片頭痛患者は、さまざまな理由で市販薬(OTC)を好む傾向があるが、OTC頭痛薬の過剰使用は、薬物乱用性頭痛を引き起こす可能性がある。京都府立医科大学の石井 亮太郎氏らは、片頭痛の疫学、治療、ケアに関する観察研究であるOVERCOME(Japan)第2回研究を分析し、日本における片頭痛患者のOTC頭痛薬の実際の使用状況が適切な医療の妨げとなっている可能性について、考察を行った。The Journal of Headache and Pain誌2025年5月7日号の報告。
本研究は、成人片頭痛患者を対象に、横断的地域住民ベースの全国オンライン調査として実施された。調査内容には、片頭痛に対する処方薬およびOTC薬の使用経験、片頭痛薬の認知度、片頭痛に対する態度についての報告を含めた。1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)および1ヵ月当たりのOTC頭痛薬の使用頻度に基づきサブグループ解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・片頭痛患者1万9,590例(女性の割合:68.8%、平均年齢:40.5±13.1歳)の平均MHDは3.5±5.2であり、過去1年間で片頭痛のために医師の診察を受けた患者は29.0%にとどまった。
・過去1年間のOTC頭痛薬の使用は、医師の診断やMHD数に関わらず、62.1%以上と高かった。
・片頭痛発作時に処方薬を使用すると回答した患者のうち、通常OTC頭痛薬も使用すると回答した割合は35.2%であった。
・過去1年間で医師の診察を受けた患者の51.3%は、OTC頭痛薬の使用頻度が処方薬の使用頻度と同等もしくはそれ以上であると回答した。
・過去1年間で医師とOTC頭痛薬について話し合ったのは、わずか14.6%であった。
・OTC頭痛薬を1ヵ月当たり10日以上使用している患者でも、片頭痛薬へのアクセスや認知度は限定的であった。18.2%がトリプタンを使用している一方で、65.5%はトリプタンについて聞いたことがないと回答した。
・医師の診察を躊躇したことがあると回答した37.1%の患者において、躊躇する理由として最も多かった回答は「OTC頭痛薬で対処可能」であった(34.9%)。
著者らは「片頭痛患者は、OTC頭痛薬を頻繁に使用するが、そのことについて医師と話し合う機会は少ないことが明らかとなった。OTC頭痛薬を頻繁に使用している患者でも、片頭痛へのアクセスや認知度は低かった。片頭痛に対する薬物濫用を防ぐためにも、OTC薬の使用について話し合い、管理していく必要性が示唆された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)