循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:126

ネットワークメタ解析・システマティックレビューは語る―スタチンの1次治療は副作用を考慮しても病気予防に利得あり―(解説:島田俊夫氏)

スタチンは高コレステロール血症の2次治療に広く使われ、有害作用として横紋筋融解症が最もよく知られている。利益・損失をトレードオフの視点から見ると利益が勝るエビデンスが多く、2次治療は素直に受け入れられている。逆に、まったく自覚症状のない1次治療は患者の多くが自分が病になる実感もなく、高リスクに晒されているとの懸念もなく、マスメディアの影響を受けやすい。そのうえ、スタチンの1次治療はエビデンスが乏しいこともあり、治療を受ける患者を納得させにくい。高コレステロール血症に対するスタチンによる1次治療のエビデンスは、既存データを巧みに利用するネットワーク・メタアナリシス(NMA)/システマティックレビュー(SYSR)の利用に注目が集まっている。

ヘパリン増量では対応できない重症新型コロナウイルス感染症(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染に対して1~2年前よりは医療サイドの対策は進んでいる。肺を守るステロイド、ECMOなどは状況に応じて広く使用されるようになった。しかし、血栓性合併症についての十分な治療が確立されていない。われわれの経験した過去の多くの血栓症ではヘパリンが有効であった。ヘパリンは内因性のアンチトロンビンIIIの構造を変換して効果を発揮するので、人体に凝固系が確立されたころから調節系として作用していたと想定される。心筋梗塞、不安定狭心症、静脈血栓症など多くの血栓症にヘパリンは有効であった。ヘパリンの有効性、安全性については重層的な臨床エビデンスがある。ヘパリンを使えない血栓症は免疫性ヘパリン惹起血小板減少・血栓症くらいであった。重症の新型コロナウイルス感染症では、わらにもすがる思いで治療量のヘパリンを使用した。しかし、治療量と予防量のヘパリンを比較する本研究は1,098例を登録したところで中止された。最初から治療量のヘパリンを使用しても生存退院は増えず、ECMOなどの必要期間も変化しなかった。

ビソプロロール錠0.625mg供給不足に伴う対応/日本心不全学会

 16日、ビソプロロール錠の供給が多くの地域で不足する事態となっていることを受け、日本心不全学会が提言を公表した。本剤は、左室駆出率が低下した心不全の標準治療薬として重要な役割を果たすものであり、供給が安定するまでの間の対応策として以下が提案された。 (1)供給不足に伴いβ遮断薬の投薬を中止することは避ける。 (2)ビソプロロール錠0.625mgを処方する場合、できる限り長期処方を避ける。 (3)ビソプロロール錠2.5mgの供給がある場合は、用量に応じて0.25錠(0.625mg)あるいは0.5錠(1.25mg)として同用量を継続する。 (4)投与継続が困難な場合、以下を参考にカルベジロール錠へ切り替える。

ヘパリン介入のチャンスのある重症化前の新型コロナウイルス感染(解説:後藤信哉氏)

一般に、疾病は早期介入が重要である。新型コロナウイルスの場合、ウイルス感染という比較的単純な原因が炎症、肺炎などを惹起する。血管内皮細胞へのウイルス浸潤から始まる血栓症も初期の原因は比較的単純である。ウイルス感染に対して生体が反応し、免疫系が寄与する病態は複雑になる。複雑な病態は単純な治療では脱却できない。重症例を確実に入院させるとともに、早期の症例に対する医療介入の意味を示したのが本論文である。

腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021、“腰痛の有無”を削除

 『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版』が5月に発刊された。2011年の初版を踏襲しつつも今版では新たに蓄積された知見を反映し、診断基準や治療・予後に至るまで構成を一新した。そこで、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン(GL)策定委員長の川上 守氏(和歌山県立医科大学 名誉教授/済生会和歌山病院 院長)に、脊柱管狭窄症の評価方法や難渋例などについて話を聞いた。  腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインの目的の1つは、これを一読することで今後の臨床研究の課題を見つけてもらい、質の高い臨床研究が多く発表されるようになることだが、脊柱管狭窄症の“定義”自体に未だ完全な合意が得られていない。そのため診断基準も日進月歩で、明らかになった科学的根拠を基に随時更新を続けている。今回は腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン初版の診断基準で提示していた「歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する」を削除し、以下のとおりに「腰痛の有無は問わない」と明記された。

重症COVID-19患者へのヘパリン介入、転帰を改善せず/NEJM

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、生存退院の確率を向上させず、心血管系および呼吸器系の臓器補助なしの日数も増加させないことが、カナダ・トロント大学のEwan C. Goligher氏らが行った、3つのプラットフォーム(REMAP-CAP試験、ACTIV-4a試験、ATTACC試験)の統合解析で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号に掲載された。

重症化前のCOVID-19入院患者、ヘパリン介入で転帰改善/NEJM

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、集中治療室(ICU)における心血管系および呼吸器系の臓器補助なしでの生存退院の割合を改善し、この優越性はDダイマー値の高低を問わないことが、カナダ・トロント大学のPatrick R. Lawler氏らが実施した、3つのプラットフォーム(ATTACC試験、ACTIV-4a試験、REMAP-CAP試験)の統合解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号で報告された。

新型コロナウイルスにより急性心筋梗塞と脳梗塞のリスクが上昇(解説:佐田政隆氏)

2021年8月8日に東京オリンピック2020が終了したところであるが、ニュースでは新型コロナウイルスの感染拡大の話題が連日取り上げられている。デルタ株が猛威を振るい各都道府県で新規感染者数の記録が更新され、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の施行地域も拡大している。また、医療現場のひっ迫状態に関する報道も続く。このような中、軽症者のみならず中等症の患者も一部は自宅待機することと、政府の方針が転換された。しかし、軽症者でも急変して死に至ることがあることが報告され、在宅療養者の不安の声がテレビに映し出されている。

COVID-19、心筋梗塞・脳梗塞リスクが大幅に上昇/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急性心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスク因子であることが、スウェーデンにおけるCOVID-19の全症例を分析した自己対照ケースシリーズ(SCCS)およびマッチドコホート研究で示唆された。スウェーデン・ウメオ大学のIoannis Katsoularis氏らが報告した。COVID-19は多臓器を標的とした複雑な疾患であり、これまでの研究で、COVID-19が急性心血管系合併症の有力なリスク因子であることが浮き彫りになっていた。Lancet誌オンライン版2021年7月29日号掲載の報告。

心原性ショックの薬物療法、ミルリノンvs.ドブタミン/NEJM

 心原性ショックの薬物療法について、ミルリノンとドブタミンは、院内死亡や蘇生された心停止、心臓移植や機械的循環補助といった複合アウトカムの発生率に有意差はないことが示された。各項目単独の発生率についても、両群で有意差は認められなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca Mathew氏らが、192例を対象に行った無作為化比較試験の結果を発表した。心原性ショックは高い罹患率および死亡率と関連している。変力性サポートは、心原性ショックの中心的な薬物治療だが、現状では臨床における変力性薬剤の選択肢を示すエビデンスはほとんどないという。NEJM誌2021年8月5日号掲載の報告。