循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:128

SGLT2阻害薬とGLP-1作動薬の有効性と有害事象をレビュー(解説:桑島巖氏)-1349

最近の2型糖尿病治療薬の進歩は目覚ましい。DPP-4阻害薬登場によってHbA1cのコントロールは容易になったが、大規模臨床試験では心血管イベント抑制効果は見いだせなかった。しかし、その後登場したSGLT2阻害薬とGLP-1作動薬については、血糖値低下のみならず、心血管イベント、腎障害進展や死亡を抑制するという臨床試験の成績が相次いで発表されている。そして両薬剤は、いまや単に糖尿病治療薬の域を越え、心・腎・脳血管障害予防薬としての地位を確保しつつある。

残余因子に対する新たなアプローチ-evinacumabへの期待(解説:平山篤志氏)-1348

LDLコレステロール(LDL-C)低下療法により動脈硬化性疾患(ASCVD)の発症は減少しているが、最大耐用量の各種薬剤を用いてもLDL-Cが低下しない患者群がある。従来のLDL-C低下薬は、主にLDL受容体を介する機序によるものであった。angiopoietin-like 3(ANGPTL3)の遺伝的欠如で、中性脂肪(TG)、LDL-Cが低下していることが明らかになり、高脂血症マウスでANGPTL3が過剰産生されていることから、新たな治療ターゲットとしてANGPTL3が注目されるようになった。ANGPTL3はlipoprotein lipase(LPL)活性を阻害することでTGが上昇するが、LDL-Cへの作用は明らかではない。

elective PCIの抗血小板療法としてクロピドグレルとチカグレロルに差はない?(解説:上田恭敬氏)-1346

安定冠動脈疾患患者のelective PCIにおいて、周術期の虚血性合併症を減少させるために、クロピドグレルよりもチカグレロルのほうが優れているか否かを検討するための無作為化比較試験であるALPHEUS試験が、フランスとチェコの49病院が参加して実施された。対象患者はクロピドグレル群(ローディング量300~600mg、維持量75mg/日)とチカグレロル群(ローディング量180mg、維持量180mg/日)に無作為に割り付けられ、48時間以内(または退院まで)のPCI-related type 4の心筋梗塞・傷害を主要評価項目とし、同じく48時間以内(または退院まで)の出血性イベント(major bleeding)を主要安全性評価項目としている。

吸入treprostinil、間質性肺疾患による肺高血圧症の運動耐容能を改善/NEJM

 間質性肺疾患による肺高血圧症患者の治療において、treprostinil吸入薬はプラセボと比較して、6分間歩行試験で評価した運動耐容能のベースラインからの改善効果が高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAaron Waxman氏らが行った「INCREASE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年1月13日号に掲載された。肺高血圧症は、間質性肺疾患患者の最大86%で報告されており、運動耐容能の低下や酸素補給の必要性の増大、早期死亡と関連するが、間質性肺疾患患者における肺高血圧症の治療は確立されていないという。treprostinilは、プロスタサイクリンの安定的なアナログであり、肺や全身動脈の血管床の拡張を直接的に促進し、血小板の凝集を阻害する。treprostinil吸入薬は、12週の治療により第1群肺高血圧症患者の運動耐容能を改善すると報告されている。

超高齢者でもLDLコレステロール上昇は心筋梗塞、動脈硬化性疾患のリスクである(解説:平山篤志氏)-1347

LDLコレステロール(LDL-C)と動脈硬化性疾患の関連は、多くの疫学研究や大規模臨床試験で明らかにされてきた。しかし、75歳までのデータが多く、75歳以上さらに80歳以上の高齢者のデータはほぼなかった。本論文のCopenhagen General Population Study(CGPS)では動脈硬化性疾患の既往のない健康人を追跡した結果、高齢になればなるほど、心筋梗塞および動脈硬化性疾患(心筋梗塞、致死的冠動脈疾患、非致死的、致死的脳梗塞)の発生頻度が増加しかつ、LDL-C値が高くなればなるほど増加している。LDL-C 1mmol/L(ほぼ38.5mg/dL)の上昇の心血管イベント発生率に及ぼす影響は高齢になるほど大きかった。これまでは、疫学調査でも高齢者のfollow-upが十分でない、期間が短いなどの限界があったが、この研究ではほぼ100%の追跡ができている点、80~100歳が3,188人(全体の3%)、70~79歳が1万591人(全体の12%)と多数例が追跡されている点で実態を正確に反映していると考えられる。この対象にmoderate-intensity statinを使用することで、LDL-C 1mmol/Lを低下することで、5年間の心筋梗塞予防のNNTが80歳以上では80、70~79歳では145と他の年齢に比較して効果があると結論付けている。これはあくまで、これまでの介入試験でのLDL-C低下効果の結果からの類推であり、1次予防効果のエビデンスではないことに留意が必要である。ただ、わが国のエゼチミブを用いた75歳以上の高齢者を対象にしたEWTOPIA75試験でもLDL-C低下によるイベント抑制効果が示されている。超高齢化社会に突入したわが国で、高齢者、とくに超高齢者はポリファーマシー、フレイルなど多くの問題を抱えている。脂質低下療法は2次予防では、論をまたないであろうが、1次予防において積極的介入をすべきかどうかは今後明らかにする必要がある。

ミオシン活性化薬は駆出率の低下した心不全の予後を若干改善する(解説:佐田政隆氏)-1344

omecamtiv mecarbilは2011年にScience誌に動物実験の結果が発表されたミオシン活性化薬である。心筋ミオシンに選択的に結合して、ミオシン頭部とアクチン間のATPを消費して生じる滑走力を強め、強心効果が示されている。平滑筋や骨格筋のミオシンには作用しないという。今までの臨床試験でも、短期間の観察で心機能を改善することが示されており、新しい機序の心不全治療薬として期待されていた。そのomecamtiv mecarbilに関する二重盲検の第III相試験の結果である。昨年、米国心臓協会学術集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicine誌に公開された。

院外心停止、蘇生中の亜硝酸ナトリウムは入院時生存を改善せず/JAMA

 院外心停止患者において、亜硝酸ナトリウムの投与はプラセボと比較して、入院までの生存を改善しないことが、米国・ワシントン大学のFrancis Kim氏らによる第II相無作為化二重盲検プラセボ比較臨床試験の結果、明らかとなった。心停止の動物モデルでは、蘇生中の亜硝酸ナトリウムの治療的投与により生存率が改善することが認められているが、臨床試験における有効性の評価はこれまで行われていなかった。著者は今回の結果を受け、「院外心停止において蘇生中の亜硝酸ナトリウム投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2021年1月12日号掲載の報告。

DOAC でどこまで攻めるか?心房細動を合併した弁置換術後の場合(解説:香坂俊氏)-1345

ワルファリンの有効な代替薬としてDOACが販売されるに至り、さまざまな病態に関して抗血栓治療に関する知見が集まりつつある(本当に2011年以降たくさんのエビデンスが出てきている)。まず心房細動や静脈血栓症といった従来からワルファリンが第1選択とされる病態に対してDOACが有効な代替薬であるということが示された。さらにその後、安全性(副作用としての出血の発症率)に関しては完全に勝るというところが定着し、現在たとえば新規心房細動に対してのDOACの処方率は7割を越えている。最近では、そこからさらに心房細動を合併する冠動脈疾患患者に対しては抗血小板治療を最小限に抑えてよい(ステントなどを使用して抗血小板薬を2剤使用しなくてはならない患者はなるべく早期に1剤に落とし、その後落ち着いて1年ぐらいたったらその1剤も落として抗凝固薬だけに絞る)という知見が得られるに至っている。

治療フローが様変わり、「肝硬変診療ガイドライン2020」の変更点とは

 肝硬変の非代償期と聞けば誰しもが諦めていたものだが、時代遅れと言われぬよう、この感覚をアップデートさせねばならないようだー。2020年11月、『肝硬変診療ガイドライン2020(改定第3版)』が発刊された。第2版が発刊された2015年から5年もの間に肝硬変治療に関する知見が数多く報告され、治療法は目まぐるしく変化している。そのため、海外の最新治療ガイドライン(GL)と齟齬がないように、かつ日本の実地診療に即したフローとなるよう留意し、日本肝臓学会と日本消化器病学会が対等の立場で初めて合同作成した。今回、その作成委員長を務めた吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器・代謝内科 教授)に非専門医もおさえておくべき変更点やGLの活用方法についてインタビューした。

2型糖尿病へのSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のベネフィット/BMJ

 成人2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬が共有するベネフィットとして、重症低血糖を起こすことなく、全死因死亡、心血管死、心筋梗塞、腎不全、重症高血糖の発生低下および体重の減少があることを、ニュージーランド・オタゴ大学のSuetonia C. Palmer氏らが764試験、被験者総数42万例超を対象にしたネットワークメタ解析によって明らかにした。ただし、絶対ベネフィットは、心血管リスクや腎疾患リスクなど患者個々のリスクプロファイルによって、大幅に違いがみられることも示されたという。著者は、「今回のレビューは、BMJ Rapid Recommendationsに直接的に反映される方法が用いられ、すべての結果は既存の糖尿病治療への両クラスの薬剤の追加に言及するものであった」と述べている。BMJ誌2021年1月13日号掲載の報告。