医療一般|page:3

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有用性

 うつ病患者は不安症状が高頻度でみられ、そのような患者では抗うつ薬に対する治療反応が低下し、機能的な悪影響につながる恐れがある。カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、不安症状を伴ううつ病患者における補助的ブレクスピプラゾール治療の抑うつ症状および機能に対する有効性を評価するため、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(RCT)の事後分析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2024年3・4月号の報告。  うつ病患者および抗うつ薬治療で効果不十分な患者を対象に、補助的ブレクスピプラゾール治療6週間RCT3件よりデータを抽出した。患者は、DSM-Vの不安による苦痛(anxious distress)に準じて層別化した。ベースライン時から6週目までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)の項目スコアおよびシーハン障害尺度(SDS)の平均スコアの変化について、補助的ブレクスピプラゾール治療群(2mg、2~3mg)とプラセボ群で比較を行った。

プライマリケア提供者の不足は緊急手術の増加を招く

 プライマリケア医やナース・プラクティショナー(医師の指示なしで一定の治療や治療が可能な看護師)が不足している地域に住む米国人は、緊急手術が必要になったり合併症を発症したりするリスクの高いことが、新たな研究で明らかになった。こうした人では、退院後に再入院するリスクが高いことも示された。米ミシガン大学外科学分野のSara Schaefer氏らによる研究で、詳細は「Health Affairs」3月号に掲載された。  Schaefer氏は、「潜在的な問題を特定し、画像診断や手術のために患者を専門病院などへ紹介するプライマリケア提供者の役割は、迅速に対処すべき問題が緊急事態に陥るのを防ぐ上で大きな違いを生む可能性がある」とミシガン大学のニュースリリースの中で述べている。

ピロリ菌の除菌治療の失敗は虫歯と関連

 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の除菌治療に成功するかどうかは、虫歯の有無と有意に関連しているとの研究結果が示された。朝日大学歯学部口腔感染医療学講座社会口腔保健学分野の岩井浩明講師、友藤孝明教授らによる研究であり、詳細は「Scientific Reports」に2月19日掲載された。  ピロリ菌は、胃炎、胃潰瘍、胃がんなどを引き起こす。胃がんの90%以上はピロリ菌が原因とされている。ピロリ菌の感染者は減少傾向であるものの、2017年時点で日本人の約3600万人が感染しており、年齢が上がるほど感染率は高まる。ピロリ菌の感染者には抗菌薬による除菌治療が行われるが、除菌は必ず成功するわけではない。除菌失敗の可能性としてピロリ菌の薬剤耐性が報告されているが、まだ不明な点も多く、さらなる研究が必要とされている。

「魚と酒」は「肉中心」より高血圧になりやすい!?~日本人男性

 食事パターンと高血圧発症の関連を検討した日本人男性における前向きコホート研究で、「魚介類とアルコール」より「肉類中心」や「乳製品/野菜中心」のほうが高血圧リスクが低かったことを、東北大学/中国・Heze UniversityのLongfei Li氏らが報告した。本研究では食事パターンの特定に、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した「教師なし機械学習法」を用いている。European Journal of Nutrition誌オンライン版2024年2月25日号に掲載。

認知機能低下の高齢者における活動時の疼痛の特徴

 神戸学院大学の中田 健太氏らは、アビー痛みスケール(APS)を用いて、認知機能が低下している高齢者の運動および活動に伴う疼痛を評価し、活動時の疼痛を効果的に反映するサブ項目を特定しようと試みた。Journal of Pain Research誌2024年3月5日号の報告。  富山県・池田リハビリテーション病院の筋骨格系疾患および認知機能低下を有する高齢患者225例を対象に横断的研究を実施した。歩行中または移動中の疼痛の評価には、言語式評価スケール(VRS)およびAPSを用いた。疼痛の有無や程度を最も正確に反映するAPSサブ項目を特定するため項目反応理論(IRT)を用いた。

悪性黒色腫、個人情報を共有せずにAI診断は可能か?

 悪性黒色腫の人工知能(AI)診断モデルの開発には通常、大規模かつ集中化されたデータセットが必要であり、各施設による患者データの提供が求められ、これによりプライバシーに関する重大な懸念が生じている。そこで、ドイツがん研究センター(DKFZ)のSarah Haggenmuller氏らは、こうした懸念の払拭が可能とされる新たな機械学習の連合学習(federated learning)アプローチを取り入れた検討を行った。その結果、分散化された状態でのデータセット上で、浸潤性悪性黒色腫と母斑の分類が可能であることが示唆された。結果を踏まえて著者は、「連合学習は、悪性黒色腫のAI診断におけるプライバシー保護を改善すると同時に、機関や国をまたいだコラボレーションの促進が可能である。さらに、デジタルパソロジーやその他の画像分類タスクにも拡張できるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌2024年3月号掲載の報告。

アプリを通じて蓄尿量が分かる膀胱デバイスを開発

 疾患に関連した尿失禁に悩まされている人の中には、帰宅するまでトイレに行くのを我慢できるのか、それとも今すぐトイレに行くべきなのかの判断が難しい人もいる。そのような人に役立つデバイスとスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に関する研究成果が報告された。膀胱用のインプラントデバイスとスマホのアプリにより、膀胱内の蓄尿量をリアルタイムで追跡できるのだという。米ノースウェスタン大学生体医工学分野のGuillermo Ameer氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に3月28日掲載された。Ameer氏は、「このアプリとデバイスは、疾患などが原因で膀胱の機能が低下し、トイレに行きたいのかどうかが判然としない患者にとって、画期的な解決策になるだろう」と述べている。

PREVENT計算式で心血管疾患リスクを推定可能に

 「心血管疾患(CVD)イベントのリスク予測(Predicting Risk of CVD EVENTs;PREVENT)」方程式は、心不全を含むCVDのリスクを正確に推定できることが、「Circulation」に11月10日掲載のmethods paperおよび付随する科学的声明により報告された。この結果は、米国心臓協会の年次学術集会(AHA 2023、11月11~13日、米フィラデルフィア)でも同時発表された。  CVDの絶対リスクを評価する多変量リスク予測方程式の使用は、複数の一次予防ガイドラインにおいて現在推奨されているが、課題も多く存在する。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya S. Khan氏らは、心血管・腎臓・代謝の3つの軸に関連する予測因子や、健康の社会的決定因子も考慮した新たな方程式が必要と考え、CVDの既往のない30~79歳の米国成人を対象としたPREVENT方程式を開発した。

小児期の弱視が成人後の肥満、糖尿病リスクなどと関連

 子ども時代に弱視であった人は成人後の視力も良くないことが多いだけでなく、心血管代謝疾患のリスクが高いことを示すデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所のSiegfried Wagner氏らの研究によるもので、詳細は、「eClinicalMedicine」に3月7日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「視覚は健康全般の番人としての役割があり、視機能はほかの器官の働きと密接な関係がある」と話している。  視力は出生後に物を見ることで、網膜から脳へつながる神経が刺激されて成長する。視力が急速に成長する幼少期に何かしらの理由で網膜が刺激されない状態では、視力の成長が滞る。また、左右の見え方に少し差がある場合には、脳は良く見えない方の目の情報を無視するような処理をするため、見えにくかった方の目の視力はより育ちにくくなる。子どもに多い斜視も、このような理由で弱視につながりやすい。

日本人の喘息患者に睡眠時無呼吸が多く見られる

 日本人の喘息患者を対象に、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)の合併および臨床転帰を検討する研究が行われた。その結果、OSAの合併率は高く、特に重症OSAを有する人ほど喘息のコントロールや症状が悪いことが明らかとなった。これは川崎医科大学呼吸器内科学の小賀徹氏らによる研究結果であり、「Allergology International」に2月9日掲載された。著者らは、「喘息とOSAの合併は過小評価されている」として、臨床転帰を改善するためのOSAのスクリーニングを推奨している。  睡眠中に気道が閉塞することにより呼吸停止が起こるOSAでは、夜間のいびきや日中の眠気など、さまざまな症状が生じる。OSAのリスク因子の1つに肥満があるが、OSAは肥満のない人でも発症する。特に日本人は欧米人と比べてBMIが低いにもかかわらず、OSAの有病率は米国と日本で同程度と報告されている。

HER2+転移乳がん、T-DXd後のtucatinibレジメンの有用性は?

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者(活動性脳転移例を含む)の後治療において、経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用(TTC療法)が、臨床的に有意義な転帰と関連していたことを、フランス・Institut de Cancerologie de l'OuestのJean-Sebastien Frenel氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年4月1日号掲載の報告。  研究グループは、T-DXdの治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者におけるTTC療法後の転帰を調査するためにコホート研究を実施した。対象は、2020年8月1日~2022年12月31日にフランスのがんセンター12施設でT-DXdによる治療を受けた転移乳がん患者全例であった。tucatinib(1日2回300mgを経口投与)とトラスツズマブ(21日ごとに6mg/kgを静脈内投与)およびカペシタビン(21日サイクルの1~14日目に1日2回1,000mg/m2を経口投与)を併用した。主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく無増悪生存期間(PFS)、次治療までの期間(TTNT)、全奏効率(ORR)、全生存期間(OS)であった。

統合失調症治療における抗精神病薬単剤療法と多剤併用療法の有効性

 統合失調症スペクトラム障害患者の抗精神病薬単剤療法と多剤併用療法について、救急での使用状況、興奮や攻撃性を伴う症状、再入院に対する有効性の違いは、いまだ明らかになっていない。トルコ・チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学のSukru Alperen Korkmaz氏らは、同患者における抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法のリアルワールドでの有効性を評価するため本研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年3月5日号の報告。  本研究は、救急受診で入院した統合失調症スペクトラム障害患者669例を対象に、電子健康記録のデータを用いて実施された。対象患者を初回入院時の抗精神病薬使用状況に応じて、(1)抗精神病薬の服薬アドヒアランス不良期間が90日超、(2)同期間が15~90日、(3)抗精神病薬単剤療法、(4)同多剤併用療法の4群に分類した。すべての患者を初回入院後1年以上フォローアップした。主要アウトカムは、初回入院後の抗精神病薬単剤療法群と多剤併用療法群における、すべての原因による精神科入院との関連性とした。

糖尿病になりやすい食習慣は?~日本人13万人10年間の調査

 朝食を抜く、早食いをする、間食をするといった食習慣が2型糖尿病の発症と関連することが欧米の研究で示されている。本邦においても食習慣と糖尿病発症の関係が検討されており、朝食を抜く、早食いをするといった食習慣が2型糖尿病の発症と関連するという報告がある。ただし、これらの研究にはサンプルサイズが小さい、もしくは追跡期間が短いといった限界が存在していた。そこで、京都府立医科大学の豊國 恵麻氏らの研究グループは、日本人約13万例を対象に、追跡期間10年間のコホート研究を実施した。その結果、とくにBMI 25kg/m2未満の集団では、早食いをする、就寝前2時間以内に夕食を食べるといった食習慣が2型糖尿病のリスクとなることが示された。本研究結果は、Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2024年4月2日号で報告された。

日本のCOPD患者、残存する症状への治療強化の少なさが課題?/AZ

 アストラゼネカは2024年4月8日付のプレスリリースにて、多施設共同前向き観察研究「EBISU study」および後ろ向き観察研究「REMIND study」の2つの結果を2024年4月5~7日に開催された第64回日本呼吸器学会学術講演会で報告したことを発表した。  日本の多施設共同前向き観察研究であるEBISU studyにおいて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療配合剤であるビレーズトリエアロスフィアが、喘息合併あるいは喘息既往のないCOPD患者の症状やQOLを12週間で改善させたという結果が示された。

超音波とMRIによる新治療法が前立腺がん治療に革命を起こす?

 従来の放射線療法と手術ではなく、MRIと超音波を用いた侵襲性の極めて低い新たな治療法(タルサ治療)が、前立腺がんを効果的に治療することを示した研究結果が報告された。この治療を受けた患者の76%は、1年後の追跡生検でがん細胞が見つからなかったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイビッド・ゲフィン医学部放射線科、泌尿器科、外科分野教授のSteven Raman氏らによるこの研究結果は、インターベンショナルラジオロジー学会(SIR 2024、3月23〜28日、米ソルトレークシティ)で発表された。

一部の鯨類で閉経があるのはなぜ?

 哺乳類の中では、ヒト以外に何種類かの鯨類(クジラ目)とチンパンジーに閉経があることが知られている。しかし、閉経が何のために、どのように進化してきたのかについては不明だった。こうした中、英エクセター大学動物行動研究センターのDarren Croft氏らの研究から、閉経のある鯨類はそれ以外の鯨類よりも大幅に寿命が長く、それは閉経することで自分の娘と繁殖相手を競い合うことなく、子どもや孫の生存を助けるためであることが示唆された。この研究結果は、「Nature」に3月13日掲載された。  論文の共著者である英ヨーク大学生物学分野のDaniel Franks氏は、閉経の進化に関するこれまでの研究は、単一種に焦点を当てたものであったと指摘する。それに対し、今回の研究は、ハクジラ類の複数の種に閉経のあることを明らかにした最近の研究成果により実現したものであり、複数の種を横断的に検討した初の試みであると述べている。

同性カップルの遺伝子を受け継ぐ子どもも夢ではない?

 マウスの皮膚細胞の核を、核を取り除いた別のマウスの卵子に移植して染色体を操作し、人工授精を行うことで、皮膚提供マウスと精子提供マウスの遺伝子を受け継いだ胚を作り出せることが示された。この技術は、加齢やがん治療などが原因で健康な卵子を産生できない女性に役立つ可能性があるだけでなく、同性カップルでも両者の遺伝子を受け継ぐ子どもを持てる日が来る可能性のあることを意味する。米オレゴン健康科学大学(OHSU)胚細胞・遺伝子治療センターのShoukhrat Mitalipov氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に3月8日掲載された。

レビー小体型認知症に対するドネペジルの有用性~国内第IV相試験

 ドネペジルは日本において、レビー小体型認知症(DLB)に対する治療薬として承認された。大阪大学の森 悦朗氏らは、DLBに対するドネペジルの有効性を評価するため、12週間の二重盲検期間における全体的な臨床症状に焦点を当てた第IV相試験の結果を報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2024年3月4日号の報告。  DLBが疑われる患者をプラセボ群(79例)またはドネペジル10mg群(81例)にランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、臨床面接による認知症変化印象尺度-介護者入力(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC-plus)を用いて評価した全体的な臨床症状の変化とした。また、CIBIC-plusの4つの領域(全身状態、認知機能、行動、日常生活活動)およびミニメンタルステート検査(MMSE)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)で測定した認知機能障害と行動および精神神経症状の変化も評価した。

特発性間質性肺炎の指定難病・診断基準改訂、外科的肺生検なしでも診断可能に/日本呼吸器学会

 間質性肺疾患は、2022年の日本人の死因の第11位となっており、対策の必要な疾患である。特発性間質性肺炎(IIPs)は、特発性肺線維症(IPF)を代表疾患とする原因不明の間質性肺炎の総称で、国の指定難病となっている。2024年4月より、本疾患の厚生労働省の診断基準および重症度分類基準が改訂され、蜂巣肺を伴わないIPFやIPF以外のIIPsでも外科的肺生検なしで認定可能になるなど大きな変更があった。そこで、第64回日本呼吸器学会学術講演会のランチョンセミナーにおいて、千葉 弘文氏(札幌医科大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座 教授)が診断基準および重症度分類基準の改訂のポイントを解説した。

メトホルミンのがんリスク低減、がん種別では?~166研究のメタ解析

 メトホルミンは、糖尿病管理のほかにがんリスクを低下させる可能性が報告されている。今回、米国・国立がん研究所(NCI)のLauren O'Connor氏らが、メトホルミン使用とがんリスクの関連を包括的系統的レビューとメタ解析により検討した。その結果、消化器がん、泌尿器がん、血液腫瘍のリスク低下との関連が示唆された。しかしながら、有意な出版バイアスがみられたことから信頼性には限界があるという。Journal of the National Cancer Institute誌2024年4月号に掲載。