がんマネジメントに有用な栄養療法とは?

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ケアネット

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 2019年2月14、15日の2日間にわたり、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会が開催された。1日目のシンポジウム3「がんと栄養療法の実際-エビデンス?日常診療?」(司会:比企 直樹氏、鍋谷 圭宏氏)では、岡本 浩一氏(金沢大学消化器・腫瘍・再生外科)が「食道がん化学療法におけるCAWLと有害事象対策としての栄養支持療法」について講演。自施設での食道がん化学療法におけるがん関連体重減少(CAWL)・治療関連サルコペニア対策としての栄養支持療法について報告した。

がん患者、体重減少の2つの理由
 がん患者における体重減少の原因は主に2つに分類することができる。まず、がん誘発性体重減少(CIWL)。これは、がん細胞から分泌される炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)やホルモンによる代謝異常、タンパク質分解誘導因子(PIF)の増加が影響しているため、従来管理での改善や維持は、現段階でエビデンスが乏しい。一方、もう1つのCAWLは、消化管の狭窄や閉塞による通過障害、がん治療の有害事象(AE)に起因する体重減少のため、「タンパク質やエネルギーの補給、AE対策によって改善が可能」と岡本氏は述べた。

化学療法前にサルコペニアを意識する
 抗がん剤の投与量決定に重要となる体表面積を求めるには、体重が必要となる。「この時に筋肉量まで考慮しないと、AE発現率に影響が生じる恐れがある」と同氏はコメント。実際、筋肉量が少ない患者における化学療法では、AEが高率に発現するとの報告*もあり、この事象が原因でサルコペニアの増悪にまで発展してしまうのである。これは、抗がん剤治療によって小腸などの消化管でグルタミン消費量が増加すると、骨格筋分解によってグルタミンが消費され、筋タンパク分解・筋萎縮亢進に至るためである。よって、筋肉量の少ない患者では、「AE発現リスクが高くなるため、治療開始前に患者のサルコペニア有無を認識しておく必要がある」と、同氏は語った。

 同氏らの施設では、食道がん患者の化学療法マネジメントとして、栄養バンドル療法(Oral cryotherapy、予防的G-CSF投与、Pharmaconutritionの概念に基づいた栄養補助)を実施し、対策に取り組んでいる。

サルコペニアへの対応が長期予後に影響
 同氏の施設では食道がん術前・導入化学療法として、2008年よりcStage II以上のSCCに対してFP療法(Day1:CDDP 80mg/m2、Day1~5:5-FU 800mg/m2)を、2012年よりcStage III以上のSCCに対してDCF療法(Day1:DTX 60mg/m2、CDDP 60mg/m2、Day1~5:5-FU 800mg/m2)を実施している。

 これらの治療を施行した食道がん患者176例を対象とし、栄養バンドル療法に含まれる栄養剤の有用性を検討するために、2011年3月~2018年7月の期間、HMB・アルギニン・グルタミン配合飲料(以下、配合飲料)非投与群(76例)と配合飲料投与群(100例)に割り付け、後ろ向き研究を実施。方法は2012年5月以降、化学療法開始7日以上前より1日2包を経口もしくは経管投与とし、評価項目はAE発生率、重症度、腸腰筋面積、栄養学的指標の変化とした。その結果、DCF療法を行った配合飲料非投与群(15例)vs.配合飲料投与群(81例)で、総合効果判定PR以上:20% vs.54.3%(p=0.023)、腫瘍縮小割合:-11% vs.29.4%(p=0.065)と改善。同氏は「有意差はつかなかったものの、AEの軽減と奏効率の向上が望める」とし、腸腰筋面積の減少を有意に抑制(-5.2% vs.2.8%、p<0.001)したことを踏まえ、「サルコペニアの予防・治療の介入に有用であった」とコメントした。

 また、3年生存率は26.7% vs.46.7%(p=0.098)と、サルコペニア対策が長期予後にも密接に関連していることが裏付けられる結果となった。

 化学療法時の栄養バンドル療法導入を振り返り、同氏は「サルコペニアと体重減少の改善を図りながら、化学療法をより安全に行うことが可能となった。この方法によりCAWLやサルコペニアのみならず、QOL、さらなる奏効率向上も期待できる」と締めくくった。

■参考
Prado CM, et al.Clin Cancer Res. 2007;13:3264-3268

(ケアネット 土井 舞子)

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