気分安定薬は、双極症に一般的に用いられる薬剤である。中国・四川大学のChang Qi氏らは、双極症患者に対する気分安定薬の使用が認知機能に及ぼす影響を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年7月26日号の報告。
PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane library、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。データ抽出はPRISMAガイドラインに従い、品質評価はCochrane Handbookに準拠し、実施した。メタ解析には、RevMan 5.4ソフトウェアを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・RCT9件、双極症患者570例をメタ解析に含めた。
・思春期の双極症患者における気分安定薬治療は、感情処理の正確性(標準化平均差[SMD]:-1.18、95%信頼区間[CI]:-1.69〜-0.67、p<0.00001)、反応時間延長(SMD:-0.39、95%CI:-0.73〜-0.05、p=0.02)に対し、有意な影響が認められた。
・気分安定薬治療は、青年期の双極症における注意力(SMD:0.21、95%CI:-0.16〜0.58、p=0.27)および作業記憶(SMD:-0.09、95%CI:-2.19〜2.00、p=0.93)、成人期の双極症における全般的認知機能(SMD:0.48、95%CI:-0.49〜1.45、p=0.33)に対し、有意な影響を及ぼさなかった。
・リチウム治療は、青年期の双極症における注意力(SMD:0.21、95%CI:-0.16〜0.58、p=0.27)、成人期の双極症における全般的認知機能(SMD:0.43、95%CI:-0.50〜1.35、p=0.37)に対し、有意な影響を及ぼさなかった。
著者らは「気分安定薬治療は、青年期の認知機能全般および特定の認知機能に悪影響を及ぼすことなく、感情処理の正確性を向上させ、反応時間を延長させる可能性が示唆された。これらの知見を裏付けるためにも、さらなる研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)