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学会発表とカウンター鮨の深い関係【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】 第6回

第6回 学会発表とカウンター鮨の深い関係今回は、学術論文を読むことと、学会発表を会場で直接に聴くことの違いと意義について考えてみたいと思います。学術論文は、学術雑誌に投稿し査読を受けてアクセプトされたものが掲載されます。学会発表は、学会を運営する事務局に研究発表を申し込み、採択されたものが発表されます。権威ある学会、とくに国際学会で採択され、口頭発表することは賞賛に値する業績です。しかし、学会発表よりも学術論文のほうがアクセプトされるための苦労が大きいでしょうし、学術的な価値も学術論文のほうが高いことはもちろんです。では、学会の発表会場に出向いてライブで口頭発表を聴く価値はどこにあるのでしょうか?「へい! いらっしぇーい!」「よっ、大将も元気?」「何かオススメのおいしい魚ある?」「そうだねえ、今日はいいアジがあるねえ。そうそうトビウオもいいのが入ったよ」「いやぁ。ちょうどよかった。青身の魚が大好きなんだよね。まずは刺身にしてくれる?」「へい。よろこんで!」鮨屋では、このように板前さんと会話をすることが醍醐味です。楽しい会話は食欲を増進させます。魚や料理についても教えてくれます。黙って食べていては、鮨屋のカウンターに座った意味がありません。街には寿司屋の新規開店が続きます。その多くは回転寿司です。大量仕入れと冷凍保存により、良い食材を安く提供する。それが回転寿司の宣伝文句です。一般的には、カウンターの鮨屋と回転寿司の違いは値段の違いとされます。確かにカウンターの鮨屋の中には、不当に高額で二度と足が向かない店も存在します。私の経験では、回転寿司でも美味しいものを食べれば必ずしも安くはなく、カウンターの鮨屋にも妥当な価格の店も少なくありません。回転寿司と鮨屋の違いは会話を必要とするか、しないかです。皆さんお気づきかと思いますが、「すし」の漢字、自分としては会話しながら食べる店が「鮨」で、黙って皿を取って食べるのが「回転寿司」と捉えています。「回転鮨」は何かピンとこないのです。そうです。発表者の表情や口調、聴衆の人数や、学会会場の熱気などを直接感じることができるのが、学会発表を聴く醍醐味なのです。会場の空気を生で吸うものだけが感じ取ることのできる活きた情報です。学術論文のpdfからは得られないものです。発表に続いて質疑応答を楽しむことができます。発表者が答えに窮するような鋭い質問がとぶ場合は見どころです。まさに新鮮さが勝負です。ところかわって、診察では、会話が大切です。医師と患者が向き合い、病状についていつ頃から、どんな症状が、どんな風に出現してきたのかを訊きだすのが問診です。医療は、人と人の心が最も触れ合う世界です。言葉なしには成立しません。会話をして情報を交換し、さらに感情を伝える。これは人間が他の動物と違い、人間である最大の特徴です。その面でも、学会発表は医療における情報伝達の本流であり続けることでしょう。今後インターネットがいっそう発展しても、学会発表の持つ意義には普遍性があるのではないでしょうか。

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第19回 小児科クリニックからのセフカペンピボキシルの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 患児の保護者に確認することは?熱の有無や熱性けいれんの既往など ふな3さん(薬局)発熱の有無は、アセトアミノフェン坐剤の処方意図(すぐに使用するか予備か)やペリアクチン®による熱性けいれん誘発リスクの推測にも利用できるため、必ず確認します。他に、熱性けいれんやてんかんの既往、副作用歴、併用薬、発疹の有無も確認したいです。検査したかどうか 清水直明さん(病院)アレルギー歴は必ず確認します。もしA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌、S.pyogenes )だったら抗菌薬が必要だと思うので、「何か検査はされましたか」と確認します。セフェム系抗菌薬のアレルギーや過去1カ月以内に抗菌薬を使用したか 奥村雪男さん(薬局)患児の性別や、特にセフェム系抗菌薬に対してアレルギーはないかを確認します。他にも過去1カ月以内に抗菌薬を使用したか、いつから症状があったか、全身状態はどうか、咳や鼻水などの症状、アデノウイルスなどの迅速検査や血液検査を行っているかも確認します。可能なら検査結果や白血球数やCRPなどの検査値、肺炎球菌、ヒブなどのワクチンを接種しているかも聞きます。Q2 疑義照会しますかする・・・7人フロモックス®の用量 キャンプ人さん(病院)フロモックス®細粒は1日9mg/kgですので、少し量が少ないのでは? と照会します。そのときに、抗菌薬の処方を望まれていないことを「母親が伝え忘れた」として医師へ伝えます。もちろん母親にそのように照会してよいか確認しておきます。普段から風邪に抗菌薬は不要と医師に示し続ける 荒川隆之さん(病院)保護者がなぜ抗菌薬の処方を望んでいないのか、よく聴き取りを行います。風邪に抗菌薬は不要ということで望んでいないのならば、疑義照会を行ってよいか、保護者と話をします。そして、フロモックス®の投与量がやや少ないことで疑義照会するついでに、風邪に抗菌薬は不要ではないか確認します。最初は、保護者がそのように希望していると言わず、医師から保護者の意志を聞かれた場合に回答します。ただし、この疑義照会は、医師と薬剤師のそれまでの関係も大きく関係すると思います。普段から風邪に抗菌薬は不要というスタンスを医師に示し続ける必要があります。抗菌薬は必要? 柏木紀久さん(薬局)患児の主症状が発熱と咽喉頭炎なので、あまり抗菌薬の必要性を感じません。3日後の再診時に抗菌薬の投与を考慮してもいいのではないかと思います。体重9kgでアセトアミノフェン坐剤が処方されており、発熱の期間が長い、または日内変動が強い状態でぐずったり、食欲がなかったりして状態がよくないことも考えられます。この場合、説明通り二次感染が考えられ抗菌薬処方の妥当性を感じますが、食欲や水分摂取が少なくなっている場合は、低カルニチン血症も気になります。保護者が医師に言えなかったことを薬剤師に打ち明けているので、照会してみると思います。溶連菌の可能性も 児玉暁人さん(病院)フロモックス®の投与量が少ないので確認します。ウイルス性の単なる風邪では抗菌薬は不要です。ただトランサミン®散の処方、のどの発赤から溶連菌の可能性も捨てきれず、その場合は抗菌薬が必要です。溶連菌の合併症予防を風邪の二次予防と受け取ってしまったなど、知識があるだけにややこしくしている可能性もありえます。保護者には、投与量と処方意図の再確認をしたい旨を伝え、納得と了承を頂いてから疑義照会します。あとは、疑義照会への返答内容にもよりますが、抗菌薬を服用する/しない場合のメリット・デメリットを伝えて、服用するかどうかを保護者に判断してもらうかと思います。ですので、疑義照会時に「服用を保護者の判断に任せてよいか」と確認しておきます。容態が悪化したら飲ませるつもりなら、疑義照会する ふな3さん(薬局)処方を望んでいないという意味では、疑義照会しません。医師との関係を気にしているなら、あえて蒸し返す必要はないと考えます。また、調剤の際に下記のように3種に分包して、フロモックス®だけ(もしくはラックビー®Rも)は服用しなくて済むようにできます。(1)フロモックス®(2)ラックビー®R(3)トランサミン® /ペリアクチン® /アスベリン® /ムコダイン® 混合この患者さんに限らず、普段から対症療法用の薬剤(症状改善したら中止)と、抗菌薬・整腸剤(処方日数飲みきり)は別包にしています。これらの対応をした上で、「望んではいない」と言いながらも、「容態が悪化したら飲ませるかも」と考えている場合、フロモックス®の添付文書上用量(3mg/kg)に満たないため、0.81g(~0.9g程度)/日への増量を提案するため疑義照会をします。保護者自身の風邪であれば「抗菌薬は飲まずに治せる」と簡単に割り切れると思いますが、発話できない乳児で急な発熱であれば、「この子のためにできることは?」「やっぱり抗菌薬を飲ませるべきかも」と頭をよぎるのが親心だと思います(だからこそ、小児科医も抗菌薬処方を簡単には止められないのでしょうが...)。その意味合いも含めて、抗菌薬は適切な量に修正した上で、「飲み始めたら飲みきる」の条件の下、お渡ししておきたいと思います。抗菌薬は感染が起きたと推定されるときに服用する JITHURYOUさん(病院)当然、医師の指示通りに調剤しなければならないのですが、その話をしてもなお服薬拒否ということになるのならば、医師に確認したいですね。連鎖球菌による咽頭炎でも、フロモックス®ではなくペニシリンが第一選択なので、この場合処方変更の必要性があるのではと考えます。二次感染予防目的の抗菌薬処方だとしても、臨床経過を勘案して疑義照会したいところです(遷延していたら細菌による二次感染の可能性=抗菌薬適応)。となると、症状の変化などで感染が起きたと推定されるときに服用する方がベストのような感じがします。フロモックス®はそういう場合に服用していただく方が耐性菌を増やさないという観点でも必要ではないかと考えます。よって、調剤は別包装にすべきではないでしょうか。母親の気持ちを聞き取った上で わらび餅さん(病院)フロモックス®が1日量9mg/kgではないので、疑義照会はします。また、母親からどうして抗菌薬を希望しないのかを聞きます。二次感染予防の必要性を感じてない、風邪という診断に納得してない、赤ちゃんだからあまり薬を飲ませたくないなど、理由によって対応も変わってきます。しない・・・4人処方医は不要なリスクを避けたいと考える 奥村雪男さん(薬局)抗菌薬以外の処方内容からは、典型的なウイルス性の上気道炎に見えます。全身状態が悪くないのであれば、抗菌薬なしで数日の経過観察後、悪化した場合に細菌性肺炎などの診断がついた時点で、それに応じた抗菌薬を選択するのが理想的だと思います。ただ、実際には疑義照会しないと思います。ウイルス性上気道炎に第三世代セフェムを処方するのは現在の日本の慣行であり、慣行と異なる行為はリスクを伴います。仮に抗菌薬なしの経過観察中に細菌性肺炎を発症すれば、最悪の場合、訴訟問題に発展するかもしれません。処方医は不要なリスクを負うことは避けたいと考えるはずです。遠回りのようですが、ウイルス性上気道炎に抗菌薬を処方した場合の治療必要数※などのエビデンスを国民に提示し、抗菌薬の二次感染予防は効率の悪い治療行為であることを一般常識とすることが、疑義照会に優る方法だと思います。※治療必要数NNT(number needed to treat)のこと。死亡や病気の発症などのイベント発生を1人減らすために、何人の患者を治療する必要があるか、という疫学の指標。例えばNNTが100なら、1人の患者のイベント発生を減らすためには100人に治療を行う、ということになる。フロモックス®は別包に 清水直明さん(病院)抗菌薬をどうしても持ち帰りたくないと言うのであれば、そのことを説明して取り消してもらうことも可能でしょうが、医師が必要としたものを不要と説得するだけの材料が弱いかなと思います。風邪との診断であるならば、それほど重症感はなさそうです。抗菌薬を服用させたくないのであれば、親の責任の範囲でそれでもいいと思います。フロモックス®は別包とします。そもそも、このぐらいの年齢から保育園・幼稚園ぐらいまでのお子さんは、よく風邪をひきます。これからも外界と接する機会が増えるにつれて、いろいろな感染症を拾ってくることでしょう。もし、本当に抗菌薬が必要な感染症に罹ったとき、ちゃんと効いてくれないと大変です。風邪をひくたびに予防的に抗菌薬を飲んでいたら、耐性菌のリスクは上がってしまうと思います。フロモックス®など多くの抗菌薬には二次感染予防という適応はないし、そのことがよく分かっている親御さんであるならば、飲ませるか飲ませないかの判断は任せていいと思います。ただし、薬剤師の指導としては微妙ですが・・・後編では、抗菌薬について患者さんに説明することは?その他気付いたことを聞きます。

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抗うつ薬使用と道路交通事故による死亡との関連

 抗うつ薬は、最も一般的に使用されている精神疾患治療薬の1つである。しかし、抗うつ薬治療において、薬剤のクラス間または各物質に関連する交通事故リスクへの影響については、ほとんど知られていない。韓国・ソウル大学校病院のBo Ram Yang氏らは、道路交通事故における抗うつ薬使用と死亡リスクとの関連について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年11月24日号の報告。 2010年1月~2014年12月までの健康保険データベースにリンクした韓国国道交通機関データベース(Korean national road traffic authority database)を用いて、ケース・クロスオーバーデザインによる検討を行った。調査対象は、交通事故で死亡し、事故の1年以内に抗うつ薬を処方されていた韓国人ドライバー。ハザード期間およびマッチさせた4つの対照期間における抗うつ薬の処方状況について、他の薬剤の使用で調整した後、条件付きロジスティック回帰分析を用いて比較を行った。処方箋の数より、抗うつ薬の処方動向を調査した。使用傾向が増加している薬剤およびケース・クロスオーバーオッズ比(OR)が有意に高い薬剤には、ケース・ケース・タイム・コントロールデザインを適用した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬を使用していたドライバー1,250例において、30日ハザード期間中にリスクの増加が認められた(調整OR:1.30、95%CI:1.03~1.63)。・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)には有意なリスクが認められたが、三環系抗うつ薬では認められなかった。・しかし、すべての抗うつ薬、SSRI、SNRI、エスシタロプラム、デュロキセチンの関連性は、使用傾向を調整した後、有意ではなくなった。・パロキセチンとミルナシプランはリスク増加と関連が認められたが、それらの使用率に明らかな増加はみられず、ミルナシプランの結果には適応による交絡が影響を及ぼした可能性がある。 著者らは「抗うつ薬の処方や使用の傾向を考慮すると、パロキセチンの使用は、致死的な交通事故リスクを増加させる」としている。■関連記事自動車事故リスク、うつ病や抗うつ薬ではどうかゾルピデム処方と自動車事故リスク車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

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薬剤耐性菌の拡大を防ぐ「かぜ診療」最前線

 薬剤耐性(AMR)の問題は、これに起因する死亡者数が2050年には1,000万人に上ると推定されている喫緊の課題だ。2018年12月8日、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは抗菌薬の適正使用を目指し「かぜ診療ブラッシュアップコース」を都内で開催した。患者は抗菌薬ではなく、症状を緩和する薬を求めている 「適切なかぜ診療を行う際に知っておきたいこと」と題し、藤友結実子氏(国立国際医療センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)が、一般市民の抗菌薬に関する意識調査の結果を紹介した。抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある割合は94.2%だが、効果に関しては、71.9%が「細菌が増えるのを抑える」と正しく認識している一方、40.9%「熱を下げる」、39.9%が「痛みを抑える」とも回答している。 抗菌薬がどのような病気に有用か尋ねた質問には、49.9%が「かぜ」、49.2%が「インフルエンザ」と回答しており、ウイルス性疾患に抗菌薬が効くと誤解している一般市民は多いことが伺える。その一方で、かぜで受診したときに処方してほしい薬は、咳止め(61.9%)、解熱剤(59.8%)、鼻水を抑える薬(53.0%)が上位に挙がり、抗菌薬は30.1%であった。 また、2018年2月に実施したアンケート調査では、一般市民の57.6%は不必要に抗菌薬を飲んではいけないという情報を知らなかったが、59.4%が情報提供によって抗菌薬の使用可否についての考えが変わったと回答した。これらの結果から、患者が求めているのは抗菌薬ではなく症状を緩和する薬剤であるということを踏まえた正しい情報提供の重要性を強調した。「かぜ」は急性気道感染症の4つに分けるが、ほとんどの場合に抗菌薬不要 黒田 浩一氏(亀田総合病院 感染症科)は、抗菌薬使用を減らすために「かぜ」と訴える患者の中から細菌感染症を見分け、必要な人にのみ処方することが肝要であると述べ、「急性気道感染症の診断」について抗微生物薬適正使用の手引き第1版に則って解説を行った。 患者が申告する 「かぜ」は急性気道感染症だが、その90%以上はウイルス感染症であり、基本的に抗菌薬は不要だ。抗菌薬が必要なのは、中等症または重症の急性副鼻腔炎、A群連鎖球菌が検出された急性咽頭炎のみ。これらを確実に見つけるために、急性気道感染症の4病型‐感冒・急性副鼻腔炎・急性咽頭炎・急性気管支炎それぞれについて、特徴や対応を解説。ピットフォールとして、高齢者はかぜをひきにくく、かぜをひいたと言って受診した場合、細菌感染の可能性が高いという点にも触れた。抗菌薬の第1選択はアモキシシリン。第3世代セファロスポリンは極力避けて では抗菌薬が必要となった場合にどの薬を選択すべきなのか、山本 舜悟氏(京都大学医学部附属病院 臨床研究教育・研修部)が、細菌性副鼻腔炎、細菌性咽頭炎いずれも原則としてアモキシシリンが推奨される点を解説。その理由として腸管からの吸収に優れ、中耳や副鼻腔などへの移行性が良好であるなどの根拠を提示した。注意点として経口第3世代セファロスポリンはバイオアベイラビリティが低く、薬剤耐性菌を増加させる可能性があるため、原則として使用しないよう注意喚起を行った。手引きでは抗菌薬以外の対症療法薬について豊富な情報が記載されており、こちらも参考になるだろう。抗菌薬の代わりに説明の処方を 第1部で紹介されたように正しい情報提供によって患者の行動は変わりうるという点を踏まえて、かぜ受診で抗菌薬を求める患者に対する説明のロールプレイが行われた。実際に説明をしてみると患者が納得するように説明するのは難しいとの感想が会場から上がった。説明する際のポイントとして、患者の解釈・気になっていること・医療機関への期待を確認することが新規処方薬の少なさと関連する点に言及し、「抗菌薬の代わりに説明の処方を」と呼びかけセミナーは終了した。 同センターではセミナーを全国各地で行っており、来年も継続予定とのこと。■参考抗微生物薬適正使用の手引き第一版薬剤耐性AMR情報サイト各種啓発用ツールAMR臨床リファレンスセンター■関連記事Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー

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がん患者の静脈血栓塞栓症予防、アピキサバンが有望/NEJM

 がん患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高いとされる。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らAVERT試験の研究グループは、中等度~高度の静脈血栓塞栓症リスク(Khoranaスコア≧2)を有し、化学療法を開始した外来がん患者では、アピキサバンにより静脈血栓塞栓症の発生が抑制されることを示し、NEJM誌オンライン版2018年12月4日号で報告した。Khoranaスコアは静脈血栓塞栓症のリスクが高いがん患者を同定し、予防治療により便益を得ると考えられる患者の選定に役立つ可能性がある。また、直接経口抗凝固薬は、がん患者の血栓予防薬として、利便性や費用も含め、非経口薬よりも優れる可能性が示唆されている。静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価 本研究は、化学療法を開始した外来がん患者の静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(カナダ保健研究機構およびBristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたがんまたは完全/部分寛解後に進行した既知のがんを有し、治療期間が最短でも3ヵ月の化学療法を新たに開始する患者であった。Khoranaスコア(0~6点、点数が高いほど静脈血栓塞栓症のリスクが高い)は、≧2(中等度~高度のリスク)とした。 被験者は、アピキサバン(2.5mg×2回/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要な有効性評価項目は180日後の静脈血栓塞栓症(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の発現であり、主な安全性評価項目は大出血エピソードとした。 2014年2月~2018年4月の期間に、カナダの13施設で574例(アピキサバン群291例、プラセボ群283例)が無作為割り付けの対象となり、563例(288例、275例)が修正intention-to-treat解析に含まれた。静脈血栓塞栓症の発生率はアピキサバン群が有意に低い 全体の平均年齢は61歳、女性が58.2%であった。がん種は多い順に、婦人科がん(25.8%)、リンパ腫(25.3%)、膵がん(13.6%)であった。転移病変を有する固形がんの患者が、アピキサバン群に73例、プラセボ群には67例含まれた。治療期間中央値はそれぞれ157日、155日、追跡期間中央値は両群とも183日だった。 追跡期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、アピキサバン群が4.2%(12/288例)と、プラセボ群の10.2%(28/275例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.26~0.65、p<0.001)。治療期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、それぞれ1.0%(3例)、7.3%(20例)であり、アピキサバン群で有意に低かった(0.14、0.05~0.42)。 一方、大出血エピソードの発生率は、アピキサバン群は3.5%(10/288例)であり、プラセボ群の1.8%(5/275例)に比し有意に高かった(HR:2.00、95%CI:1.01~3.95、p=0.046)。治療期間中の大出血の発生率は、それぞれ2.1%(6例)、1.1%(3例)であり、有意差は認めなかった(1.89、0.39~9.24)。 死亡率はアピキサバン群が12.2%(35例)、プラセボ群は9.8%(27例)であった(HR:1.29、95%CI:0.98~1.71)。死亡した62例中54例(87%)の死因は、がんまたはがんの進行に関連していた。 著者は、「全生存に差がないのは、最も一般的な死因である進行がんの患者が多かったという事実を反映している可能性がある。静脈血栓塞栓症の予防が死亡率の低減に結びつくのが理想だが、この課題に取り組むには、異なるデザインの、より大規模な試験を要するだろう」としている。

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アトピー性皮膚炎患者、皮膚以外の感染症リスク上昇

 アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚への細菌定着や感染の増加、皮膚以外の感染症の多数のリスク因子に関連している。しかし、ADが皮膚以外の感染症の増加と関連しているかどうかについては、これまでの研究では相反する結果が得られていた。米国・ノースウェスタン大学のLinda Serrano氏らはシステマティックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、AD患者は、皮膚以外の感染症リスクが高いことが明らかとなった。著者は「今後、これらの関連を確認し、その機序を明らかにする必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年11月21日号掲載の報告。 研究グループは、ADにおいて、皮膚以外での細菌感染およびマイコバクテリア感染が増加するかどうかを検討した。 MEDLINE、EMBASE、GREAT、CochraneおよびWeb of Scienceにおいて、AD患者に対する皮膚以外の感染症に関する、すべての比較対照試験を特定し、システマティックレビューを行うとともに、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。ただし、個々の情報は入手できなかった。 主な結果は以下のとおり。・7件の研究が選択基準を満たし、解析に組み込まれた。・7件すべてにおいて、ADで1つ以上の皮膚以外の感染症(心内膜炎、髄膜炎、脳炎、骨・関節の感染症、敗血症)の可能性が高まることが認められた。・メタ解析の結果、小児および成人のADは、耳感染症(オッズ比[OR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.16~1.43)、レンサ球菌咽頭炎(OR:2.31、95%CI:1.66~3.22)、尿路感染症(OR:2.31、95%CI:1.66~3.22)の発症と関連していた。・肺炎(OR:1.72、95%CI:0.75~3.98)とは、関連していなかった。・出版バイアスは検出されなかった。

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若年者に増加しているヒトパピローマウイルス陽性中咽頭がんに対する標準的放射線化学治療(解説:上村直実氏)-976

 中咽頭がんは頭頸部がんの1つで、日本では年間の罹患者数が数千人であるのに対して、米国では毎年5万人が罹患し1万人が死亡する疾患である。生命予後とともに嚥下や発生などの機能の温存が重要で、手術療法とともに放射線化学療法が用いられる機会が多いのが特徴的である。 近年、中咽頭がんの原因の1つとしてヒトパピローマウイルス(HPV)が同定された後、HPV関連(p16陽性)がんと非関連(p16陰性)がんに大別され、前者は後者に比べて若年者に多く、予後が良いのが特徴であり、罹患者が急増していることで注目されている。 HPV関連の中咽頭がんに対する低侵襲治療法の代表として、放射線治療+シスプラチンを用いる放射線化学療法が標準治療とされている。最近、EGFR阻害薬セツキシマブがシスプラチンと比較して副作用が少ない治療として注目されている折、2018年11月15日のLancet誌にHPV陽性中咽頭がんを対象とした放射線化学療法に関する同じ内容の多施設共同RCTの結果が報告された。研究された場所は北米(米国とカナダ)と欧州(英国、アイルランドとオランダ)で異なっているが、得られた研究結果はほぼ同様である。「放射線療法+セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに比べて重度の有害事象リスクには差がなく、生存率や再発率の延長に寄与しない」、すなわち「現時点では、HPV陽性中咽頭がんに対する放射線化学療法としては放射線療法+シスプラチンが標準レジメンである」との結論であった。 欧州と北米の異なる2つのグループが同時期に同様の臨床試験を行い、同じ結果を得た訳であるが、私が専門としているピロリ菌と胃がんの関連に関する世界初の疫学研究報告も、1991年の同じ号のNEJM誌に「ピロリ菌は胃がんの発生に関与している」との結果がスタンフォード大学とハワイ大学から同時に掲載された。さらに、低悪性度の胃MALTリンパ腫がピロリ菌の除菌により消退する研究結果が、1993年のLancet誌に英国とドイツから同時に報告されたことを思い出した。「世界には、同時期に同じアイデアを持って研究しているグループが最低でも3組ある」と言われた恩師の言葉が懐かしく思われた。 最後に、上部消化管内視鏡検査の際に、機器の発達に伴って咽頭や食道の観察精度が向上して、内視鏡的切除の対象となる上皮内がんとして発見される症例が劇的に増加していることは、日本独自の保険診療体制によることを強調したい。

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海洋由来オメガ3脂肪酸サプリの心血管疾患・がん1次予防効果に厳しい判定?(解説:島田俊夫氏)-978

 n-3脂肪酸(PUFAs)の摂取は心血管疾患・がん予防に好ましいとされてきたが、エビデンスに関しては必ずしもコンセンサスが得られていたわけでなく、議論の多いところである。この根拠の発端になったのが、グリーンランドのイヌイットに心筋梗塞が少ないとの報告1)である。これによりPUFA信仰が世界的に広がり、魚油、とくにその成分であるEPA、DHAなどがサプリとして広く普及し多くの人々に愛用されている。ところが、最近その効果に関して雲行きが怪しくなってきている。最近のビッグジャーナルに掲載された論文には、その効果に否定的な見解も多く見られるようになり、戸惑いが世の中に広がっている2)。2018年11月10日のNEJM誌に掲載された米国・Brigham and Women’s病院のManson JE氏らの論文は、無作為化二重盲検n-3脂肪酸群とプラセボ群との比較試験「VITAL試験」の結果報告であり、関心も高く時宜にかなっており私見をコメントする。研究要約 研究対象は米国の成人で参加者総数2万5,871例(n-3脂肪酸群:1万2,933例、プラセボ群:1万2,938例)であり、参加資格年齢は男性50歳以上、女性55歳以上とした。参加者平均年齢67.1歳、女性が51%で、5,105例(19.7%)の黒人参加者が含まれた。 ビタミンD3(2,000 IU/日)と魚介類由来のn-3脂肪酸(1g/日:EPA 460mg、DHA 380mg)を含む米国心臓病協会による心保護推奨用量(2次予防集団ですでに有効性確認されている用量)で介入が行われた。 研究は無作為化二重盲検デザインの「VITAL試験」として実施された。主要エンドポイント 心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合)およびタイプを問わない浸潤がん。副次エンドポイント 複合心血管イベントの各項目、複合心血管イベント+血行再建(拡大心血管イベント)、部位別がん、がん死など。 安全性も併せて評価した。 本論文は、n-3脂肪酸群とプラセボ群の比較結果を報告した。追跡期間は5.3年で主要血管イベント発生は、n-3脂肪酸群386例、プラセボ群419例(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.8~1.06)。浸潤がんは、n-3脂肪酸群820例、プラセボ群797例(HR:1.03、95%CI:0.93~1.13)と有意差は認めなかった。 主要なすべての副次エンドポイントのHRは、心筋梗塞以外すべてで有意差を認めなかった。 心筋梗塞のみHR:0.72(0.59~0.90)で有意であった。 全死因死亡(全体で978例)の解析では、HRは1.02(95%CI:0.90~1.15)と有意差を認めたが影響力は軽微。出血やそれ以外の有害事象に関しても両群間に差はなかった。執筆者コメント 本研究は明らかな病気がない50~55歳以上の成人を対象として、n-3脂肪酸サプリを1次予防に有効用量投与しメディアン5.3年追跡したが、少なくともこれまで言われていた好ましい効果を裏付ける結果を得ることができなかった。50~55歳の年齢集団を約5年間追跡したのは、追跡期間として評価するに十分な期間であったか多少疑問が残る。これまでも1次予防へのn-3脂肪酸の効果については議論の多いところであり、今回の本研究も有効性を認めなかったとの結果を素直に受け入れるべきではないか。投与量については十分量と言えるのか多少問題が残る。また、キーポイントはn-3脂肪酸の利用状況が酸化防止できていたか否かも気にかかる。n-3脂肪酸は不安定で酸化されやすいため、酸素との接触には特別注意が必要。結果がばらつく理由の中に酸化防止対策の問題はきわめて重要で見逃すわけにはいかない。 本論文の結果は、1次予防に関する研究成果に関しては失望を禁じ得ないと考える。しかし研究デザインのうえで多少検討の余地があると考える。

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30)リレンザ【手順編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、リレンザの吸入手順を説明します。手順としては、カバーを外し、白いトレーを引き出す→トレーを取り外し、穴に合わせてディスクを乗せる→トレーを本体に押し込む→★本体を平らに持ち、フタを垂直に立て、ブリスターに穴を開ける→フタを閉じる→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口をしっかりくわえる→下を向かず、背筋を伸ばし、勢いよく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→2回目の吸入は、もう一度トレイを引き出し、そのまま再びカチッと音がするまで押し込む→★から繰り返す→うがいをする(口中3回、喉の奥3回)→使い終わった薬をトレーから外し、捨てる→トレーを戻し、カバーを閉める

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1日1回1錠で他の抗HIV薬を併用する必要がない「オデフシィ配合錠」【下平博士のDIノート】第15回

1日1回1錠で他の抗HIV薬を併用する必要がない「オデフシィ配合錠」今回は、「リルピビリン塩酸塩/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩/エムトリシタビン配合錠(商品名:オデフシィ配合錠)」を紹介します。本剤は、3剤の抗ウイルス薬を配合した1日1回服用のヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染症治療薬であり、服薬率が治療の成否に関わるHIV治療において良好なアドヒアランスを維持することが期待されています。<効能・効果>本剤はHIV-1感染症の適応で、2018年8月21日に承認され、2018年9月20日より販売されています。HIV-1の逆転写酵素活性を阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。<用法・用量>通常、成人および小児(12歳以上かつ体重35kg以上)には、1回1錠を1日1回食事中または食直後に経口投与します。本剤は、空腹時に服用すると、リルピビリンの血中濃度が低下する恐れがあるなどの理由により、「食事中または食直後」となっているので、監査・投薬時には注意が必要です。<副作用>他剤によってウイルス学的に抑制されているHIV-1患者を対象として本剤に切り替えた海外第III相試験では、6.3~12.8%に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主な副作用は下痢、悪心、頭痛、鼓腸、不眠症、異常な夢でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.3種類の抗ウイルス薬でHIVの増殖を抑え、AIDS(後天性免疫不全症候群)の発症・進行を防ぐ薬です。2.飲み合わせに注意すべき薬や食品が多くあるため、現在服用している薬やサプリメントがある場合は、医師・薬剤師にお伝えください。また、新たに薬を飲み始める場合は、あらかじめ相談してください。3.抗HIV薬は、飲み忘れが繰り返されると、HIVが耐性を獲得して治療に失敗する可能性が高くなりますので、医師の指示どおりに毎日きちんと服用してください。4.抗HIV薬はHIV感染症を根本的に治す薬ではなく、ほぼ生涯にわたって治療を継続する必要があります。5.本剤服用後に、むくみ、尿量減少、全身倦怠感、過呼吸、手足の震え、意識障害などが現れた場合は、ただちに受診してください。6.母乳中に移行することが報告されているため、本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>HIV感染症は抗ウイルス薬を3~4種類併用する抗レトロウイルス療法(ART)が標準治療となっており、強力にHIVを抑制する「キードラッグ」1剤と、キードラッグを補足してウイルス抑制効果を高める「バックボーン」2剤を組み合わせるのが一般的です。本剤は、キードラッグとしてリルピビリン、バックボーンとしてテノホビル アラフェナミドフマル酸(TAF)とエムトリシタビンの3剤が含有されており、1日1回1錠の服用で他の抗HIV薬を併用する必要はありません。本剤は、既存のリルピビリン塩酸塩/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩/エムトリシタビン配合錠(商品名:コムプレラ配合錠)に含まれるテノホビル ジソプロキシルフマル酸(TDF)をTAFに置換した製剤です。TDFとTAFは、どちらもテノホビルのプロドラッグですが、TDFが血漿中で活性体であるテノホビルに変換されるのに対し、TAFは細胞内で変換されるため、テノホビルを効率的に感染細胞内へ送達できます。そのため、TAFは低用量でTDFと同等の抗HIV効果を示すことができると考えられています。TDFを含む抗HIV治療薬では、腎機能障害や骨密度低下について安全性の懸念がありますが、TDFをTAFに置き換えた本剤では、体内への暴露量が減ることなどにより、これらの副作用の軽減が期待されています。相互作用に気を付けるべき薬は複数あり、とくに注意が必要なのはプロトンポンプ阻害薬(PPI)です。PPIの胃酸分泌抑制作用によって胃内pHが上昇すると、リルピビリンの血中濃度が低下する恐れがあるため、併用禁忌となっています。同様の理由から、H2ブロッカーや制酸剤も時間をずらして投与する必要があり、他科からの処方薬やOTC薬にも念入りなチェックが必要です。近年HIV感染症の薬物療法は格段に進化し、適切な治療さえ行っていれば、もはや死の病とは言えなくなりました。しかし、アドヒアランスが非常に重要で、飲み忘れなく続けることが治療の成否に関わることを患者さんに十分に理解してもらうことが大切です。ガイドラインでもアドヒアランスの観点から、新規に治療を開始する患者さんでは1日1回投与の薬剤を積極的に選択するように記載されています。1日1回投与で他の抗HIV薬を併用する必要がない配合剤はすでに4剤発売されていますが、本剤はそれらよりも小さい薬剤であり、患者さんの負担の少ない選択肢が増えたことはHIV感染症の患者さんにとって大きな意義があるでしょう。

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日本人の血圧は意外とコントロールできていない

 生活習慣病のなかで最も罹患率の高い高血圧。これを治療するための有用な薬剤が普及し、世界的に治療率は改善している。ところが、日本人の高血圧のコントロール率はアジア諸国と比較してもまだまだ低く、高血圧パラドックスに陥っている。 2018年11月14日に日本心臓財団が主催する「高血圧パラドックスの解消に向けて‐脳卒中や認知症、心不全パンデミックを防ぐために必要なこととは?‐」が開催され、楽木 宏実氏(大阪大学大学院 医学系研究科老年・総合内科学 教授)が登壇した。日本の現状とAHA130/80のなぜ 命に直結するがん治療は常に注目の的である。しかし、高血圧もまた、高齢化に伴う心不全での死亡者が増加傾向にあり注目に値する。 「血圧値にはカットオフポイントが存在しない」と語る同氏は、EPOCH-JAPAN試験の血圧レベル別の心血管病死亡ハザード比と集団寄与危険割合(PAF)を示し、高血圧患者の心不全などによる死亡リスクの上昇について解説。このデータからも、どこからが血圧異常であるのかを区別することができず、治療対象の観点から「恣意的に高血圧の定義をしている」現状を指摘した。 日本と世界の血圧値の基準は、心血管病のリスクと治療介入の成績などを基に定義し、140/90と決められている。ところが、米国心臓病協会は昨年、基準変更を実施。世界基準から各値を10mmHgも下げ、“130/80mmHg以上を高血圧”と定義を改めた。これには、まだ分類を変えるほどの根拠の所在がそれほど明確ではないため、世界に衝撃を与えた。同氏は、「米国では降圧目標を原則130/80mmHg未満に改変した。一般にもわかりやすいように定義変更をしたと理解している」とコメント。「130~139/80~89mmHgの血圧カテゴリーを明確に“高血圧ステージ1”という表現にし、従来の高血圧基準である140/90mmHg以上は“高血圧ステージ2”という名称になった」ことも付け加えた。高血圧パラドックスへの対策 高血圧であることは、種々の疾患原因となり死亡リスクに結びつく。“日本での2007年の非感染性疾患および外因による死亡数への各種リスク因子の寄与(男女計)”のデータによると、喫煙に次いで高血圧の寄与は非常に高く、その数は11万人にも上るなど、心血管病への関連は圧倒的であった。また、心血管病が増加するとそれに伴い、脳血管疾患、認知症、骨折転倒など介護が必要となりうる状況に陥る。つまり、血圧管理を怠り続けると自覚症状がなかった状況から要介護状態へ転じてしまうのである。 そこで、高血圧抑制のために取り組むべき課題として、国民全体での血圧レベルの低下などが求められる。その成功事例には、食品表示においてNaから食塩相当量へ変更されたことがある。今ではお弁当などを購入してもひと目で塩分量がわかるようになったが、これは減塩委員会が企業に動きかけた結果である。食塩摂取量の低下もあって日本の高血圧有病率は女性では低下傾向を示し、男女ともに収縮期血圧の平均値が低下している。  今年9月には、伊藤 裕氏(慶應義塾大学腎臓・内分泌・代謝内科教授)を主導とする“高血圧学会みらい医療計画~JSH Future Plan~”が発表され、今後10年間で高血圧患者を500万人減らし、健康寿命を延伸させることが目標として示された。その実現に向け、医療システム、学術研究、社会啓発を3本の柱とし、活動が展開される予定だ。海外と日本では国民への啓発に差 米国では、国や米国心臓協会が主導となり国民向けの啓発ツールを多数排出している。これは、医療機関への受診とは別に、自身の血圧値やリスクを意識してチェックできる仕組みになっている。 日本の場合、意識付けができるのは医療機関受診者のみである。受診者には血圧手帳に血圧を記録することが勧められているが、同氏は、「一部には成績表の一種と勘違いして、良い血圧値だけを記録しているような場合もある」と述べ、「これを防ぐためにデジタル記録計の普及を目指す」とコメントした。 高齢化が進行する中、高齢者の高血圧に関する統合的レビュー論文が最近になって3編発表された。現在、同氏は高齢者の認知機能低下に配慮した最適な降圧療法の解明に取り組んでおり、「この分野に関する研究が不足するなか、リスクベネフィットに加えてコストベネフィットにも言及できる研究成果を期待したい」と締めくくった。■参考日本心臓財団■関連記事減塩したい患者さん向け、単身者でもできる作り置きレシピ発表

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脳卒中後の機能回復にfluoxetineは有効か/Lancet

 急性脳卒中患者へのfluoxetineの6ヵ月毎日投与により、うつ病の発症は低下するものの骨折が増加し、機能的アウトカムの改善は得られない可能性が、英国・エディンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったFOCUS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)fluoxetineによる脳卒中後の機能的アウトカムの改善効果を示唆する小規模なプラセボ対照試験の結果が報告されており、コクランレビューでは、SSRIは脳卒中後の機能障害を抑制する可能性が示唆されている。しかし、これらのデータだけでは、治療ガイドラインの改訂には十分でなく、便益と有害反応が相殺される懸念も軽減されないという。6ヵ月後の身体機能をプラセボと比較 本研究は、英国の103施設が参加したプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2012年9月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(英国脳卒中協会と国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に急性脳卒中と診断され、発症後2~15日の期間に無作為割り付けが行われ、割り付け時に神経脱落症状がみられた患者であった。 被験者は、fluoxetine 20mgまたはプラセボを毎日経口投与する群に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。主要評価項目は、修正Rankinスケール(mRS、0[無症状]~6[死亡])で評価された6ヵ月時の身体機能とした。 3,127例が登録され、fluoxetine群に1,564例(平均年齢71.2[SD 12.4]歳、女性38%)、プラセボ群には1,563例(71.5[12.1]歳、39%)が割り付けられた。うつ病、気分障害も12ヵ月後には有意差が消失 6ヵ月時のmRS分類の分布は両群でほぼ同等であった(0:fluoxetine群7%、プラセボ群8%、1:19%、20%、2:10%、10%、3:33%、33%、4:8%、8%、5:14%、13%、6:8%、8%)。最小化変数で補正した共通オッズ比(OR)は0.951(95%信頼区間[CI]:0.839~1.079、p=0.439)だった。 Stroke Impact Scale(SIS)の9項目(筋力、手の機能、移動、日常生活動作、記憶、コミュニケーション、感情、参加、回復)は、いずれも両群間に差はみられなかった。また、疲労(SF36の「活力」で評価、p=0.6726)および健康関連QOL(EQ5D-5Lで評価、p=0.5866)にも差はなかった。気分障害(Mental Health Inventory[MHI-5]で評価)は、6ヵ月時にはfluoxetine群で良好であった(p=0.0100)が、12ヵ月時には差はなくなった。 6ヵ月時に新たにうつ病と診断された患者の割合は、fluoxetine群が13.43%(210例)と、プラセボ群の17.21%(269例)に比べ有意に低かった(p=0.0033)が、12ヵ月時には群間差は消失した。一方、6ヵ月時の骨折の発生率は、fluoxetine群が2.88%(45例)と、プラセボ群の1.47%(23例)に比し有意に高かった(p=0.0070)。生存を含め、12ヵ月時の他の副次評価項目にも両群間に有意な差は認めなかった。 著者は、「これらの結果は、脳卒中後のうつ病の予防や機能回復の促進を目的としたfluoxetineのルーチンの使用を支持しない」としている。

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第2世代抗精神病薬と代謝変化に対する腸内微生物の役割

 第2世代抗精神病薬(SGA)の中で、代謝機能不全を誘発する薬剤がいくつか知られている。このような副作用の発現には、さまざまな要因が影響している。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのKarolina Skonieczna-Zydecka氏らは、SGAがディスバイオーシス(バランス失調)を引き起こすかの調査、腸内細菌叢の変化が体重や代謝に及ぼす影響の評価、動物やヒトを対象とした研究におけるSGA治療誘発性代謝異常のメカニズムについての検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年11月20日号の報告。 2018年7月3日までにSGAで治療された患者の微生物および体重変化について報告した研究を、データベース(PubMed、Medline、Embase、ClinicalTrials.gov、PsychInfo)よりシステマティックに文献検索した。 主な結果は以下のとおり。・マウス(8試験)およびラット(3試験)において報告された研究、7文献が抽出された。・オランザピンが5試験、リスペリドンが6試験に使用されていた。・ヒトにおいて報告された研究の3文献(4試験)のみが、リスペリドンおよび混合SGAの使用基準に適合していた。・バクテロイデス門と比較し、フィルミクテス門の増加が微生物の変化に直接的(げっ歯類5試験、ヒト4試験)または間接的(げっ歯類4試験)に影響を及ぼすことが確認された。これは、げっ歯類(8試験)およびヒト(4試験)における体重増加と同様であった。・オランザピンでは、げっ歯類における肥満、脂質生成、血漿遊離脂肪酸、酢酸塩レベルの上昇といった代謝変化(3試験)および炎症(2試験)の両方を誘発することが確認された。一方、リスペリドンでは、げっ歯類における安静時代謝率の抑制(5試験)、ヒトにおける空腹時血糖、TG、LDL、hs-CRP、antioxidant SOD、HOMA-IRの上昇が認められた(1試験)。・げっ歯類の研究において、体重に対するディスバイオーシスの性別依存的な影響が認められた(1試験)。 著者らは「抗精神病薬治療に関連する腸内微生物の変化は、体重増加や代謝異常に潜在的な影響を及ぼす。炎症や安静時代謝率の抑制は、代謝異常の発生に重要な役割を果たすと考えられる」としている。■関連記事オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析抗精神病薬の代謝への影響に関するランダム化比較試験

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麻疹ウイルスをベクターとしたチクングニアウイルスワクチンの免疫原性・安全性・忍容性(解説:吉田敦氏)-975

 チクングニア熱は、蚊媒介感染症として、いまや世界の大多数の地域に広まりつつある感染症である。以前にも増して大規模流行を来すようになっているが、これにはウイルスのエンベロープタンパク質が変異して媒介蚊であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)により適応できるようになったことと、地球温暖化によってヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の生息域が拡大したことが関与している。 チクングニア熱は急性熱性疾患であるが、治療法がなく、関節痛やうつ状態が後遺症として続く。一方、旅行者感染症としてウイルスを持ち帰り、帰国後に温帯地域の蚊に刺咬されることで、温帯地域の蚊がウイルスを保有することが大きな懸念となっている。実際に米国・欧州では媒介蚊が効率よくウイルスを増殖させる能力があることが判明しており、渡航者が増加している現在、その脅威も大きくなっている。このため自国内で伝播した例がないか厳重な監視が続いており1)、ワクチン開発は急務であるといえる。 今回検討されたワクチンは、チクングニアウイルスの臨床分離株の遺伝子を麻疹ウイルスベクターに導入したリコンビナント・弱毒生ワクチンである。フェーズ1で免疫原性、安全性が評価され、今回さらにボランティアを対象としたフェーズ2のランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われ、投与回数・スケジュールと含有ウイルス量の異なる複数のレジメンを比較し、プライマリーエンドポイントとして中和抗体の産生能が評価された。高用量で回数を増やすほど抗体獲得率は上昇したが、この抗体産生は麻疹ウイルスベクターには依存しないものであった。また副作用は軽微なもので、コントロールに比べ増加もなかった。 したがってフェーズ3の研究につながり、今後実際に臨床現場で、さまざまなウイルス株に対する有効性と、予防効果の持続期間が検討されることになろう。臨床応用に一歩近づき、有力な予防手段の候補が出現したといえるかもしれない。蚊媒介感染症のコントロール・制圧の難しさは年々増している。今後の速やかな研究の進展と評価・臨床応用に期待したい。■参考1)CDC. Chikungunya Virus. 2018 provisional data for the United States.

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MitraClipは低左心機能(HFrEF)に伴う二次性MR症例に有効(COAPT試験)(解説:許俊鋭 氏)-977

 MitraClip僧帽弁形成術の臨床的有効性に関する先行のEVEREST II試験は、僧帽弁逆流(MR)3~4度の症例を対象としたMitraClip僧帽弁形成術と外科的僧帽弁形成術との無作為比較試験(RCT)である。EVEREST II試験の1年後までの経過観察ではMitraClip群のMR軽減効果は低く、MitraClip群では残存MRに対して外科的再修復をより高率に必要とした。しかし、その後の1~5年の経過では両群ともに外科的再修復を必要とした頻度は同程度に低く、死亡率にも有意差はなかったものの、MitraClipの外科手術に対する著明な有効性は示せなかった。 本試験(COAPT試験)は、より予後不良な二次性MRを伴うHFrEF症例を対象とした、MitraClip僧帽弁形成術群と単独内科治療群のRCTである。対象は米国とカナダの78施設でガイドラインに沿った最大限の内科治療が行われているにもかかわらず、中等度〜重度または重度の二次性MRが持続した心不全患者である。患者は無作為に、MitraClip僧帽弁形成術+内科治療(デバイス群)または単独内科治療(対照群)に割り付けられた。主な効果エンドポイントは、追跡調査24ヵ月以内の心不全入院。主要な安全性のエンドポイントは、12ヵ月間のデバイス関連の合併症回避率(事前に設定されたデバイス関連の合併症回避率達成目標は88.0%である)。対象とした614人のうち、302人がデバイス群、312人が対照群に割り付けられた。24ヵ月以内の心不全入院は患者1人年当たり、デバイス群では35.8%、対照群で67.9%であった(p<0.001)。12ヵ月後のデバイス関連の合併症回避率は96.6%であり、安全達成目標は達成された(p<0.001)。24ヵ月以内の全死因死亡率は、デバイス群で29.1%、対照群で46.1%(p<0.001)であった。症候性の中等度〜重度または重度の二次性MRを合併した心不全に対して、MitraClip僧帽弁形成術は単独内科治療に対して24ヵ月以内の心不全入院率と全死因死亡率を低下させた。12ヵ月後のデバイス関連の合併症回避率は、事前に設定された安全達成目標を上回った。 COAPT試験では、デバイス群は対照群に対して2年間の死亡率を17%削減していて、これまでHFrEFに起因したMR症例に対するこれほど有効な治療法はACE阻害薬以外報告されていない。しかしながら、2018年8月にObadiaにより報告されたMITRA-FR試験(ESC Congress Munich 2018)では、重度の二次性MRを伴った心不全患者において、単独内科治療とMitraClip僧帽弁形成術+内科治療を比較したが、1年の死亡率および心不全による予定外の入院率を低下させなかった。このように二次性MRを伴うHFrEF症例を対象としたRCTであるCOAPT試験とMITRA-FR試験では異なった結果が出ているが、この差異については慎重な検討が必要である。経過観察期間に1年と2年の差があり、MITRA-FR試験でも1年以降の経過観察でMitraClip僧帽弁形成術の効果が顕著に表れ、1年以降にMitraClipの有効性が示される可能性はある。一方、HFrEFに伴う二次性MR症例に対するMitraClip僧帽弁形成術と外科的僧帽弁形成術の長期成績に関するRCTによる検討も待たれるところである。

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神様からひと言【なぜクレームするの?どう応じれば良いの?(断るスキル)】

今回のキーワードクレームの心理クレーム対応断るスキル親身受け身捨て身みなさんは、クレームにどう応じて良いか困ったことはありませんか? 病院、学校、役所などの公的機関の現場では特に、「自分だけ待たさないで」と過剰に公平扱いを求めたり、逆に「そこを何とかお願いできませんか?」と気軽に特別扱いを求める患者、保護者、利用者の方が目立つようです。彼らには、どんな思いがあるのでしょうか? どう応じるのが正解でしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「神様からひと言」を取り上げます。この映画を通して、クレームの心理とその対応を整理して、断るスキルをいっしょに考えてみましょう。なぜクレームするの?―クレームの心理主人公の佐倉は、中堅食品会社に転職して早々にお客様相談室に異動させられます。そこで次々とかかってくるクレーム電話に奮闘します。その中の3つのケースを通して、まず、クレームの心理を3つに整理しましょう。(1)謝ってほしいだけ1ケース目は、「お宅のラーメン買ったんだけど、焼き豚が入ってない」「写真にはちゃんと入っているのに」とのクレームです。佐倉は、「パッケージの写真はあくまで調理例です」「通常はみなさん、分かって購入されてますけど」ととっさに答えてしまいます。すると、客は「通常?」「つまりおれは通常じゃないってことか?」「バカって言いたいの?」と怒り出したのでした。1つ目は、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」という理解や謝罪を求める心理です。そこには、確かに勘違いをしてしまったのは自分だけど、そもそも客に勘違いをさせる会社も悪いという思いがあります。特に、すぐにひどい目に遭ったと思い込みやすい人(妄想性パーソナリティ)や、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)に多いです。(2)話がしたいだけ2ケース目は、「新しいラーメンの味がおかしい」「これね、絶対に変」「私の舌がおかしいってこと?」「私はまだボケてなんかいませんよ」「あなたご自分で食べてみた、このラーメン?」「あなたお名前は?」との高齢の女性らしき人からのクレームです。2つ目は、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」という暇つぶしやお節介をしたがる心理です。そこには、「正論を言いたい」「お説教をしたい」「世直しをしたい」という思いもあります。よって、その特徴は、「態度が悪い」「説明が分かりにくい」などにも及び、内容が抽象的であることです。特に、最近目立つのは、高齢者のクレームです。クレームを付けること自体が目的化してしまい、解決することが目的にはなっていないことがあります。そして、しつこくて時間がかかります。その理由として、彼らが、定年退職の後や、子どもが成人して家を出た後に、ほかにすることがなく、話し相手がいなくて、エネルギーや時間を持て余していることが考えられます。(3)得したいだけ3ケース目は、「おまえんとこのらっきょうに虫が入ってやがったんだよ」「どうすんだ!え!」「責任とれ!」との怒気を帯びたクレームです。そして、訪問謝罪の上、謝罪金を要求してきます。3つ目は、「得したい」「コントロールしたい」という優遇やうさ晴らしを求める心理です。この特徴は、金品の要求から、役所で「特例として認めてください」との特別扱い、さらには病院で「あの研修医をクビにしてください」、学校で「いじめ加害者にもっとペナルティを課してください」との無理難題まであります。2つ目の「話がしたいだけ」の心理とは対照的に、言葉尻を捉えて圧をかけてくるなど目的のために手段を選ばず、短期戦を望む傾向があります。どう応じれば良いの?―クレーム対応佐倉は、毎回クレームに戸惑いながらも、先輩の篠崎からその対応を教わっていきます。その極意を3つのステップに整理してみましょう。(1)寄り添うー親身1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームに対して、篠崎は佐倉から引き継いで、すぐさま「誠に申し訳ございません」「鋭いご高察、感服致しました」「私もどうかと思っておりました」「単身赴任?」「私も妻と別居中」「一人暮らしは骨身に染みております」「お互い、逆境にめげずにがんばりましょう」と丁寧に答えます。1つ目のステップは、相手の気持ちに寄り添う、つまり親身になることです。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 謝る1つ目は、まず謝ることです。ただし、平謝りするのではないです。それをやってしまうと、完全に責任をとることを認めることになります。そうではなくて、「お手間」「ご不便」「ご不快」に限定して謝ることです。そうすると、責任を問われても、「お手間をとらせたことについては申し訳ない気持ちでいっぱいです」「ご要望の点についてはこれから詳しくお聞きします」と返せます。それでも、「責任とれ!」「誠意を見せろ!」と言い続ける相手は、悪質であることが分かります。つまり、まずこちらが先に謝って相手の出方をうかがうことで、悪質かどうかが分かります。そして、今後のこちらの出方の参考になります。b. 共感する2つ目は、共感することです。例えば、「ごもっとも」「お察しします」「なるほど」「そうだったのですね」「おつらいですね」「ご心配になりますよね」などの気持ちを汲んだ言葉かけをすることです。脳科学的な男女差で言うと、女性の方がより共感的な傾向があるので、相手が女性の場合は、よりこの共感に重きを置き、話をよく聞いて時間をかけると良いでしょう。c. 理解を示す3つ目は、理解を示すことです。例えば、「○○というご負担(ご心配)があったのですね」と具体的にどういうダメージが物理的にも心理的にもあったのかに触れて、相手のことを良く理解していることを伝えることです。脳科学的な男女差で言うと、男性の方がより理屈っぽい傾向にあるので、相手が男性の場合は理解を示すことにより重きを置くと良いでしょう。d. 謝って済む問題にするこのように、謝る、共感する、理解を示すという3つのポイントを押さえた親身のステップをまず踏むと、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、謝って済む問題に持ち込むことです。逆にこれを最初にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には謝って済む問題ではなくなります。書面の対応を求められるなど、腹いせや嫌がらせに発展するリスクが高まります。また、親身のステップで言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、謝ったことにはならないからです。e. 病院へのクレームで応用するとこの対応を病院でよくあるクレームに応用してみましょう。それは、予約制の外来で患者を待たせた場合です。従来は、患者から「いつまで待たせるの?」と言われたら、医療関係者は「順番でお呼びしていますから」「緊急の患者様が優先になりますから」といきなり一般論を言って、素っ気なく答えていました。そうではなく、患者から言ってこなくても、まずこちらから挨拶代わりに「お待たせしてすいません」と適宜伝えることです。そして、10分以上待たせると「○分以上お待たせして」を添え、「具合が悪くなりませんでしたか?」と聞くとより好ましいでしょう。30分以上待たせた場合は、声を潜めて、泣きそうな顔をして、申し訳なさを示すのも好ましいです(レッドフェイス効果)。この対応は、診察する医師がするとより良いです。すると、患者は、「しょうがないですよね」「先生も大変ですよね」と理解を示してくれます。f. 親身のステップの時間は?ただし、クレーム対応の場合の親身の時間は、最初の15~30分以内とします。なぜなら、ほとんどのクレームは、15分~30分以内でだいたいのことが把握できて親身に対応できるからです。ポイントは、この時間内で事態を収拾できるかどうかです。1~2時間以上だらだらとやらないことです。よって、15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「すいません。今ここではこれ以上の対応が難しいです」「このアンケート用紙にご要望をお書きください」「とても込み入ったお話に思われますので」「大事なお話なので」「のちに文書でお返事するか、もう一度お話を伺う日程の調整を行います」「どちらが良いですか?」と言い、切り上げます。そして、以下のようなアンケート用紙に記入してもらい、次のステップに進みます。アンケートは、提案書というタイトルで、内容と解決案を具体的に書くようにします。要望書とはしないです。要望ではなく、あくまで提案という認識を持ってもらうためです。また、書いてもらうことで、相手に客観視を促す狙いもあります。ちなみに、電話対応の場合も基本的に窓口対応と同じです。15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「誠に申し訳ございません。電話ではこちらからうまくご説明するのが難しいようです」「アンケート用紙をファックスか郵送でお送りします」と伝えて、後日の文書のお返事か、話し合いの日程調整を行います。(2)動じないー受け身2ケース目の新商品のラーメンの味がおかしいとのクレームに対して、実直な佐倉は素直に「実は(ラーメンは)まだ(食べていない)です」「申し訳ございません」「(名前は)佐倉です」と答えます。そして、親身になって話を聞き続けます。その対応を受けて、高齢の女性は、「正直な方ね」「久しぶりに誠実そうな方と話せて、何だかほっとした」と感心するのでした。2つ目のステップは、揺さぶられても動じない、つまり受け身です。親身になると、クレームがエスカレートするリスクに触れました。だから、ここでは、それでも柔道の受け身のように動じない。あたふたしないことです。あたふたすると、「頼りない」「弱そう」とつけ込まれます。ただし、多くのケースでは、親身のステップを最初に経ていると、相手が友好的になり受け身がしやすくなります。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 時間をかける1つ目は、時間をかけることです。例えば、「何とかなりませんか?」と食い下がっている場合、一般論を盾に「規則です」「期限は守ってください」とすぐに突っぱねないことです。つまり、まだ一般論は封印します。代わりに、「うーん、どうでしょうかねえ」「難しいかもしれないですねえ」と、のらりくらりと否定的であることを匂わせ、相手の出方をうかがいます。それでも食い下がってくるなら、「私一人では判断が難しいご相談です」「今ここでお答えすることができないご相談です」「持ち帰って、全体の会議で検討します」と伝えて一旦終了とします。そして、次の面談でやんわりだめだったと伝えます。そうすると、「時間と人数をかけた」「それでも難しかった」というメッセージが伝わり、より相手に受け入れやすくなります。もちろん、実際に「全体の会議で検討する」必要はないです。会議をしたというメッセージが相手に伝われば十分です。b. 受け流す2つ目は、受け流すことです。例えば、「今ここで決めていただくことができないのですか?」「先生じゃ頼りないです」と挑発的に迫られた場合、「だめなものはだめです」と言って、熱くならないことです。むしろ、「困りました」「情けないです」「苦しいです」と受け流します。たとえ「時間通りに患者を診れないんですか?」「それでも医者ですか?」と怒鳴られたとしても、熱くならず、「はい…面目ない…」としんみり答えます。1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームで、佐倉は「おい、責任者出せよ」と迫られ、すぐに篠崎に代わるシーンがあります。あとで篠崎は、「責任者と代われと言われて、そう簡単に代わらない」「あくまでも自分が責任者だという態度で対応する」「ただし自分で責任をとるって絶対に言っちゃいかん」「責任を持って伝えます」「ここ最重要ポイント」と佐倉に指導します。責任者をすぐに出さない理由は、もちろん動じないことを示すためです。そして、そもそも責任者は当事者ではないので、状況がよく分からず、逆に混乱を招くリスクもあるからです。c. 受け止める3つ目は、受け止めることです。例えば、「研修医の態度が悪い」「説明が分かりにくい」と抽象的な正論を振りかざす場合、「そんなことはないです」と反論しないことです。逆に、「おっしゃる通りです」「ご指摘は大変に勉強になりました。ありがとうございます」と受け止めます。「その研修医にはしっかり言い聞かせ、今後に生かすよう、十分に指導して参ります」とも言えます。抽象的なことを話し合っても、結論は出ないです。話し合いに乗るのは、具体的な要望に限定します。具体性のないクレームは、実は適当にあしらうことができるのです。もちろん、その研修医に確認をとって態度に問題がなければ、「しっかりと言い聞かせる」必要はないです。厳重注意したというメッセージが患者に伝われば十分です。d. 話を聞くだけで済む問題にするこのように、時間をかける、受け流す、受け止めるという3つのポイントを押さえた受け身のステップをまず踏むと、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、話を聞くだけで済む問題に持ち込むことです。逆にこれを十分にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には話を聞くだけで済む問題ではなくなります。たびたび押しかけてきたり、具体的な対応策などを書面で求められるなど執拗なクレームに発展するリスクが高まります。また、受け身のステップでも言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、話を聞いたことにはならなくなるからです。e. 病院へのクレームに応用するとこの対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身のステップを経ても、納得されない場合です。「予約システムがそもそもおかしい」「医者の数を増やすべきだ」「急患も順番を待つべきだ」とその患者から言われたら、どうしましょう?従来は、つい「予算的に無理です」「人道的にだめです」といきなり一般論で反論していたでしょう。そうではなく、「『医者を増やす』『急患も順番を待つ』という貴重なご意見をありがとうございます」「今後に上層部に進言してみたいと思います」と伝えることです。患者は、自分の意見が上層部まで取り上げられると思い、まんざらでもないと思うでしょう。f. 受け身のステップの時間は?ただし、受け身の時間は、1時間以内で3回までを目安とします。ポイントは、延々と話し合いをしない、つまりある一定期間には終わらせることです。よって、一定期間を過ぎても、相手が納得しない場合は、最終ステップに進みます。(3)突き放すー捨て身らっきょうの瓶に虫が入ってたという3つ目のクレームに対して、佐倉は、お客様相談室の室長から「訪問謝罪の場合は、手みやげのほかに一律2万円お渡しする決まりです」と言われ、「それってたかってくれって言ってるようなもんじゃないですか!?」とびっくりして言います。実際に、佐倉と篠崎は、訪問謝罪に伺った時、客から「きっちり詫び入れるまで、帰さねえから覚悟しとけよ」と恫喝されます。確かに、営利のビジネスの現場なら、客の過剰なクレームでも、返品交換、クーポン券、サービス券、優待券、航空機のシートのアップグレード、そして和解金を渡すなどできる限りの特別扱いして、顧客満足度を上げるのも1つのやり方でしょう。逆に、特別扱いをしてもしなくても、客が納得しないなら、取引中止や出入禁止にするなどして、それ以上相手にしないのも1つのやり方でしょう。しかし、医療、学校、役所などの公的機関は違います。なぜなら、公的機関は、公平性と公共性があるからです。公平性の観点から、優遇するなど特別扱いはできないです。また、公共性の観点から、広く開かれて誰でも利用できることが前提で、相手にしないわけにはいかないです。では、どうしましょうか?3つ目のステップは、先ほどまで築いてきた関係は損なわれるとしても突き放す、つまり捨て身です。ようやくこのタイミングで、要望に応えることが難しいと伝えます。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 限界を示す1つ目は、限界を示すことです。例えば、役所で「特例として認めてください」、病院で「あの研修医をクビにしてください」と無理難題を吹っかけてくる場合、「私どもにもできることとできないことがあります」「役所(または病院)の方針として」「社会通念上」「役所(または病院)の最終決定として」「総合的な判断によって」「対応が難しいです」「お気持ちはごもっともですが」「こちらとしても残念ですが」「私たちも決まりに従わなければなりません」「何とぞご理解いただけますようよろしくお願いします」などと伝えます。なお、限界を示すメッセージのポイントは3つあります。1つ目は、組織として公正・公平の原則に則った社会規範に従っており、相手も自分もルールを守るという意味では、同じ立場にあることです。つまり、ここでようやく、これまで封印していた一般論を解禁できます。2つ目は、組織として十分に検討した結果であることです。つまり、決定の根拠には組織のほかのメンバーの賛同があるということです。3つ目は、組織としての最終決定であることです。つまり、話し合いは終わりであるということです。b. 取り合わない2つ目は、取り合わないことです。例えば、「この事実をSNSで拡散させますよ」と悪評をほのめかしたり、「人権委員会に訴えます」「警察に通報します」と脅し文句で迫ってくる場合、「それは残念です」「ご納得いただけないのはとても残念です」「ただ、私どもがとやかく言える立場ではありませんので、致し方ないです」などと伝えます。逆に、事を荒立てたくない余りに、「それだけは止めてください」と言うと、どうなるでしょうか? 言うことを聞くと言う流れになってしまいます。すでに、こちらとしては、社会通念上のベストを尽くしたわけですので、怯えることはないです。ここは「暖簾に腕押し」「糠に釘」の、のらりくらりのスタンスで行きましょう。c. お引き取り願う3つ目はお引き取り願うことです。例えば、「分かりましたというまで、帰りません」と居座る場合、「お引き取りください」「これ以上は業務の支障になり、困ります」と伝えます。たとえ「私のことより、業務が大事なんですか?」と言い返されたとしてもです。それでも居座る場合、「これ以上のお話ですと、しかるべき対応をとらざるを得ないと考えております。ただ、本意ではございませんので、何とぞご理解をいただけると助かります」などと警察への通報をほのめかして警告します。こう言われて帰らない人は普通じゃないです。もし帰らないなら、本当に警察へ通報するべきです。ちなみに、3回言っても、従わない場合は、刑法の不退去罪が成立します。よって、居座りに付き合う必要は全くないです。なお、居座りを事前に回避する策としては、話し合いの終了の時間を、先ほどの提案書で事前に決めて、記載しておくことです。ただし、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)の場合、「どなたかほかのご家族といっしょに再度お越しいただけますでしょうか?」と伝え、話の分かる人を介することもできます。それが難しい場合、もちろん警察保護という流れになります。また、ケースとしてはまれですが、「あなたバカなんですか?」「土下座してください」「死んだら!」と暴言を吐いたり、大人数で押しかけてくるなど恫喝をしてくる場合、「とても怖いです」と伝えます。そして、できるだけ多くのスタッフを集めて、立ち会ってもらいます。暴力のリスクもあるため、数で圧倒して、安全を確保する必要があります。ちなみに、暴言を繰り返す場合は刑法の脅迫罪、土下座の強要は強要罪が成立します。逆に、何とかその場を収めようとして、「まあまあまあ」となだめたり、言われるままに土下座をすると、どうなるでしょうか? 言うことを聞くという流れになります。絶対に、恫喝の手に乗らない冷静さも必要です。なお、暴言や大人数での押しかけによる恫喝を事前に回避する策として、2つあります。1つは、複数体制です。3人が理想です。1人目は直接の対応、2人目は記録係、3人目は控えで、いざという時に人を呼ぶ係です。もう1つは、相手の参加人数の制限を、先ほどの提案書で事前に決めておくことです。例えば、「部屋の大きさの都合上、参加人数は3人までです」と記載します。最後に、いきなり怒鳴り込んできた場合はどうしましょうか? まず、人を呼び、速やかに場所を変えることです。決してその場で話を始めない、つまり一人で丸腰で臨むことは避けます。これは、恫喝への対応と同じ理屈です。そして、やるべきことは、同僚たちで本人を取り囲んで、面会室や応接室までの移動の数分間に、歩きながら「お忙しい中わざわざすいませんねえ」「こんなお天気が悪い日に良くない日にわざわざ」などと無関係な雑談をすることです。このように、興奮してる人には本題をそらして親身のステップをまず滑り込ませます。こうして、場所と話題を変える場面転換によって、クールダウンを図ります。そうするのは、一時的に興奮してしまっただけの場合もあるからです。ただし、それでも興奮が治まらない場合や最初から酔っ払っている場合、「今日のところはお引き取りください」「日を改めましょう。次回にこのアンケートに記入の上、ご持参ください」と伝えます。時間を変える場面転換もします。それでも、帰らない場合は、先ほどの警察へ通報の流れになります。なお、大声を上げる、机を叩く、ドアを蹴る場合は、刑法の威力業務妨害罪が成立します。ちなみに、電話対応の場合も窓口対応と基本的に同じです。「これ以上の対応が難しいので、一旦電話は切らせていただきます。それでは失礼致します」と伝えて電話を切ります。なお、電話対応のメリットは、録音機能を付けることができる点です。「サービス向上のため」という理由付けをして、多くの企業では採用されています。録音されているという状況は客観性を生むので、こちら側も言葉を慎重に選び、お互いが冷静に話し合いをすることができるでしょう。何より、「言った、言わない」の水掛け論はなくなります。録音アナウンスの存在を知らせるだけで、クレーム電話が減ったとの報告もあります。d. 手詰まり感に持ち込むこのように、限界を示す、取り合わない、お引き取り願うという3つのポイントを押さえた捨て身のステップを最後に踏むと、「得したい」「コントロールしたい」と思っている人も、完全に納得に至らないにしても、「どうしようもない」とあきらめて引き下がります。つまり、手詰まり感に持ち込むことです。これが、落としどころです。また、親身と受け身のステップで言ってはいけないとした一般論は、捨て身のステップでは、十分に言うべきことに変わります。e. 病院へのクレームに応用するとこの対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身と受け身のステップを経ても、納得されない場合です。「待たされて具合が悪くなった。慰謝料払ってください」とその患者からしつこく言われたら、どうしましょう? 先ほどの限界を示す決まり文句を言いましょう。ちなみに、慰謝料や迷惑料の要求をする場合は、刑法の恐喝罪が成立します。f. 捨て身のステップの時間はただし、捨て身の時間は、1時間以内で最後で1回のみとします。ポイントは、最終的な結果を伝えるだけですので、もはや話し合いの余地はないことです。断るスキルとは?ところで、みなさんの中には、最初から毅然とした態度で接していないと、クレームがエスカレートしてしまうという懸念を持たれている方はいませんか? 確かに、毅然とした態度は、国際空港の税関なら良いでしょう。取り締まるだけのところだからです。しかし、病院、学校、役所は、取り締まるだけのところではないです。サービスを始めコミュニケーションを続けるところでもあります。進化心理学的に言えば、人間が、ほかの動物と決定的に違うことは、相手のクレームを受け入れたり断ったりしながら、協力関係を築くこと、つまり社会脳を進化させたことです。その社会脳によって、高度な社会を築き、文明を発展させました。そして、昨今のコミュニケーションに重きを置かれる社会では、クレーム対応に、コミュニケーション能力の集大成が求められるとも言えるでしょう。もっと言えば、クレーム対応をはじめとする断るスキルで重要なことは、まずこちらが相手の気持ちに寄り添いつつ、揺さぶられても動じない、時として最終的にはその協力関係は損なわれるとしても突き放すという押し引きのバランス感覚であると言えるでしょう。まさにこれが、親身、受け身、捨て身のステップです。「神様からひと言」とは?重役会議のシーンでは、毎回「お客様の声は神様のひと言」との社訓を一斉に唱えています。ラストシーンの重役会議では、佐倉は、名店とされるラーメン店の味をそのままカップ麺にしようとする安易な会社の方針に疑問を持っていました。そんな佐倉は、重役たちに「本店に行って参りました」「(出されたラーメンが)恐ろしくまずい」「今のは、私の率直な感想です」「純粋に金を払った客としての正直な気持ち」「いわば『神様からのひと言』です」と言い放ちます。「神様からひと言」とは、まさに「神様」の視点で自分自身を俯瞰して見ることとも言えるでしょう。その時に導かれる「ひと言」をよく理解した時、私たちは、より良いクレーム対応、そしてより良いコミュニケーションができるのではないでしょうか?1)神様からひと言:萩原浩、光文社文庫、20052)クレーム対応「完全撃退」マニュアル:援川聡、ダイヤモンド社、20183)小心者でもサラリとかわせる「断る」心理テクニック:内藤誼人、ゴマブックス、2006

19977.

第9回 QRS電気軸で遊ぼう~トントン法の魅力~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第9回:QRS電気軸で遊ぼう~トントン法の魅力~QRS電気軸が「正常軸」か「◯軸偏位」かについては、I誘導とaVF(またはII)誘導のQRS波の「向き」だけを見れば説明可能でしたね。今回の問題となる「角度は何度か」については、そこから少し工夫するだけで求めることができるため、ちょっとした“ゲーム感覚”で楽しいですよ。電気軸の本質に近づく、そんなレクチャーをDr.ヒロが提供します。症例提示47歳、女性。不定期の胸痛を主訴に来院。安静時心電図を以下に示す(図1)。(図1)受診時心電図画像を拡大する【問題】心電図のQRS電気軸は何度か?解答はこちら+30°(または自動診断の+35゚)解説はこちらQRS電気軸に関する定性的な議論であれば、I誘導とaVF(II)誘導のQRS波の「向き」に着目すればカンタンです。右軸・左軸偏位の頭の整理法も含めて前回述べました(第8回)。図1も、I、II、aVF誘導のQRS波がいずれも上向きなので、「正常軸」となりますね。でも、今回の問題では“何度か?”と尋ねられています。そんな時はまず、心電計にお伺いを立てましょう。上の自動診断の欄を見ると「軸:35度」となっているので、これを丸々写しても正解とします。今回は、心拍数のオリジナル計算法(検脈法:第3回)と同様に、定規もコンパスも計算機もなーんにも使わなくとも、己の頭だけで電気軸のおおまかな数値が言えるよ、というやり方を伝授しましょう。今回、ボクが紹介する方法を“トントン法”と名付けています。『またふざけたネーミング…(怒)』なんて言わないで。この手法を使えば、キチンと数値でQRS電気軸が言えるようになります。もともと難しいと敬遠されがちな電気軸の話なので、あまり考え込まずに“ゲーム感覚”で捉えましょう。何でもそうですが、心電図も各所で楽しむことが長く続けるコツだと思います。まず、次の図で説明します(図2)。図中のカメラ片手の宇宙人を自分の目線と考えてください。この宇宙人、ボクの大のお気に入りで今後も各所で登場します(笑)。(図2)心電図波形描写の基本事項画像を拡大する杉山 裕章. 心電図のみかた、考えかた[基礎編]. 中外医学社;2013.p.54.を改変心臓は、電気の流れ(刺激)を収縮(興奮)が後追いします。ボクが常々大切だと思っていることの一つに、「誘導は視点と言い換えよ」というものがあります。そして、心電図の基本ルールでは視点(誘導)に興奮が向かってくる時に、その誘導(視点)は上向き(陽性)の波として描かれます(図2、A点)。逆に、電気を見送る(離れていく)側なら、完全に下向き(陰性)の波となります(図2、B点)。これが「単極誘導」の考え方になります。では、電気興奮の流れと垂直方向かつ中点であるC点での波形はどうなるか、考えてみてください。最初の半分は興奮が近づいてきて、残り半分は遠ざかっていきますでしょ?…すると、時間経過も加味して前半が「上向き」、後半が「下向き」の波形となりますが、A点とB点のちょうど真ん中がC点ならば、両者の波の高さ・深さが同じになるはず。つまり“トントン”なんです。実は、これがトントン法のミソ、というか、逆転の発想をしようということなんです。実際のやり方は、今回の問題の心電図(図1)を使って解説します。電気軸ですから、方向性に強い肢誘導に注目するのは変わりません。上からザーッと見て“トントン”になっているQRS波を探すのです。すると…ありますでしょ。この症例ではIII誘導が該当します(図3)。基線に対して上向き(R波),下向き(S波)とも4mmちょっとの波となっています。(図3)症例のIII誘導を抜粋画像を拡大するこの部分を“トントン・ポイント(略してTP)”と、ボクは言っています。これに出くわすと、嬉しくなるのはボクだけ?これを“肢誘導の世界”で考えてみましょう。円座標で表現される心臓の前額断、だいぶ見慣れましたか?I誘導が±0゜で、II、III誘導はおのおの60°、120°と時計方向に回った場所でした(第8回)。この場合のTPはIII誘導ですから、「+120°」となるわけです(図3)。TPさえわかったら、もうひと頑張り。“ゴール”は近いですよ。(図4)“トントン法”によるQRS電気軸の求め方画像を拡大する先述の基本事項(図2)を意識して下さい。心室興奮が向かう方向(QRS電気軸)は、TPであるIII誘導(+120°)に垂直な矢印A(+30°)ないし、その正反対の矢印B(-150°)となります。さあ、正解は一つ。さて、どちらでしょう?それはI誘導が教えてくれますよ。これはイチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)チームの一員で、心臓を真左から観察する誘導でした。心電図(図1)では、I誘導のQRS波はバッチリ上向き(陽性)です。つまり、全体的な心室興奮はI誘導に近づいて来ているはずで、矢印Aか矢印Bで選ぶなら左向きな前者の「+30°」が“真の方向”となります。これでQRS電気軸の方向が求まりました。最後にトントン法の概略をまとめておきます。■トントン法によるQRS電気軸の求め方■1)“方向性”に強い肢誘導のQRS波に着目する2)“トントン”(上向き波≒下向き波)となっている誘導(TP:トントンポイント)を探す。3)TPに直交する2方向のいずれかが真の電気軸で、I誘導などのQRS波の向きがうまく説明できるほうを選択する。さて、どうでしたか? トントン法って、なんだかゲームみたいでしょ? 細かいことがわからなくても、なんだかビシッと当たると嬉しくないですか? もしも、上下トントンの誘導が見当たらない場合、上向きと下向きの差が一番小さい誘導を“仮TP”として同じ議論をしてください。補足ですが、第8回で「正常軸」と判定した心電図の電気軸もこの考え方を使えば、TPであるaVL誘導(-30゚)を見て「+60°」と求めることができますよ(自動計測は“57度”となっています)。このように、肢誘導の世界は各誘導が“30°刻み”であり、おおむね電気軸も30°単位で求めることができるので、皆さんもぜひ試してみてください。かつて、ボクがP波も何もわからなかった時期、一章まるまる電気軸の求め方に割いた英書の日本語訳本を持っていました。残念ながら、卒業・転居そのほかに紛れて、その本は現在、ボクの手元にはありません(現在は絶版となっている様子)。ただ、この本での基本が頭に鮮明に残っていて、“トントン法”という愛称をつけて、皆さんにわかりやすく紹介することにしました(日本でもよく読まれているMarriottの心電図テキスト*でも、簡潔な既述ながら同様の方法が紹介されています)。でも、オリジナルの方法に何か少ーし物足りなかったDr.ヒロは、トントン法を改良し、もう少し細かい議論ができる“トントン法Neo”を完成させました。第11回で紹介しますので、乞うご期待!(*Wagner GS, et al. Marriott Practical Electrocardiography 12th ed. Philadelphia:Lippincott Williams & Wilkins;2013.p.54-57.)Take-home Message1)“トントン法”を活用すればQRS電気軸(角度)は自分でも求めることができる。2)“遊び心”が心電図の勉強を楽しくする!【古都のこと~善峯寺~】西国三十三所の第二十番、善峯寺(山号:西山)は、平安中期の長元2年(1029年)開山で、言わずと知れた紅葉の名所です。この素敵な紅葉に出会うには、広大な敷地を足で稼がねばなりません。周遊途上で遭遇する遊龍の松や幸福地蔵、桂昌院(徳川綱吉公の生母)ゆかりの品々…紹介に値するものが多く、1枚の写真では到底表現できません。さらに、京都市街の眺望が圧巻だったこと! 市内の観光スポットとはまた異なる秋の趣が、筋肉痛とともに心身に刻まれました。

19978.

第18回 POSからGOSに切り替えよう【週刊・川添ラヂオ】

動画解説患者さんが持つ医療上の問題に焦点を合わせ、一つひとつ問題の解決を行っていく問題志向システムPOS(Problem Oriented System)。かかりつけ薬剤師として患者さんの問題点を知ることはとても重要なことです。しかし、そればかりが前面に出てしまうと「揚げ足ばかりとる口うるさい薬剤師」と思われてしまうかもしれません。そこで川添先生が提唱するGOSとは?

19979.

退職後も働く日本人、脳卒中・糖尿病の発症が遅い

 60歳以上の日本人男性の追跡調査の結果、現在の退職年齢を過ぎて働くことが健康にプラスの影響を与えることが示唆された。慶應義塾大学の岡本 翔平氏らが報告した。Bulletin of the World Health Organization誌2018年12月号に掲載。 著者らは、わが国の全国高齢者調査の公開されたデータから、60歳以上の男性1,288人を抽出し、死亡・認知機能低下・脳卒中・糖尿病の4つの健康アウトカムの発症について最大15年間追跡調査した。傾向スコア法を用いて、経済的、社会的および健康のデータを独立変数の形で組み込み、健康労働者効果を調整した。就労している人としていない人の健康アウトカムの時間差を計算し、退職年齢を過ぎて働くことによる健康について平均処置効果(ATE)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・就労している人はしていない人と比べて、寿命が1.91年(95%信頼区間:0.70~3.11)長かった。さらに、認知機能低下までの期間が2.22年(同:0.27~4.17)、糖尿病発症までの期間が6.05年(同:4.44~7.65)、脳卒中発症までの期間が3.35年(同:1.42~5.28)長かった。・自営業者と従業員の比較では、寿命は自営業者のほうが長かった。糖尿病や脳卒中の発症年齢については、従業員でのみ有意なベネフィットが認められたが、自営業者ではみられなかった。

19980.

骨粗鬆症検診、受診率が最も低い県は?

 骨粗鬆症患者は約1,280万人と推計されているが、自覚症状がないことが多いため気づかれにくい。骨折などでQOLが急激に低下することを防ぐためには早期に診断し、治療に取り組むことが重要となっている。12月7日、骨粗鬆症財団は厚生労働省の公表データをもとに都道府県別に骨粗鬆症検診受診率を調べた結果を発表した。検診受診率が最も高い栃木県と最も低い島根県では47倍もの開きがあり、相関解析の結果、検診受診率が低い地域ほど大腿骨骨折の発生率が高く、介護が必要になる人が多くなる傾向が明らかになった。検診受診率は最も高い県で14%、最も低い県では0.3% 現在国が行っている公的な骨粗鬆症検診としては、40、50、55、60、65、70歳の女性を対象にした節目検診があり、骨粗鬆症財団では男性でも70代以降は2年おきを目安とした受診を推奨している。 2015年度の骨粗鬆症検診の受診率は全国平均で5.0%と低く、高い方から栃木県(14.0%)、山梨県(13.1%)、福島県(13.1%)、群馬県(13.1%)、宮城県(12.1%)であった。低い方からみていくと島根県(0.3%)、和歌山県(0.9%)、神奈川県(0.9%)、京都府(1.1%)、北海道(1.2%)の順で、地域によって大きな差があることが明らかとなった1)。検診受診率が高いほど大腿骨骨折が少なく、要介護率が低い傾向 骨粗鬆症は大腿骨骨折の大きなリスク因子であり、本調査では、大腿骨骨折により人工骨頭挿入術を受けた患者の割合と、検診受診率および要介護率との間の関連が調べられた。 その結果、大腿骨骨折により人工骨頭挿入術を受けた患者の割合と要介護率との間には正の相関(n=47、r=0.47、p<0.01)、人工骨頭挿入術を受けた患者の割合と検診受診率との間には負の相関(n=46、r=-0.49、p<0.01)がみられた。さらに、要介護率と検診受診率との間には負の相関関係が認められている(n=46、r=-0.46、p<0.01)。これらのことから、検診受診率の低い地域ほど大腿骨骨折の発生率が高く、介護が必要になる人が多い傾向が示唆された。 なお、各種の健康診査およびがん検診(健康診査、血圧、脂質検査、糖尿病検査、貧血検査、肝疾患検査、腎疾患検査、胃がん健診、肺がん検診、大腸がん検診、子宮頸がん検診、乳がん検診)の検診受診率と要介護率の間には相関関係は認められなかった。 骨粗鬆症検診の受診者数は「平成27年度地域保健・健康増進事業報告(健康増進法)」、要支援及び要介護者数は「平成26年度介護保険事業状況報告」、人工骨頭挿入術(股)数は「第 2 回レセプト情報・特定健診等情報データベース」、人口は「平成 27 年国勢調査人口等基本集計」を用いている。この結果は、日本骨粗鬆症学会雑誌2)に報告された。 骨粗鬆症財団ホームページ内の「検診のQ&A」ページでは医療従事者向けのQ&Aが掲載されているほか、骨量測定結果の見方について患者配布用の資材もダウンロード可能となっている。■参考1)公益財団法人骨粗鬆症財団 プレスリリース2)山内広世ほか. 日本骨粗鬆症学会雑誌. 2018;4:513.〔12月17日 記事の一部を修正いたしました〕

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