降圧薬の心血管イベント予防効果、年齢や血圧で異なるか/Lancet

薬理学的な降圧は高齢になっても効果的であり、主要心血管イベント予防の相対的なリスク低下が無作為化時点での収縮期または拡張期の血圧値によって異なるというエビデンスはなく、120/70mmHg未満でも有効であるという。英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)のメンバーらが、MACEのリスクに関する降圧薬の有効性を比較検証した無作為化比較試験のメタ解析結果を報告した。70歳以上の高齢者において、とくに、血圧が十分に上昇していない場合の心血管アウトカムに対する降圧の薬物療法の有効性は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「降圧薬による治療は年齢にかかわらず重要な治療選択肢として考慮すべきであり、国際的なガイドラインから年齢に関連した血圧の閾値を撤廃すべきである」と述べている。Lancet誌2021年9月18日号掲載の報告。
無作為化試験51件、約35万9千例についてメタ解析
研究グループは、BPLTTCのデータから得られた降圧薬群とプラセボまたは他のクラスの降圧薬群との比較、あるいはより強力な降圧療法と強力でない降圧療法との比較を行った無作為化比較試験のうち、各群1,000人年以上追跡した試験を対象に、個人レベルのデータを用いてメタ解析を実施した。心不全既往の被験者は除外された。主要評価項目は、致死的または非致死的脳卒中、致死的または非致死的心筋梗塞・虚血性心疾患、死亡または入院を必要とする心不全の複合(主要心血管イベント)であった。データを統合して、ベースラインの年齢(<55、55~64、65~74、75~84、≧85歳)、収縮期血圧(<120、120~129、130~139、140~149、150~159、160~169、≧170mmHg)、および拡張期血圧(<70、70~79、80~89、90~99、100~109、≧110mmHg)で分類し、固定効果モデルの一段階法を用いたCox比例ハザードモデル(試験で層別化)により解析した。
解析には無作為化臨床試験51件の計35万8,707例が組み込まれた。
55歳未満から85歳以上まで幅広い年齢層で有効
無作為化時の被験者の年齢は、中央値65歳(範囲:21~105、IQR:59~75)で、<55歳が4万2,960例(12.0%)、55~64歳12万8,437例(35.8%)、65~74歳12万8,506例(35.8%)、75~84歳5万4,016例(15.1%)、≧85歳4,788例(1.3%)であった。各年齢層における収縮期血圧5mmHg低下ごとの主要心血管イベントリスクのハザード比は、<55歳0.82(95%信頼区間[CI]:0.76~0.88)、55~64歳0.91(0.88~0.95)、65~74歳0.91(0.88~0.95)、75~84歳0.91(0.87~0.96)、≧85歳0.99(0.87~1.12)であった(補正後の相互作用のp=0.050)。
拡張期血圧3mmHg低下ごとについても、同様の傾向が認められた。
主要心血管イベントの絶対リスク低下は、年齢によって異なり、高齢者でより大きかった(補正後の相互作用のp=0.024)。一方で、いずれの年齢層においても、ベースラインでの血圧分類によって相対的な治療効果に臨床的に意味のある不均一性は確認できなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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降圧薬の心血管イベント抑制効果 年齢やベースラインの血圧で異なるか (解説:江口和男氏)
コメンテーター : 江口 和男( えぐち かずお ) 氏
さいたま赤十字病院 総合臨床内科