日本人双極症患者の労働生産性に対する抑うつ症状、認知機能低下の影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/05

 

 琉球大学の高江洲 義和氏らは、日本人双極症患者における労働生産性低下と抑うつ症状および認知機能低下との関連性、また双極症の症状と労働生産性低下との関連性を評価するため、48週間の縦断的研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。

 就労中または病気療養中の日本人双極症成人患者を対象に、48週間のプロスペクティブ縦断的ウェブベースコホート研究を実施した。認知機能低下、労働生産性低下、生活の質(QOL)、抑うつ症状の重症度、睡眠障害を評価する検証済みの自記式評価尺度を含む質問票調査を用いて、ベースラインから48週目まで12週ごとに調査した。主要エンドポイントは、48週時点の認知機能のベースラインからの変化と労働生産性低下との相関とした。副次的エンドポイントは、各症状スコアのベースラインからの変化、認知機能低下、労働生産性低下、抑うつ症状、QOL、睡眠障害とした。

 主な結果は以下のとおり。

・試験参加者211例中179例がすべての質問票に回答し、これらを48週間の解析に含めた。
・ベースラインから48週目までの認知機能低下の変化と労働生産性低下(プレゼンティーズム:心身の不調で仕事におけるパフォーマンスが上がらない状態)の変化との間に弱い相関が認められたが(ピアソン相関係数:0.304、p=0.001)、重回帰分析では関連性が消失した。
・労働生産性低下の変化は、抑うつ症状の変化と有意な関連が認められた(回帰係数:2.43、p<0.001)。
・重回帰分析では、QOLの変化は、不眠症の変化と有意な関連が認められた(回帰係数:−0.01、p<0.05)。

 著者らは「日本人双極症患者の抑うつ症状と認知機能を改善する治療は、労働生産性の向上に寄与する可能性が示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)