臨床試験の事前登録は、研究の透明性を高め、出版バイアスや選択的な結果報告を防止するために不可欠な手続きとされる。医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、2005年7月、ICMJE加盟誌への論文の掲載資格を得るには、最初の参加者の登録時またはそれ以前に、承認された登録機関(WHO国際臨床試験登録プラットフォームの18の主要登録機関、ClinicalTrials.gov、UMIN臨床試験登録システムなど)に試験を登録することを義務付けているが、実際には順守が不十分な試験が散見されるという。スペイン・カタルーニャ国際大学のDavid Blanco氏らは、ICMJE承認の登録機関への「事前登録なし」を理由に、BMJ誌が却下した試験の多くが後に、高インパクトのジャーナルに「ICMJE勧告への準拠」を主張して(多くの場合、登録不備の開示なしに)掲載されている実態を明らかにした。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。
事前登録なしの可能性が低い6つの条件
研究グループは、ICMJEの定義に基づき臨床試験の結果を報告し、編集者により事前登録されていない可能性があると指摘されたBMJ誌投稿論文287件のうち239件(2019~23年)と、同期間に投稿されたすべての臨床試験の無作為抽出リストから選択したICMJE承認の登録機関に事前登録された239件の試験について調査した(筆頭著者は、スペイン・科学・イノベーション省の助成を受けている)。
ICMJE承認の登録機関への事前登録なしの可能性が低い条件として、以下の6つが挙げられた。
(1)より多い症例数(101~500例vs.1~100例、オッズ比[OR]:0.43[95%信頼区間[CI]:0.22~0.84]、p=0.01)、(2)責任著者がオセアニア出身(欧州出身者との比較、OR:0.35[95%CI:0.14~0.82]、p=0.02)、(3)著者数が多い(10人vs.5人、OR:0.71[95%CI:0.59~0.87]、p=0.004)、(4)臨床試験報告に関する統合基準(CONSORT)への言及(あるvs.ない、OR:0.22[95%CI:0.06~0.67]、p=0.03)、(5)より最近の投稿(2021~23年vs.2019~20年、OR:0.63[95%CI:0.42~0.95]、p<0.001)、(6)資金提供の有無(例:非営利の資金提供vs.資金提供なしまたは情報なし、OR:0.20[95%CI:0.09~0.41]、p<0.001)。
一方、責任著者がアジアに拠点を置いている場合では、事前登録なしの可能性が高かった(欧州を拠点とする著者との比較、OR:1.75[95%CI:1.07~2.89]、p=0.03)。
事前登録なしの試験の88%がその後に公表
2019~21年に投稿され、ICMJE承認の登録機関に事前登録されていなかった176件の試験のうち、146件(83%)が事後登録を行い(遅延期間中央値193日)、23件(13%)が未登録のままで、7件(4%)はICMJEが承認していない登録機関に登録されていた。
多くの試験(155件[88%])がその後公表された。このうち138件(89%)はインパクトファクターを有するジャーナル(中央値5.39)に掲載され、96件(62%)はICMJE勧告の順守を表明するジャーナルに掲載された。
BMJ誌への初回投稿から公表までの期間中央値は12ヵ月であった。公表時に、登録不備を明示的に開示していたのは約6分の1のみだった。投稿時に事前登録について回答した72人の著者のうち、60人(83%)が誤って順守を主張していた。
編集者、著者、登録機関の管理者に向けた提言
本研究の結果は、ICMJEの勧告を標榜するだけでは、事前登録の徹底には不十分であることを示唆している。著者は、「登録慣行と報告の透明性の向上のためには、編集審査の強化、登録基準の明確化、著者の意識改革が必要である」とし、編集者、著者、登録機関の管理者に向けた提言を行っている。
たとえば、ジャーナルが著者に求めるべき必須要件として、(1)登録機関への正確な提出日と承認日、(2)最初の参加者の登録日、(3)登録機関の名称と登録番号、(4)登録情報へのハイパーリンク、(5)ICMJE承認の登録機関への事前登録の有無を挙げ、「出版時には、これらの項目のすべてを、抄録と本文の両方に明記すべきである」としている。
(医学ライター 菅野 守)