食道内圧ガイド下PPEPは中等~重症ARDSに推奨しない/JAMA

中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者において、食道内圧ガイド下の呼気終末陽圧(PEEP)は経験的な高PEEPと比較し、死亡および人工呼吸器不要日数に有意差はないことが認められた。米国・コロンビア大学のJeremy R. Beitler氏らが、胸腔内圧の推定値である食道内圧(PES)を指標としたPEEP調整法(PESガイド下PEEP)が、経験的な高PEEP-吸入気酸素濃度(FiO2)法よりも有効であるかを検証する目的で、北米14ヵ所の病院で実施された多施設共同無作為化臨床試験(EPVent-2試験)の結果を報告した。胸腔内圧を相殺するためのPEEP調整は、ARDS患者の肺損傷を軽減し予後を改善する可能性があった。JAMA誌2019年2月18日号掲載の報告。
食道内圧ガイド下PEEPと経験的高PEEP/FiO2を中等症~重症ARDS患者200例で比較
研究グループは、2012年10月31日~2017年9月14日に、人工呼吸器を装着している16歳以上の中等症~重症ARDS患者200例(PaO2:FiO2≦200mmHg)を登録し、食道内圧ガイド下PEEP群(102例)と、経験的高PEEP/FiO2群(98例)に無作為化し、2018年7月30日まで追跡した。患者は全例、低1回換気を受けた。主要評価項目は、死亡と28日間生存人工呼吸器不要日数の複合エンドポイント(ランク化複合スコア)とした。また、事前に定義した副次評価項目として、28日死亡、生存人工呼吸器不要日数、レスキュー治療の必要性などを組み込んだ。
食道内圧ガイド下PEEPと経験的高PEEP/FiO2両群で28日時における死亡に有意差なし
登録された200例(平均[±SD]年齢56±16歳、女性46%)が、28日間の追跡調査を完遂した。主要評価項目である複合エンドポイントは、食道内圧ガイド下PEEPと経験的高PEEP/FiO2両群間で有意差が確認されなかった(食堂内圧ガイド下PEEPでより良好なアウトカムが得られる確率:49.6%、95%信頼区間[CI]:41.7~57.5%、p=0.92)。28日時における死亡は、食道内圧ガイド下PEEP群102例中33例(32.4%)、経験的高PEEP/FiO2群98例中30例(30.6%)で確認された(リスク差:1.7%、95%CI:-11.1~14.6%、p=0.88)。生存者の人工呼吸器不要日数にも有意差はなかった(中央値:22日[四分位範囲:15~24]vs.21日[16.5~24]、中央値の差:0日[95%CI:-1~2]、p=0.85)。食道内圧ガイド下PEEP群で、レスキュー治療を受ける割合が有意に少なかった(3.9%[4/102例]vs.12.2%[12/98例]、リスク差:-8.3%[95%CI:-15.8~-0.8]、p=0.04)。
他の事前に定義した7つの副次評価項目で有意差が確認されたものはなかった。圧外傷を含む有害事象は、食道内圧ガイド下PEEP群6例、経験的高PEEP/FiO2群5例に認められた。
著者は、これらの結果を踏まえ、「ARDSにおいてPESガイド下PEEPは支持されない」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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