重症大動脈弁狭窄症、supra-annularの自己拡張弁は非劣性を示せず/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/05/30

 

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、ACURATE neo2は既存の市販弁と比較し、主要複合エンドポイント(1年時の全死因死亡、脳卒中、再入院)に関して非劣性基準を満たさなかった。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのRaj R. Makkar氏らACURATE IDE study investigatorsが、米国とカナダの71施設で実施した無作為化非劣性試験「ACURATE IDE試験」の結果を報告した。ACURATE neo2は、オープンセル構造でsupra-annularタイプの自己拡張型経カテーテル大動脈弁であり、50ヵ国以上で販売されているが、これまで無作為化試験による評価は実施されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年5月21日号掲載の報告。

ACURATE neo2をSAPIEN 3もしくはEvolut(対照)と比較検証

 研究グループは、症候性の重症大動脈弁狭窄症で、手術リスクのレベルにかかわらずハートチームによりTAVRの適応と判断された患者を、ACURATE neo2群または対照群(SAPIEN 3[SAPIEN 3、SAPIEN 3 Ultra]、Evolut[Evolut R、Evolut PRO、Evolut PRO+、Evolut FX])に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、疑似乱数生成器を用いコンピュータで作成された置換ブロック法を用いて行われた。実施施設および対照弁の種類で層別化も行った。

 すべてのデバイスは、製造メーカーの指示に従って留置された。

 主要エンドポイントは、1年時の全死因死亡、脳卒中および再入院の複合とし、ベイズ法を用いて非劣性を検証した。主要解析はITT集団を対象とし、非劣性マージンは8.0%とした。

1年時の主要複合エンドポイントおよび各イベント、ACURATE neo2群で発生率が高い

 2019年6月10日~2023年4月19日に1,500例が無作為化された(ACURATE neo2群752例、対照群748例)。患者の年齢中央値は79歳(四分位範囲:74~83)で、女性が778例(51.9%)、男性が721例(48.1%)であった。

 1年時の主要複合エンドポイントの事後確率中央値は、ACURATE neo2群16.2%(95%ベイズ信用区間[Crl]:13.4~19.1)、対照群9.5%(7.5~11.9)で、群間差は6.6%(3.0~10.2)、群間差の事後確率は>0.999であった。群間差の95%ベイズCrlは事前に規定した非劣性マージン8.0%を超え、非劣性は示されなかった。

 Kaplan-Meier法による解析では、1年時の複合エンドポイントの発生率は、ACURATE neo2群14.8%(95%信頼区間[CI]:12.5~17.6)、対照群9.1%(7.2~11.4)であり、ACURATE neo2群が有意に高かった(ハザード比[HR]:1.71、95%CI:1.26~2.33、p=0.0005)。

 1年時の全死因死亡は、ACURATE neo2群で752例中36例、対照群で748例中28例であり(HR:1.30、95%CI:0.80~2.14)、脳卒中はそれぞれ41例、25例(1.68、1.02~2.75)、再入院は38例、25例(1.57、0.95~2.61)に発生した。

 1年時の心血管疾患による死亡(ACURATE neo2群3.7%vs.対照群1.8%、p=0.024)および心筋梗塞(2.4%vs.0.7%、p=0.0092)の発生率はACURATE neo2群で高く、1年時の人工弁大動脈弁逆流(中心弁および弁周囲弁)の発生率もACURATE neo2群で有意に高かった(軽度逆流42.5%vs.24.8%、p<0.0001、中等度逆流4.4%vs.1.8%、p=0.0070、重度逆流0.5%vs.0%、p=0.12)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)