耳鼻咽喉科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

気候変動はアレルギー性鼻炎を悪化させる?

 アレルギー性鼻炎を持つ人にとって、春は、涙目、鼻づまり、絶え間ないくしゃみなどの症状に悩まされる季節だが、近年の地球温暖化はこのようなアレルギー性鼻炎を悪化させる可能性があるようだ。新たな研究で、気候変動が進むにつれ、花粉アレルギーのシーズンはいっそう長くなり、アレルギー性鼻炎の症状もより重症化することが予想された。米ジョージ・ワシントン大学医学部のAlisha Pershad氏らによるこの研究結果は、「The Laryngoscope」に4月9日掲載された。  気候変動が健康にもたらす悪影響は、世界的な問題として深刻化している。地球温暖化は炎症性上気道疾患、中でもアレルギー性鼻炎に影響を与えることが示されており、耳鼻咽喉科領域での影響は特に顕著である。このことを踏まえてPershad氏らは、データベースから選出した30件の研究結果のレビューを実施し、気候変動が世界の成人および小児におけるアレルギー性鼻炎にどのような影響を与え得るかを調査した。

腫瘍浸潤クローン性造血、固形がんの死亡リスクと関連/NEJM

 「未確定の潜在能を持つクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)」は加齢に伴う病態で、がん患者における死亡率の上昇と関連する。腫瘍で変異アレル頻度(VAF)の高いCHIP変異が検出されることがあり、英国・フランシス・クリック研究所のOriol Pich氏らは、この現象を「腫瘍浸潤性クローン性造血(tumor-infiltrating clonal hematopoiesis:TI-CH)」と呼ぶ。同氏らは、今回、TI-CHは非小細胞肺がん(NSCLC)患者のがん再発や死亡のリスクを高め、固形腫瘍患者で全死因死亡のリスクを上昇させ、腫瘍免疫微小環境をリモデリングし、腫瘍オルガノイドの増殖を促すことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年4月24日号で報告された。

聴覚障害は心不全リスクの上昇と関連

 聴覚障害は、心臓の健康問題の前兆となる可能性があるようだ。新たな研究で、聴覚障害は心不全リスクの上昇と関連しており、両者の関連には、精神的苦痛が媒介因子として影響している可能性が示唆された。南方医科大学(中国)のXianhui Qin氏らによるこの研究結果は、「Heart」に4月8日掲載された。  Qin氏らは、長期健康研究プロジェクトであるUKバイオバンクのデータを用いて、研究参加時には心不全のなかった16万4,431人(平均年齢56.7歳、女性54.6%)を対象に、聴力と心不全発症との関連を検討した。媒介分析により、社会的孤立、精神的苦痛、および、神経症的傾向の影響についても評価された。参加者の聴力は、雑音下でDigit Triplets Testを用いて測定し、語音聴取閾値(SRT)として定量的に評価された。SRTは、聴力検査で用いられる指標の一種で、語音を50%の確率で間違わずに聞き取れる信号対雑音比(SNR)を示す。補聴器を使用していない参加者の聴力は、正常(SRT<−5.5dB)、不十分(SRT≧−5.5dB、SRT≦−3.5dB)、低い(SRT>−3.5dB)に分類した。

自宅でできる嗅覚テストが認知機能低下の検出に有効か

 認知症やアルツハイマー病の初期症状の有無を、自宅で実施可能な嗅覚テストにより判定できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。認知症やアルツハイマー病の前兆である軽度認知障害(MCI)を発症した高齢者は、認知機能が正常な人に比べてこの嗅覚テストのスコアが低いことが示されたという。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の神経科医であるMark Albers氏らによる研究で、詳細は「Scientific Reports」に3月24日掲載された。  Albers氏は、「われわれの目標は、自宅で実施できる費用対効果の高い非侵襲的な検査を開発して検証し、アルツハイマー病の研究と治療を前進させる基盤を築くことだった」とMGHのニュースリリースで述べた。同氏は、「認知障害の早期発見は、アルツハイマー病のリスクを有する人を特定し、記憶障害の症状が始まる何年も前に介入するのに役立つ可能性がある」と付け加えている。

局所進行上咽頭がんの1次治療、補助化学療法+CCRT vs.CCRT/BMJ

 N2~3期の上咽頭がん患者において、同時併用化学放射線療法(CCRT)の前にドセタキセル+シスプラチンによる補助化学療法(NACT)を4サイクル行うことにより、CCRTのみ行った場合と比較し、遠隔転移のリスクが低下するとともに全生存期間が改善し、毒性は管理可能であることが示された。中国・中山大学がんセンターのWei-Hao Xie氏らが、中国の3次医療機関6施設で実施した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。局所進行上咽頭がんに対する補助化学療法+同時併用化学放射線療法の有効性は確立されていなかった。BMJ誌2025年4月15日号掲載の報告。

花粉症時のアイウォッシュ、その使用傾向が調査で明らかに

 アイウォッシュ(洗眼)は花粉症シーズンの目のトラブル対策として有効な手段だが、洗眼剤の使用傾向は年齢、既往歴、生活習慣などの違いによって異なる、とする研究結果が報告された。若年層、精神疾患の既往、コンタクトレンズ(CL)利用者などが洗眼剤使用に関連する因子であったという。研究は順天堂大学医学部眼科学講座の猪俣武範氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月10日掲載された。  洗眼剤の使用はアレルギー性結膜炎の初期症状の軽減に効果的であるとされるが、現在、花粉症患者における洗眼剤使用の疫学的特徴に関しては知識のギャップが存在している。このギャップを埋めることは、花粉症管理において包括的でエビデンスに基づいた洗眼剤のガイドラインを作成するために不可欠である。そのような背景から、研究グループは花粉症患者における洗眼剤使用者と非使用者を総合的にプロファイリングし、花粉症とセルフケアの習慣に関連するパターンと特徴を特定することを目的とした大規模疫学研究を実施した。

最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは

 今春のスギ・ヒノキの花粉総飛散量は、2024年の春より増加した地域が多く、天候の乱高下により、飛散が長期に及んでいる。そのため、外来などで季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を診療する機会も多いと予想される。花粉症診療で指針となる『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2024年 改訂第10版』(編集:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)が、昨年2024年3月に上梓され、現在診療で広く活用されている。  本稿では、本ガイドラインの作成委員長である大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)に改訂のポイントや今春の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の終息の見通し、今秋以降の花粉飛散を前にできる対策などを聞いた。

局所進行頭頸部扁平上皮がんの維持療法、アテゾリズマブvs.プラセボ/JAMA

 高リスクの局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA SCCHN)で集学的な根治的治療により病勢進行が認められない患者において、維持療法としてのアテゾリズマブはプラセボと比較して予後を改善しなかった。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のRobert Haddad氏らが、23ヵ国128施設で実施された第III相無作為化二重盲検比較試験「IMvoke010試験」の結果を報告した。LA SCCHNに対しては、手術、放射線療法、化学療法のいずれかを組み合わせた治療後、局所再発または遠隔転移のモニタリングが行われるが、予後不良であることから治療の改善に対する臨床的ニーズは依然として高かった。JAMA誌オンライン版2025年3月13日号掲載の報告。

局所進行上咽頭がん、化学放射線療法後のcamrelizumabが有効/JAMA

 局所進行上咽頭がん(NPC)の化学放射線療法後の補助療法として、camrelizumabの投与は無イベント生存(EFS)を有意に改善し毒性も管理可能であり、有用性が確認されたことを、中国・中山大学がんセンターのYe-Lin Liang氏らが中国の11施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「DIPPER試験」の結果として報告した。NPC患者の約20~30%は、根治的化学放射線療法の施行にもかかわらず再発する。抗PD-1抗体のcamrelizumabは、再発または転移のあるNPCに対する有用性は示されているが、局所進行NPCにおける有用性は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年3月13日号掲載の報告。

認知症予防、どのくらいの聴力低下から補聴器を使ったほうがよいか

 難聴が中年期における認知症の予防可能な最大のリスク因子の1つであると報告され、注目を集めているものの、どの程度の難聴になったら認知症予防として補聴器を使うべきなのかは明らかになっていない。慶應義塾大学の西山 崇経氏らは、55歳以上の補聴器の装用経験がない難聴者のグループにおいて、聴力閾値と認知機能検査結果が負の相関関係を示し、4つの音の高さの聴力閾値の平均値が38.75dB HLを超えた場合に、認知症のリスクとなりうることを明らかにした。NPJ Aging誌2025年2月24日号掲載の報告。