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アルツハイマー病に伴うアジテーション、最適なブレクスピプラゾールの投与量は?

 アルツハイマー病に伴うアジテーションは、患者の転帰と介護者の負担に重大な影響を及ぼす。ブレクスピプラゾールは有望な治療選択肢と考えられている。しかし、至適用量は依然として不明であった。サウジアラビア・King Faisal UniversityのMahmoud Kandeel氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションの治療におけるブレクスピプラゾールの異なる用量の有効性と安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年12月8日号の報告。 PRISMAガイドラインに従い、2025年1月までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、Scopusより検索した。ブレクスピプラゾールの異なる用量(0.5~3mg/日)とプラセボを比較した4件のランダム化比較試験(1,451例)を解析に含めた。主要アウトカムは、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Clinical Global Impression-Severity Scale(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH)スコアの変化と安全性評価とした。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール2mgは、プラセボと比較し、CMAIスコア(平均差[MD]:-5.88、95%信頼区間[CI]:-8.13~-3.63)、CGI-Sスコア(MD:-0.48、95%CI:-0.95~-0.01)の有意な改善が認められた。・複数回投与においてNPI-NHスコアの有意な改善が認められ、高用量(2~3mg)投与で最も効果が高かった(MD:-4.60、95%CI:-7.54~-1.66)。・高用量(2~3mg)では、治療下で発現した有害事象が増加した(リスク比:1.20~1.33)。しかし、重篤な有害事象についてはプラセボと比較して有意な差は認められなかった。 著者らは「アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール2mgによる治療は、良好な安全性プロファイルを維持しながら、最適な治療効果をもたらすことが明らかとなった。これらの知見は、個々の反応と忍容性に基づき、低用量から治療を開始しながら2mgまで慎重に漸増することを支持している」とし「今後の研究では、長期的なアウトカムと実臨床における有効性に焦点を当てるべきである」としている。

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中年期のうつ病の6つの症状が将来の認知症と関連

 中年期のうつ病は、これまで認知症リスクの増加と関連付けられてきた。しかし、新たな研究で、認知症と関連するのはうつ病全体ではなく、6つの特定の症状から成るクラスターである可能性が示唆された。研究グループは、これら6つの症状に焦点を当てることで、中年期に抑うつ症状に苦しんでいる人が将来、認知症を発症するのを回避できる可能性があると述べている。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のPhilipp Frank氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Psychiatry」に12月15日掲載された。 Frank氏は、「認知症リスクは、うつ病全体ではなく、限られた数の抑うつ症状と関連している。症状レベルでのアプローチにより、認知症が発症する何十年も前から、認知症を発症しやすい人をこれまでよりも明確に把握できるはずだ」と述べている。 この研究では、英国の長期健康研究(Whitehall II研究)に参加した45〜69歳の成人5,811人(ベースライン時の平均年齢55.7歳、女性28.3%)を対象に解析が行われた。参加者の抑うつ症状は、ベースライン時の1997~1999年に30項目から成るGeneral Health Questionnaire(GHQ-30)により評価された。 平均22.6年間の追跡期間中に、586人(10.1%)が認知症を発症していた。GHQ-30の30項目を個別に検討したところ、6つの症状が認知症リスクと有意に関連することが明らかになった。それらは、1)自信を失っている(ハザード比1.51)、2)問題に立ち向かえない(同1.49)、3)他人に対するやさしさや愛情を感じない(同1.44)、4)常に緊張や不安を感じている(同1.34)、5)仕事や作業の進め方に満足できない(同1.33)、6)集中できない(同1.29)、である。一方で、睡眠障害、自殺念慮、抑うつ気分といった他の症状は、認知症リスクと有意な関連を示さなかった。 研究グループは、これらの6つの症状は、社会的関わりの減少や、脳を刺激する経験の減少につながる可能性があり、その結果、損傷や疾患の影響を受けた場合でも脳が正常な思考を維持する能力が低下する可能性があると指摘している。 論文の上席著者であるUCLの社会疫学教授のMika Kivimaki氏は、「うつ病には単一の形があるわけではない。症状は多様で、不安と重なり合うことも多い。われわれは、こうした微妙な症状パターンにより、認知症の発症リスクが高い人を明らかにできることを示した。この知見は、より個別化され、効果的なメンタルヘルス治療へとわれわれを1歩近付ける」と述べている。ただし、研究チームは、これらの結果を確認するためにはさらなる研究が必要だとしている。 英アルツハイマー病協会の研究・イノベーション部門アソシエイトディレクターであるRichard Oakley氏は、認知症とうつ病の関係は複雑だと指摘する。同氏は、「この新たな観察研究が、認知症とうつ病の関連を解きほぐし始めている点は心強い。それでも、うつ病の人の全てが認知症を発症するわけではなく、また、認知症の人の全てがうつ病を発症するわけでもないことを忘れるべきではない」と話している。

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第45回 「その抗菌薬投与は患者の益になるか?」重度認知症・肺炎診療の常識を問う

高齢化率が世界最高水準の日本において、重度認知症患者の肺炎診療はいわば日常的な光景です。「肺炎だから入院」「とりあえず抗菌薬」というフローは、多くの医療機関で標準的な対応として定着しているでしょう。しかし、NEJM Evidence誌に掲載された論考1)は、この「当たり前」の診療行為に対し、生存期間、QOL、そして患者の快適さという観点から鋭い問いを投げかけています。 本稿では、同誌の“Tomorrow's Trial”(将来行われるべき臨床試験の提案)として発表された記事1)を基に、重度認知症患者に対する肺炎治療の現在地と、われわれが直面している倫理的・臨床的ジレンマについて解説します。抗菌薬は「死」を10日先送りするだけ? この記事で紹介されるのは、87歳の重度認知症女性の症例です。寝たきりで会話ができず、家族の認識もできない状態で、発熱と呼吸器症状を呈して搬送されました。胸部X線で浸潤影を認め、臨床的には細菌性肺炎が疑われます。 ここで日本の臨床現場でもよくある葛藤が生じます。娘は、「母が苦しまず、現状の生活を維持できるなら生きていてほしい」と願っています。しかし、果たして抗菌薬投与はこの願いをかなえるのでしょうか? 残念ながら、重度認知症患者の肺炎に対して、抗菌薬投与が生存期間、QOL、患者の快適さを改善させるかどうかを比較したランダム化比較試験は、現時点では存在しません。 そのため、根拠とできるのは観察研究の結果のみですが、そのデータは衝撃的です。ある研究では、抗菌薬投与群は非投与群に比べて最初の10日間の死亡率の低下傾向が見られるものの(非投与群76%vs.投与群39%)、10日以降の死亡リスクには差がないことが示されています。これは、抗菌薬による治療が「死を約10日間遅らせる」可能性を示す一方、同時に「死にゆくプロセスを延長させているだけ」である可能性も示唆しています。「治療」がもたらす侵襲と不利益 「とりあえず抗菌薬を入れておこう」という判断が、患者にとって無害であれば問題は少ないかもしれません。しかし、重度認知症患者、とくに人生の最終段階に近い深刻なフレイルの患者にとって、抗菌薬治療が大きな負担となりうることも強調されるべきでしょう。 点滴確保による身体的苦痛、不慣れな急性期病院への搬送、環境の変化による混乱、そして知らない医療スタッフに囲まれるストレスは、認知症患者にとって計り知れない苦痛です。さらに、薬剤耐性菌の出現や、致死的になりうるClostridioides difficile感染症のリスク、下痢や腎機能障害といった副作用も無視できません。 また、米国の介護施設における観察研究では、呼吸器感染症が疑われた認知症患者の約70%に抗菌薬が処方されていましたが、実際に臨床的な細菌感染の基準を満たしていたのはそのうちの約33%にすぎなかったという報告もあります。診断の不確実性と「念のための投与」が、過剰医療と患者の負担を招いている現状が浮き彫りになっています。世界の潮流と日本の立ち位置 重度認知症患者の肺炎に対するアプローチには、地域によって大きな差があります。記事では、オランダと米国ミズーリ州の比較が紹介されています。 オランダでは、重度認知症患者の肺炎に対し、23%が抗菌薬なしで管理されていました。これは、治療方針が明示的に「緩和」に向けられており、あえて抗菌薬を差し控えるという選択がなされているためです。一方、ミズーリ州では重症度が高いほど抗菌薬が使用される傾向にあり、非投与率は15%にとどまりました。 日本はおそらく米国ミズーリ州に近い、あるいはそれ以上に「肺炎=治療」の文化が根強いといえるかもしれません。しかし、患者の予後が数ヵ月単位である場合、その治療が「治癒」を目指しているのか、それとも症状緩和を目指しているのか、その境界線は曖昧です。われわれには「答え」が必要である 本記事の著者らは、こうした長年の疑問に決着をつけるため、重度認知症の肺炎患者を対象とした、抗菌薬静注群とプラセボ静注群を比較する二重盲検RCTの実施を提案しています。主要評価項目は30日生存率だけでなく、QOLや患者の快適さといった「患者・家族中心の指標」が含まれる必要があるでしょう。 「肺炎に抗菌薬を使わない(プラセボを使う)」という試験デザインは、一見倫理的に許容されないように感じられるかもしれません。しかし、抗菌薬治療に確実な有益性のエビデンスがなく、むしろ害の可能性がある以上、この比較試験は倫理的に正当化されるものとなるでしょう。 日本の臨床現場において、すぐにオランダのような「あえて治療しない」選択肢を組み込むことはなかなか難しいでしょう。しかし、われわれが漫然と行っている抗菌薬投与が、本当に患者の「快適さ」や「望ましい最期」に寄与しているのか、一度立ち止まって考えるべき時が来ているのかもしれません。 次回の診療で、重度認知症患者の肺炎に直面した際、少し自問してみるのもいいのではないでしょうか。「この点滴は、患者の苦痛を取り除いているのか、それとも死の過程を引き延ばしているだけなのか」と。そんなことを考えてみるだけでも、慣例に流されがちな日々の処方に、「患者の尊厳」という重みを問い直し、静かな一石を投じることになるはずです。 1) Ahmad A, et al. Do Antibiotics Improve Survival, Quality of Life, and Comfort in Patients with Advanced Dementia and Pneumonia? NEJM Evid. 2026;5:EVIDtt2400447.

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アルツハイマー病、発症から診断までは2.2年/新潟大学ら

 アルツハイマー病(AD)では、治療・ケア方針の決定において早期診断が極めて重要となるが、日本における診断までの実際の経過は明らかではなかった。新潟大学の春日 健作氏らは、日本国内の複数施設を対象に、症状出現からAD診断に至るまでの期間とその過程で最も時間を要する段階を明らかにする後ろ向き観察研究を実施した。本試験の結果はAlzheimer's & Dementia誌オンライン版2025年12月25日号に掲載された。 本研究には、2011年4月~2023年3月に「ADによる軽度認知障害(MCI)」または「AD型認知症」と診断された18~79歳の患者138例が含まれた。発症年齢65歳未満を若年発症AD、65歳以上を高齢発症ADと定義し、初診日で1対1にマッチングした上で解析した。 主な結果は以下のとおり。・平均発症年齢±標準偏差は62.8±9.3歳、女性が62%(85例)、69%(95例)がかかりつけ医を有し、62%(86例)が症状出現時点で何らかの併存疾患の治療を受けていた。・症状出現からAD診断までの平均期間は121.8±88.9週(約2.2年)であった。内訳を見ると、最も長かったのは「症状出現から最初の医療機関受診まで」の期間で、77.0±74.4週と全体の大半を占めていた。・一方で、初診から認知症専門医への紹介までは34.9±49.2週、専門医受診から診断確定までは10.5±18.8週と比較的短期間であった。 研究者らは「これらの結果は、日本におけるAD診断遅延の最大のボトルネックが、医療機関受診以前の段階、すなわち患者本人や家族が症状を認知してから受診行動に至るまでの期間にあることを示している。早期診断が新規治療や適切な介入につながる時代において、一般市民や非専門医に対する啓発、初期症状への気付きを促す仕組みづくりが、診断までの時間短縮に不可欠であることが改めて示唆された」とした。

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うつ病の死亡リスク調査、抗うつ薬治療の影響は?~メタ解析

 うつ病は早期死亡と関連していることが報告されている。しかし、抗うつ薬治療を含む増悪因子や保護因子にも焦点を当て、うつ病患者における全死亡リスクおよび原因別死亡リスクを包括的に検討したメタ解析はこれまでなかった。中国・香港大学のJoe Kwun Nam Chan氏らは、あらゆる原因および特定の原因によるうつ病、併存疾患を有するうつ病における死亡リスクを明らかにするため、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、推定値を統合した。World Psychiatry誌2025年10月号の報告。 抗うつ薬および電気けいれん療法(ECT)の影響、死亡リスクのその他の潜在的な調整因子を評価した。2025年1月26日までに公表された研究をEMBASE、MEDLINE、PsycINFOデータベースより検索し、ランダム効果モデルを用いて死亡率推定値を統合した。出版バイアス、サブグループ解析、メタ回帰分析、ニューカッスル・オタワ尺度を用いた研究の質の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・268件の研究(うつ病患者:1,084万2,094例、対照群:28億3,793万3,536例)が抽出された。・うつ病患者の全死亡率は、非うつ病患者/一般集団と比較し、2倍以上であった(相対リスク[RR]:2.10、95%信頼区間[CI]:1.87~2.35、I2=99.9%)。・とくに自殺(RR:9.89、95%CI:7.59~12.88、I2=99.6%)による死亡リスクが高く、自然死(RR:1.63、95%CI:1.51~1.75、I2=99.6%)でも上昇が認められた。・併存疾患をマッチングさせたうつ病患者と非うつ病患者との比較では、うつ病関連死亡リスクの有意な上昇も認められた(RR:1.29、95%CI:1.21~1.37、I2=99.9%)。・精神症状を伴ううつ病と伴わないうつ病(RR:1.61、95%CI:1.45~1.78、I2=6.3%)、治療抵抗性うつ病と非治療抵抗性うつ病(RR:1.27、95%CI:1.16~1.39、I2=85.3%)の間に、死亡リスクの差が認められた。・抗うつ薬の使用は抗うつ薬を使用しない場合と比較し、うつ病患者の全死亡率の有意な低下と関連していた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.93、I2=99.2%)。・ECTの使用はECTを使用しない場合と比較し、全死亡(RR:0.73、95%CI:0.66~0.82、I2=0%)、自然死(RR:0.76、95%CI:0.59~0.97、I2=12.0%)、自殺(RR:0.67、95%CI:0.53~0.85、I2=32.3%)のリスク減少と関連していた。 著者らは「本研究結果は、うつ病における死亡リスクの上昇を裏付け、死亡リスクの上昇を示す臨床的に意義のある患者サブグループを特定し、抗うつ薬治療とECTによる死亡率低下効果を明らかにしている。身体的健康の改善と自殺リスクの軽減、抗うつ薬治療の最適化、精神病性うつ病や治療抵抗性うつ病の早期発見と効果的な介入などを推し進める多角的なアプローチは、依然として拡大しているうつ病における死亡率の格差の縮小に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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若者の精神疾患の世界的負担、30年間の変化と今後の予測

 精神疾患は、世界の非致死性疾患負担の主な原因の1つであり、小児、青年、若者の間で有病率が上昇している。中国・Northwest Women's and Children's HospitalのWei Liu氏らは、GBD 2021データを用いて、9つの精神疾患について、1990~2021年の地域、年齢、性別による推定値を分析し、2050年までの負担を予測した。Frontiers in Public Health誌2025年9月16日号の報告。 年齢調整有病率(ASPR)および障害調整生存年数率(ASDR)の平均年変化率(AAPC)および年変化率(APC)を算出した。分解分析、不平等分析、フロンティア分析、比較リスク分析、ベイズ統計を用いた年齢・時代・コホート分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1990年と比較し、2021年の世界の負担は若年層で有意に増加した。【ASPR】AAPC:0.15、95%信頼区間(CI):0.14~0.16【ASDR】AAPC:0.40、95%CI:0.29~0.51・若年層における世界的負担は、2019年以降に急増した。【ASPR】APC:4.74、95%CI:4.55~4.93【ASDR】APC:6.64、95%CI:4.88~8.42・男性は女性よりも負担が大きく、年齢層によって性別特有のパターンに、ばらつきが見られた。・負担は、社会人口統計指数(SDI)により大きく異なり、SDIの高い地域では最も高かった(ASPR:1万2,913.13、95%不確実性区間[UI]:1万1,135.82~1万4,874.98、ASDR:1,750.41、95%UI:1,253.46~2,328.87)。・9つの精神疾患の負担の変化は、世界レベル、地域レベル、国レベルで異なっていた。・分解分析では、有病率と障害調整生存年数(DALY)の変化は、主に人口増加(各々、84.86%、57.92%)に起因しており、SDIの高い地域で最も顕著な改善が見られた。・フロンティア分析では、高所得国・地域では負担軽減の可能性があることが示唆された。・世界的に、不安症、うつ病、特発性発達性知的障害の主なリスク因子として、小児期の性的虐待、いじめ、親密なパートナーによる暴力、鉛曝露が特定された。・2050年までに精神疾患の負担は減少すると予測された(人口10万人当たりASPR:6,120.71、95%CI:3,973.57~8,267.85、人口10万人当たりASDR:844.71、95%CI:529.48~1,159.94)。 著者らは「2050年までに精神疾患の負担は減少すると予測されているものの、世界の精神疾患の負担は増加しており、人口間で大きな格差が認められた。近年の急増傾向により、世界的な予防の強化と公平な医療の拡充が求められている」とまとめている。

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悪態をつくことはパフォーマンスを高める?

 次に、罵り言葉があふれ出しそうなのを必死でこらえる状況に陥ったときには、むしろ思い切って吐き出してしまうと良いかもしれない。英キール大学のRichard Stephens氏らによる新たな研究で、悪態をつくことで抑制が弱まり、筋力や持久力テストで、より限界まで自分を追い込めるようになることが示された。「悪態をつくことは、集中力や自信を高め、気を散らしにくくし、もう一歩踏み出す助けになる手軽な方法だ」と述べている。この研究結果は、「American Psychologist」に12月18日掲載された。 Stephens氏らはすでに過去の研究で、悪態をつくことで、腕立て伏せの姿勢で自重を支えられる時間や氷水に手を浸していられる時間など、さまざまな身体的課題でパフォーマンスが高まることを報告している。Stephens氏は、「これは再現性が高く、信頼できる結果だ。しかし、悪態をつくことがどのようにわれわれを助けているのか、その心理的メカニズムは何か、という点については謎だった」と語る。 この研究では、182人を対象に2つの実験を実施し、悪態をつくことで一時的に行動を抑えるブレーキが弱まった心理状態(脱抑制状態)が人を解放し、困難な状況でより強く自分を追い込めるようにするのではないかとの仮説を検証した。 1つ目の実験では、18〜65歳の参加者88人が、椅子を使ったプッシュアップを行いながら、2秒ごとに自分で選んだ罵り言葉、もしくは中立的な言葉を繰り返すよう求められた。課題の終了後には、脱抑制状態に関連すると思われるユーモア、フロー状態、自信、社会的望ましさ、注意の逸れについての評価を受けた。また、94人を対象にした2つ目の実験では、1つ目の実験結果の再現に加えて、悪態をつくことによるパフォーマンスの向上が、脱抑制状態によって説明できるのかどうかをBIS(行動抑制システム)/BAS(行動活性化システム)、不安、正・負の感情、新奇性、傍観者的無関心などの心理指標も測定して検証した。 その結果、いずれの実験でも、罵り言葉を発した場合では、中立的な言葉を発した場合と比べて、有意に長く自重を支え続けることができることが明らかになった。ただし、その媒介要因は実験間で一致せず、実験1では制約からの自由感やフロー状態の高まりが効果を部分的に媒介した一方、実験2では注意の逸れのみが関与する可能性が示唆された。 Stephens氏は、「これらの結果は、なぜ悪態をつくことがこれほど一般的なのかを説明するものだ。悪態をつくことは、カロリーや薬物が必要ではなく、低コストで、必要なときにすぐに使えるパフォーマンス向上ツールだ」と述べている。 研究グループは、次の課題は、ためらいを乗り越えることが成功の鍵となる場面でも、悪態の効果が発揮されるかどうかを検証することだと述べている。論文の上席著者である米アラバマ大学ハンツビル校のNicholas Washmuth氏は、「われわれの研究室では現在、人前でのスピーチや恋愛におけるアプローチといった、ためらいや自己疑念が生じやすい状況で、悪態がどのような影響を及ぼすのかを研究している」と語っている。

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早期から症状改善が期待できるうつ病治療薬「ザズベイカプセル30mg」【最新!DI情報】第55回

早期から症状改善が期待できるうつ病治療薬「ザズベイカプセル30mg」今回は、うつ病治療薬「ズラノロン(商品名:ザズベイカプセル30mg、製造販売元:塩野義製薬)」を紹介します。本剤は既存の抗うつ薬とは異なる作用機序を有するアロプレグナノロン様GABAA受容体機能賦活薬であり、投与開始後早期からの症状改善が期待されています。<効能・効果>うつ病・うつ状態の適応で、2025年12月22日に製造販売承認を取得しました。本剤は抑うつ症状が認められる患者の急性期治療に用いる薬剤であり、抑うつ症状が寛解または回復した患者における再燃・再発の予防を目的とした投与は行いません。<用法・用量>通常、成人にはズラノロンとして30mgを1日1回14日間夕食後に経口投与します。なお、本剤による治療を再度行う場合は、投与終了から6週間以上の間隔を空けます。<安全性>重大な副作用として、錯乱状態(頻度不明)があります。その他の副作用として、傾眠(20.0%)、めまい(12.6%)、頭痛、悪心、下痢、口渇・口内乾燥、ALT上昇、浮遊感、倦怠感(いずれも1~5%未満)、発疹、振戦、鎮静、注意力障害、健忘、嘔吐、腹部不快感、腹痛、AST上昇、γ-GTP上昇、歩行障害、酩酊感(いずれも1%未満)、嗜眠(頻度不明)があります。薬物依存を生じる恐れがあるので、用法・用量を遵守するとともに、本剤による治療を再度行う場合には、治療上の必要性を十分に検討する必要があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内の神経伝達物質の働きを高め、情報伝達を活性化することで、うつ症状を改善します。2.薬物依存を生じる恐れがあるので、用法・用量を必ず守ってください。3.アルコールはこの薬の作用に影響するため、飲酒は控えてください。4.眠気やめまいなどの副作用が現れることがあります。自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けてください。5.うつ病やうつ状態の人は死んでしまいたいと感じることがあります。不安感が強くなったり、死にたいと思ったりする症状が悪化する場合があるので、このような症状が現れた場合には、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>うつ病は、抑うつ気分や不安、睡眠障害、意欲低下などにより日常の生活に支障を来す精神疾患です。疫学調査によれば、日本におけるうつ病の患者数は約500万例と推測されています。薬物治療には主に抗うつ薬が用いられますが、効果発現までに数週間を要し、継続的な服用が必要となるため、即効性のある治療薬が求められてきました。本剤は、既存の抗うつ薬とは異なる作用機序を有するアロプレグナノロン様GABAA受容体機能賦活薬です。ポストシナプス領域内外のGABAA受容体にポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)として作用し、GABAA受容体機能を増強します。これにより、うつ病態でみられる気分、不安、睡眠に関与する神経の興奮と抑制の均衡や協調的な神経ネットワーク活動の調節不全を改善します。本剤は、抑制系神経細胞に直接作用すると考えられているので、従来の抗うつ薬よりも迅速な効果発現が期待され、うつ症状が強く現れる急性期治療を目的に使用されます。本剤の用法・用量は1日1回14日間の経口投与です。十分な効果を得るとともに、副作用の日中に及ぼす影響を考慮して夕食後に30mg(1カプセル)を経口投与します。なお、本剤は再発・再燃予防を目的とした寛解後の維持期治療には使用できません。本剤による再治療を行う場合は、前回の投与終了から6週間以上の間隔を空ける必要があります。海外では、産後うつ病に対する治療薬として2023年8月に米国、2025年8月に英国、2025年9月に欧州で承認されています。日本人大うつ病性障害患者を対象とした国内第III相単剤検証試験(A3734試験)において、主要評価項目である15日時のハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HAM-D17)合計スコアのベースラインからの変化量は、本剤30mg群で-7.43±0.40、プラセボ群で-6.23±0.41であり、2群間の調整平均値の差は-1.20(95%信頼区間:-2.32~-0.08)でした。本剤30mg群の15日時のHAM-D17合計スコアは、プラセボ群よりも統計学的に有意にベースラインから減少しました(p=0.0365)。

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夜勤と日勤の頭痛有病率、ストレスや睡眠の影響は?

 夜勤は、主に概日リズムの乱れや睡眠障害により、頭痛リスクを高めることが示唆されている。これまでの多くの研究において夜勤者と日勤者が比較されているが、両群間の職務特性や業務内容の違いがバイアスをもたらす可能性がある。デンマーク・The National Research Centre for the Working EnvironmentのRikke Harmsen氏らは、この潜在的なバイアスを最小限にする目的で、同一被験者における異なる労働条件(夜勤と日勤)が頭痛の発症に及ぼす影響を検討した。Headache誌2025年10月号の報告。 Danish hospital sectorの女性雇用者を含む「1001 nights-cohort」において、14日間の反復測定データを用いた解析を行った。データは、2022年9月〜2024年4月に収集された。参加者は、労働時間、睡眠、仕事関連の心理社会的ストレス要因、身体的職務負担、頭痛の発生(あり/なし)に関する毎日の情報を14日間連続で記入し提出した。1回以上の日勤と1回以上の夜勤のデータを有する参加者を解析対象とした。522人の参加者より3,348日の測定(日勤:1,926日、夜勤:1,422日)について回答が得られた。参加した個人内の反復測定を考慮し、可能性のある交絡因子を調整したうえで、頭痛の有病率比(PR)を推定した(調整有病率比:aPR)。 主な結果は以下のとおり。・頭痛は、日勤では21.5%、夜勤では27.9%で報告された。・仕事関連の心理社会的ストレス要因、身体的職務負担、睡眠時間および睡眠の質で調整した場合、夜勤は日勤と比較し、頭痛の有病率が有意に高かった(aPR:1.31、95%信頼区間[CI]:1.13〜1.52)。・連続夜勤では、同様に調整した頭痛の有病率は、最初の夜勤を基準とした場合、2回目の夜勤で最も高かった(aPR:1.20、95%CI:1.02〜1.42)。 著者らは「本研究は、仕事関連の心理社会的ストレス要因と身体的職務負担を考慮し、夜勤の頭痛有病率を日勤の頭痛有病率と比較した初めての研究である。これらの要因(心理社会的ストレス、身体的職務負担)、睡眠時間の短さ、睡眠の質の低下は、夜勤で観察された頭痛有病率の増加を説明できなかった。したがって、夜勤に関連する概日リズムの乱れの連鎖的な影響および根底にあるメカニズムが、夜勤者の頭痛の主な原因である可能性がある」と述べている。

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薬剤師連携で精神疾患患者の薬理学的介入を最適化できるか

 臨床薬剤師との連携による服薬レビュープロセスは、精神疾患および身体的合併症を有する高齢患者に対する薬物療法の最適化につながる可能性がある。スロベニア・マリボル大学のMatej Stuhec氏らは、服薬レビューにおける臨床薬剤師の推奨が、薬剤数の変化、潜在的に不適切な薬剤(PIM)の使用、潜在的な薬物間相互作用(DDI)、治療ガイドラインの順守などにどのような影響を及ぼすかを評価した。Frontiers in Pharmacology誌2025年9月1日号の報告。 本研究は、スロベニアの精神科病院において、レトロスペクティブ非介入研究として実施された。対象は、2013〜18年に服薬レビューのために紹介され、身体的合併症(心不全、動脈性高血圧、糖尿病)に関連する治療変更を少なくとも1回受けた65歳以上の精神疾患入院患者100例。臨床薬剤師は、Pharmaceutical Care Network Europeの定義によるタイプ3の服薬レビュー(高度な服薬レビュー)を実施した。服薬レビュー完了後すぐに、病院の電子システムに推奨事項を記録した。服薬レビュー前と退院時における電子システムから抽出されたアウトカムのデータをシステマティックにレビューした。主要アウトカムは、介入前後の薬剤数、PIMの使用、DDIの変化とした。DDIは、Lexicomp Onlineデータベースを用いて特定し、Xタイプ(禁忌)およびDタイプ(重篤)に分類した。副次的アウトカムは、心不全、動脈性高血圧、糖尿病の治療ガイドラインの順守とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は78.1±6.78歳であった。・総薬剤数は6.6%減少した(1,144→1,068、p<0.001)。また、承認率は59.2%であった。・レビュー後、XタイプDDIは75.8%減少し(33→8、p<0.001)、DタイプDDIは56.9%減少した(188→81、p<0.001)。・PIM数も有意に減少し(p<0.001)、Priscus Listに基づくと29.5%減少し(308→217)、Beers Criteriaに基づくと17.5%減少した(343→283)。・身体的合併症の治療ガイドラインの順守率は有意に改善した(3.3〜13.2%→50.0〜72.6%、p<0.001)。 著者らは「臨床薬剤師との連携による服薬レビュープロセスは、薬剤数、PIM、DDIを効果的に減少し、治療ガイドラインの順守率も有意に向上させることが示された」としている。

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うつ病や不安症はストレスを通じて心臓病のリスクを高める

 うつ病や不安症の患者は心臓発作や脳卒中などのリスクが高く、そのメカニズムとしてストレス反応や炎症が関与しているとする研究結果が報告された。米マサチューセッツ総合病院のShady Abohashem氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation: Cardiovascular Imaging」に12月17日掲載された。 この研究では、マサチューセッツ総合病院ブリガム・バイオバンクの2010~2020年のデータが用いられた。解析対象者数は8万5,551人で、中央値3.4年(四分位範囲1.9~4.8)の追跡期間中に3,078人(3.6%)が主要心血管イベント(MACE〔心筋梗塞、心不全、脳卒中など〕)を発症していた。 解析の結果、うつ病と診断されている人ではそうでない人よりも、MACEリスクが24%高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕1.24〔95%信頼区間1.14~1.34〕、P<0.001)。また、不安とうつ病が併存している場合には35%のリスク上昇という、より強い関連が認められた(HR1.35〔同1.23~1.49〕、P<0.001)。この関連は、人口統計学的因子、社会経済的因子、生活習慣、心血管疾患の既往を調整した後も有意だった。 解析対象者のうち、ストレスによる神経活動への影響を評価可能な画像検査を1,123人が受け、心電図検査を7,862人が受けていて、1万2,906人は炎症反応のバイオマーカーであるC反応性蛋白(CRP)が測定されていた。それらのデータを解析すると、うつ病と診断されている人はストレスに関連のある脳領域である扁桃体の活動が亢進していて(β=0.16、P=0.006)、神経系が過剰に働いていることを示唆する心拍変動の低下も見られ(β=-0.20、P<0.001)、炎症反応の亢進を意味するCRPの上昇(β=0.14、P<0.001)も認められた。不安症と診断されている人にも同様の傾向が見られた。 Abohashem氏は、「これらの結果は臨床医が心血管疾患のリスクを評価する際に、メンタルヘルスを不可欠な要素として捉える必要があることを、改めて認識させるものだ。一方、患者にとっては、慢性的なストレスや不安、あるいはうつ病に対処することが、単にメンタルヘルス上の優先事項であるというだけでなく、心臓の健康を守るためにも優先すべきだと認識することは、治療の励みになるのではないか」と述べている。 また、論文の上席著者である同院のAhmed Tawakol氏は、「うつ病と不安症はいずれも心臓病や脳卒中のリスク上昇と関連している。そして、より重要なことは、喫煙などの生活習慣や社会経済的要因、および糖尿病や高血圧といった古くから知られているリスク因子を考慮しても、その関連性が依然として強固であった点だ」と、本研究結果の意義を強調している。ただし本研究は観察データに基づく解析であるため、うつ病や不安症と心血管イベントとの因果関係を証明するものではないことが、留意点として挙げられる。

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産業保健は本当に機能しているのか―自分が見て見ぬふりをしてきたこと【実践!産業医のしごと】

皆さま、あけましておめでとうございます。年末に昨年の手帳を見返していました。面談を何件担当し、衛生委員会に何回出席し、職場巡視を何回行ったのか……。手帳を見ると、確かに数字は積み上がっています。それでも、ふと思ったんです。これで本当に、誰かの健康を守れたんだろうか、と。反省点1:実施率で「やったふり」をしていた「ストレスチェック実施率100%、健康診断受診率98%、衛生委員会出席率100%……」。報告書の数字は目標を十二分に達成しており、経営層も安心してくれます。でも、この数字はあくまで「プロセス」であって、「社員の健康を守り、組織を変える」という、目指す「結果」そのものではありません。そこに私は目をつぶっていました。面接指導の後、あの従業員の労働時間は本当に減ったんだろうか。上長は業務配分を変えたんだろうか。私はそれを確認できていません。残っているのは「面接を実施した」という記録だけです。反省点2:データで「やった気」になっていた「高ストレス者の割合が○%です」「プレゼンティーイズム(健康問題が理由で従業員の生産性が低下している状態)による損失は、年間数千万円と推計されます」。役員会で報告すれば、うなずいてもらえます。質問もとくに出ません。それで終わりになって、「次に何をするか」までを詰めきれていませんでした。データを見せることで、何かをやった気になっていた。でも、「誰が・何を・いつまでにやるのか」が決まらなければ、現場は動きません。当たり前のことなのに、私はそこまで詰めきれていませんでした。「課題は共有できました」と自分に言い訳していたのです。反省点3:「お墨付き」が仕事になっていた「復職可否の判断」「就業制限の意見書」……。人事からそうした書類の記入依頼が来て、記入して、返送する…。この流れ作業に慣れてしまっていました。本当は、本人の回復と職場の受け入れ態勢の両方を見て、バランスを取るのが産業医の役割のはずです。でも気付けば、会社が「適切に対応した」ことを示すための書類作成に、ただ協力しているだけになっていました。今年変えたい! 3つのことそんな昨年の振り返りを通して、今年の目標を立てました。1. 「できない理由」で思考停止しない「経営陣の理解がない」「人事が動かない」「予算がない」……。口にした瞬間、できない理由ができてラクになります。でも、「伝え方を変える」「データをそろえる」「小さく試す」……。何かやれることはあるはずです。2. 成果につながりにくい活動を減らす目的が曖昧な会議、意思決定につながりにくい報告書、テーマのない巡視。こうした時間は優先順位をつくって削れるものは削り、空いた時間を従業員への支援と職場の具体的な調整に回します。3. 全部自分でやろうとしない保健師、人事、管理職……。それぞれに役割があります。自分は産業医の立場で判断の軸を示す。細かいフォローは保健師に、業務調整は人事や上長に。そうやってチームで回すほうが結果的に多くの人を守ることができると、ようやく気付きました。そして、「今年やること」今年は、「言いっぱなし」「書きっぱなし」で終わらせず、「変化が起きたか」までを確かめます。具体的には、面談後1ヵ月で残業や勤務に変化が出ているか確認する、復職後3ヵ月/6ヵ月時点で定着できているかを確認する、職場への助言はその1ヵ月後を目安に実施して状況を確認する、これらのことを心掛けます。毎月1回、保健師・人事と振り返りを行い、止まっている案件を見える化して、次の手を決める。確認はチェックのためではなく、職場を動かすための合図にします。産業医は、会社の「保険」ではありません。働く人の健康を守る専門職です。今年は、昨年の自分よりも、一歩成長した産業医になりたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

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抗うつ薬の選択で死亡リスクに違いはあるか?

 うつ病は死亡リスクを著しく上昇させることが知られているが、抗うつ薬の使用が長期生存へ及ぼす影響は依然として不明である。中国・Shantou University Medical CollegeのXiaoyin Zhuang氏らは2005~18年の抗うつ薬の使用傾向を調査し、米国の全国代表コホートにおける、うつ病関連死亡率に及ぼす抗うつ薬の影響を定量化するため本研究を実施した。General Hospital Psychiatry誌2026年1・2月号の報告。 米国国民健康栄養調査(NHANES)の7サイクル分(2005~18年)のデータを解析した(成人:1万1,569人)。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコア10以上とした。抗うつ薬の使用状況は薬局の認証で確認し、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬(TCA)、その他に分類した。死亡率との関連性は2019年まで延長し評価した。加重ロジスティック回帰分析を用いて、社会人口統計学的特性、心血管代謝関連疾患、ライフスタイルで順次調整したうえで、うつ病と死亡率との関連性を評価した。媒介解析では、抗うつ薬のパスウェイ効果を定量化し、層別モデルではクラス固有のハザード比(HR)を検証した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は単独で、全死亡リスクを61%増加させた(完全調整オッズ比:1.61、95%信頼区間:1.24〜2.08)。・抗うつ薬の使用は、うつ病による総死亡率の27.3%に影響を及ぼしていた(p<0.001)。・処方の傾向では、SSRIが主流であり(12.7%→20.1%)、SNRIが急速に増加(3.4%→6.1%)、TCAが減少(2.5%→1.8%)していることが示された。・重要点として、抗うつ薬クラスによって死亡率への影響が異なっていた。すなわち、SNRIは、死亡リスクの低下(HR:0.72)と関連し、SSRIは中立的であった(HR:0.93)。一方、TCAではリスク増加が認められた(HR:1.19)。 著者らは「うつ病は、併存疾患とは無関係に死亡率を大きく上昇させるが、抗うつ薬の選択はこのリスクを緩和することが示唆された。抗うつ薬の選択バイアスの影響が残存する可能性はあるものの、SNRIは生存率向上に有効であり、高リスク集団においてTCAよりもSNRIが優先的に使用されることを裏付けている。本結果は、抗うつ薬クラスがうつ病管理における重要な効果修飾因子であることを示しており、薬物疫学的エビデンスを実臨床に統合する必要性を示唆している」とまとめている。

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第44回 進行したアルツハイマー病が「元に戻る」? 驚きの最新研究で見えた治療の新たな光

「進行したアルツハイマー病は『不可逆』である」。 長年、一度失われた認知機能は元には戻らないというのが定説でした。しかし、2025年12月にCell Reports Medicine誌に発表された研究は、その常識を覆す可能性を秘めています1)。 今回は、進行したアルツハイマー病の状態から認知機能を「回復」させたという最新の研究成果と、その鍵を握る「NAD+」という物質について解説していきます。「手遅れ」の状態から記憶力が復活? アルツハイマー病の治療薬といえば、最近話題のレカネマブやドナネマブのように、脳に溜まった「アミロイドβ」というゴミを取り除くことで、病気の進行を「遅らせる」ものが主流です。しかし、今回の研究チームが報告したのは、進行を遅らせるだけでなく、進行した症状を「逆転」させたという衝撃的なデータでした。 研究チームが使用したのは、遺伝子操作によって重度のアルツハイマー病を発症するようにしたマウスです。このマウスに対し、人間で言えばすでに認知症がかなり進行し、脳内の炎症や神経細胞の損傷が進んでいる「進行期」にあたる段階から、「P7C3-A20」という化合物を投与し始めました。 通常であれば、この段階のマウスは記憶力や学習能力が著しく低下しています。しかし、この化合物を投与されたマウスたちは、驚くべき回復を見せました。 たとえば、新しい物体を見分けるテストや、プールの中で逃げ場所を探すテストにおいて、健康なマウスと変わらないレベルまで成績が回復したのです。 さらに、脳の内部を詳しく調べると、以下のような変化が起きていました。 血液脳関門の修復: 脳を有害物質から守るバリア機能(血液脳関門)が壊れていたのが、修復されていました。 炎症と酸化ストレスの減少: 脳内の慢性的な炎症や、細胞を錆びつかせる酸化ストレスが劇的に抑えられていました。 神経細胞の保護: 新しい神経細胞が生まれる機能が回復し、既存の神経細胞の死滅も防がれていました。 これは、単に「進行が止まった」だけでは説明がつかない、脳機能の「再生」に近い現象が起きたことを示唆しています。鍵を握る「NAD+」:脳のエネルギー通貨 では、この「P7C3-A20」という化合物は、一体何をしたのでしょうか? その答えは、「NAD+」という物質の調整にあります。 NAD+は、私たちのすべての細胞の中に存在し、エネルギーを生み出したり、傷ついたDNAを修復したりするために不可欠な「燃料」のようなものです。研究チームは、アルツハイマー病のマウスや、実際の人間の患者さんの脳内でも、このNAD+のバランス(恒常性)が崩れ、枯渇していることを突き止めました。 つまり、脳がダメージを受けたとき、それを修復するための「エネルギー(NAD+)」が足りず、防御システムが崩壊しているのがアルツハイマー病の進行に深く関わっているようなのです。 今回使用された「P7C3-A20」は、このNAD+を作る酵素を活性化させることで、脳内のNAD+レベルを正常に戻す働きをしました。重要なのは、NAD+を過剰に増やすのではなく、「正常なレベルに戻した」という点です。「アミロイドβがあっても発症しない人」の謎 さらにこの研究が興味深いのは、マウスだけでなく、人間のデータともリンクしている点です。 実は、亡くなった高齢者の脳の解剖を行うと、脳内ではアミロイドβの蓄積など、アルツハイマー病の特徴がはっきりと見られるにもかかわらず、生前は認知症を発症していなかった人が一定数存在します。 「なぜ彼らは、脳にゴミが溜まっていても認知症にならなかったのか?」 この長年の謎に対し、今回の研究は一つの答えを提案しています。研究チームが認知症にならなかった人の脳を調べたところ、彼らの脳内ではNAD+を作り出すシステムが正常に保たれていたのです。 つまり、アミロイドβなどのゴミがあっても、NAD+という「燃料」が十分にあり、脳の修復システム(レジリエンス=回復力)が正常に働いていれば、認知症の発症を防げる可能性があるというわけです。ただし、ぬか喜びは禁物 ここまで読むと、「NAD+のサプリを飲めばいいのでは?」「もうアルツハイマー病は治る病気になったのか?」と期待してしまうかもしれません。しかし、冷静になるべきいくつかの重要な「壁」があります。 まず、今回使われたのは、遺伝子操作によって強制的にアルツハイマー病を発症させたマウスです。人間のアルツハイマー病は、遺伝要因だけでなく、生活習慣や加齢など複雑な要因が絡み合って発症するため、マウスで効いた薬が人間でも同じように効くとは限りません。 また、「NAD+を増やせばいい」と単純に考えるのは危険です。過去の研究では、NAD+の前駆体(材料となる物質)を過剰に摂取すると、NAD+レベルが異常に高くなりすぎてしまい、たとえばがん細胞の増殖を助けてしまうリスクなどが指摘されています。今回のP7C3-A20という薬剤は、NAD+を「正常範囲」に留める特性があったため成功しましたが、市販のサプリメントで同様の安全で精密なコントロールができるかは不明です。 さらに、このP7C3-A20という化合物も、まだ人間での臨床試験の結果が出ているわけではありません。人間でも効果が見られるか、安全に使えるかを確認するには、それ相応のプロセスが必要です。私たちが知っておくべきこと それでも、この研究が示した「希望」は色褪せないでしょう。これまでアルツハイマー病の治療は「原因と思わしき物質(アミロイドβなど)を取り除く」ことに主眼が置かれてきました。しかし今回の研究は、「脳の回復力(レジリエンス)を高める」という新しいアプローチが、すでに進行してしまった病気に対しても有効である可能性を示しました。 「死んでしまった神経細胞は元には戻らない」というこれまでの常識に対し、実は細胞が死滅するずっと手前の段階で、エネルギー不足によって機能不全に陥っているだけの細胞が多くあり、それらは救済可能かもしれないのです。 ただし、今の私たちができることは、怪しいサプリメントに飛びつくことではなく、この「脳の回復力」に着目した新しい治療開発の行方に注目し続けることでしょう。そして、規則正しい生活や運動が、このNAD+レベルを含む脳の代謝システムを維持するのに良い影響を与える可能性についても、改めて検討されるべきかもしれません。 1) Chaubey K, et al. Pharmacologic reversal of advanced Alzheimer's disease in mice and identification of potential therapeutic nodes in human brain. Cell Rep Med. 2025 Dec 22. [Epub ahead of print]

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重度の精神疾患患者、コーヒー1日4杯で生物学的年齢が5歳若返る?

 テロメア長は細胞老化の指標であり、重度の精神疾患患者は一般集団よりもテロメア長が短い傾向にある。コーヒーの摂取は、酸化ストレスを軽減し、テロメア長の短縮などの生物学的老化プロセスの予防に役立つ可能性があるといわれている。英国国民保健サービスは、1日のカフェイン摂取量を400mg(コーヒー4杯分)に制限することを推奨している。しかし、精神疾患患者におけるコーヒー摂取とテロメア長の役割は、依然として明らかではなかった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのVid Mlakar氏らは、重度の精神疾患におけるコーヒー摂取とテロメア長との関連を評価するため、横断的研究を実施した。BMJ Mental Health誌2025年11月25日号の報告。 対象は、ノルウェーTOP研究に参加した精神疾患患者436例(統合失調スペクトラム症:259例、感情障害:177例)。白血球テロメア長は、血液からリアルタイムPCR(qPCR)を用いて測定した。コーヒー摂取量は、患者の自己申告により評価し、1日当たりのカップ数(0杯、1~2杯、3~4杯、5杯以上)で定量化した。 主な結果は以下のとおり。・テロメア長とコーヒー摂取量の間に逆J字型が認められた。1日3~4杯でピークに達し、4杯を超えると減少した(F=3.29、p=0.02)。・テロメア長の差が最も長かったのは、推奨最高用量を摂取した患者と非摂取者の間であった(F=6.13、p=0.01)。・推奨用量内でコーヒーを摂取した患者は、交絡因子調整後、テロメア長が長かった。これは、生物学的年齢の5歳若い状態に相当する値であった。 著者らは「推奨用量内でのコーヒー摂取は、重度の精神疾患におけるテロメア長と関連しており、生物学的年齢の5歳若返りに匹敵する値が示された」と結論付けている。

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年を取っても「新庄監督のように真っ白な歯にしたい!」、口元は社会交流の出発点【外来で役立つ!認知症Topics】第37回

歯科領域と認知障害の密接な関係筆者は東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)の同窓会館内で勤務しているので、歯科関係者との連携も少なくない。それだけに、軽度認知障害(MCI)の診察をしている他の先生方と比べて、口腔領域の話題に触れることが多いほうだろう。認知障害に関わる歯科領域の課題としては、咀嚼や嚥下障害、誤嚥性肺炎、また基本となる「口からの食物摂取」といったものがすぐに思い浮かぶ。ところが実際には、それら以上に「自分の口元の美醜や口の臭いなどが人からどう見られるか」を密かに悩む人が少なくないようだ。当然かもしれないが、これは難聴者が他者との交流を遠慮して積極的になれないのと似た傾向を生む。「口腔ケア」の真意と認知症予防への期待さて本稿のテーマである「口腔ケア」だが、私自身、以前はこの言葉を漠然と使っており、正しく理解してこなかった。改めて調べてみると、口腔ケアとは、単に歯磨きなどで口腔内の清潔を保つだけでなく、口腔機能の維持やその健康度向上のためのリハビリまでを含む幅広い内容を指す。歯や歯茎、舌、口腔粘膜、義歯を含む口の中の清掃、口腔内や口周りのマッサージ、咀嚼や嚥下のトレーニングまでが含まれる。こうした口腔ケアは「器質的ケア」と「機能的ケア」の2種類に分類される。前者は歯周病や誤嚥性肺炎の予防のために口の中を清潔に保つための口腔ケアを、後者は口腔機能つまり食べる、話す、表情をつくるなど口の働きの維持、回復を目指すケアを指す。口腔ケアの一般的な効果と目的は次のようにまとめられる。1.虫歯や歯周病など口腔内トラブルの減少2.口腔中の細菌が原因となる誤嚥性肺炎や感染症などの予防3.味覚改善による食欲増進4.発音改善による円滑なコミュニケーションの獲得5.認知症予防5つ目の「認知症予防」については、従来、口の開け閉めや咀嚼することが、脳(とくに海馬)に刺激を与えて脳の活性化につながるといわれてきた。それに加え、最近では「歯周病菌が脳内の炎症を惹起することで、アルツハイマー病を発生・悪化させるのではないか」とする観点からも注目されている。社会交流を妨げる「口元劣等感」の正体一方で、認知症予防における「社会交流」の重要性は確立している。冒頭で触れたMCIの領域において、他者とのコミュニケーションへの積極性という観点からの口腔ケアは、これまではさほど注目されてはこなかった。しかし、社会交流を妨げるのが、この口周囲の問題から生じる「会話しない」「しゃべらない」である。経験上、そこには2つの要因がある。1つは、口元の外見に自信がないことである。ある程度お年を召しても、いや、お年を召したからこそ、口元の美しさを気にする人は結構多い。人と会話するとき、「相手に口元を見られて、歯並びが悪いことがわかってしまうので、口をしっかり開けてしゃべれない」「人前でマスクを外せない」と言う人もいる。こうした口元劣等感は歯並びだけではなく、残歯の数、義歯の状態、歯の色なども関係する。そしてもう1つは口臭である。もっとも、その多くは主観にすぎず、実際には問題ないことも少なくない。しかしいずれにせよ、こうした悩みは他者との会話を減らし、社会交流を通した脳の活性化や「脳トレ」が不十分になりやすい。また、大きな声で滑舌良く喋ったり歌ったりすることができにくくなれば、発声や咀嚼・嚥下、さらには呼吸機能面にも悪影響を及ぼしかねない。若者だけではない「白い歯」願望こうした口元への劣等感の中で、比較的対応が容易と思われるのが「歯の色」である。筆者はこれまで、歯のホワイトニングは10代・20代の若者が主体だと思っていた。ところが実際には、中年期以降の利用者が多いということを最近知った。ホワイトニングの希望に関して尋ねてみると、あっけにとられる返事がよく返ってくる。「テレビで見る歌手や、プロ野球日本ハム新庄 剛志監督のように真っ白にしたい」と言うのである。筆者が「あまりに白いのは不自然では。年齢相応の白さがあると思うのだが」などと伝えても、「見栄えを良くするには、あれくらい真っ白でないと」と述べる人も少なくない。実際、ホワイトニングの素材にはさまざまな白さの度合いが選べ、歯科医院ばかりでなく自宅で行えるものも普及している。自覚しにくい口臭への対策また、口臭は自己識別が難しいだけに、問題ないのに気にする人が多い反面、強い臭いに自覚がない人も多い。最近では「口臭チェッカー」といって、1万円以内程度で購入できる口臭を客観評価する機器も出回っている。口臭の大部分は口腔内に原因があり、その多くは舌苔と歯周病だが、とくに前者の関わりがより大きい。原因物質では硫化水素とメチルメルカプタンが約90%を占める。これらは口腔内の嫌気性菌が、唾液・血液・剥離上皮細胞・食物残渣中の含硫アミノ酸を分解・腐敗させて産生される揮発性硫黄化合物である。歯周病には、歯磨きならぬ「歯茎磨き」が何よりだそうだ。筆者の後輩の歯科医は、1日6回の歯茎磨きをやれば、1ヵ月以内に効果てきめんと教えてくれた。舌苔に対しては、専用の舌ブラシやスポンジブラシなどを使って、舌表面を清潔にすることである。認知障害の有無にかかわらず、口元コンプレックスが、社会交流、つまり他者とのコミュニケーションに及ぼす影響は少なくないようだ。それだけに、MCIの方々の診察において、適切なアドバイスや歯科医への紹介は欠かせない。

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認知症患者への抗精神病薬、各薬剤の最適な投与量は?

 アルツハイマー病を含む認知症の神経精神症状(NPS)に対する抗精神病薬は、広く使用されている一方で、有効性と安全性のバランスが依然として大きな臨床課題となっている。東京・iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、認知症のNPSに対する各種抗精神病薬の用量依存的な有効性と忍容性を比較するため、用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌2026年2月号の報告。 CENTRAL、PubMed、CINAHL、ClinicalTrials.govより網羅的に検索し、認知症のNPSに対する抗精神病薬を評価したランダム化比較試験を特定した。アルツハイマー病を含む認知症患者を対象に、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンのさまざまな用量における有効性(NPS重症度の変化)および忍容性(有害事象による治療中止)を評価するため、用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、20研究、5,844例を含めた。・研究に含まれた抗精神病薬のほとんどが、有効性と忍容性の両方で、おおむね正の用量反応関係を示した。しかし、オランザピンは有効性に関してベル型曲線を示した。・アリピプラゾール10mg、ブレクスピプラゾール1~2.5mg、リスペリドン1~2mg、オランザピン2.5~5mgのみが、プラセボよりも有意に有効であった。・アリピプラゾール10mgまで、ブレクスピプラゾール3mgまで、リスペリドン1mgまで、オランザピン2.5mgまでおよび15mg、クエチアピン200mgまでであれば、プラセボと比較し忍容性が有意に低下することはなかった。・さらに、いくつかの抗精神病薬では、特定の用量間で有効性と忍容性に有意差が認められた。 著者らは「アリピプラゾール10mg、ブレクスピプラゾール1~2.5mg、リスペリドン1mg、オランザピン2.5mgは、いずれも有効性と忍容性が良好であり、好ましい治療選択肢となる可能性が示唆された。本モデルにはいくつかの不確実性要因が含まれているため、本知見は慎重に解釈する必要があり、臨床的意思決定を支援するための暫定的な枠組みとして捉えるべきである」としている。

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高脂肪乳製品は認知症から脳を守る可能性

 チーズは休日の集まりにしばしば登場する食品だが、実は脳の健康を守っているかもしれないと誰が想像しただろうか。ルンド大学(スウェーデン)栄養学准教授のEmily Sonestedt氏らの研究によると、高脂肪のチーズやクリームの摂取量が多いことは、認知症リスクの低下に関連している可能性のあることが明らかになったという。この研究結果は、「Neurology」に12月17日掲載された。 Sonestedt氏は、「何十年もの間、高脂肪食と低脂肪食のどちらが良いのかを巡る議論に基づき健康に関するアドバイスが行われてきたが、その過程で、チーズは摂取を制限すべき不健康な食品と見なされることもあった。われわれの研究では、一部の高脂肪乳製品が、実際には認知症リスクを低下させる可能性のあることが示された。これは、脂肪と脳の健康に関する長年の前提に疑問を投げかける研究結果だ」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、平均年齢58.1歳のスウェーデン人2万7,670人のデータを用いて、高脂肪チーズの摂取量が多い(1日50g以上)群と、少ない(1日15g未満)群の脳の健康状態を比較した。高脂肪チーズとは脂肪分が20%超のものを指し、チェダー、ブリー、ゴーダなどが該当する。一方、高脂肪クリームは通常、脂肪分が30~40%で、ホイップクリームやクロテッドクリームなどが該当する。研究参加者は、過去1週間の食事の記録を提出したほか、過去数年間に特定の食品をどの程度の頻度で食べていたかや、食品の調理方法についても報告した。 中央値25年間の追跡期間中に3,208人が認知症を発症した。解析の結果、高脂肪チーズの摂取量が多い群では少ない群に比べて、全ての認知症のリスクが13%、血管性認知症のリスクが29%、それぞれ低いことが示された。アルツハイマー型認知症に関しては、その遺伝的リスク因子(APOE ε4)を保有していない人においてのみ、高脂肪チーズの摂取量の多いことが13%のリスク低下と関連していた。さらに、1日20g以上の高脂肪クリームを摂取していた群では、全く摂取していなかった群と比較して認知症リスクが16%低いことが示された。一方、低脂肪のチーズまたはクリーム、牛乳(高脂肪および低脂肪)、バター、ヨーグルトやバターミルクなどの発酵乳製品(高脂肪および低脂肪)の摂取と認知症リスクとの間に関連は認められなかった。 ただし、この研究デザインでは高脂肪のチーズやクリームの摂取と認知症のリスク低下に因果関係があることは証明できず、関連が示されたに過ぎないことを研究チームは付け加えている。 Sonestedt氏は、「この結果は、脳の健康への影響という観点では、全ての乳製品が同じではないことを示唆している。高脂肪のチーズやクリームの摂取量が多いことは認知症リスクの低下と関連していたが、他の乳製品や低脂肪の代替品では同様の関連は認められなかった」と述べている。また、「今回の結果を確認するとともに、特定の高脂肪乳製品に実際に脳の保護効果があるのかを詳細に調べるため、さらなる研究が必要である」としている。 台北医学大学(台湾)のTian-Shin Yeh氏は付随論評の中で、本研究の重要な限界として、食事摂取が評価されたのは追跡開始時の1回のみであり、25年間の追跡期間における長期的な食習慣が反映されていない可能性があることを指摘している。同氏は、「今後、異なる食習慣を持つ多様な集団において、この結果の再現性を確認することが不可欠である。食事摂取の長期的な変化をより正確に捉えるためには、食事評価を繰り返し行う前向きコホート研究を実施する必要がある」と述べている。

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片頭痛患者のアルコール制限は必要か?

 アルコールは、世界中で広く消費されている飲料である。一方、片頭痛、緊張型頭痛(TTH)、そのほかの一次性頭痛を含む頭痛は、有病率が非常に高い。疫学研究においてアルコール摂取と頭痛の相関関係が示されているが、特定の病態生理学的メカニズムはいまだに解明されていない。ポーランド・ワルシャワ医科大学のAnna Zdunska氏らは、さまざまな頭痛の誘因となるアルコールの問題、頭痛を有する患者のアルコール摂取について報告した論文、アルコールと頭痛の病態生理学的および臨床的側面を扱った論文をレビューした。Nutrients誌2025年11月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・本レビューにおいて、アルコールは片頭痛および非片頭痛性の頭痛のいずれにも影響を及ぼすと結論付けられた。・二次性頭痛に分類されるアルコール誘発頭痛は、拍動性の両側性頭痛で、身体活動によって悪化し、アルコール摂取によって誘発される。・TTHはアルコール摂取によって誘発される可能性があり、TTH患者は片頭痛患者よりもアルコール関連の問題を抱えている。・群発頭痛(CH)はアルコールによって引き起こされることが多いが、驚くべきことに多くのCH患者は発作中であってもアルコールを摂取していた。・アルコールと片頭痛との関係は複雑であり、アルコール飲料に含まれる多くの成分が痛みの誘発に影響を及ぼし、片頭痛発作の原因となる可能性が示唆された。・赤ワインは片頭痛発作の誘因として最も頻繁に挙げられるアルコール飲料の1つであるが、少数のプロスペクティブ研究においては必ずしもこの知見が裏付けられているわけではない。・アルコールの安全な摂取量は存在しないため、できるだけアルコール摂取を避けることが推奨される。

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親のうつ病の特定の症状は子どもの報酬処理に影響か

 親にうつ病があると、その子どももうつ病を発症しやすいことが知られているが、こうしたリスクは、うつ病のある特定の症状に関連している可能性のあることが、新たな研究で示唆された。物事を楽しめない、あるいは物事に興味を持てないといったタイプの親の症状は、周囲で起きていることに対する子どもの反応の仕方に影響を与え得ることが示されたという。米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(SUNY-BU)気分障害研究所のBrandon Gibb氏とElana Israel氏によるこの研究の詳細は、「Journal of Experimental Child Psychology」2026年2月号に掲載された。 Gibb氏らによると、子どもの脳が肯定あるいは否定的なフィードバックにどのように反応するかには、親のうつ病が影響を及ぼすことがすでに明らかにされている。その原因に、物事に対する興味や喜びが失われる状態である「アンヘドニア(無快感症)」と呼ばれるうつ病の症状が関わっている可能性があるとGibb氏らは言う。 Gibb氏らは今回の研究で、7〜11歳の子どもとその親217組を対象に実験を行った。この実験は、親のアンヘドニアの症状が、子どもの報酬系における肯定的あるいは否定的なフィードバック処理にどのような影響を与えるのかを明らかにする目的で計画された。 Israel氏は、「この研究は、物事への興味や関心が薄れ、喜びを感じにくくなるというリスク要因がある場合、それが環境からのフィードバックに対する脳の反応の仕方に反映される可能性があるという考え方に基づいている」と説明している。また同氏は、「親に強いアンヘドニアを伴ううつ病があると、その子どもでは反応が弱くなると予想され、その一方で他のうつ病の症状は、理論的にはこの特定の脳反応にはそれほど強く関連しないはずだ」とニュースリリースの中で述べている。 実験では、子どもに2枚の扉を見せ、向こう側に賞金がある扉を当てるよう指示した。正解の扉を選ぶと賞金が得られ、間違えると失う仕組みだった。その結果、親のアンヘドニアの症状のレベルが高いほど、子どもは賞金を獲得した場合でも、逃した場合でも、その反応は鈍くなる傾向が認められた。一方、アンヘドニアを伴わないうつ病の症状レベルが高い親の場合では、子どもの反応が鈍化する傾向は見られなかった。 Israel氏は、「この結果から言えるのは、親のアンヘドニアに特有の何かが子どもの神経反応に影響を与える可能性があるということだ。さらに、うつ病の中核的特徴である興味や喜びの喪失、関心の低下に陥るリスクが高い子どもの特定につながる研究結果でもある」と述べている。 研究チームは、今後の研究課題として、アンヘドニアの症状がある親が治療を受けたり、状態が改善し始めたりした場合に、家族の相互作用がどのように変化するのかを調べることを挙げている。また、同級生からの社会的フィードバックなど他の種類のフィードバックに対する子どもの反応にも親のうつ病による影響があるのかどうかについて検討することが重要であると述べている。 Israel氏は、「前向きな気分や関心、良好な親子関係の強化を目的とした介入について検討している研究者もいる。今回の知見を活かして、そのような介入による効果が得られる可能性が最も高い家族を特定できるかどうかを検証することが重要だ」と述べている。

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