アルツハイマー病は、アミロイドベータ(Aβ)プラークの蓄積により引き起こされるが、そのメカニズムはいまだに解明されていない。オメガ3(ω3)脂肪酸、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)には、保護作用があるといわれているが、Aβ蓄積との関係は、完全に解明されているとはいえない。米国・ピッツバーグ大学の関川 暁氏らは、ω3脂肪酸の摂取量が多いことで知られている日本人において、認知機能が正常な日本人高齢者を対象に画像診断の6〜9年前に測定した血清DHAおよびエイコサペンタエン酸(EPA)濃度が、脳Aβ沈着と逆相関を示すかを調査しました。PETに基づくAβ陽性と判定されたアルツハイマー病進行リスクの高い高齢者に焦点を当て、DHAが早期アミロイド病変を軽減する可能性を評価した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年5月8日号の報告。
対象は、吹田研究に参加した高齢者97例(75〜89歳)。血清中のDHAおよびEPA濃度は2008〜12年にかけて評価し、アミロイドPETは2016〜19年にかけて実施した。年齢、性別、APOE4遺伝子変異、心血管代謝疾患で調整した後、重回帰分析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・97例(男性の割合:49%、APOE4遺伝子保有者:8.2%)のうち、心血管代謝疾患が36例(37.1%)、Aβ陽性が29例(29.8%)で認められた。
・年齢、性別、APOE4レベルに関わらず、Aβ陽性の高齢者では、血清DHA濃度の上昇とAβ沈着量の減少との有意な関連が認められた(標準化β:−0.423、p=0.030)。
・この関連は、心血管代謝疾患を追加して調整した後では、有意差が消失した(β:−0.382、p=0.059)。
・EPAとAβ沈着量との間に有意な関連は認められなかった。
著者らは「長期にわたるDHA濃度の上昇は、アルツハイマー病リスクを有する高齢者のAβ蓄積を減少させる可能性があり、アルツハイマー病の早期予防におけるDHAの潜在的な役割が裏付けられた」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)