循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:130

発作性心房細動に対しては、抗不整脈薬よりもカテーテルアブレーションである(解説:高月誠司氏)-1338

NEJM誌の2020年11月号には心房細動に対するクライオバルーンアブレーションの2本の論文、STOP AF First TrialとEARLY-AF Trialが掲載された。ここでは両試験を比較しながら読んでみよう。両試験とも未治療の発作性心房細動をクライオバルーンによるアブレーション群と抗不整脈薬群に無作為に割り付け、心房細動の再発を比較した。STOP AF First Trial は203例、EARLY-AF Trialは303例を対象とした。STOP AF First Trialは1、3、6、12ヵ月後の12誘導心電図、3~12ヵ月まで週1回そして有症状時に送信する伝送心電図、そして6、12ヵ月後のホルター心電図でフォローしたのに対して、EARLY-AF Trialは全例植込み型心電計を植え込んでフォローした点が異なる。結果的に1年後までの心房細動非発生率は、STOP AF First Trialではクライオバルーン群で74.6%、抗不整脈薬群で45.0%、EARLY-AF Trialではクライオバルーン群で57.1%、抗不整脈薬群で32.2%と、それぞれクライオバルーン群のほうが抗不整脈薬群に比して洞調律維持率は有意に高かった。

ICD/CRT-Dデバイス、謝礼金額の「影響」とは(解説:高月誠司氏)-1337

本研究は植込み型除細動器(ICD)、同心臓再同期療法付き(CRTD)の心臓植込みデバイスの植込み件数とデバイスメーカーが植込み医師に支払った報酬(研究費除く)との関係を調べたものである。米国において4,435人の植込み医師が3年間で計14万5,900人の患者にデバイス植込みを行った。植込み医師の中の4,152人(94%)がデバイスメーカー4社から何らかの報酬(中央値で1,211ドル)を得ていた。そして各医師は最も報酬が多かったメーカーのデバイスを選択する傾向があったという。この報酬自体は違法性のあるものではなく、また結果的に臨床上影響があったかは検証されていない。

循環器科医のためのCOVID-19解説サイト/ライフサイエンス出版

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界の日常を一変させ、12月現在、わが国でも感染者数・重症者数ともに増加し、深刻な状況となっている。  そのような状況のなか、ライフサイエンス出版は、特設サイト「循環器科医のためのCOVID-19超解説」を開設した。  COVID-19と循環器疾患との関連は非常に注目されるトピックである。本サイトでは、わが国を代表する循環器領域の専門家が、「川崎病」「血栓症」「心不全」「高血圧」をテーマに解説している。また、COVID-19は、ウイルス感染に起因する炎症反応が重要なキーワードとなっているため、免疫領域の専門家による解説も予定している。

有害事象にも目をやり、もう一歩進めたPCI適応に関する考察(解説:野間重孝氏)-1332

評者自身がそうであったのだが、察するに多くの方々が果たしてこの論文のどこが新しくてJAMA誌に掲載されるに至ったのだろうかと、当初いぶかしく思われたのではないだろうか。FFRによって患者を選別することにより、虚血が証明された虚血例と虚血が証明されない非虚血例では血管インターベンション(PCI)の成績が異なり、虚血例では予後改善効果が期待できるのに対して、非虚血例ではそのような結果が期待できない。だから医学的側面からも、対費用効果の側面からもFFRを用いた患者の選別は有効であるということは、すでに結論の出た問題として扱われるべきだと考えられているからだ。この論文の新しい点は、こういう観点から一歩進んで、非虚血例に対してPCIを行うことは効果がないばかりではなく、有害であることを示唆したことにある。

機械学習による疾病予測モデルはあまり当たらない(解説:折笠秀樹氏)-1333

フラミンガムスタディデータを使って、心臓病の10年予測モデルが出たのが1998年のことです。私も脳梗塞の再発予測モデルの開発に携わったことがありますが、2012年のことでした。今や予測モデルの研究は枚挙にいとまがないほどです。TRIPOD声明というガイドラインまで出ています。モデル開発にはCoxモデルを用いるのが一般的でしたが、最近では機械学習モデルを使うことも多くなりました。ニューラルネットワークやランダムフォレストなどという手法です。

高用量インフルワクチン、高リスクCVDの死亡改善せず/JAMA

 高リスク心血管疾患患者では、高用量3価不活化インフルエンザワクチンは標準用量4価不活化インフルエンザワクチンと比較して、全死因死亡率や心肺疾患による入院率を低下させないことが、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが行ったINVESTED試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年12月4日号で報告された。インフルエンザは、ワクチン接種への免疫応答が強くない心血管疾患患者の心肺合併症や死亡の割合を一時的に高めるという。高用量のインフルエンザワクチンは、インフルエンザによる疾患のリスクを低減する可能性が示唆されている。

COVID-19による静脈血栓塞栓症のアンケート結果/肺塞栓症研究会

 肺塞栓症研究会と日本静脈学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による静脈血栓塞栓症の発症有無に関する緊急アンケートを合同で実施し、総計77施設(1,243例)より回答を得た。その結果、肺塞栓症は5例(0.4%)、静脈血栓塞栓症は7 例(0.6%)に発症していたことが明らかになった。今回のアンケート調査では、COVID-19 症例の中で肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症と診断された症例は欧米に比してかなり少数だった。これを踏まえ、横浜南共済病院の孟 真氏率いる調査事務局の研究者らは、「“発症自体が本当に日本人で少ない”のか、“診断されていないだけ”なのかを判断する事は困難である。

PTX被覆デバイスによる末梢動脈疾患の血管内治療、死亡率増大させず/NEJM

 末梢動脈疾患患者において、パクリタキセル被覆血管内デバイスと非被覆血管内デバイスに、追跡期間1~4年での全死因死亡率に差は認められなかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のJoakim Nordanstig氏らが、多施設共同無作為化非盲検臨床試験「SWEDEPAD試験」の計画外の中間解析結果を報告した。症候性末梢動脈疾患に対する下肢血管内治療で、パクリタキセル被覆血管形成バルーンおよび溶出ステントによる死亡リスクの増加が最近のメタ解析で示され、懸念が生じていた。NEJM誌オンライン版2020年12月9日号掲載の報告。

IL-1阻害薬による残余リスク低減効果に期待(解説:佐田政隆氏)-1330

rilonaceptはインターロイキン-1(IL-1)の可溶性受容体製剤である。IL-1α、IL-1β双方をトラップして阻害する。当初、関節リウマチでの応用が期待されたが、TNF阻害薬ほど劇的な効果は認められなかったという。希少自己免疫疾患であるクリオピリン関連周期性発熱症候群に対して、2008年にFDAによって承認されたが、日本や欧州では承認に至っていない。原因不明の再発性心膜炎は、日常の循環器内科診療でたびたび遭遇する疾患である。心嚢穿刺など対症療法しかなく治療に難渋することが多い。本試験は、86人と比較的少数例を対象にした二重盲検第3相試験である。標準的治療を施しても再発する心膜炎の再発を、rilonaceptが有意に抑制した。今後、再発心膜炎への適応拡大が期待される。

finerenone、2型糖尿病合併CKD患者で心血管リスクを抑制/NEJM

 2型糖尿病を併発する慢性腎臓病(CKD)患者において、finerenoneの投与はプラセボに比べ、CKDの進行と心血管イベントのリスクを低減させることが、米国・シカゴ大学病院のGeorge L. Bakris氏らが行った「FIDELIO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年12月3日号に掲載された。2型糖尿病はCKDの主要な原因であり、2型糖尿病患者のCKD管理ガイドラインでは、高血圧や高血糖の管理とともにさまざまな薬物療法が推奨されているが、CKDの進行のリスクは解消されておらず、新たな治療が求められている。finerenoneは、非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、CKDと2型糖尿病を併発する患者を対象とする短期試験でアルブミン尿を減少させると報告されている。