医業承継とは?「買い手の急な辞退」という落とし穴に注意せよ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第1回

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公開日:2020/09/28

医業承継

診療所を売買する「医業承継」。売る側は後継者と譲渡金が手に入り、買う側は集患の手間なく初期費用も減って…、といいことづくしのようですが、実はあちこちに落とし穴が!最低限の知識をマンガで解説。

登場人物紹介

ひつじ先生

ひつじ先生

43歳。専門は消化器内科で大阪の100床規模の病院で勤務中。父親も医師で地方で開業している。そろそろ自分も独立して開業しようかなーと思いつつ、思い切れず、妻に尻を叩かれている。私立中学に通う1人息子がいる。

ひつじ先生

ひつじ先生

43歳。専門は消化器内科で大阪の100床規模の病院で勤務中。父親も医師で地方で開業している。そろそろ自分も独立して開業しようかなーと思いつつ、思い切れず、妻に尻を叩かれている。私立中学に通う1人息子がいる。

ヤギ先生

ヤギ先生

72歳。専門は整形外科で地方都市でクリニックを開業して30年を迎えた。患者やスタッフから慕われ、経営は順調だが、そろそろ体力が厳しく、引退を考えるように。子供たちは医師だが承継の意志はなく、設備と患者を誰かに引き継いでもらえないかと考え中。

ヤギ先生

ヤギ先生

72歳。専門は整形外科で地方都市でクリニックを開業して30年を迎えた。患者やスタッフから慕われ、経営は順調だが、そろそろ体力が厳しく、引退を考えるように。子供たちは医師だが承継の意志はなく、設備と患者を誰かに引き継いでもらえないかと考え中。

第1回 医業承継とは?「買い手の急な辞退」という落とし穴に注意せよ!

漫画・イラスト:かたぎりもとこ

医業承継とは、後継者不在のクリニックを第三者へ譲渡し、新院長のもとで継続することです。一般のビジネスでいうところの事業承継ですね。

買い手からすると、医療機器などの設備が揃っているため開業の初期費用を数千万円単位で節約することができ、既存の患者さんの来院も見込めるため、経営が安定します。売り手からすると、自院の施設や設備を無駄にすることなく、譲渡金を得ることができ、かつ患者さんを引き継げる安心感があります。

医師の皆さんは、クリニックを譲り受けて開業する側の「買い手」、自分が開業したクリニックをほかの医師に譲渡する「売り手」の双方の立場になる可能性があるわけです。

私たちは、これまで医業承継のさまざまな側面におけるお手伝いをしてきました。医業承継は下記のようなステップで進めていくことが一般的です。

医業承継の基本の流れと要する期間

医業承継は「お見合い結婚」とよく似ています。結婚相談所を通じてよい相手を探し、お見合いをして、お互いの合意がとれたら婚約、婚姻と続きます。

このステップでとくに注目いただきたいのは、ステップ 5の「基本合意契約の締結」です。このステップは結婚でいうところの「婚約」に当たります。つまり、クリニックの売り手と買い手が面談し、お互いに「この人がいいです」と決定するプロセスです。このステップ 5を経た後は、原則、売り手は、ほかの買い手候補者と接触することができなくなります。そして、その後のステップ 6の「買収監査」とは、買い手による売り手の「身辺調査」(言い方はちょっと悪いですが…)、つまりは患者の人数や施設の状況が売値に見合っているかどうかを分析する段階に入ります。

つまり、ステップ 5を境に、それまで「選ぶ側」であった売り手の立場が逆転し、買い手の交渉力が強くなります。そしてステップ 7の「最終契約の締結」が行われる前までは、買い手は「破談」(医業承継の辞退)ができるのです。

 そして、この「辞退」、実はそう珍しいことではありません。辞退の理由はケース・バイ・ケースですが、「医局からの強力な引き止めに遭った」「家族からの強硬な反対に屈した」「最後の最後で開業の決心がつかない」といった理由が大きなところでしょうか。

ここでも、「結婚」と似た人間心理が働きます。婚約(=基本合意契約の締結)をするまでの買い手は「ほかの候補者と競い合っている」状況であり、「何としてでもこの人(クリニック)を自分のものにしたい」と焦っています。しかし、いざ婚約まで話が進むと、嬉しさの反面、いわゆる「マリッジブルー」に見舞われるのです。初めて経営者になることのリスクや不安に向き合い、細かい点が気になり始めます。そして、最後の最後で「やっぱり辞退したい」となってしまうのです。買い手は多額の譲渡金を支払うので、逡巡するのも当然といえば当然なのですが…。

私たちの調査では、成約までに売り手は平均3人の買い手(後継者候補)と面談をしています。ここからの学びは、「売り手は複数の候補者と面談したほうがよい」ということです。ほかの候補者との接点があれば、最有力の買い手に辞退されてしまってもあまり焦らずに済みます。

また、面談後に買い手が意向を伝えるまでの期間は平均して「2週間~1ヵ月」(図表参照)です。ここであまりに時間がかかる場合には、買い手に何か不安や懸念が発生している可能性があり、売り手は買い手が辞退する可能性を視野に入れておく必要があります。

買い手の急な辞退…。残念なことではありますが、完全には避けられないことでもあります。売り手はそのことを念頭に置きつつ、話を進める必要があるのです。

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