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精神科医が教える 休みベタさんの休み方

本当は疲れているのに、「いつのまにか、休みたくても休めなくなってしまった」、すべての人へサラリーマン時代、社内外や年次を問わず発生するメンタル問題に多数遭遇した著者。解決に向けて付き添う中で目にした産業医の現状に落胆するも、とあるクリニックの精神科医の働き方に感銘を受け、精神科医となった著者が「休みベタさん」に伝えたいヒントが詰まった1冊。今どきの、一見働きやすそうでいて、なかなか働きづらい職場。ついつい頑張りすぎて、心のバランスを崩してしまう人は後を絶たちません。休み方のノウハウをどれだけ知っても、やっぱり休む気になれない。そんな「休みベタさん」の、不安や焦りをなくして、休み上手になるコツを紹介。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する精神科医が教える 休みベタさんの休み方定価1,650円(税込)判型四六判頁数214頁発行2025年8月著者尾林 誉史ご購入はこちらご購入はこちらAmazonでご購入の場合はこちら

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日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-I、症状はどの程度改善するか

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症状だけでなく抑うつ症状の改善にも大きな可能性を秘めている。しかし、その効果により健康者と同等レベルまで症状が改善するかは不明である。東京家政大学の岡島 義氏らは、日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-Iにより、不眠症状および抑うつ症状が健康者レベルまで改善するかを検証するため、本研究を実施した。BioPsychoSocial Medicine誌2025年7月21日号の報告。 対象は、日本人労働者752例。不眠症およびうつ病尺度のカットオフスコアを用いて、不眠症群、うつ病群、不眠症/うつ病併存群、健康群の4群に分類した。すべての群に対してデジタルCBT-Iを2週間実施し、治療後、1ヵ月後、3ヵ月後の追跡調査でスコア変化を比較した。 主な結果は以下のとおり。・治療後から3ヵ月後の追跡調査において、不眠症群および不眠症/うつ病併存群における不眠症状の有意な減少が認められた。【不眠症群】Hedges'g:1.07〜1.52【不眠症/うつ病併存群】Hedges'g:1.17〜1.41・不眠症/うつ病併存群では、抑うつ症状の有意な改善も認められた(g:0.38〜0.70)。・治療後、1ヵ月後、3ヵ月後の追跡調査において、不眠症群と健康群の間で不眠症状に有意な差が認められ、不眠症/うつ病併存群と健康群の間でも抑うつ症状に有意な差が認められた。 著者らは「デジタルCBT-Iは、日本人労働者の不眠症状および抑うつ症状を効果的に軽減することが確認されたが、3ヵ月以内に健康者レベルまで改善することはなかった」と結論付けている。

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治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール併用vs.rTMS併用vs.SNRI切り替え

 米国・ハーバード大学のClotilde Guidetti氏らは、治療抵抗性うつ病患者を対象に、アリピプラゾールまたは反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による抗うつ薬の増強とベンラファキシン徐放性/デュロキセチンへの切り替えが生活の質(QOL)に及ぼす影響を比較するため、多施設共同非盲検有効性比較試験であるASCERTAIN-TRD研究の副次解析を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2025年8月11日号の報告。 事前に指定した副次解析において、治療抵抗性うつ病患者をアリピプラゾール増強群、rTMS増強群、ベンラファキシン徐放性/デュロキセチンへの切り替え群に1:1:1でランダムに割り付け、8週間の治療を行った。治療抵抗性うつ病の定義は、マサチューセッツ総合病院の抗うつ薬治療反応質問票に基づき、適切な用量および期間の抗うつ薬治療を2回以上実施しても十分な治療反応が得られなかった場合とした。QOL評価は、本研究の主要な副次的評価項目として事前に設定されており、Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire(Q-LES-Q-SF)短縮版を用いて評価した。反復測定を用いた混合効果モデルにより分析した。本研究は、2017年7月13日〜2021年12月22日に実施した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン後の1回以上のQ-LES-Q-SF測定を行った治療抵抗性うつ病患者258例において、アリピプラゾール増強群は、切り替え群と比較し、QOLの優位性が認められたが(p=0.002)、rTMS増強群では認められなかった(p=0.326)。・エンドポイントにおけるQ-LES-Q-SFスコアのベースラインからの変化は、アリピプラゾール増強群で10.61±1.0、rTMS増強療法で11.59±1.1、切り替え群で8.68±0.9であった。 著者らは「rTMS群のサンプル数が予想よりも少なかったため、統計学的に有意な差が認められなかった可能性がある」としながらも「治療抵抗性うつ病患者に対するアリピプラゾール増強療法は、rTMS増強療法と異なり、ベンラファキシン徐放性/デュロキセチンへの切り替えよりもQOLを有意に改善することが示された」と結論付けている。

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大脳皮質基底核変性症〔CBD:corticobasal degeneration〕

1 疾患概要■ 定義大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)は、進行性に運動症状および皮質症状を呈するまれな神経変性疾患である。病理学的には4リピートタウ(4R tau)の異常蓄積を特徴とするタウオパチーに分類され、進行性核上性麻痺(PSP)と並ぶ代表的な非アルツハイマー型タウオパチーである。1968年にRebeizらが初めて報告し、当初は“corticodentatonigral degeneration with neuronal achromasia”と呼ばれたが、1989年にGibbらにより現在の病理診断名であるCBDの呼称が確立された。臨床的には非対称性のパーキンソニズムと皮質徴候を呈するが、この臨床像はCBD以外の病理を背景にすることも多く、臨床診断名としては「大脳皮質基底核症候群(corticobasal syndrome:CBS)」が用いられる。■ 疫学CBDは稀少疾患であり、わが国での有病率は10万人当たり約9人程度と報告されている。発症年齢は70歳代が中心で、性差については明確な傾向は認められていない。リスク因子としては、同じ4リピートが蓄積するタウオパチーであるPSPと共通するものとしてMAPT遺伝子やMOBP遺伝子が疾患感受性遺伝子として同定されているほか、CBDに特異的なものとしてInc-KIF13B-1遺伝子やSOS1遺伝子などCBDに特異的な遺伝的要因も報告されている。環境要因に関しては明らかになっていない。■ 病因CBDはタウ蛋白異常蓄積を主体とする神経変性疾患である。4R tauが神経細胞やグリア細胞に異常沈着し、神経原線維変化やアストロサイトの変性を引き起こす。とくにCBDに特徴的なのはアストロサイトの変化で、astrocytic plaqueの形成が診断上重要な所見とされる。神経細胞では神経原線維変化は少なく、プレタングル(神経原線維変化が起こる前の段階の状態)が主体である。病変分布は前頭葉・頭頂葉皮質に目立ち、しばしば左右非対称性を示す点が特徴である。クライオ電子顕微鏡にて、タウ蛋白は4層の折り畳み構造をしていることが判明した。■ 症状CBDは多彩な臨床症状を呈するが、典型例では左右非対称性の運動緩慢、固縮、ジストニア、ミオクローヌスなどの錐体外路徴候に加え、失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候などの大脳皮質徴候を示す。症状が一側から始まり、徐々に対側にも及ぶ点がCBDの重要な特徴である。認知機能障害や言語障害、行動異常も出現し得る。また、嚥下障害、構音障害など球症状も進行に伴って出現する。進行はパーキンソン病より速く、レボドパへの反応性は乏しい(表)。表 大脳皮質基底核変性症と進行性核上性麻痺の比較画像を拡大する■ 分類CBDの臨床病型は多彩であり、最も頻度の高いのはCBSであるが、全体の約40%にとどまる。その他の主要な臨床型として、PSP様症候群(Progressive Supranuclear Palsy Syndrome:PSPS)前頭葉性行動・空間症候群(frontal behavioral-spatial syndrome:FBS)非流暢/失文法型原発性進行性失語(Nonfluent/Agrammatic variant of Primary Progressive Aphasia:naPPA)アルツハイマー病様認知症が知られている。ただし、アルツハイマー病様認知症は、アルツハイマー病との鑑別が難しいため、Armstrongらによる臨床診断基準には含まれていない。また、まれに後部皮質萎縮症やレビー小体型認知症に類似した臨床像を呈する例もある。■ 予後CBDは進行性の神経変性疾患であり、発症から平均10年程度で高度機能障害に至る。多くの症例では、運動症状と認知機能障害が並行して進行し、日常生活動作は急速に低下する。レボドパなど抗パーキンソン病薬は無効あるいは効果が一時的であり、根本的治療法は存在しない。2 診断CBDの臨床診断は困難である。2013年にArmstrongらによる臨床診断基準が作成され、CBSのみならずFBS、naPPA、PSPSなど多様な臨床表現型を対象としている。ただし感度・特異度はいまだ十分でなく、臨床診断のみで確定することは難しい。画像検査では左右非対称の前頭葉・頭頂葉萎縮を認めることがあり、頭部MRIが有用である。脳血流SPECTやFDG-PETが補助的に用いられる。近年では脳脊髄液(CSF)や血液バイオマーカー、タウPETを用いた研究が進められているが、確立した診断法はまだ存在しない。最終的な確定診断は、病理診断に依存する。鑑別すべき疾患としてはPSP、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、自己免疫性パーキンソニズム(IgLON5抗体関連疾患など)がある。とくにPSPとの鑑別は臨床的に最も問題となる。CBDは難病法に基づく指定難病(指定難病7)に指定されており、厚生労働省が定める診断基準を満たした場合に医療費助成が受けられる。3 治療現在、CBDに対する根本的治療は存在しない。治療は対症的であり、薬物療法とリハビリテーションが中心となる。運動症状に対してはレボドパを試みるが、効果は限定的で持続しないことが多い。ジストニアやミオクローヌスに対しては抗てんかん薬や筋弛緩薬が用いられることがある。非流暢性失語や行動障害には言語療法、作業療法、心理社会的介入が重要である。嚥下障害が進行すれば栄養管理や誤嚥予防が不可欠となる。根本的治療としては、タウを標的とした分子標的薬の開発が進行している。抗タウ抗体(tilavonemab、gosuranemab)はPSPで第II相試験が行われたが有効性を示せなかったため、現在はタウの中間ドメインを標的とする抗体や、タウ蓄積を抑制する低分子医薬品の臨床試験が進められている。また、RNA干渉や遺伝子治療など革新的治療法も研究段階にある。CBD単独を対象とした臨床試験はあまり行われていない。4 今後の展望CBDは病理学的に定義される疾患であるため、臨床的に早期診断することはきわめて難しい。したがって、画像や体液バイオマーカーの確立が喫緊の課題である。近年の研究では、血漿やCSFにおけるリン酸化タウ(p-tau)や神経フィラメント軽鎖(NfL)が候補とされ、タウPETによる分布解析も進められている。また、わが国におけるJ-VAC研究により、CBS症例から病理診断を予測する臨床特徴の抽出が試みられており、PSPとの鑑別に一定の知見が得られている。さらにタウを標的とした疾患修飾療法の開発が進んでおり、将来的にはCBDの進行抑制が可能になることが期待される。そのためにも、早期の症例登録と臨床試験参加が重要である。5 主たる診療科脳神経内科、リハビリテーション科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 大脳皮質基底核変性症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金事業 神経変性疾患領域の基盤的調査研究班 『CBD診療マニュアル2022』(医療従事者向けのまとまった情報)Aiba I, et al. Brain Commun. 2023;5:fcad296.公開履歴初回2025年9月11日

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第27回 なぜ経済界トップは辞任したのか?新浪氏報道から考える、日本と世界「大麻をめぐる断絶」

経済同友会代表幹事という日本経済の中枢を担う一人、サントリーホールディングスの新浪 剛史氏が会長職を辞任したというニュースは、多くの人に衝撃を与えました1)。警察の捜査を受けたと報じられる一方、本人は記者会見で「法を犯しておらず潔白だ」と強く主張しています。ではなぜ、潔白を訴えながらも、日本を代表する企業のトップは辞任という道を選ばざるを得なかったのでしょうか。この一件は、単なる個人のスキャンダルでは片付けられません。日本の厳格な法律と、大麻に対する世界の常識との間に生じた「巨大なズレ」を浮き彫りにしているかもしれません。また、私たち日本人が「大麻」という言葉に抱く漠然としたイメージと、科学的な実像がいかにかけ離れているかをも示唆しているようにも感じます。本記事では、この騒動の深層を探るとともに、科学の光を当て、医療、社会、法律の各側面から、この複雑な問題の核心に迫ります。事件の深層 ― 「知らなかった」では済まされない世界の現実今回の騒動の発端は、新浪氏が今年4月にアメリカで購入したサプリメントにあります。氏が訪れたニューヨーク州では2021年に嗜好用大麻が合法化され、今や街の至る所で大麻製品を販売する店を目にします。アルコールやタバコのように、大麻成分を含むクッキーやオイル、チョコレートやサプリメントなどが合法的に、そしてごく普通に流通しています。新浪氏は「時差ボケが多い」ため、健康管理の相談をしていた知人から強く勧められ、現地では合法であるという認識のもと、このサプリメントを購入したと説明しています。ここで重要になるのが、大麻に含まれる2つの主要な成分、「THC」と「CBD」の違いです。THC(テトラヒドロカンナビノール)いわゆる「ハイ」になる精神活性作用を持つ主要成分です。日本では麻薬及び向精神薬取締法で厳しく規制されており、これを含む製品の所持や使用は違法となります。THCには多幸感をもたらす作用がある一方、不安や恐怖感、短期的な記憶障害や幻覚作用などを引き起こすこともあります。CBD(カンナビジオール)THCのような精神作用はなく、リラックス効果や抗炎症作用、不安や緊張感を和らげる作用などが注目されています。ただし、臨床的に確立されたエビデンスはなく、愛好家にはエビデンスを過大解釈されている側面は否めません。「時差ボケ」を改善するというエビデンスも確立していません。日本では、大麻草の成熟した茎や種子から抽出され、THCを含まないCBD製品は合法的に販売・使用が可能です。新浪氏自身は「CBDサプリメントを購入した」という認識だったと述べていますが、問題はここに潜んでいます。アメリカで合法的に販売されているCBD製品の中には、日本の法律では違法となるTHCが含まれているケースが少なくありません。厚生労働省も、海外製のCBD製品に規制対象のTHCが混入している例があるとして注意を呼びかけています2)。まさにこの「合法」と「違法」の境界線こそが、今回の問題の核心です。潔白を訴えても辞任、なぜ? 日本社会の厳しい目記者会見での新浪氏の説明や報道によると、警察が氏の自宅を家宅捜索したものの違法な製品は見つからず、尿検査でも薬物成分は検出されなかったとされています。また、福岡で逮捕された知人の弟から自身にサプリメントが送られようとしていた事実も知らなかったと主張しています。法的には有罪が確定したわけでもなく、本人は潔白を強く訴えている。にもかかわらず、なぜ辞任に至ったのでしょうか。その理由は、サントリーホールディングス側の判断にありました。会社側は「国内での合法性に疑いを持たれるようなサプリメントを購入したことは不注意であり、役職に堪えない」と判断し、新浪氏も会社の判断に従った、と説明されています。これは、法的な有罪・無罪とは別の次元にある、日本社会や企業における「コンプライアンス」と「社会的信用」の厳しさを物語っているのかもしれません。とくにサントリーは人々の生活に密着した商品を扱う大企業です。そのトップが、たとえ海外で合法であったとしても、日本で違法と見なされかねない製品に関わったという「疑惑」が生じたこと自体が、企業のブランドイメージを著しく損なうリスクとなります。結果的に違法でなかったとしても、「違法薬物の疑いで警察の捜査を受けた」という事実だけで、社会的・経済的な制裁が下されてしまう。これが、日本社会の現実です。科学は「大麻」をどう見ているのか?この一件を機に、私たちは「大麻」そのものについて、科学的な視点からも冷静に見つめ直す必要があるでしょう。世界中で医療大麻が注目される理由は、THCやCBDといった「カンナビノイド」が、私たちの体内にもともと存在する「エンドカンナビノイド・システム(ECS)」に作用するためです3)。ECSは、痛み、食欲、免疫、感情、記憶など、体の恒常性を維持する重要な役割を担っています。この作用を利用し、既存の薬では効果が不十分なさまざまな疾患への応用が進んでいます4)。がん治療の副作用緩和抗がん剤による悪心や嘔吐、食欲不振を和らげる効果。アメリカではTHCを主成分とする医薬品(ドロナビノールなど)がFDAに承認されています。難治性てんかんとくに小児の難治性てんかんにCBDが効果を示し、多くの国で医薬品として承認されています。その他多発性硬化症の痙縮、神経性の痛み、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、幅広い疾患への有効性が研究・報告されています。このように、科学の視点で見れば、大麻はさまざまな病気の患者を救う可能性を秘めた「薬」としての側面を持っています。「酒・タバコより安全」は本当か? リスクの科学的比較「大麻は酒やタバコより安全」という言説を耳にすることもあります。リスクという側面から、これは本当なのでしょうか。単純な比較はできませんが、科学的なデータはいくつかの客観的な視点を提供してくれます。依存性生涯使用者のうち依存症に至る割合は、タバコ(ニコチン)が約68%、アルコールが約23%に対し、大麻は約9%と報告されており、比較的低いとされます5)。しかし、ゼロではなく、使用頻度や期間が長くなるほど「大麻使用障害」のリスクは高まります。致死量アルコールのように急性中毒で直接死亡するリスクは、大麻には報告されていません6)。長期的な健康への影響精神への影響大麻の長期使用、とくに若年層からの使用は、統合失調症などの精神疾患のリスクを高める可能性が複数の研究で示されています。とくに高THC濃度の製品を頻繁に使用する場合、そのリスクは増大すると考えられています7)。また、うつ病や双極性障害との関連も指摘されていますが、研究結果は一貫していません。身体への影響煙を吸う方法は、タバコと同様に咳や痰などの呼吸器症状と関連します。心血管系への影響(心筋梗塞や脳卒中など)も議論されていますが、結論は出ていません8)。一方で、運転能力への影響は明確で、使用後の数時間は自動車事故のリスクが有意に高まることが示されています6)。国際的な専門家の中には、依存性や社会への害を総合的に評価すると、アルコールやタバコの有害性は、大麻よりも大きいと結論付けている人もいます。しかし、これは大麻が「安全」だという意味ではなく、それぞれ異なる種類のリスクを持っていると理解するべきでしょう。世界の潮流と日本のこれからかつて大麻は、より危険な薬物への「入り口」になるという「ゲートウェイ・ドラッグ理論」が主流でした。しかし近年の研究では、もともと薬物全般に手を出しやすい遺伝的・環境的な素因がある人が複数の薬物を使用する傾向がある、という「共通脆弱性モデル」のほうが有力だと考えられています9)。アメリカでは多くの州で合法化が進みましたが、社会的なコンセンサスは得られていません。賛成派は莫大な税収や犯罪組織の弱体化を主張する一方、反対派は若者の使用増加や公衆衛生への悪影響を懸念しています。合法化による長期的な影響はまだ評価の途上にあり、世界もまた「答え」を探している最中です。ただし、新浪氏の問題は、決して他人事ではないと思います。今後、海外で生活したり、旅行したりする日本人が、意図せず同様の事態に陥る可能性は誰にでもあります。また、この一件は、私たちに大きな問いを投げかけています。世界が大きく変わる中で、日本は「違法だからダメ」という思考停止に陥ってはいないでしょうか。もちろん、法律を遵守することは大前提。しかし同時に、大麻が持つ医療的な可能性、アルコールやタバコと比較した際のリスクの性質、そして世界の潮流といった科学的・社会的な事実から目を背けるべきではありません。今回の騒動をきっかけに、私たち一人ひとりが固定観念を一度リセットし、科学に基づいた冷静な知識を持つこと。そして社会全体で、この複雑な問題について、感情論ではなく建設的な議論を始めていくこと。それこそが、日本が世界の「ズレ」から取り残されないために、今まさに求められていることなのかもしれません。 1) NHK. サントリーHD 新浪会長が辞任 サプリメント購入めぐる捜査受け. 2025年9月2日 2) 厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部. CBDオイル等のCBD関連製品の輸入について. 3) Testai FD, et al. Use of Marijuana: Effect on Brain Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Stroke. 2022;53:e176-e187. 4) Page RL 2nd, et al. Medical Marijuana, Recreational Cannabis, and Cardiovascular Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2020;142:e131-e152. 5) Lopez-Quintero C, et al. Probability and predictors of transition from first use to dependence on nicotine, alcohol, cannabis, and cocaine: results of the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC). Drug Alcohol Depend. 2011;115:120-130. 6) Gorelick DA. Cannabis-Related Disorders and Toxic Effects. N Engl J Med. 2023;389:2267-2275. 7) Hines LA, et al. Association of High-Potency Cannabis Use With Mental Health and Substance Use in Adolescence. JAMA Psychiatry. 2020;77:1044-1051. 8) Rezkalla SH, et al. A Review of Cardiovascular Effects of Marijuana Use. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2025;45:2-7. 9) Vanyukov MM, et al. Common liability to addiction and “gateway hypothesis”: theoretical, empirical and evolutionary perspective. Drug Alcohol Depend. 2012;123 Suppl 1:S3-17.

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砂糖の取り過ぎは認知症リスクと関連するか

 過剰な糖質の摂取は、認知症リスクの上昇と関連しているといわれているが、これまでの研究ではサンプル数が少なく、糖質の総量に着目しているため、特定の糖質サブタイプに関する調査は限られていた。中国・西安交通大学のYue Che氏らは、糖質の摂取量およびサブタイプと認知症リスクとの関係を評価するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年7月31日号の報告。 英国バイオバンク参加者のうち、24時間食事回想法を1回以上実施した17万2,516人を対象に分析を行った。糖質の総量およびサブタイプ(遊離糖、果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、その他の糖類)について、Cox比例ハザードモデルを用いて、認知症リスクに関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。性別による層別化分析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・糖類の総量(HR:1.292、95%CI:1.148〜1.453)、遊離糖の量(HR:1.254、95%CI:1.117〜1.408)が多い場合、認知症リスク上昇との関連が認められた。・乳製品以外の外因性糖類(HR:1.321、95%CI:1.175〜1.486)、ショ糖(HR:1.291、95%CI:1.147〜1.452)においても、認知症リスクとの正の相関が認められた。・これらの関連性は、女性において顕著であり、糖類の総量および遊離糖、ブドウ糖、ショ糖、乳製品以外の外因性糖類の摂取量の増加は、それぞれ独立して認知症リスク上昇との関連が認められた。一方、男性では有意な関連は認められなかった。 著者らは「糖類の総量および遊離糖、ショ糖、乳製品以外の外因性糖類の摂取量が多いと、とくに女性では認知症リスクが上昇することが示唆された」としている。

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他者を手助けする活動で認知機能の低下速度が緩やかに

 年齢を重ねても脳の健康を維持したい人は、定期的に地域や近所でボランティア活動を行うか、友人や家族を手助けすると良いようだ。そうした他者を手助けする活動を定期的に行っている人では、その活動が公式か非公式かにかかわらず、加齢に伴う認知機能の低下速度が緩やかであることが、新たな研究で示された。米テキサス大学(UT)オースティン校人間発達・家族科学分野のSae Hwang Han氏らによるこの研究の詳細は、「Social Science & Medicine」10月号に掲載された。Han氏は、「組織的なものであれ個人的なものであれ、日常的に他者を手助けすることは認知機能に永続的な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。 この研究では、1998年から2020年の間にU.S. Health and Retirement Study(全米健康と退職研究)に参加した米国の51歳以上の成人3万1,303人のデータを用いて、他者を手助けする役割の変化やその活動時間の増減が認知機能にどのように影響するのかを検討した。他者を手助けする役割は、公式なボランティア活動と、家族や友人を手助けする個人的な援助に分けて検討した。個人的な援助の例は、友人の医療機関受診の予約を取ることや、ベビーシッターをすることなどである。 その結果、公式なボランティア活動か個人的な援助かを問わず、他者を助ける活動を始めた人では、そうした活動をしていない人に比べて認知機能が高く、加齢に伴う認知機能の低下がより緩やかであることが明らかになった。また、他者を手助けする活動を継続的に行うことは認知機能に累積的なベネフィットをもたらし、時間が経つほどその効果が大きくなることも示された。さらに、認知機能へのベネフィットを得るためには、そうした活動を行う時間が1週間に2~4時間程度と中程度の活動量で十分であることも示された。 Han氏は、「私にとって印象的だったのは、他者を手助けすることでもたらされる認知機能へのメリットが短期的なものではなく、そうした活動を継続することで経時的に蓄積されるという点だ。こうしたメリットは、公式なボランティア活動と非公式な援助の両方で認められた」とUTのニュースリリースの中で述べている。同氏は、「それだけでなく、わずか2~4時間程度の関与でも、一貫して大きなベネフィットにつながっていた」と付け加えている。 Han氏はまた、「個人的な手助けは非公式であり社会的に認知されないため、健康に対する効果が小さいと思われがちだ。しかし、そうした行為でも公式なボランティア活動に匹敵する認知機能の向上が見られたことは、嬉しい驚きだった」と語っている。 研究グループは、毎年のように他者を手助けする活動を行うことが習慣になっている人の間では、より大きなベネフィットを期待できるのではないかとみている。Han氏は、「一方で、他者を手助けする活動を完全にやめてしまうことは、認知機能の低下と関連していることが示された。これは、高齢者が可能な限り何らかの形でそうした活動に関わり続けることの大切さを示しており、そのためには適切なサポートや配慮が必要なことを示している」と述べている。 研究グループは、他者を手助けする活動によりもたらされるベネフィットは、社会的つながりの強化か、あるいは毎日の生活の中で抱えるストレスの軽減によりもたらされる可能性が高いと見ている。こうした活動は、時間の経過とともに人の認知機能を蝕むとされる孤立感や孤独感を軽減することができる可能性があるという。

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AIチャットボットによるてんかん教育介入の効果、「えぴろぼ」の実用性と今後の課題

 てんかんを正しく理解し、偏見なく接する社会をつくるには、患者本人だけでなく周囲の人々の知識と意識の向上が欠かせない。こうした中、患者やその支援者にてんかんに関する情報や心理的サポートを提供する新しい試みとして、人工知能(AI)を活用したチャットボット「えぴろぼ」が登場した。今回、「えぴろぼ」の利用によって、てんかん患者に対する態度の改善や疾患知識の向上が認められたとする研究結果が報告された。研究は、国立精神・神経医療研究センター病院てんかん診療部の倉持泉氏らによるもので、詳細は「Epilepsia Open」に7月28日掲載された。 近年、AIやデジタルヘルスの進展により、チャットボットを活用した医療支援が注目されている。てんかん患者の多くは、自身の疾患に関する知識が不十分で、治療への関与や生活の質(QoL)にも影響を及ぼしている。また、スティグマや心理的負担から、教育プログラムへの参加率も低いのが現状である。こうした課題を受けて、埼玉医科大学、埼玉大学、国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームは、患者や支援者が場所や時間を問わず情報にアクセスできる新たな教育支援ツールとして、AIチャットボット「えぴろぼ」を開発した。本研究では、「えぴろぼ」がてんかんに関する知識や意識の改善にどのように寄与するかを検討した。 本研究は2つのフェーズで構成されていた。最初に、チャットボットの内容を洗練させるための予備的な試験フェーズを実施し、その後、本介入フェーズに移行した。本フェーズでは、スマートフォンアプリを通じて「えぴろぼ」を利用するために176名(てんかん患者13名、現在支援者として関わっている者69名、将来支援者となる可能性がある者28名、その他66名)が登録した。調査では、チャットボット使用前後での、てんかんに関する知識や偏見・スティグマ、患者自身のセルフスティグマ(内在化されたスティグマ)を評価した。経時的な変化の分析には、対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。 登録した176名のうち、82名(てんかん患者9名、患者家族25名、支援者25名、医療従事者12名、その他11名)が介入前後の調査を完了した。参加者の平均年齢は41.8歳であり、ほとんどの参加者がてんかんについてある程度の知識をもっていた。約半数の参加者はてんかん発作を目撃した経験があると回答していたが、発作への対応について自信があると回答した者は半数に満たなかった。 「えぴろぼ」による介入は、てんかん患者に対する職場での平等に関する意識に有意な改善をもたらし(P<0.001)、てんかん治療に関する知識の向上にもつながった(P=0.022)。QOLやてんかんに関する一般的な知識については、統計的に有意ではなかったものの改善傾向を示した。一方で、てんかん患者(n=9)では、てんかんに関連するセルフスティグマのわずかな増加が観察された(P=0.31)。 本研究について著者らは、「今回の結果は、『えぴろぼ』がてんかんに関する教育や心理的支援において、広く活用できるデジタルツールとしての可能性を示している。その一方で、患者自身のセルフスティグマへの対応は今後の課題として残されている」と述べた。 なお、介入によりセルフスティグマが増加した理由について、著者らは評価期間が約1カ月と短いこと、また対象に含まれるてんかん患者が少数であることを限界として指摘した上で、「教育介入によって知識が増えた結果、むしろ自身が置かれた社会的立場や偏見を意識するようになり、結果として一時的にセルフスティグマが強まった可能性が考えられる」と言及している。

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双極症に対する気分安定薬使用が認知機能に及ぼす影響〜メタ解析

 気分安定薬は、双極症に一般的に用いられる薬剤である。中国・四川大学のChang Qi氏らは、双極症患者に対する気分安定薬の使用が認知機能に及ぼす影響を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年7月26日号の報告。 PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane library、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。データ抽出はPRISMAガイドラインに従い、品質評価はCochrane Handbookに準拠し、実施した。メタ解析には、RevMan 5.4ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・RCT9件、双極症患者570例をメタ解析に含めた。・思春期の双極症患者における気分安定薬治療は、感情処理の正確性(標準化平均差[SMD]:-1.18、95%信頼区間[CI]:-1.69〜-0.67、p<0.00001)、反応時間延長(SMD:-0.39、95%CI:-0.73〜-0.05、p=0.02)に対し、有意な影響が認められた。・気分安定薬治療は、青年期の双極症における注意力(SMD:0.21、95%CI:-0.16〜0.58、p=0.27)および作業記憶(SMD:-0.09、95%CI:-2.19〜2.00、p=0.93)、成人期の双極症における全般的認知機能(SMD:0.48、95%CI:-0.49〜1.45、p=0.33)に対し、有意な影響を及ぼさなかった。・リチウム治療は、青年期の双極症における注意力(SMD:0.21、95%CI:-0.16〜0.58、p=0.27)、成人期の双極症における全般的認知機能(SMD:0.43、95%CI:-0.50〜1.35、p=0.37)に対し、有意な影響を及ぼさなかった。 著者らは「気分安定薬治療は、青年期の認知機能全般および特定の認知機能に悪影響を及ぼすことなく、感情処理の正確性を向上させ、反応時間を延長させる可能性が示唆された。これらの知見を裏付けるためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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AIによる診療記録作成で医師のバーンアウトが減少

 診察室での医師と患者の会話を自動的に記録して解析し、診療記録を生成する技術をAmbient Documentation Technology(ADT)という。新たな研究で、ADTの使用は臨床医のバーンアウト(燃え尽き症候群)の減少やウェルビーイングの向上と関連していることが示された。米マス・ジェネラル・ブリガム(MGB)のRebecca Mishuris氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に8月21日掲載された。 この研究の背景情報によると、診療記録の負担は臨床医のバーンアウトの一因とされている。今回の研究でMishuris氏らは、ADTを試験的に導入しているマサチューセッツ州のMGBとジョージア州のエモリーヘルスケアにおけるADTの使用状況を調べ、ADTの使用が臨床医の記録業務負担の感じ方およびバーンアウトに与える影響を検討した。 ADTを用いる場合、臨床医は人工知能(AI)が作成したレポートを確認してから、電子医療記録(EHR)に入力する。MGBでは2023年7月に18人の医師によりADTプログラムの使用が開始され、1年後には使用者が800人以上にまで拡大した。2025年4月には全ての医療提供者がADTシステムを利用できるようになり、3,000人以上が日常的にツールを活用しているという。 対象は、ADTを42日以上使用し、使用前後の調査に回答したMGBの臨床医873人(65.6%は医師の経験が10年超、女性54.8%)とエモリーヘルスケアの臨床医557人(51.3%は医師の経験が10年超、女性55.5%)の計1,430人である。MGBの臨床医のうち265人が事前調査と42日後の事後調査、192人が事前調査と84日後の事後調査に回答した。一方、エモリーヘルスケアの臨床医は、62人が事前調査と84日後の事後調査に回答した。 MGBでは128人(48.5%)が50%以上の診察記録にADTを使用していると回答した。一方、エモリーヘルスケアでは27人(43.5%)がほとんどもしくは全ての診療記録にADTを使用していると回答した。また、ADTを人に勧めたいと思うかを0〜10点で評価するスコア(10点が最高)は、MGBでもエモリーヘルスケアでも中央値が8.0点と高く、ADTに対する満足度の高いことが示された。 さらに、MGBでのバーンアウト発生率は、ADT使用の42日後には使用前の50.6%(134/265人)から29.4%(78/265人)へ、使用の84日後には使用前の52.6%(101/192人)から30.7%(59/192)へといずれも有意に減少していた。一方、ウェルビーイングについては、エモリーヘルスケアにおいて、「ADTがウェルビーイングに良い影響を与える」と答えた割合が、使用前の1.6%(1/62人)から使用後には32.3%(20/62人)へと有意に増加していた。 調査に回答した臨床医の一人は、「ADTは非常に役立っている。患者やその家族とのコミュニケーションが確実に改善され、診療が楽になった」と回答した。また別の医師は、「患者との会話で、後で話の内容を忘れてしまう心配をせずに患者の目を見て話せるので、診療の喜びが確実に増加した。ツールが進化すれば、医師としての経験を根本的に変えることになると思う」と回答した。さらに、「AIが生成した文章をコピー&ペーストして編集するのは面倒だが、それはある意味、機械的にできる作業だ。何時間も経ってから一から文章を作るのは、もっと頭を使う作業になる。午後になると集中力が途切れ、忙しいときには記入すべきカルテが山積みになり、もはや記録する余裕すらなくなる。そのため、記録が半分完成しているのは本当に助かる」という回答も見られた。 研究グループは、AIが進化するにつれ、バーンアウトの発生率が経時的に改善するかどうかを継続的に追跡していく予定だと述べている。

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高齢者への不適切処方で全死亡リスク1.3倍、処方漏れで1.8倍

 高齢者に対する薬剤治療においては、ポリファーマシーや処方漏れなどの問題点が指摘されている。イスラエルの研究グループによる長期前向きコホート研究によると、高齢者の80%以上が不適切な処方を受けており、不適切な薬剤を処方された群では死亡リスクが上昇した一方で、必要な薬剤の処方漏れも死亡リスクの上昇と関連していたという。本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年8月11日号に掲載された。 研究者らは、イスラエルの縦断前向きコホート研究の第3回追跡調査(1999~2007年)で収集されたデータを使用し、地域に住む高齢者1,210例(平均年齢72.9歳、女性53%)を対象に、不適切処方と長期死亡率との関連性を評価した。不適切な処方には「不要あるいは有害になり得る薬剤の処方(Potentially Inappropriate Medications:PIM)」と「必要処方の省略(Prescribing Omissions:PPO)」が含まれており、それらの識別には米国の2023年版Beers基準と欧州のSTOPP/START基準(v3)が用いられた。死亡は診断コードで特定され、主要アウトカムは全死亡率と非がん死亡率だった。参加者は死亡または2022年3月まで追跡され、追跡期間の中央値は13年だった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の81.2%が1件以上の不適切な処方を受けており、PIMはBeers基準で52.6%、STOPP基準で45.0%、PPOは59.3%だった。・PIMが2件以上の場合、Beers基準では全死亡リスクが1.3倍(HR:1.31、95%CI:1.04~1.69)、STOPP基準では1.25倍(HR:1.25、95%CI:1.00~1.55)増加した。PIMが2件以上の場合、非がん死亡リスクの増加とも関連した(両基準とも1.4倍)。・PPOが1件の場合、非がん死亡リスクは1.3倍になった。PPOが2件以上の場合、全死亡リスクは1.8倍、非がん死亡リスクは2倍となった。男性ではより強い関連性が認められた(相互作用p=0.012)。 著者らは「薬剤の過剰処方と必要な薬剤の不足の両方が、高齢者の死亡リスクを著しく増加させていた。これは定期的な薬剤処方見直しの必要性、性別に応じた薬剤ガイドラインの確立、処方問題の特定と是正のためのシステム改善の重要性を示している」としている。

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うつ病治療において有酸素運動と組み合わせるべき最適な治療は

 非薬理学的介入としての有酸素運動は、これまでのうつ病治療における有効な補助療法であるといわれている。しかし、有酸素運動による介入に関する包括的な評価は依然として不十分である。中国・海南師範大学のLei Chen氏らは、うつ病患者における有酸素運動と併用したさまざまな治療介入の有効性をシステマティックに評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年7月25日号の報告。 PICOSフレームワークに基づき、2024年6月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Web of Science、Cochrane Library、Embase、Scopus、CNKI、Wanfang、CBMより検索した。スクリーニングおよびデータ抽出は、独立して実施した。ネットワークメタ解析はStata 15.0およびR 4.4.1、バイアスリスクはCochrane Risk of Biasツール、エビデンスの質はCINeMAを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・RCT合計37件(うつ病患者3,362例)をメタ解析に含めた。・5つの有酸素運動との併用治療(電気痙攣療法[ECT]、反復経頭蓋磁気刺激療法[rTMS]、中国伝統医学[TCM]、選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]治療、認知行動療法[CBT])を評価した。・累積順位曲線下面積(AUC)に基づく結果は、次のとおりであった。【ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)】ECT併用>rTMS併用>TCM併用>SSRI併用>CBT併用>理学療法>運動療法>CBT単独>TCM単独>対照療法【ベックうつ病評価尺度(BDI)】SSRI併用>ECT併用>CBT併用>運動療法>CBT単独>対照療法>理学療法【うつ性自己評価尺度(SDS)】TCM併用>CBT併用>対照療法>CBT単独 著者らは「現在のエビデンスでは、うつ病治療における有酸素運動介入の併用は、単独療法よりも優れていることが示唆されている。なかでも、SSRI併用による有酸素運動介入は、強いRCTエビデンスおよび高品質のエビデンスにより評価されており、最も推奨される併用療法であると考えられる。その他の併用療法については、今後の大規模かつ高品質の試験による検証が求められる」と結論付けている。

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9月20日・21日、産業保健の最新動向を学ぶ!日本産業保健法学会【ご案内】

 2025年9月20日(土)~21日(日)、北里大学(東京・港区)を会場に、日本産業保健法学会第5回学術大会が行われる。全体テーマは、「AIと産業保健法:DX時代の多様化した産業保健と法」。AIのビジネスへの本格的な普及を鑑み、健康診断やストレスチェックシステムの一元化、健康情報の効率的管理・可視化等による業務効率向上などをテーマに、さまざまなシンポジウムが開催される。産業医、産業医志望者にとって、最新の事例や研究にふれるチャンスとなる。 開催概要は以下のとおり。【日時】現地開催日:2025年9月20日(土)・21日(日)オンデマンド配信:2025年10月1日(水)~31日(金)【会場】北里大学 白金キャンパス【開催形式】ハイブリッド開催(現地開催、ライブ配信、オンデマンド配信)(一部、オンライン配信[ライブ&オンデマンド]なしのプログラムあり)【主なプログラム】・メインシンポジウム/デジタルヘルスが産業保健にもたらすパラダイムシフトと法・シンポジウム1/高年齢労働者の安全・健康確保と法・シンポジウム3/職場におけるデジタルヘルスへの期待・課題と法 ~ウェアラブルデバイスの仮想事例から考察する~・シンポジウム4/生成AIは私たちの認知にどのようなインパクトを与えるか ~法政策への示唆を考える~・シンポジウム8/データ活用による健康経営推進と法的課題・模擬裁判/双極性障害からの総合職正社員としての復帰要求と一般職スタッフとしての復帰提案、賃金減額可否・事例検討/どうすればよかったのか? -自殺完遂事例に見る手続的理性と労働者保護のあり方を考える-【参加申し込み】10月27日(月)まで(事前登録制、当日受付なし)【参加登録費】会員:1万円(学生3,000円)非会員:1万2,000円詳細・申し込みはこちら

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事例31 メマンチン塩酸塩錠の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、院外処方箋にて投与した「メマンチン塩酸塩錠」が、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。この通知は「突合点検結果連絡書」にて届きました。同連絡書は、医科と調剤のレセプト内容を照らし合わせて薬剤などが査定対象となる場合に使用されます。「当院に責がある場合には、調剤薬局にて調剤済みの薬剤料を当院の診療報酬から相殺する」との連絡書です。当院に責がないと判断できる場合は、同文書を「処方箋内容不一致連絡書」として異議申し立てを行います。異議申し立てが認められれば、医療機関からの診療報酬の相殺は行われません。そのために、この帳票で連絡があった場合には、必ず査定原因を調べることにしています。最初に「メマンチン塩酸塩錠」の添付文書を調べてみました。添付文書に記載された効能または効果には、「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」とあります。レセプト傷病名欄には、「アルツハイマー型認知症」とあり、レセプト内にコメント記載はありませんでした。また、支払基金が公表している査定情報の「一般的取り扱い」にヒントはないかと調べてみました。276番に「メマンチン塩酸塩錠」の記載があり「アルツハイマー型認知症」は認められない病名には該当していませんでした。一見、問題はないようにみえます。同じく277番には、「維持量(有効用量)まで増量しない継続投与は、原則として認められる」とあり、投与も適正と考えられます。もう一度、添付文書をみてみました。効能または効果に「中等度及び高度」の文字があります。レセプト記載は「アルツハイマー型認知症」のみでした。これでは「重症度」の判断がつきません。そのために、「解釈上、補足がない場合は一番軽いものとみなす」という原則が適用され、「中等度及び高度」の状態にはないとみなされ、適応外になったものと推測ができます。医師には「メマンチン塩酸塩錠」の投与時には、病名に「重症度」の記載をお願いしました。今回は、「中度」であったことがわかるカルテ記載を添付して再審査請求を行ったところ復活しています。査定対策として、レセプトチェックシステムに「メマンチン塩酸塩錠」処方時には「重症度」の入力がないと指摘があるように登録しました。

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男女間におけるレビー小体とアルツハイマーにおける認知機能低下の違い

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのMadeline Wood Alexander氏らは、アルツハイマー型認知症(AD)とレビー小体型認知症(LBD)の神経病理および認知機能低下に対する性別や閉経年齢の影響を調査した。Annals of Neurology誌オンライン版2025年7月11日号の報告。  Rush Alzheimer's Disease Centerの3つのコホート(Religious Orders研究、Rush Memory and Aging Project、Minority Aging Research研究)およびNational Alzheimer's Coordinating Centerの神経病理データセットを用いて、分析を行った。LBD(大脳新皮質/辺縁系型vs.非大脳新皮質型)とADの神経病理学的評価には、神経斑(ジストロフィー性神経突起により囲まれているβアミロイド斑)と神経原線維変化を含めた。各データセットにおいて、LBDと性別が神経斑、神経原線維変化、認知機能低下に及ぼす相互の影響を検証した。さらに、Rushデータセットを用いて、女性の自然閉経年齢がLBDと神経斑、神経原線維変化、認知機能低下との関連を変化させるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・Rushデータセットより女性1,277人、男性579人、National Alzheimer's Coordinating Centerデータセットより女性が3,283人、男性3,563人を対象とした。・両データセットにおいて、男性はLBDの可能性が高く、女性は神経斑と神経原線維変化の負荷がより大きかったことが示唆された。・性別は、LBDと神経原線維変化との関連性を変化させたが、神経斑との関連は認められなかった。女性では、男性よりも、LBDと神経原線維変化負荷の増加とのより強い関連が認められた。・併存する病態(神経斑、神経原線維変化、LBDのいずれかが該当する場合)で調整後、男性ではLBD関連の認知機能低下が速く、女性では神経原線維変化関連の低下がより速かったことが示唆された。・女性では、閉経年齢の早さがLBDと神経原線維変化負荷およびエピソード記憶の低下との関連性を悪化させることが示された。 著者らは「性別は、ADおよびLBDの神経病態に影響を及ぼす可能性があり、認知症の予防や介入に対するより精密なアプローチの必要性が示唆された」と結論付けている。

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心理教育的介入で、地域社会の精神保健ケア構築は可能か/Lancet

 医療提供者の不足と文化的に適合したケアの欠如が、世界中で多文化集団への精神保健サービスの提供の妨げになっているとされる。米国・マサチューセッツ総合病院のMargarita Alegria氏らは、人種/民族的、言語的に少数派の集団における抑うつや不安への地域社会の対処能力の構築を目指す心理教育的介入(Strong Minds-Strong Communities[SM-SC]と呼ばれる)の有効性を評価するために、6ヵ月間の研究者主導型多施設共同無作為化臨床試験「SM-SC試験」を実施。SM-SCによる文化的に適合した介入が黒人、ラテン系、アジア系の住民に抑うつ、不安症状の改善をもたらすことが示唆され、これによって地域社会の対処能力を構築することで、精神保健ケアの不足を補う選択肢の提供が可能であることが示されたという。研究の成果は、Lancet誌2025年8月23日号に掲載された。2州の37ヵ所で参加者を募集 本研究では、2019年9月~2023年3月に米国の2州(マサチューセッツ州とノースカロライナ州)の20の地域共同体を基盤とする組織と17の診療施設で参加者を募集した(米国国立精神衛生研究所[NIMH]の助成を受けた)。 年齢18歳以上の英語、スペイン語、標準中国語、広東語の話者で、「精神保健分野のコンピューター適応型テスト(CAT-MH)」を用いた評価で中等度から重度の抑うつまたは不安の症状を呈する患者を対象とした。被験者を、文化的背景を踏まえ、適切な言語の使用が可能で臨床的な指導を受けた地域保健師によるSM-SCを受ける群、または通常ケア(対照)を受ける群に無作為に割り付けた。 SM-SCは、エビデンスに基づく文化的な個別化介入で、認知行動療法(CBT)、マインドフルネス訓練、健康的な習慣に関する心理教育、動機付けのための面接、心地良いい活動(pleasant activity)や支持的関係(supportive relationship)を通じた行動の活性化などのアプローチで構成される。通常ケアでは、参加者に米国国立衛生研究所(NIH)が作成した不安と抑うつに関する小冊子が配布された。 有効性の主要アウトカムは、ITT集団における次の3項目のベースラインから6ヵ月後(介入終了時)および12ヵ月後までの変化量とした。(1)自己報告による抑うつ・不安症状(Hopkins Symptom Checklist-25[HSCL-25]のスコア[1~4点、高点数ほど抑うつ・不安症状が悪化]で評価)。(2)機能水準(WHO障害評価スケジュール2.0[WHODAS 2.0]のスコア[12~60点、高点数ほど機能が低下]で評価)。(3)ケアの質に関する認識(Perceptions of Care Outpatient Survey[PoC-OP]のGlobal Evaluation of Careドメインのスコア[0~100点、高点数ほどケアの質が高いと認識]で評価)。6ヵ月時に3項目とも改善 1,044例を登録し、524例をSM-SC群、520例を通常ケア群に割り付けた。全体の平均年齢は42.6(SD 13.3)歳で、女性875例(83.8%)、男性165例(15.8%)、その他4例(0.4%)であった。人種別では、ラテン系654例(62.6%)、非ラテン系黒人149例(14.3%)、非ラテン系アジア人137例(13.1%)、非ラテン系白人92例(8.8%)であり、704例(67.4%)が外国生まれだった。 ベースラインから6ヵ月後までに、HSCL-25スコアは通常ケア群で0.24低下したのに対し、SM-SC群では0.44の低下と抑うつ・不安症状が有意に改善した(群間差:0.20[95%信頼区間[CI]:0.14~0.26]、標準化効果量[Cohen’s d]:0.39[95%CI:0.27~0.52])。 また、機能水準(WHODAS 2.0スコア低下の群間差:2.39[95%CI:1.38~3.40]、標準化効果量[Cohen’s d]:0.28[95%CI:0.16~0.39])およびケアの質の認識(PoC-OPスコア上昇の群間差:8.75[5.87~11.63]、標準化効果量[Cohen’s d]:0.47[0.31~0.62])についてもSM-SC群で有意な改善を示し、とくに後者における効果が顕著に高かった。12ヵ月後も有意差を保持 介入終了後、介入の効果は減衰した(標準化効果量が約30%低下)が、ベースラインから12ヵ月(介入終了後6ヵ月)の時点で3項目とも通常ケア群との比較で有意差を保持しており(標準化効果量[Cohen’s d]:抑うつ・不安症状0.28[95%CI:0.16~0.40]、機能水準0.21[0.08~0.33]、ケアの質の認識0.33[0.16~0.50])、SM-SCの有効性が示された。 著者は、「今後の研究では、このモデルへの投資が、実臨床や保健システム上のさまざまな課題にどのように対処できるかを検討する必要がある」としている。

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中年期の高コルチゾール値は閉経後のアルツハイマー病発症リスクと関連

 中年期にコルチゾール値が高い閉経後の女性では、アルツハイマー病(AD)のリスクが高まるという研究結果が、「Alzheimer’s & Dementia」に4月24日掲載された。 米テキサス大学サンアントニオ校グレン・ビッグス・アルツハイマー病・神経変性疾患研究所のArash Salardini氏らは、中年期のコルチゾール値が15年後のADバイオマーカー検査の結果を予測できるかを検討するために、縦断的データを用いた後ろ向き研究を実施した。解析対象となったのは、フラミンガム心臓研究に参加した認知機能障害のない成人305人のデータであった。 解析の結果、中年期のコルチゾール値の上昇は、閉経後の女性におけるアミロイド沈着の増加と相関していることが明らかになった。アミロイド沈着は主に後帯状皮質、楔前部、前頭外側部に集中していた。コルチゾール値の上昇は、タウの蓄積量との間に有意な関連は認められなかった。また男性においても有意な関連は認められなかった。 著者らは、「本研究の結果から、コルチゾールの調節異常と早期アミロイド沈着を結びつける性特異的なメカニズムの存在が示唆された。また、その傾向は、特に閉経後の女性で顕著であった。このことは、ADの発症機序を理解する上で、性別とホルモンの状態を考慮することの重要性を改めて示している。また、ストレスの軽減とホルモン介入は、特にリスクの高い女性におけるAD予防に有望であることを示唆している。今回のようなコホートを対象とした長期追跡調査は、これらの早期アミロイド変化が臨床症状に結びつくかどうか、さらにAD発症におけるコルチゾールの因果的役割を明らかにするために極めて重要である」と述べている。 なお複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)を明らかにしており、1名の著者が研究に関連する特許を出願している。

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鼻をほじる人、何%?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第289回

鼻をほじる人、何%?鼻をほじったことがない人は、存在しないと思います。ティッシュで包んで捨てて、手を洗うのが正しい対応ですが、そもそも「ほじるな」というのは難しいのは、誰しも認識しているはず。コロナ禍では、こういった行動が感染を広げる一因になっているのでは、と議論されたことがありました。しかしながら、一般集団における鼻ほじり行動に関する文献は世界的にほとんどありません。Andrade C, et al. A preliminary survey of rhinotillexomania in an adolescent sample. J Clin Psychiatry. 2001 Jun;62(6):426-31.本論文は、インド・バンガロール市の4校に通う200人の高校生を対象に、鼻ほじり行動の頻度、背景、合併する習慣的行動や精神医学的関連について調査した研究です。調査に参加した200人のうち、ほぼ全員が鼻ほじりアリと判断されました。平均回数は1日8.4回で、中央値は4回、最頻値は2回でした。31.8%が1日5回以上、15.3%が10回以上、7.6%が20回以上と報告しており、一部ではきわめて頻繁に行われていることがわかりました。また36%は公共の場でも鼻ほじりをすると答えました。鼻ほじりをまったくしないと答えたのはわずか7人でした。鼻ほじりの理由としては「清潔を保つため」(34%)、「不快感やかゆみを和らげるため」(31.2%)、「鼻道を通すため」(28.6%)が多く挙げられました。方法としては80.5%が指を使っていました。ダイレクトフィンガーはむしろ不潔なので、ティッシュを使う人などもいそうですね。ウィスコンシン州の住民1,000人に郵送調査を行ったもので、高い鼻ほじり率が確認されており、91%が現在も鼻ほじりをしていると答えています1)。1.2%は1時間に1回以上の頻度だったそうです。鼻ほじりは多くの場合「よくある癖」として軽視されますが、時に強迫性障害の一部として位置付けられるべき行動である可能性があり、精神医学的にも耳鼻咽喉科学的にも、さらなる研究が必要かもしれません。 1) Jefferson JW, Thompson TD. Rhinotillexomania: psychiatric disorder or habit? J Clin Psychiatry. 1995;56(2):56–59.

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日本人双極症患者の労働生産性に対する抑うつ症状、認知機能低下の影響

 琉球大学の高江洲 義和氏らは、日本人双極症患者における労働生産性低下と抑うつ症状および認知機能低下との関連性、また双極症の症状と労働生産性低下との関連性を評価するため、48週間の縦断的研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。 就労中または病気療養中の日本人双極症成人患者を対象に、48週間のプロスペクティブ縦断的ウェブベースコホート研究を実施した。認知機能低下、労働生産性低下、生活の質(QOL)、抑うつ症状の重症度、睡眠障害を評価する検証済みの自記式評価尺度を含む質問票調査を用いて、ベースラインから48週目まで12週ごとに調査した。主要エンドポイントは、48週時点の認知機能のベースラインからの変化と労働生産性低下との相関とした。副次的エンドポイントは、各症状スコアのベースラインからの変化、認知機能低下、労働生産性低下、抑うつ症状、QOL、睡眠障害とした。 主な結果は以下のとおり。・試験参加者211例中179例がすべての質問票に回答し、これらを48週間の解析に含めた。・ベースラインから48週目までの認知機能低下の変化と労働生産性低下(プレゼンティーズム:心身の不調で仕事におけるパフォーマンスが上がらない状態)の変化との間に弱い相関が認められたが(ピアソン相関係数:0.304、p=0.001)、重回帰分析では関連性が消失した。・労働生産性低下の変化は、抑うつ症状の変化と有意な関連が認められた(回帰係数:2.43、p<0.001)。・重回帰分析では、QOLの変化は、不眠症の変化と有意な関連が認められた(回帰係数:−0.01、p<0.05)。 著者らは「日本人双極症患者の抑うつ症状と認知機能を改善する治療は、労働生産性の向上に寄与する可能性が示唆された」と結論付けている。

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カフェインの摂取量を増やすと認知機能が向上

 カフェインは、中枢神経刺激を目的に使用されることが一般的であり、神経保護作用を有するとされるが、認知機能との関連性についての集団研究によるエビデンスは限られている。中国・山西医科大学のXiaoli Wang氏らは、米国の60歳以上の成人におけるカフェイン摂取と認知機能との関連を評価した。Journal of Human Nutrition and Dietetics誌2025年8月号の報告。 2011〜14年の米国国民健康栄養調査(NHANES)データに基づき、60歳以上の米国成人2,461人を対象として、本研究を実施した。カフェイン摂取量の評価には24時間食事想起法、認知機能の評価にはアルツハイマー病登録コンソーシアム(CERAD)、動物流暢性検査(AFT)、数字符号置換検査(DSST)から得られた複合スコアを用いた。カフェイン摂取量と認知機能との関連性を評価するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。制限付き3次スプライン(RCS)を用いて用量反応関係を検討し、サブグループ解析および感度分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・カフェイン摂取量が多いほど、認知機能低下のオッズの有意な低下が認められた。・完全調整モデルでは、カフェイン摂取量が1日80mg増加するごとに認知機能低下リスクが12%低下することが示された(オッズ比[OR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.78〜0.99、p=0.035)。・カフェイン摂取量の最高四分位は、最低四分位と比較し、認知機能低下リスクが42.5%低下していた(OR:0.58、95%CI:0.40〜0.83、p=0.006)。・RCS解析の結果、カフェイン摂取量と認知機能低下との間に、主に線形逆相関が認められた(p=0.002)。・これらの知見は、サブグループ解析および感度分析においてもロバストであることが示された。 著者らは「高齢者では、カフェイン摂取量が多いと認知機能が向上する傾向が認められた。これらの因果関係を明らかにするためには、長期にわたる研究が求められる」と結論付けている。

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