腱滑膜巨細胞腫(TGCT)は、関節滑膜、滑液包、腱鞘などに発生する局所的に侵襲性の高いまれな軟部組織腫瘍であり、痛み、腫れ、こわばり、関節可動域の低下が一般的な症状で、適切な治療が行われないと関節や骨に不可逆的な損傷を引き起こす可能性があるという。中国・首都医科大学のHairong Xu氏らは「MANEUVER試験」において、手術不能なTGCTの治療ではプラセボと比較してpimicotinib(高選択性の強力なコロニー刺激因子-1受容体[CSF-1R]阻害薬)は、25週時の客観的奏効率(ORR)が有意に高く、TGCT関連の機能制限および症状の負担に関して臨床的に意義のある改善をもたらし、管理可能な安全性プロファイルを有することを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年3月14日号で報告された。
40施設の無作為化プラセボ対照第III相試験
MANEUVER試験は、中国の23施設、欧州の7施設、北米の10施設、合計40施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験。2023年4月~2024年3月に、年齢18歳以上、手術不能なTGCTと診断され、無作為化前の2週間にわたり症状(患者報告による最悪時のこわばりと痛みがそれぞれ4点以上[0~10点、点数が高いほど症状が重度])を有する患者を登録した。
本試験は3つのパートで構成され、今回はパート1の結果を報告した。パート1は24週間の二重盲検期間で、被験者をpimicotinib(50mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に2対1の比率で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、25週の時点で独立審査委員会が盲検下に評価したITT集団におけるORRであった。
ORRはpimicotinib群54%vs.プラセボ群3%、1例で完全奏効
94例(年齢中央値40.0歳、女性64例[68%]、中国の施設での例数45例[48%])を登録し、pimicotinib群に63例、プラセボ群に31例を割り付けた。80例(85%)がびまん型TGCTで、56例(60%)は少なくとも1回の手術歴を有しており、88例(94%)は全身療法を受けたことがなかった。88例(94%)がパート1を完了した。
主要評価項目のORRは、プラセボ群が3%(1/31例)であったのに対し、pimicotinib群は54%(34/63例)と有意に優れた(絶対群間差:51%、95%信頼区間:33~63、p<0.0001)。pimicotinib群の奏効例のうち、1例が完全奏効、33例は部分奏効だった。
25週時の相対的関節可動域(p=0.0003)、最悪時のこわばり(p<0.0001)、最悪時の痛み(p<0.0001)、身体機能(p=0.0074)は、いずれもpimicotinib群で有意に良好であった。
有害事象の多くは軽度で管理可能
pimicotinib群では、試験期間中に発現した有害事象の多くが軽度であり、ほとんどは管理可能な無症状の検査値異常や臨床イベント(そう痒、顔面浮腫、発疹、眼窩周囲浮腫、疲労感など)であった。試験期間中にpimicotinib群の10%以上に発生したGrade3または4の有害事象は血中クレアチンホスホキナーゼ(CK/CPK)値の上昇のみであり、63例中8例(13%)に認めた。プラセボ群で最も頻度の高かった治療関連有害事象は、疲労感(7例[23%])および関節痛(7例[23%])であった。
pimicotinib群の63例中5例(8%)で投与量の減量が行われ、1例(2%)が投与中止となった。懸念された胆汁うっ滞性肝毒性、薬剤誘発性肝障害、皮膚や毛髪の低色素沈着は認めなかった。
著者は、「治療法が限られている本疾患において、pimicotinibは管理可能な安全性プロファイルを備えた有効な治療選択肢となり、手術が適用とならない患者に対し、新たな標的薬による全身療法を提供するものである」「痛みを緩和し、身体機能を改善することで、生活の質の向上をももたらすと考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)