医療一般|page:1

新型コロナでがん患者の自宅看取りが増加/がん研究センター

 国立がん研究センターがん対策研究所(所長:松岡 豊)は、2021年に死亡した患者の遺族を対象に、人生の最終段階で受けた医療や療養生活の実態を把握する全国調査を実施し、その結果をまとめ、公表した。  今回の調査は、新型コロナウイルス感染症の流行期とアンケート実施時期が重なったことから、特殊な社会環境下における人生の最終段階の医療や療養生活に関する情報も得られた。

ペムブロリズマブがHER2陽性切除不能胃がん1次治療に承認、14年ぶりのパラダイムシフト

 2025年5月、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃がんの1次治療において免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ペムブロリズマブ併用療法が承認された。これまでもHER2陰性胃がんには化学療法+ICI併用療法が使われてきたが、今回の適応拡大によりHER2発現にかかわらず、ペムブロリズマブが1次治療の選択肢として加わることになる。  6月23日にMSDが開催したメディアセミナーでは、愛知県がんセンターの室 圭氏が登壇し、「胃がん一次治療の新たな幕開け~HER2陽性・陰性にかかわらず免疫チェックポイント阻害薬が使用可能に~」と題した講演を行った。

GLP-1受容体作動薬、高齢者はBMI低下の一方でサルコペニア加速

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、グルコースレベルを効果的に低下させ大幅な体重減少を促進することから、糖尿病や肥満症の治療薬として広く使用されている。一方、サルコペニアは筋肉量と筋力の低下を特徴とする進行性の疾患で、とくに高齢者に多くみられ、2型糖尿病の高齢者では、サルコペニアの有病率が非糖尿病患者に比べて2~3倍高いとされる。こうした背景から、GLP-1RAセマグルチドによる治療を受けた2型糖尿病の高齢者における筋肉量・筋力・筋機能の変化を調査したShijiazhuang People's Hospital(中国・河北)のQingjuan Ren氏らによる研究が、Drug Design, Development and Therapy誌オンライン版2025年7月3日号に掲載された。

砂糖/人工甘味料入りドリンクはアルツハイマー病リスクを高める可能性あり

 Lebanese UniversityのNagham Jouni氏らは、加糖ドリンク、人工甘味料入りドリンク、ソフトドリンクの摂取とアルツハイマー病リスクとの関連性を評価するため、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Aging & Mental Health誌オンライン版2025年6月13日号の報告。  2024年9月までに公表された研究をPubMed、Scopus、Web of Scienceデータベースより網羅的に検索し、甘味料入りドリンクとアルツハイマー病リスクとの関連を報告した観察研究を抽出した。ランダム効果モデルを用いて、プールされた相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。バイアスリスクの評価にはROBINS-Iツール、エビデンスの確実性の評価にはGRADEアプローチを用いた。

自己免疫疾患は気分障害リスクを高める

 関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などの自己免疫疾患の罹患者は、一般集団に比べてうつ病、不安症(不安障害)、双極症(双極性障害)などの気分(感情)障害の発症リスクが約2倍高いことが、新たな研究で明らかになった。このようなリスク上昇は、男性よりも女性で顕著であることも示されたという。英エディンバラ大学臨床脳科学センターのArish Mudra Rakshasa-Loots氏らによるこの研究結果は、「BMJ Mental Health」に6月10日掲載された。  Rakshasa-Loots氏らはこの研究で、慢性炎症は抑うつ障害や不安症などの精神疾患の発症と関連していることを踏まえ、慢性炎症状態に置かれている自己免疫疾患患者では、精神的な健康問題を抱える割合が高いのではないかと考えた。この仮説を検証するために同氏らは、英国で新たに実施された大規模な健康調査(Our Future Health)に参加した18歳以上の成人156万3,155人のデータを解析した。この研究への参加にあたり、参加者は自身の身体的および精神的健康の履歴を報告していた。自己免疫疾患として、関節リウマチ、バセドウ病、IBD、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬の6つを対象としたところ、該当者は3万7,808人であった。

2型糖尿病のHbA1cコントロールにピアサポートアプリが有効か

 糖尿病患者の血糖管理においてHbA1cは重要な指標となるが、今回、デジタルピアサポートアプリの活用により2型糖尿病患者のHbA1cが統計学的に有意に低下する可能性が示唆された。アプリ内のチャットを通じたコミュニケーションが患者個人の意思決定や行動に影響を与えている可能性があるという。研究は北里大学大学院 医療系研究科の吉原翔太氏によるもので、詳細は「JMIR Formative Research」に5月20日掲載された。  HbA1cは過去2~3か月間の平均血糖値を反映し、糖尿病合併症のリスクを予測するためのゴールドスタンダードとされている。しかし、2型糖尿病患者にとっては、健康的な行動を自ら採用し維持することが困難な場合もあり、HbA1cの適切な管理が難しい患者も少なくない。ピアサポートは、共通の経験や課題を持つ個人同士が互いに支援し合うことと定義されており、2型糖尿病患者の健康的な行動を促進するための効果的な戦略となる可能性が示唆されている。デジタルヘルスの技術進歩により、ピアサポートもアプリ上で行うことが可能となりつつある。しかし、このようなアプリが2型糖尿病の管理に及ぼす影響については、十分な検討がなされていない。このような背景を踏まえ、著者らは2型糖尿病患者のHbA1cコントロールに対するデジタルピアサポートアプリの効果を検証するために、前向きの単群パイロット研究を実施した。

アルツハイマー病における興奮の診断・評価・治療に関するエキスパートの推奨事項

 アルツハイマー型認知症のアジテーションは、患者、介護者、家族、医療制度に大きな影響を及ぼす。アジテーション治療に関する新たなエビデンスが明らかになるにつれて、多専門分野の専門家によるラウンドテーブルが開催され、発表された文献(2024年10月1日現在のPubMed検索結果)をレビューし、米国のプライマリケア提供者のためのコンセンサス推奨事項が作成された。米国・セントルイス大学のGeorge T. Grossberg氏らは、プライマリケア提供者向けのアルツハイマー型認知症のアジテーションの診断とマネジメントに関するエビデンスに基づく臨床実践のコンセンサス推奨事項を報告した。Postgraduate Medicine誌オンライン版2025年6月17日号の報告。

死亡リスクの予測、BMI vs.体脂肪率

 体組成の評価指標としてBMIが広く用いられているが、筋肉質な人を過体重や肥満に分類したり、BMIは正常でも体脂肪率が高い「正常体重肥満」のリスクを見逃したりする可能性が指摘されている。そこで、米国・フロリダ大学のArch G. Mainous氏らの研究グループは、20~49歳の成人を対象に、死亡リスクの予測においてBMIと体脂肪率のいずれが優れているか検討した。その結果、体脂肪率のほうが15年間の全死亡および心疾患死亡のリスク予測において優れている可能性が示された。本研究結果は、Annals of Family Medicine誌オンライン版2025年6月24日号に掲載された。

VR活用リハビリは脳卒中患者の腕の機能回復に有用

 脳卒中患者のリハビリテーション(以下、リハビリ)におけるVR(仮想現実、バーチャルリアリティ)の活用は、代替療法に比べて腕の動きの改善にわずかに役立つ可能性があることが、新たな研究により明らかになった。英フリンダース大学看護・健康科学部のKate Laver氏らによるこの研究の詳細は、「Cochrane Database of Systematic reviews」に6月20日掲載された。  研究グループは、「VRは、患者が受けるリハビリの量を増やすことでその効果を高める手段として有望である可能性が示された」と話す。またLaver氏は、「治療に費やす時間を増やすと、脳卒中後の転帰が改善することは知られている。VRを活用すれば、臨床医が監督をしなくても治療の量が増えるため、比較的安価で魅力的な方法となり得る」と述べている。

糞便移植、C. difficile感染症の一次治療になり得る効果を示す

 死に至る可能性もある細菌感染症、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile、以下C. difficile)感染症(CDI)の治療に関する臨床試験で、糞便移植(FMT)に抗菌薬と同程度の効果のあることが示された。同試験について報告したオスロ大学(ノルウェー)のFrederik Emil Juul氏らによると、経口抗菌薬を1日4回、10日間服用した患者と比べて、FMTを1回受けた患者で治癒率がわずかに高いことが確認されたという。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に6月17日掲載された。  FMTは、健康な人から採取した便サンプルを処理して、便に含まれている有益な腸内細菌を患者の消化管に移植することで健康的な腸内細菌叢を回復させる治療法である。

産婦人科医が授業に、中学生の性知識が向上か

 インターネットは、性に関する知識を求める若者にとって主要な情報源となっているが、オンライン上には誤情報や有害なコンテンツが存在することも否定できない。このような背景から、学校で行われる性教育の重要性が高まっている。今回、婦人科医による性教育が、日本の中学生の性に関する知識と意識の大幅な向上につながる、とする研究結果が報告された。ほとんどの学生が産婦人科医による講義を肯定的に評価していたという。研究は、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は「BMC Public Health」に5月28日掲載された。

腹腔鏡下手術vs.ロボット支援下手術、直腸がんの術後転帰に差

 直腸がんの手術では、狭い骨盤内での作業が必要となる。そのため、多関節アームやモーションスケーリング機能を備えたロボット支援下手術(RALS)を採用するメリットは大きい。今回、直腸がんにおけるRALSは、従来の腹腔鏡下手術(CLS)と比較して術後転帰が改善されるとする研究結果が報告された。出血量、術後C反応性蛋白(CRP)値、入院期間の点でCLSよりも有意な転帰の改善を示したという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野の安藤正恭氏、松田武氏らによるもので、詳細は「Langenbeck's archives of surgery」に5月21日掲載された。

双極症とうつ病における白質変化の共通点と相違点

 双極症とうつ病の鑑別診断は、症状の重複のため依然として困難である。  米国・ピッツバーグ大学のAnna Manelis氏らは、双極症とうつ病における線維特異的な白質の差異を、fixel-based analysis(FBA)を用いて解析し、FBA指標が将来のスペクトラム気分症状を予測するかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年6月4日号の報告。  18〜45歳の双極症、うつ病、健康対照者163例を対象に、拡散強調MRIを実施した。主要な白質線維束における線維密度(FD)、線維断面積(FC)、線維密度断面積(FDC)を、FBAを用いて評価した。縦断的フォローアップ調査により、FBA指標が6ヵ月間のスペクトラムうつ病および軽躁病の症状軌跡を予測できるかを評価した。

日本人の妊娠関連VTEの臨床的特徴と転帰が明らかに

 妊娠中の女性は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高く、これは妊産婦死亡の重要な原因の 1 つである。妊婦ではVTEの発症リスク因子として有名なVirchowの3徴(血流うっ滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進)を来たしやすく、妊婦でのVTE発生率は同年齢の非妊娠女性の6〜7倍に相当するとも報告されている。そこで今回、京都大学の馬場 大輔氏らが日本人の妊婦のVTEの実態を調査し、妊娠関連VTEの重要な臨床的特徴と結果を明らかにした。  馬場氏らは、メディカル・データ・ビジョンのデータベースを用いて、2008年4月~2023年9月までにVTEで入院した可能性のある妊婦1万5,470例を特定。さらに、抗凝固療法が実施されていない患者や画像診断検査が施行されていない患者などを除外し、最終的に妊婦でVTEと確定診断され抗凝固療法を含めた介入が行われた410例の臨床転帰(6ヵ月時のVTE再発、6ヵ月時の出血イベント、院内全死因死亡)などを評価した。

尿路感染症への抗菌薬、フロモキセフvs.セフメタゾール/徳島大ほか

 薬剤耐性菌による尿路感染症は世界的に増加しており、とくに基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は多くの抗菌薬に耐性を示す。ESBL産生菌による感染症には、カルバペネム系抗菌薬が推奨されるが、耐性菌の増加などの懸念から、カルバペネム系抗菌薬以外の治療選択肢が求められている。フロモキセフとセフメタゾールは、ESBL産生菌への有効性が期待される抗菌薬であるが、両剤の比較データは乏しい。そこで、新村 貴博氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部)らの研究グループは、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータと日本全国の診療データベースを用いて、両剤の比較を行った。その結果、フロモキセフはセフメタゾールと同等の有効性を示し、入院期間の短縮や一部の有害事象のリスク低下をもたらす可能性が示された。本研究結果は、BMC Medicine誌2025年7月1日号に掲載された。

薬に頼らず膝の痛みを軽減するには装具がベスト

 ズキズキとした膝の痛みに悩まされている高齢者は少なくないが、薬を使わずに変形性膝関節症(KOA)を治療する確実な方法は数多くあることが、新たなエビデンスレビューで示された。膝装具、水治療法、運動のいずれもがKOAの痛みを効果的に緩和することが示されたという。内江第一人民病院(中国)のYuan Luo氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に6月18日掲載された。  Luo氏らは、「これらの治療選択肢は、一般的な鎮痛薬で生じ得る胃腸や心血管などのリスクを伴うことなく痛みを軽減し、関節の可動性を向上させる。患者と臨床医は、これらのエビデンスに基づいた選択肢を優先すべきだ」と述べている。

トーキングセラピーが脳卒中後の抑うつや不安を改善

 脳卒中後の抑うつや不安に苦しむ患者に対し、会話を中心にした心理療法であるトーキングセラピーが有効であることが、新たな研究で示された。英国で国民保健サービス(NHS)が無料で提供している不安と抑うつのためのトーキングセラピー(Talking Therapies for anxiety and depression;TTad)を受けた脳卒中経験者の71.3%が抑うつや不安の症状の大幅な改善を経験し、約半数は脳卒中後の気分障害から完全に回復したことが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)精神保健リサーチフェローのJae Won Suh氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Mental Health」に6月5日掲載された。

大腸がんスクリーニング、CT検査が便中DNA検査よりも有用か

 大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。  大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。

オンデキサの周術期投与に関する提言、4団体が発出

 日本心臓血管麻酔学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本体外循環技術医学会の4学会は、直接作用型第Xa因子阻害薬の中和剤であるアンデキサネット アルファ(商品名:オンデキサ)が高度なヘパリン抵抗性を惹起する可能性について、医療現場への一層の周知が必要と判断し、「アンデキサネット アルファの周術期投与に関する提言」を6月30日に発出した。  ヘパリンを用いる心臓血管外科手術の術前または術中にアンデキサネット アルファを投与した後、著明なヘパリン抵抗性を呈し、手術遂行に重大な支障を来した症例が複数報告されている。これを受け、2023年9月に日本心臓血管麻酔学会が注意喚起を出していたが、その後も類似の症例が継続して報告されていた。

自殺リスクに相反する影響を及ぼすコーヒーとエナジードリンク

 コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、世界で最も多く消費されている精神活性物質であり、世界人口の約80%は毎日摂取している。近年の研究では、カフェイン摂取後に生じる可能性のあるメンタルヘルスのアウトカムへの影響に関して、より複雑な関係性が示唆されている。シンガポール国立大学のChen Ee Low氏らは、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を調査するため、初のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年6月2日号の報告。  PRISMAに準拠し、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を評価したすべての研究を、PubMed、Embase、Cochrane、PsycINFOよりシステマティックに検索した。主要解析には、ランダム効果メタ解析およびメタ回帰分析を用いた。