新規抗体薬物複合体、難治性の転移TNBCに有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/03/04

 

 開発中のsacituzumab govitecan-hziyは、2レジメン以上の前治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の3分の1に客観的奏効をもたらし、奏効期間中央値は7ヵ月以上に及ぶことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAditya Bardia氏らが実施した第I/II相試験(IMMU-132-01試験)で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月21日号に掲載された。前治療歴のあるTNBC患者では、標準化学療法は奏効率が低く、無増悪生存(PFS)期間が短いことが知られている。本薬は、ヒト栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体に、トポイソメラーゼI阻害薬イリノテカンの活性代謝産物であるSN-38を、切断可能なリンカーで結合させた抗体薬物複合体であり、腫瘍に高濃度のSN-38を送達できるという。

複数治療歴のある患者のバスケットデザインによる単群試験
 研究グループは、TNBCを含む、転移病変を有する既治療の種々の固形がん患者を対象としたバスケットデザインのもとで、sacituzumab govitecan-hziyの多施設共同非盲検単群試験を進めている(Immunomedics社の助成による)。転移性TNBCについては、すでに69例の結果が報告されている。また、2016年、本薬は、米国食品医薬品局(FDA)により、2レジメン以上の前治療を受けた転移性TNBC患者の「画期的治療」に指定された。

 本研究では、2レジメン以上の前治療歴のある進行性上皮がん患者が、21日を1サイクルとして1日目と8日目に、sacituzumab govitecan-hziy(10mg/kg体重)の静脈内投与を受けた。治療は、病勢進行または忍容できない毒性が発現するまで継続された。

 エンドポイントは安全性、RECIST ver. 1.1に準拠して各施設で評価した客観的奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、奏効期間、臨床的有用率(CR+PR+6ヵ月以上持続する安定[SD]の割合)、PFS期間、全生存(OS)期間などとした。事後解析として、奏効率と奏効期間について、盲検下に独立中央判定での評価を行った。

主な有害事象は骨髄・消化器毒性、PFS期間5.5、OS期間13.0ヵ月
 2013年6月~2017年2月の期間に108例が登録された。ベースラインの年齢中央値は55歳(範囲:31~80)、男性が1例含まれた。全身状態(PS)は0が28.7%、1が71.3%で、前治療レジメン数中央値は3(2~10)だった。98.1%にタキサン系薬剤、86.1%にアンスラサイクリン系薬剤の投与歴があった。フォローアップ期間中央値は9.7ヵ月。

 治療期間中央値5.1ヵ月(範囲:0.03~36.1)の間に、平均18.7回(1~102)、平均9.6サイクル(1~51)の治療が行われた。頻度の高い有害事象として、悪心(67%)、好中球減少(64%)、下痢(62%)、疲労/無力症(55%)、貧血(50%)、嘔吐(49%)などが認められた。

 Grade3、4の有害事象は、好中球減少がそれぞれ26%、16%、貧血が11%、0%、白血球数の減少が8%、3%にみられた。発熱性好中球減少は10例(9.3%)に発現し、このうちGrade3が7例(6%)、Grade4は2例(2%)であった。重篤な有害事象は35例(32%)で報告され、発熱性好中球減少、嘔吐、悪心、下痢、呼吸困難の頻度が高かった。

 治療期間中に4例が死亡した。3例(2.8%)が有害事象により治療を中止し、このうち2例は治療薬関連イベントによる中止であった。

 奏効率は33.3%(36/108例、CR:3例、PR:33例)であり、臨床的有用率は45.4%(49/108例)であった。奏効例36例の奏効までの期間中央値は2.0ヵ月(範囲:1.6~13.5)、奏効期間中央値は7.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.9~10.8)であった。独立中央判定では、奏効率が34.3%、奏効期間は9.1ヵ月と、各施設判定とほぼ同様であった。

 PFS期間中央値は5.5ヵ月、6および12ヵ月時のPFS率はそれぞれ41.9%、15.1%であった。また、OS期間中央値は13.0ヵ月、6および12ヵ月時のOS率はそれぞれ78.5%、51.3%だった。

 著者は、「タキサン系、アンスラサイクリン系薬剤の治療歴のある患者にも有効であったことから、前治療の細胞傷害性化学療法薬との交差耐性はないと示唆される」とし、「治療期間中央値(5.1ヵ月)は直前の抗がん剤治療(2.5ヵ月)よりも長く、これは治療困難な転移性TNBC患者における臨床活性に関して、さらなるエビデンスをもたらすものである」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 矢形 寛( やがた ひろし ) 氏

埼玉医科大学 総合医療センター ブレストケア科 教授