers with a Severe Wheezing Episode Diagnosed at the Emergency Department trial:AZ-SWED試験」の結果を報告した。喘鳴を伴う疾患は未就学児の入院の主な原因であり、また、抗菌薬による治療がしばしば行われている。観察研究では、喘鳴を繰り返す小児では喘鳴のない小児と比較し、鼻咽頭検体から3種類の病原性細菌(肺炎連鎖球菌、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌)が高頻度に分離されることが示されていた。NEJM誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。喘鳴で救急外来を受診した未就学児をアジスロマイシン群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、救急外来を受診した中等度~重度の呼気性喘鳴(小児呼吸器評価尺度[Pediatric Respiratory Assessment Measure:PRAM]スコア4以上[スコア範囲:0~12、高スコアほど喘鳴が重度])の月齢18~59ヵ月児を、アジスロマイシン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1回12mg/kgを盲検下で1日1回5日間投与した。 主要アウトカムは、無作為化後5日間の幼児喘息発作日誌「Asthma Flare-up Diary for Young Children(ADYC)」スコアの合計スコアであった。ADYCは、17の質問(各質問のスコアは1~7で評価、高得点ほど喘鳴関連症状が重度であることを示す)から成り、1日のADYCスコアは、各質問の平均スコアとして算出。主要アウトカムとしたADYC合計スコアはその5日分の合計スコアで、想定されるスコア範囲は5~35であった。 副次アウトカムは、救急外来滞在時間、入院期間、および72時間以内の再受診(救急外来再受診または入院)とした。 投与前に病原性細菌が検出された患者については、無作為化後5~8日および14~21日の間に追跡調査を行い、細菌の有無と抗菌薬耐性を検査した。 有効性は、3種の病原性細菌検査で少なくとも1種について陽性であった患者(陽性コホート)と陰性であった患者(陰性コホート)で別々に評価した。喘鳴関連症状に関するADYCスコア、アジスロマイシン群9.59 vs.プラセボ群9.72 2021年9月~2024年12月に840例が登録され無作為化された。このうち、521例(62.0%)が病原性細菌陽性、312例(37.1%)が陰性、7例(0.8%)は不明であった。 事前に計画された中間解析の結果に基づき、データ安全性監視委員会は無益性のため本試験を中止した。 5日間のADYC合計スコアは、陽性コホートおよび陰性コホートのいずれにおいても、アジスロマイシン群とプラセボ群で有意差は認められなかった。ADYC合計スコアの中央値は陽性コホートでそれぞれ、9.59(四分位範囲[IQR]:7.29~12.60)vs.9.72(7.66~12.17)(p=0.70)、および陰性コホートで9.30(IQR:6.97~11.62)vs.9.10(7.19~11.45)(p=0.69)であった。 陽性コホートでは、細菌消失率はアジスロマイシン群で58.7%、プラセボ群で11.4%であった。 副次アウトカムも両コホートにおいて両群で類似しており、細菌耐性や有害事象の発現率も同様であった。

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バージンオリーブオイルが脳に良い可能性とその理由

 バージンオリーブオイル(VOO)は、腸や脳に良い影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方、一般的により安価で販売されている精製オリーブオイルには、そのような効果が認められないという。ルビーラ・イ・ビルジーリ大学(スペイン)のJiaqi Ni氏らの研究によるもので、詳細は「Microbiome」に1月24日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「全てのオリーブオイルが認知機能に良い影響を与えるわけではない」と述べている。 Ni氏らは、55~75歳で過体重・肥満およびメタボリックシンドロームを有する656人(平均年齢65.0±4.9歳、女性47.9%)の食生活を調査して2年間追跡。ベースライン時と追跡調査時に神経心理学的検査を行い、ベースライン時の食事調査や便検体を用いた腸内細菌叢の検査結果との関連を検討した。食事調査の項目には、オリーブオイルのタイプ別摂取量も含まれていた。 解析の結果、VOOを習慣的に摂取していた人は、追跡期間中に認知機能の維持との関連や、腸内細菌叢の多様性の高さが認められたが、精製オリーブオイルを摂取していた人ではそのような変化は認められなかった。なお、腸内細菌叢の多様性の高さは、腸の健康状態および代謝が良好であることを示唆している。 研究チームでは、VOO摂取によるそれらの変化に、Adlercreutzia属という特定の腸内細菌が関係している可能性を見いだした。Adlercreutziaは、VOO摂取と認知機能の変化との関連を媒介している可能性が示唆された。つまりVOOの脳への有益な影響の一部は、腸内細菌叢を変化させることによるものであると考えられた。 では、なぜVOOは精製オリーブオイルよりも、好ましい影響を及ぼすのだろうか? それは両者の製造方法の違いにあると言える。VOOは、有益な成分を保持できるような機械的手法で製造される。一方、精製オリーブオイルは、不純物を取り除く、保存期間を延ばす、安定した風味を出すといった意図で加工が加えられる。それらの処理によって、オリーブオイルに含まれている、抗酸化物質、ポリフェノール、ビタミンなどの体に良い成分が減ってしまう。 論文の上席著者である同大学のJordi Salas-Salvadó氏は、「今回の研究は、摂取する脂質の『質』が『量』と同じくらい重要であるという考え方を裏付けるものだ。VOOは心臓を保護するだけでなく、加齢に伴う脳機能の低下を防ぐのにも役立つ」と総括。また、「これらの効果をもたらす腸内細菌を特定することが、認知機能を維持するための新たな栄養戦略を確立することにつながる可能性がある」と付け加えている。

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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】クレナフィン爪外用液10% 7.12gの査定【斬らレセプト シーズン3】不眠症の爪白癬患者 薬剤師は何を見逃したか?【スーパー服薬指導(1)】「デルマクイック爪白癬」は技術や検査時間も不問で誤診も防ぐ

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第64回 気候変動と感染症 ― 私たちが備えるべき新しいリアル

気候変動が地球規模で進むなか、感染症の流行パターンが確実に変わりつつあります。今回ご紹介するNature Medicine誌の論文は、気候変動が感染症に与える影響を、蚊やダニが媒介する「ベクター媒介性」、インフルエンザやRSウイルスなどの「直接伝播性(呼吸器感染症)」、コレラのような「環境媒介性」という3つの病原体グループを軸に整理した最新の総説です1)。本稿では、論文の要点をご紹介したうえで、私たち日本の医療者にとって何を意味するのかを一緒に考えてみたいと思います。なぜ気候は感染症を動かすのか気候変動が感染症に影響を与える経路は、病原体ごとに少しずつ異なります。蚊やダニといったベクターを介する病気では、気温や湿度がベクターの寿命、繁殖、媒介効率を直接左右します。たとえばデングを媒介するネッタイシマカは、気温の上昇に伴い発育速度や吸血頻度が高まります。過去の研究では、温暖化がすでに南北アメリカ・アジアのデング流行を拡大させており、2050年までにデング発生がさらに49~76%増加する可能性が示されています。一方、インフルエンザやRSウイルスのような呼吸器感染症では、湿度と温度がウイルスの生存性、気道粘膜のバリア機能、さらには宿主の免疫応答までを変化させると考えられています。また、コレラなど水系の感染症では、豪雨や洪水が井戸を汚染し、逆に干ばつ時には限られた水源に病原体が濃縮されることで、いずれの極端な気象でも流行リスクを高めうると考えられています。さらに重要なのは、これらの関係が直線的ではなく、ある閾値を超えると急に変化する「非線形」なものであるという点です。「異常気象」がトリガーになる時代近年とくに注目されているのが、気候の平均値の変化だけでなく、極端な気象による急性の影響です。論文では、2022年のパキスタン大洪水後にマラリア症例が前年比4倍に急増したこと、2024年には全世界のデング報告例がエルニーニョと温暖化の相乗効果により1,400万例を超えた(前年は700万例)ことなどが具体例として示されています。気候変動は、長期的な気温上昇だけでなく、突発的なショックを通じて感染症の地図を書き換えているのです。もう一つ見落とせない論点が、人口動態との相関です。世界的に進む高齢化により、コロナウイルスなど高齢者で重症化しやすい感染症の負担は今後さらに大きくなる可能性がある一方、小児が罹る感染症の社会的負担は相対的に縮小する地域もあります。気候変動の影響は決して一律ではなく、地域・病原体・人口構成によって増えたり減ったりする、不均一な現象だ、という著者らの指摘は、政策設計のうえで非常に重要だと感じます。日本にとっての示唆それでは、日本にとってこの研究は何を意味するのでしょうか。日本ではすでにヒトスジシマカが広く生息し、2014年には代々木公園を起点とする国内デング流行を経験しています。記録的猛暑、線状降水帯、巨大台風が常態化するなか、海外からウイルスが持ち込まれれば、これまでとは異なる規模や時期の流行が起こりうるシナリオは、決して絵空事ではありません。世界に先んじて進む高齢化は、呼吸器感染症の重症化負担をさらに重くする可能性もあります。著者らは、廃水サーベイランス、機械学習を用いた早期警戒システム、気候情報を組み込んだ予防的介入(ワクチン展開など)の重要性を訴えています。日本でも、気象データを公衆衛生対策と接続する仕組みづくり、そして急変する状況に対応できる柔軟な医療体制の確保が、これからの大切な課題と言えそうです。「予想外を予想せよ(expect the unexpected)」という著者らの言葉は、私たち日本の医療者にこそ深く響くメッセージではないでしょうか。 1) Baker RE, et al. Climate change and infectious diseases. Nature Medicine. 2026;32:1634-1645.

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六病位~乾姜と附子~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第7回

六病位~乾姜と附子~これまで、感冒初期に使う葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)、少し時間が経ってから使う小柴胡湯(しょうさいことう)を解説してきました。そろそろ感冒初期、少し時間が経った状態に相当する用語を勉強する頃合いかと思います。漢方の世界では、急性熱性疾患のステージング、進行度を六病位といって、6つに分類します。六病位の順番は漢方の流派によっても若干異なるのですが、大塚流の場合は、太陽病(たいようびょう)、少陽病(しょうようびょう)、陽明病(ようめいびょう)、太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の順番で病気が進んでいきます(図1)。どれくらい体の抵抗力があるかによっても、この進み具合は変わります。虚証が強く出ている方、たとえば高齢で痩せた患者は、太陽病、少陽病、陽明病をすっ飛ばして、いきなり太陰病や少陰病から始まることもあります。今回は、この六病位を絵的なイメージに落とし込んで、漢方の世界観を皆さんと共有することを目標にします。図1 六病位画像を拡大する太陽病まず、感冒初期に相当する太陽病です。便宜上、ここではウイルス感染症ということにしておきますが、最初にウイルスが外から体表へと侵入しようとしてきます。それによって、空気に触れているところから症状が起こっているというイメージで捉えてください。具体的には、悪寒とか頭痛、もう少し体の奥だと咽頭痛ですね。こういった体表部、空気に触れやすいところに症状が出てくるわけです。それに対して、漢方医学では発汗とともにウイルスを追い出すイメージで治療します。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯などは、そういったコンセプトで用いられます(図2)。図2 太陽病画像を拡大する少陽病次に、感冒の5~6日目以降に相当する少陽病です。ウイルスが体表から体のもう少し奥へと侵入して、横隔膜のあたりまで到達するイメージを思い描いてください。胃とか肺のあたりです。そうすると、吐き気が出たり、食欲がなくなったり、咳が出たりしますよね。時間経過で体が消耗してもいるので、倦怠感もあります。この深さまでウイルスが侵入してくると、汗とともにウイルスを追い出す治療が効かなくなってくるため、今度は横隔膜周囲に生じている炎症を緩和するイメージで治療します。東洋のステロイドこと柴胡剤がここで活躍してくるわけです。胸脇苦満(きょうきょうくまん)というキーワードを思い出していただければと思います(図3)。図3 少陽病画像を拡大する陽明病さらに病気が長引いてしまうと、体のさらに深部に熱がたまってきて、たとえば、大腸のあたりも調子を崩してきて、便秘になる方がいます。この状態を陽明病といいます。少しイメージが難しいのですが、急性期病院で肺炎などの急性期疾患がうまく治った患者さんが、転院調整中にやたら便秘を起こしたり、せん妄を起こしたりしている「あの状態」をイメージしていただけるとしっくり来るかもしれません。このような状態を治すには、西洋医学だとセンノシドや酸化マグネシウムを使うことが多いと思うのですが、漢方の場合もかなり似ていて、承気湯(じょうきとう)というグループの漢方薬を使うことがあります。たとえば、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)は、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)、芒硝(ぼうしょう)からなる漢方薬です。大黄がセンノシドを含んでいて、芒硝が硫酸ナトリウムを含みます。要は浸透圧性下剤ですね。そのため、誤解を恐れずに言えば、センノシドと酸化マグネシウムを同時に使用しているようなイメージの漢方薬ということになります(図4)。あとは、葛根湯を説明した時の条文クイズで簡単に触れた白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)も用いられます。喉が渇いてしょうがない時に使う薬ですね。これも、体の深部を冷やす漢方薬なので、陽明病の薬に分類できます。図4 陽明病画像を拡大する太陰病太陽病、少陽病、陽明病をまとめて陽証と呼びますが、これらは体の抵抗力が病気の勢いを上回っている状態です。要は炎症という防御反応がちゃんと機能している状態です。逆に、もともと抵抗力が少ない方、抵抗力があったけれど長い闘病生活でだんだんと病気に負けていった方などの場合は、いわゆる陰証という状態に入っていきます(図5)。図5 陽証と陰証画像を拡大するたとえば、感染症診療に精通されている先生方は、敗血症では高熱の時よりも低体温になっている時の方が危ないということを経験的にご存じかと思うのですが、まさしくその低体温に相当する状況になっていくわけです。その陰証の最初のフェーズが太陰病です。病気に屈すると、まずは腸が冷えてきて下痢をします。この場合の治療では、単純に腸を温めれば良いのです。これまで、お腹に優しい漢方薬をいくつか紹介してきました。桂枝湯の延長線上にある桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や小建中湯(しょうけんちゅうとう)などは、太陰病の治療にうってつけです(図6)。図6 太陰病画像を拡大する少陰病・厥陰病問題はそこから先で、さらに病状が進むと腸だけでなく全身が冷えてきます。体がとにかく冷たくて、脈をとっても弱々しい。この状態を少陰病と呼んでいて、さらに進んで危篤状態になると厥陰病といいます。とにかく体全体を温めないとまずいということで、こういう状況下では乾姜(かんきょう)や附子(ぶし)を含む漢方薬を使うことが多いです。乾姜というのは、ショウガを加熱したもので、成分も加熱によってギンゲロールからショウガオールに変わっています。あと、附子はトリカブトの根っこの部分です。この2種類の生薬はとにかく体を温める力が強いのです(図7)。たとえば、人参湯や大建中湯(だいけんちゅうとう)には乾姜が入っていますし、真武湯(しんぶとう)には附子が入っています。いろいろと漢方薬の名前を出してしまいましたが、ここでは乾姜と附子は体を温める力が強いことだけ覚えていただければ十分です。少陰病の治療薬は、乾姜や附子に、人参(にんじん)のような胃腸に優しい生薬が加わってできているものが多いという話でした。図7 少陰病・厥陰病画像を拡大するまとめ最後に少しだけ補足します。実証・虚証の話と、陽証・陰証の話がごちゃまぜになって混乱する方もいるかと思うので、念を押しておきます。実証・虚証は、患者さんの病気に対する抵抗力です。陽証・陰証は、その結果、病気が今どこのstageにあるかということです。たとえば、ご高齢で痩せている方は虚証ですが、その方が軽いかぜをひいて頭痛や微熱が出ていれば太陽病で陽証ですよね。逆に、その方が敗血症性ショックになっていたら厥陰病で陰証です(図8)。もちろん、実証の患者は陽証に留まりやすく、虚証の患者は陰証に進みやすいため、両軸にはちゃんと結びつきがあるのですが、虚実と陰陽は別々に考えてほしいと思います。図8 虚実と陰陽画像を拡大するとりあえず、今回は皆さんに太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病という六病位を覚えてもらえると嬉しいです。このシリーズは、ここまでで一区切りのため、このタイミングで復習することをお勧めします。

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日本のがん死亡率低下も、大腸がん・膵がん・子宮頸がんは依然高水準

 日本では全がんの年齢調整死亡率(ASR)が着実に低下している一方で、大腸がん、膵がん、子宮頸がんなど一部のがん種では依然として国際的に高い死亡率が続いていることが明らかになった。胃がんと肝がんでは大幅な改善が認められたものの、予防や検診による死亡率低下が期待されるがん種において十分な成果が得られていない実態が浮き彫りとなった。国立がん研究センターの片野田 耕太氏らによる本研究の結果はJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年3月5日号に掲載された。 研究では、国際がん研究機関(IARC)のGlobal Cancer Observatoryデータベースおよび各国の人口動態統計を用い、日本、韓国、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの高所得国における1980~2024年のがん死亡率の推移を比較した。解析対象は全がんに加え、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がんだった。肝がん・胃がんは日本の成功事例 歴史的に日本で死亡率が高かった胃がんと肝がんについては、長期的に大幅な減少がみられ、欧米諸国との国際格差は大幅に縮小した。とくに女性の肝がん死亡率については、日本が欧米諸国を下回る水準にまで低下した。著者らはこの背景として、B型・C型肝炎ウイルス検査の全国的な実施、妊婦へのHBs抗原検査、さらには直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及といった一連の肝炎対策が有効に機能したと考えられ、WHOが掲げる2030年までのC型肝炎排除目標に向け、国際的なモデルケースになり得る、としている。 一方、胃がんも日本における死亡率は低下し続けているものの、韓国の減少速度には及ばなかった。日本ではヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用拡大など1次予防が進む一方、韓国では内視鏡検診を中心とした2次予防が強力に推進されている。また、韓国では国家健康保険制度により検診データが一元管理されているのに対し、日本では職域検診の精度管理やデータ統合に課題が残ることが示唆された。大腸がん・膵がん・子宮頸がんは深刻な高水準 大腸がん死亡率は1980年代には欧米のほうが高かったが、その後減少が進んだ。これに対し日本では明確な低下傾向がみられず、近年では比較対象国の中でも高い水準となっている。韓国も近年減少傾向に転じており、日本との差が広がっている。 膵がんは、日本において男女とも死亡率の上昇が続いており、国際的にみても高い水準が際立っている。早期発見が困難で予後不良な疾患であるが、喫煙や2型糖尿病が重要なリスク因子であり、禁煙や糖尿病管理といった1次予防の重要性が改めて示された。 子宮頸がんにおいても、日本の相対的な立ち位置は悪化した。欧米諸国や韓国では死亡率が大幅に減少した一方、日本では高止まりが続いている。HPVワクチンの積極的勧奨の中止と再開の経緯もあって接種率はいまだ不十分であり、ワクチン接種と検診の双方を速やかに強化する必要性が示された。乳がん・肺がんでも改善が緩やか 女性の乳がん死亡率は欧米では着実に低下している一方、日本では増加傾向が続き、差は縮小している。男性の肺がんでも欧米に比べて死亡率低下が緩やかであり、近年では日本の死亡率が欧米を上回る状況となっている。一部のがんでは予防を強化する必要性 本研究により、日本の全がんのASRは他国と同様に引き続き低下していることが示された。とくに、かつて日本の死亡率の高さの要因となっていた胃がん、肝がんで持続的な低下がみられ、欧米諸国との差は縮小し、女性の肝がんでみられるように一部では逆転している。一方で、日本は大腸がん、膵がん、および子宮頸がんにおいて依然として最も高い死亡率を示している。女性の乳がんおよび男性の肺がんでは、日本における低下の遅れ、あるいは継続的な増加により、死亡率が欧米諸国の水準に近づいている。これらのがんの多くでは、1次予防および2次予防の方法が確立されており、胃がん、肝がんで達成された死亡率低下を再現するために、予防対策を強化する必要性が示唆される。

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第315回 国内の麻疹流行、2025年と今年で決定的に違うこと

INDEX止まらない麻疹感染、流行地点はどこか推定感染地域に変化ワクチン接種を粘り強く唱えるのみ止まらない麻疹感染、流行地点はどこか麻疹の猛威が止まらない。2026年20週(5月11~17日)までの国内の麻疹患者報告累計(速報値)1)は498例。2025年52週(12月22~28日)までが265例だったので、あまり口にはしたくないが、今年は昨年の2倍以上の患者報告数になることは確実な情勢だ。現時点までの感染報告を見ていると、昨年と比べて特徴的なことがある。昨年の患者報告の地域分布を見ると、首都圏の1都3県からの報告割合は42%だったが、今年は途中経過とはいえ、その割合は72%。ちなみに首都圏外で現時点までの患者報告が最多は鹿児島県の34例となっている。愛知県の26例や大阪府の15例を超える数字にやや驚くが、これは3月に鹿児島市内の高校の卒業式で13例もの集団感染が発生したためである。そして、現在までに最も患者報告が多いのは、やはり東京都の244例で20週までの患者の過半数を占める。その意味で東京都の感染動向は、現在の日本の麻疹流行の縮図であるとも言えることから、これより東京都の詳細な感染動向を見ていきたい。推定感染地域に変化まず今までのところ、最も患者報告が多かったのは17週(4月20~26日)の53例で、同週を境にピークアウトしているようにも見える。ただし、麻疹は基本再生産数が高いため、収束しつつあるとはとても言えないのが実際である。10歳区切りの患者報告では20~29歳の89例がボリュームゾーン。これに次ぐのが30~39歳の54例、10~19歳の51例。これ以外に40代、50代でそれぞれ10例以上の患者報告があり、かつてのような「麻疹は子どもの病気」のイメージは、もはや過去のものとなっている。憂慮すべきは推定感染地域のデータである。2026年20週までの推定感染地域は国内が77.0%と圧倒的多数を占める。不明が17.2%あるものの、国外はわずか3.7%に過ぎない。2025年は国内が64.7%、国外が32.4%であり、仮に2026年の不明をすべて国外に分類したとしても、現在は国内感染の割合が高くなっていることになる。ちなみに、一部の症例の検査により判明している流行ウイルスの遺伝子型は、世界の流行主流となっているアフリカや中東が起源のB3型と南アジアや東南アジアに広く定着しているD8型である。昨年来から続いている麻疹流行のきっかけは、おそらく輸入例だと考えられるが、推定国内感染率が上昇傾向を示している今の状態は極めて不気味だ。ご存じのように、日本は世界保健機関(WHO)が定義する「適切なサーベイランス制度の下、土着性の感染伝播が36ヵ月以上継続して確認されないこと」を満たし、2015年に麻疹排除国の認定を受けて10年以上この状態を維持しつづけてきた。現時点で土着性の判断は極めて難しいと考えられるが、麻疹流行が2年目に入った現在は外形上、土着性が疑われる段階に差し掛かっているとの見方もできなくはない。ちなみに2026年1月にイギリス、スペイン、オーストリアなどが麻疹の排除国認定を喪失したことは記憶に新しい。この排除認定喪失には実際には前段階があり、12ヵ月以上の持続伝播状態を「地域流行の再成立」と位置付ける。今の日本はこの段階か否かという非常に微妙な地点にいる。ワクチン接種を粘り強く唱えるのみさて、前述の東京都の麻疹流行だが、20代、30代患者のワクチン接種歴は過半数が「なし」あるいは「不明」で占められる。もはや麻疹対策とは2回のワクチン接種の一択と言ってもいいことは医療者の中では共通認識だろうが、このことはこの東京都のデータからも明らかである。この件に関連してSNS上では、以前本連載(第310回)で取り上げた新宿区内の小学校での集団感染事例において、2回接種済み者でのブレークスルー感染が多かったことを挙げて、「ワクチンは無効」であるかのような言説も目に付く。しかし、クイーンズランド大学のグループがワクチン2回接種後の免疫獲得失敗症例からの2次感染に関する14研究を使ったシステマティックレビュー2)によると、ワクチン2回接種完了者の実行再生産数は0.063。麻疹の基本再生産数の12~18に比べると無視できると言ってよいほどの低値である。この点からもワクチンは有効と言える。もっとも、われわれ報道関係者も医療者も今は言葉でワクチン接種を粘り強く呼び掛けるしかないという点では、やや手詰まり感はある。少なくともいわゆる反ワクチンと言われる人ではなくとも、ワクチン接種は煩わしいものであり、身近で危険を感じるか、手軽に接種できる機会と経済的なインセンティブ(いわゆる無料接種)でもなければ、ワクチン接種に行こうとはならないのが現実だ。その意味では、東京都が5月18日からスタートさせた「麻疹ワクチンの緊急接種事業」は目を引く。これは72時間以内の麻疹患者と接触し、麻疹罹患歴がなく、さらに麻疹ワクチンの接種歴なし/不明、あるいは1回のみの都民に対し、都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料のワクチン接種を行うものだ。私個人の本音を言えば、何らかの形でもう少し対象を広げてほしいが、予算措置が必要な以上やむを得ない。一方で、東京都のみにとどめてしまうのは効果が限定的である。前述のように現時点の麻疹流行が1都3県に集中している現実を考えれば、埼玉、神奈川、千葉の3県でも必要なことだろう。とくに東京都の場合、昼間の人口が336万人も増加し、その9割以上がこの3県からの流入であることを考えれば、なおのことである。もちろん予算のことはあるが、この3県のトップには英断を期待したい。参考1)国立健康危機管理研究機構:感染症発生動向調査週報(IDWR)2)Tranter I, et al. Emerg Infect Dis. 2024;30:1747-1754.

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爪白癬への外用抗真菌薬、反応不良と関連する因子は/岩手医科大ほか

 外用抗真菌薬は爪白癬に対して広く用いられているが、患者内相関を考慮し、治療反応に関する病変レベルの予測因子が定量化されたデータはほとんどない。岩手医科大学の井上 剛氏らは、爪白癬患者の治療反応とその予測因子について、一般化推定方程式(GEE)を用いた解析を実施した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2026年5月17日号への報告より。 本研究では、2017~21年にルリコナゾール爪外用液5%またはエフィナコナゾール爪外用液10%で治療された爪白癬患者を後ろ向きに検討し、66例について計80病変を特定した。治療効果は、患者IDによりクラスター化し、交換可能な作業相関構造とロバスト(サンドイッチ)標準誤差を適用した病変レベルのGEEを用いて評価した。改善率(連続変数)は線形GEE、完全治癒(あり/なし)はロジスティックGEEを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・母趾の爪の病変は、一貫して治療反応不良と関連しており、低い改善率(β=-0.461、標準誤差[SE]=0.145、p=0.0015)、低い完全治癒のオッズ(オッズ比[OR]:0.07、95%信頼区間[CI]:0.01~0.37、p=0.002)を示した。・ベースラインの爪に厚みがあるほど、完全治癒のオッズが低かったが(OR:0.17、95%CI:0.07~0.42、p<0.001)、改善率と有意な関連はみられなかった(β=-0.089、SE=0.058、p=0.125)。・ルリコナゾール爪外用液5%の使用は、エフィナコナゾール爪外用液10%と比較して、低い改善率(β=-0.310、SE=0.154、p=0.044)および低い完全治癒のオッズ(OR:0.07、95%CI:0.01~0.60、p=0.015)と関連していた。 著者らは、後ろ向きの非無作為化研究であるという本研究の限界について挙げたうえで、「母趾の爪の病変は、局所療法への反応不良の予測因子であることが示され、爪の厚みが増すととくに完全治癒が妨げられる可能性が示唆された」とまとめている。

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難治性肺MAC症へのベダキリン、培養陰性化を改善(TMC207NTM3002)/ATS2026

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とする肺MAC症では、多剤併用療法を6ヵ月以上実施しても細菌学的効果が不十分な患者を難治例としている。難治性肺MAC症の治療選択肢は限られている。ジアリルキノリン系抗菌薬であるベダキリンは、多剤耐性結核に対する併用療法の一部として用いられており、MACに対してin vivoでの活性も報告されている。そこで、難治性肺MAC症に対するベダキリンの有効性および安全性を検討することを目的として、国際共同第II/III相無作為化比較試験「TMC207NTM3002試験」が実施された。その結果、24週時点の喀痰培養陰性化率は、対照群と比較してベダキリン群で有意に高かった。米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、森本 耕三氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器センター)が本結果を発表した。試験デザイン:国際共同無作為化非盲検第II/III相試験(日本、韓国、台湾で実施)対象:肺MAC症に対する標準治療を6ヵ月以上実施しても培養陽性が持続する成人肺MAC症患者129例試験群(ベダキリン群):ベダキリン+クラリスロマイシン+エタンブトールを48週間 65例対照群:リファンピシンまたはリファブチン+クラリスロマイシン+エタンブトールを60週間(24週時で培養陰性化未達成の患者はベダキリンにクロスオーバー可) 64例評価項目:[主要評価項目]24週時点の喀痰培養陰性化率(25日以上間隔をあけた喀痰培養で3回連続して陰性)[副次評価項目]喀痰培養陰性化までの期間(陰性化[3回連続の陰性]の時点は1回目の陰性が認められた時点と定義)、薬物動態、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でおおむね均衡がとれていた。年齢中央値はベダキリン群67歳(範囲:44~79)、対照群62歳(同:32~79)、女性の割合はそれぞれ80.0%、84.4%であった。日本からの登録はそれぞれ90.8%、92.2%であった。・ベースラインの原因菌種は、ベダキリン群ではM. avium 83.1%、M. intracellulare 15.4%、M. aviumおよびM. intracellulare 1.5%で、対照群ではそれぞれ70.3%、28.1%、1.6%であった。・24週時点の喀痰培養陰性化率は、ベダキリン群24.6%、対照群4.7%であった。群間差は19.7%ポイントであり、ベダキリン群が有意に高かった(95%信頼区間[CI]:8.3~31.2、p=0.002)。・24週までの喀痰培養陰性化までの期間についても、ベダキリン群は対照群より短かった(p<0.001、層別log-rank検定)。喀痰培養陰性化例における陰性化までの期間中央値は、ベダキリン群43日、対照群66.5日であった。・薬物動態解析において、ベダキリン群は対照群と比較してクラリスロマイシン濃度が高かった。・24週までの試験治療下における有害事象(TEAE)は、ベダキリン群93.8%、対照群76.6%に発現した。治療関連有害事象はそれぞれ32.3%、18.8%に発現した。・ベダキリン、リファンピシンまたはリファブチンの中止に至ったTEAEは、ベダキリン群3.1%、対照群7.8%にみられた。 なお、本結果は24週時点の主要な解析結果であり、24週以降の解析は現在進行中である。

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複雑性尿路感染症と腎盂腎炎、nacubactam併用で有効かつ安全な治療法は/Lancet

 グラム陰性菌による複雑性尿路感染症(cUTI)または急性単純性腎盂腎炎(AP)患者において、イミペネム/シラスタチンとの比較により、セフェピム/nacubactamおよびアズトレオナム/nacubactam併用投与の有効性および安全性が確認された。札幌医科大学の高橋 聡氏らが、「Integral-1試験」の結果を報告した。nacubactam(OP0595)は、新たに開発されたジアザビシクロオクタン系β-ラクタマーゼ阻害薬で、セフェピムまたはアズトレオナムとの併用投与により、カルバペネム耐性腸内細菌細菌および第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌細菌(ESBL産生菌を含む)に対する強力な活性を示すことが確認されていた。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。nacubactamとセフェピムまたはアズトレオナム併用投与の有効性と安全性をイミペネム/シラスタチンと比較 Integral-1試験は、ブルガリア、中国、チェコ共和国、エストニア、ジョージア、日本、ラトビア、リトアニア、スロバキアの79施設において実施された国際共同第III相無作為化二重盲検実薬対照試験。18歳以上、体重が140kg以下で、少なくとも5日間の注射用抗菌薬による治療が必要とされているcUTIまたはAP患者を対象とした。 研究グループは、対象患者をセフェピム(2g)/nacubactam(1g)群、アズトレオナム(2g)/nacubactam(1g)群、またはイミペネム(1g)/シラスタチン(1g)群に、診断(cUTI、AP)および地理的地域(日本、中国、その他)を層別因子として2対1対1の割合で無作為に割り付け、8時間(±1時間)ごとに60分間(±15分間)かけて、5~10日間、必要に応じて最長14日間、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、微生物学的修正intention-to-treat(mITT)集団(無作為化され試験薬の投与を受け、かつベースラインで適格病原体がイミペネムおよびメロペネムに感受性のあるすべての患者)における、投与終了7日後の治癒判定時点での総合臨床効果とした。総合臨床効果は、臨床的成功(治験責任医師評価による臨床効果が治癒と判定)、および微生物学的成功(試験実施施設と中央検査室での検査結果に基づく細菌学的効果が消失と判定)の達成とした。また、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者において安全性を評価した。 主要エンドポイントの非劣性マージンは、群間差の95%信頼区間(CI)の下限が-15%ポイント、優越性マージンは0%ポイントと事前に規定された。イミペネム/シラスタチンに対するセフェピム/nacubactam併用群の優越性を確認 2023年5月22日~2024年11月26日に、614例が無作為化され、うち微生物学的mITT集団は431例(セフェピム/nacubactam群214例、アズトレオナム/nacubactam群112例、イミペネム/シラスタチン群105例)であった(男性228例[53%]、女性203例[47%])。 主要エンドポイントを達成した患者の割合は、セフェピム/nacubactam群で82%(176/214例)、アズトレオナム/nacubactam群で72%(81/112例)、イミペネム/シラスタチン群で61%(64/105例)であった。イミペネム/シラスタチン群との差は、セフェピム/nacubactam群で21.3%ポイント(95%CI:10.9~32.0)(非劣性かつ優越性)、アズトレオナム/nacubactam群で11.4%ポイント(95%CI:-1.2~23.7)(非劣性)であった。 試験治療下で発現した有害事象は、セフェピム/nacubactam群で306例中100例(33%)、アズトレオナム/nacubactam群で152例中45例(30%)、イミペネム/シラスタチン群で150例中65例(43%)に報告された。治療に関連する死亡は認められなかった。

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夜間の食事でストレスによる腸の不調が悪化

 夜遅い時間帯の食事は、ストレスによる腸の不調を悪化させる可能性があるようだ。午後9時以降の食事量が多い人は、便秘や下痢のリスクが高くなる可能性が、新たな研究で示された。米セントメアリーズ・アンド・セントクレアズ病院のHarika Dadigiri氏らによるこの研究結果は、消化器疾患週間会議(DDW 2026、5月2〜5日、シカゴ)で発表された。 Dadigiri氏は、「何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも重要だ。また、すでにストレスを抱えているときには、食べるタイミングが腸内環境にとって『二重の負担』となる可能性がある」とニュースリリースで述べている。 この研究では、米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者1万1,000人以上のデータを分析して、慢性ストレス、夜間の食事摂取、および腸の機能の関連を検討した。その結果、コレステロール値、血圧、BMIなどに基づく慢性的な生理学的ストレスが高い人が、1日の摂取カロリーの25%以上を午後9時以降に摂取した場合、ストレスレベルが低く夜遅くに食事をしない人に比べて、便秘や下痢になる可能性が1.7倍高いことが示された。 さらに、研究グループは、腸内環境に関する研究(American Gut Project)に参加した4,000人以上のデータも分析した。その結果、ストレスレベルが高く、夜遅くに食事する習慣がある人は、腸の不調を訴える可能性が2.5倍高いことが明らかになった。また、腸に問題を抱えている人は、腸内細菌の多様性が著しく低かった。これらの結果は、食事のタイミングがストレスによる消化器系の健康への影響を増幅させる可能性があることを示唆していると研究グループは述べている。 研究グループは、本研究結果は、間食を完全にやめるべきだということではなく、自分へのご褒美として何か食べるなら、夕方の早い時間帯にすることを勧めるものだとの見方を示している。Dadigiri氏は、「私はアイスクリーム警察ではない。誰でもアイスクリームを食べてもよいが、食べるなら日中の早い時間帯にするべきだろう。規則正しい食事を維持するなど、小さな習慣を継続することで、食生活の規則性が高まり、長期的には消化機能をサポートするのに役立つかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第317回 夏到来!今年もクマ被害とダニが媒介するSFTS増加の予感

東京都の奥多摩でツキノワグマに襲われる事件頻発こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。本連載で、ゴールデンウィークの福島・西大巓(にしだいてん)登山で左膝の靭帯を損傷したことを書いたところ、知人から「そもそもクマは大丈夫だったの?」と聞かれました。福島、山形の県境の山にはツキノワグマも多く生息しているので、そうした心配をしてくれたのでしょう。幸いクマの足跡はいくつか見ましたが、遭遇することはありませんでした。とは言え、この日は、白布峠からの登山者は我々のパーティーだけだったこともあり、クマ鈴を付け、クマ笛を頻繁に鳴らすとともに、「ホー、ホー」と時折大声を上げながらの登山になりました。そうしたクマ対策に神経を使った結果、雪渓の安全性に対する注意力が鈍り、踏み抜いてしまったのかもしれません。クマ恐るべしです。そんな反省をしていたところ、先週、東京都の奥多摩で相次いでツキノワグマに襲われる事件が起こりました。5月17日、奥多摩駅から雲取山に連なる人気縦走路・石尾根の途中、三ノ木戸山付近でロシア国籍の男性登山者がクマに襲われました(命に別状なし)。さらに2日後の19日には、東京都と埼玉県の県境、蕎麦粒山近くの仙元峠付近で、クマに襲われたとみられる上半身がない遺体が見つかりました。身元はまだ不明とのことです。私自身、三ノ木戸山も蕎麦粒山も何度も行ったことのある山だけに、さすがに恐ろしくなりました(15年ほど前、三ノ木戸山近辺では木に登っている子グマを見たことがあります)。クマ外傷患者の受傷部位で一番多かったのは顔面で90%、次いで頭部60%クマによる人身被害については、昨年の本連載「第279回 『クマ外傷』の医学書が教えてくれるクマ被害の実態、『顔面、上肢の損傷が多く、挿管と出血性ショックに対する輸血が必要なケースも。全例で予防的抗菌薬を使用するも21.1%で創部感染症が発生』」で詳しく書きました。書籍『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(編著・中永 士師明、新興医学出版社)によれば、クマ外傷患者20人の受傷部位で多かったのは、顔面90%(顔面骨折45%、眼球破裂15%)、次いで頭部60%(頭蓋骨骨折5%、硬膜下血腫5%)だったそうです。こうした知見が集積され、報道もされた結果でしょう、万が一襲われそうになった時の防御姿勢についてマスコミの多くはおおむね次のように報じています。「フードや帽子等で頭部を保護しつつ、うつ伏せになって顔や胸、腹部を守るとともに、手指を組み合わせて後頭部と首の後ろをガードする」。とにかく、「襲われたら頭と顔を守る」のが鉄則というわけです。今年は春から夏への移行が早く、クマの出没も過去最悪のペースで増えているようです。政府も「今年はヤバい」と考えたのか、5月23日付の新聞各紙に注意喚起のための全面広告を掲載、「山菜採りに行くみなさん。クマにご注意ください」というキャッチコピーとともに、「クマに出会わないための6ヶ条」の周知に務めています1)。同日に放送されたNHKの「サタデーウオッチ9」では、この政府の注意喚起にあわせて「緊急報告『クマ出没列島』」と題する特集レポートを放送、都市部での出没が相次ぐ中、東京都についても多摩川沿いにクマの生息範囲が広がる可能性があると報じていました。クマが生息する地域や、出没する可能性のある地域にある医療機関は、クマ外傷の患者が運ばれてきた時の対応(創処置、骨折対応、感染対策等)や必要な医薬品(抗菌薬等)について、改めて確認しておくべきだと思われます。今年もすでに死亡例が出ている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ということで、クマ出没やクマ被害も増えていますが、今年はマダニが媒介するあの感染症も立ち上がりが早く、昨年並みの増加を予感させます。感染症と言えば、ハンタウイルスやエボラ出血熱、そしてはしかが話題となっていますが、ごく身近で発生し、今年もすでに死亡例が出ているダニ媒介感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」も頭に入れておきたいところです。以下、最近の報道からいくつかピックアップしてみます。5月12日付/神奈川新聞「相模原市は11日、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』に同市緑区在住の80代女性が感染したと発表した。神奈川県内では昨年7月に松田町在住の女性の感染が確認されており、今年に入ってからは初めて。市保健所によると、女性は4月29日に発熱や関節痛などの症状があり、30日に市内の医療機関を受診。5月9日にSFTSの陽性が確定した。女性は現在も入院中だが、軽快傾向にあるという。女性の行動歴を調べた結果、自宅周辺で畑仕事などをした際にマダニに刺されて感染したとみられ、市保健所は市内を感染地域と推定」。5月12日付/NHKニュース「熊本県内では先月、主にマダニが媒介する感染症に感染した患者が死亡しました。患者の治療にあたる医師は畑や草むらに入る場合などはマダニに刺されないよう対策を徹底するよう呼びかけています。先月、県内ではことし初めて、天草市の90代の女性が、主にマダニが媒介する感染症、SFTS=『重症熱性血小板減少症候群』で亡くなりました。これまでにも県内ではSFTSの感染が相次いで確認されていて、去年は11件、ことしに入ってからも今月10日までに2件確認されています」。5月13日付/産経新聞「奈良県は13日、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群』(SFTS)に中和保健所管内の60代の男性が感染したと発表した。男性は意識障害を起こして入院中という。感染症法上では4類に位置付けられ、有効な治療法がないため、県はマダニにかまれた際は医療機関での受診を勧めている」。5月14日付/NHKニュース「高松市保健所は、市内の80代の男性が主にマダニが媒介する感染症、SFTS=重症熱性血小板減少症候群に感染し、14日死亡したと発表しました。保健所は、山や草むらで活動する場合は、肌の露出を控え、マダニに刺されないよう注意を呼びかけています。高松市保健所によりますと、今月1日、市内の80代の男性が発熱や全身のけん怠感などの症状を訴えて市内の病院に入院し、治療を受けていましたが、14日死亡しました」。5月19日付/NHKニュース「マダニが媒介する感染症、SFTS=『重症熱性血小板減少症候群』の患者が県内でことし初めて確認され、(福岡)県が注意を呼びかけています。SFTSへの感染が確認されたのは、宗像市の70代の男性で、県によりますと、今月14日に発熱や関節痛を訴えて医療機関を受診し、18日、食欲低下や意識がはっきりしないなどの症状で入院しました。粕屋保健福祉事務所から連絡を受けた県が検査したところ、19日、感染が確認されたということです。県内でSFTSへの感染が確認されたのは、ことし初めてです。男性は現在も意識がはっきりしない状態が続いていて、治療を受けているということです」。5月20日付/NHKニュース「京都府内に住む70代の男性が、先月(4月)、重症の場合、死亡することもある感染症のSFTS=『重症熱性血小板減少症候群』に感染したことが分かりました。媒介するマダニに京都市内で刺されたことが原因とみられ、府は草むらに入る際は肌の隠れる衣服を着用するなど、注意を呼びかけています。(中略)京都府によりますと、先月(4月)上旬、府の南部に住む70代の男性が京都市伏見区の竹やぶで作業をしたあと、発熱などの症状を訴え医療機関を受診したところ、SFTSに感染していることが確認されたということです。府によりますと、SFTSの感染場所が京都市内と推定されたのは、今回がはじめてだということです」。農作業などを行う人が発熱や嘔吐、下痢などで運ばれてきたらSFTSを疑う日本で確認されているマダニによる感染症は非常に多くあります。代表的なものが重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介脳炎(北海道中心)などです。これらの中でとくに注意が必要なのが、死亡例が多いSFTSです。夏の到来が遅い東北地方では患者の確認はまだのようですが、九州、四国、本州の西日本~関東ではすでに患者が発生しています。ちなみに2025年の報告数は191例で過去最高を記録、2014年の61例と比較すると約3倍だったそうです。本連載でも昨年7月掲載の「第272回 致死率30%!猛威を振るうマダニ感染症SFTS、患者発生は西日本から甲信越へと北上傾向」で詳しく書いたように、温暖化などの影響でSFTSウイルスを持ったマダニの生息域が日本で徐々に北上、シカなどの野生動物からネコ、イヌへの感染も手伝って、ヒトへの感染も増えているというわけです。そう言えば、昨年はSFTSのネコを治療した三重県内の獣医師がその後SFTSで死亡する、ということもありました。国立健康危機管理研究機構は「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版」2)や「Q&A」3)を作成し公開していますので、これからの季節、農作業などを行う人が発熱・嘔吐・下痢や、意識障害や失語などの神経症状、下血などの出血症状で運ばれてきたら、SFTSも疑うようにしたいものです。 参考 1) 山菜採りに行くみなさん、クマにご注意ください/政府広報オンライン 2) 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版」/国立健康危機管理研究機構 3) 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」/厚生労働省

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全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」【最新!DI情報】第63回

全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」今回は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体「アニフロルマブ(遺伝子組換え)(商品名:サフネロー皮下注120mgオートインジェクター、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。これまでの点滴静注製剤に加えて皮下注製剤が登場したことで、全身性エリテマトーデス患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療が可能になると期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスの適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、1回120mgを1週間ごとに皮下注射します。なお、アニフロルマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤から本剤に切り替える場合、点滴静注の最終投与から約2週間後に本剤の投与を開始します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)、重篤な感染症(2.3%)があります。その他の副作用として、注射部位反応(10%以上)、気管支炎(気管支炎、ウイルス性気管支炎、気管気管支炎)、上気道感染(上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎)、帯状疱疹、過敏症(いずれも1~10%未満)、気道感染(気道感染、ウイルス性気道感染、細菌性気道感染)(いずれも1%未満)、関節痛(頻度不明)があります。なお、症状を悪化させる恐れがあるため、重篤な感染症の患者および活動性結核の患者には投与できません。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体製剤であり、既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスに用いられる皮下注射薬です。 2.今までに、ステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬などによる全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても効果不十分な場合に上乗せして使用されます。 3.医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんや家族が自己注射できます。自己判断で中止や減量をしないでください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、使用する前に医師または薬剤師に告げてください。 <ここがポイント!>全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、免疫系の異常により全身の多臓器に炎症を引き起こす慢性の自己免疫疾患で、厚生労働省の指定難病49に該当します。初期症状として全身倦怠感や発熱が多くみられ、その後、皮膚・粘膜症状、関節症状、腎病変、中枢神経症状などさまざまな症状が現れるため、患者ごとに症状の組み合わせや重症度が大きく異なります。治療の主軸は副腎皮質ステロイドによる免疫抑制および抗炎症であり、重症例ではステロイドパルス療法が選択されます。しかし、ステロイドは長期使用に伴う多くの副作用があり、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、生物学的製剤などを併用し、ステロイドの減量を目指す治療が行われます。SLE患者の多くは、I型インターフェロン(IFN)シグナル伝達が持続的に亢進し、IFN誘導性遺伝子の過剰発現が認められます。アニフロルマブは、I型IFNα受容体サブユニット1に結合するヒト免疫グロブリンG1κ(IgG1κ)モノクローナル抗体であり、I型IFN受容体を介したシグナル伝達を遮断することで自己抗体産生を抑制し、SLEの症状緩和および進行抑制に寄与すると考えられています。同成分は2021年11月に点滴静注製剤が発売されていますが、4週間ごとに通院し、30分以上かけて点滴投与を行う必要があります。今回承認された皮下注製剤は、週1回の自己注射薬であり、従来の点滴静注製剤に加わる新たな選択肢として、患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療を可能にします。また、通院負担の軽減や治療継続率の向上も期待されます。なお、アニフロルマブ点滴静注製剤から皮下注製剤に切り替える場合、点滴静注製剤の最終投与から約2週間後に皮下注製剤の投与を開始する必要があります。標準治療を実施中の中等症~重症の疾患活動性を有する自己抗体陽性のSLE患者を対象とした第III相国際共同試験(TULIP SC試験)において、主要評価項目である投与52週時のBICLA達成例(複合的な疾患活動性低下指標)の割合は、本剤120mg皮下投与群で59.4%、プラセボ皮下投与群で43.9%、割合の群間差は15.5%(96.46%信頼区間:1.4~29.6%)であり、プラセボ投与群に対する本剤投与群の優越性が検証されました(p=0.0211、層別Cochran Mantel Haenszel法)。

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経鼻インフルエンザワクチン、鼻腔内に免疫反応を形成

 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンのフルミスト(FluMist)は、従来の注射型ワクチンとは異なる仕組みで作用することが、新たな研究で示された。フルミストは、ウイルスが侵入してくる鼻腔内で直接的に免疫反応を引き起こし、ウイルスと闘うための「戦場」を形成することが明らかになったという。米ラホヤ免疫研究所のチーフサイエンティフィックオフィサーであるShane Crotty氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に4月29日掲載された。 研究グループは、こうした免疫反応は上気道にとどまり、血液検査では検出できないため、これまで成人に対する経鼻ワクチンの潜在的な有益性が見過ごされてきたと指摘する。「これまで、フルミストは大多数の成人にはほとんど効果がないと考えられていた。しかし、意外なことに、実際には大多数の人々が鼻腔組織内でワクチンに反応を示すことが明らかになった」とCrotty氏はニュースリリースで説明している。 フルミストは小児で有効性が示され、成人に対する使用も承認されている。しかし、この経鼻ワクチンを接種した成人の血液を調べたところ、インフルエンザと闘う免疫細胞の存在が確認できなかったという。このことから、専門家の間で、インフルエンザに対するこのワクチンの予防効果を疑問視する声が上がっていた。 研究グループは今回の研究で、成人25人の鼻腔からフルミストの接種前後で検体を採取し、鼻腔内の免疫細胞を詳しく調べた。人間の体はさまざまな免疫細胞を有しているが、本研究では、鼻や気道の組織に定着し、ウイルスに対する抗体を産生するB細胞に焦点を当てた。 その結果、フルミストを接種した人では、接種後に上気道にインフルエンザウイルスに対抗するメモリーB細胞の大幅な増加が認められ、この増加は6カ月後も維持されていた。ただし、これらの細胞が確認されたのは鼻腔内のみであり、血液中には循環していなかった。 論文の筆頭著者でラホヤ免疫研究所の博士研究員であるHannah Stacey氏は、「この結果は、経鼻ワクチンあるいは粘膜ワクチンの接種後に血液のみを調べると、極めて興味深い免疫学的現象を見逃してしまう可能性があるということだ」とニュースリリースで述べている。 研究グループが、この結果を通常の注射型インフルエンザワクチンを接種した成人25人の結果と比較したところ、その免疫反応は完全に異なることが判明した。注射型ワクチン接種者では、血流中のインフルエンザ抗体は増加していたが、上気道では防御に関わる免疫細胞は誘導されていないことが示された。 研究グループは今回の結果について、フルミストの有効性が通常の注射型ワクチンと同等であることを意味するものではないと強調している。なお、研究グループは現在、鼻腔内の免疫細胞の反応が、インフルエンザに対して持続的な防御作用をもたらすのに十分な強さであるかどうかを検証中であるという。

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